著者
深澤 友里 倉田 勇 小暮 正晴 立石 秀勝 鈴木 裕 仲村 明恒 下山田 博明 望月 眞 柴原 純二 森 秀明 古瀬 純司 土岐 真朗 久松 理一 杉山 政則 後藤 知之 吉田 翼 太田 博崇 落合 一成 権藤 興一 渡邉 俊介 岡野 尚弘
出版者
杏林医学会
雑誌
杏林医学会雑誌 (ISSN:03685829)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.129-136, 2017

<p> 症例は,2016年1月に特発性脾被膜下出血後の膿瘍形成及び急性膵炎にて緊急入院となった50歳代男性。退院後,1ヶ月で膵炎の再燃がみられ,入院となった。膵炎に対しては禁食,補液, 抗菌薬, 蛋白分解酵素阻害薬の投与を行い軽快したが,造影CT,造影MRI検査で,膵体尾部に膵実質より造影・増強効果の乏しい腫瘤が認められ,超音波内視鏡下穿刺吸引(EUS-FNA)を施行した。病理所見は,腺癌であり,膵体尾部癌cT3N0M0 stage IIAの診断で,膵体尾部脾合併切除術を施行した。術後補助化学療法として,S-1を4 コース施行後,現在に至るまで約1年間再発なく経過している。本症例のように,短期間で膵炎を繰り返す症例では膵癌の合併を念頭に,様々なmodalityを用いて迅速な精査を行う必要があると考えられた。</p>
著者
火爪 健一 関 誠 十亀 徳 上野 雅資 太田 博俊 柳澤 昭夫
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 = The journal of the Japanese Practical Surgeon Society (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.873-877, 1997-04-25
参考文献数
10
被引用文献数
3

脾よりかなり離れた大網に存在し,茎捻転によると思われる症状を呈した重複副脾の稀な1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.症例は35歳女性.人間ドックの腹部USで左側腹部に腫瘤を指摘され精査目的で入院となった.腹部USでは左腎尾側に充実性腫瘤が存在し,腹部CTでは腎下極に始まり下行結腸を前方より圧排する均一な充実性腫瘤が見られた.血管造影では左胃大網動脈より栄養されるhypervascularな腫瘍像が見られ,他に脾下極よりに径2cmのhypervascularな多発病変が見られた.以上より副脾を疑ったが,他の悪性疾患を否定できず,また間歇的な腹部仙痛発作を認めたため,開腹術を施行した.<br> 大網前面に胃大網動静脈につながる長さ90mmの茎を有する径40mm大の副脾と,長さ25mmの茎を有する径21mm大の副脾を認めた.ともに茎の起始部で切除した.組織学的に2個とも副脾と診断した.
著者
祢宜田 和正 山下 雅代 久保田 敏行 杉浦 洋二 三浦 崇則 勝見 章男 太田 満 齋竹 達郎 戸澤 良夫 水谷 勝
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.123-131, 2001-04-10 (Released:2011-03-04)
参考文献数
17
被引用文献数
1 2

Although vancomycin has been exclusively used for methicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA) therapy, there are many patients recently observed to suffer from gram negative bacteria, Pseudomonas aeruginosa as well as MRSA.Arbekacin (ABK), an aminoglycoside antibiotic (AG) is an alternative medication for such patients with those infection disease. However, it seems that the dosage of ABK used according to the manufacture's recommendations is insufficient for MRSA therapy to obtain a sufficient patient outcomes. Moreover, the relationship between the effectiveness of ABK on MRSA infection and the serum ABK concentration remains unclear. For the long-term treatment of AG, we can not rule out the possibility that AG may induce nephrotoxicity and ototoxicity.Therefore, the present study was carried out to clarify the significance of therapeutic drug monitoring (TDM) of ABK for patients with an MRSA infection, and elucidate the relationship between the serum ABK level and its clinical outcomes, including its antibacterial action and side effects. We investigated 30 patients with an MRSA infection, who received ABK at the Anjo Kosei Hospital from September 1996 to June 1998. The treatment of the patients by ABK but without TDM showed a 46.6% (7/15) therapeutic efficacy, while the patients with drug monitoring had a remarkably successful therapeutic efficacy (100% : 21/21) with a peak serum ABK concentration over 10μg/mL. Dysphagia badly affected the efficacy of ABK therapy in patients with an MRSA infection even when the serum ABK level was well-controlled. The incidence of ABK induced nephrotoxicity was observed in all patients when ABK was administered at a total dose of over 5, 000mg, while it was 4% at a total dose of less than 5, 000mg. When the duration of ABK therapy was longer than 2 weeks, the incidence of nephrotoxicity also significantly increased.These results thus suggest that TDM of ABK is useful for increasing the efficacy of ABK therapy in patients with an MRSA infection. In light of nephrotoxicity, these results indicate that ABK therapy may be completed within 2 weeks with an ABK dose of less than 5, 000mg, as the total dose.
著者
岩本 茂子 小川 祐樹 諏訪 博彦 太田 敏澄
出版者
一般社団法人 社会情報学会
雑誌
社会情報学 (ISSN:21872775)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.1-15, 2019-03-31 (Released:2019-05-01)
参考文献数
24

本研究は,組織内つぶやきシステムがもたらす効用を仮説構築的なモデルとして提示することを目的とする。ある企業において導入された企業内つぶやきシステムは,インフォーマルコミュニケーションの一手段として長期間利用されている。ソーシャルメディアなどでつぶやくことによる効用として,自己効用や関係効用など,様々な効用が指摘されているが,企業内に特化したつぶやきシステムに関する研究は見当たらない。労働者のストレスや不安の解消は,企業内の課題であるとともに,大きな社会問題であり,つぶやきシステムがもたらす効用を明らかにすることは意義がある。我々は,対象の企業内つぶやきシステムのユーザに対し,半構造化インタビュー調査を行い,つぶやきシステムがもたらす効用を仮説構築的なモデルとして提示した。具体的には,半構造化インタビューに基づいて得られた内容を,KJ法を用いて整理し,8個の要因に集約した。さらに,先行研究の知見に基づいてそれらの要因の関連付けを行うことで効用-課題-効果モデルを仮説構築的なモデルとして提示した。その結果,企業内つぶやきシステムがつぶやきの受発信を促進する場を構築し,その場の上で関係構築,社会的スキル向上,ストレス軽減の効用をもたらすことが期待できることを示した。また,企業内つぶやきシステムが情報共有促進,没個人の抑制,モチベーション低下の抑制の効果をもたらすことが期待できることを示した。
著者
太田 泉 本多 健一郎
出版者
The Kansai Plant Protection Society
雑誌
関西病虫害研究会報 (ISSN:03871002)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.107-109, 2011 (Released:2011-09-01)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

Sitobion akebiae is a promising alternative host aphid using a banker-plant system of Aphidius gifuensis. This study was conducted to evaluate the effect of host plant species and varieties on population growth of S. akebiae. Barley, wheat, oats and rye were tested in this study. The population increase of S. akebiae were lower on seedlings of the barley variety ‘Shunrai’ than other plants. But S. akebiae successfully increased on the matured plants with ears of ‘Shunrai’. These results suggest that young seedlings of the barley ‘Shunrai’ should be useless for host plants of S. akebiae.
著者
末廣 輝男 大久保 晃男 佐藤 憲夫 三浦 浩二 古賀 秀昭 太田 照明 大久 正敏 高橋 弘之
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.121-123, 1977

気柱の開口端で音叉を鳴らしながら気柱の長さを変化させ,音の強弱を耳で聴取して共鳴点を探る実験は従来から高校あるいは大学教養課程の物理学実験のテーマとして取上げられてきた.この実験は直接的である点で秀れているが,反面,音叉の振動が早く減衰すること,音圧最大の点を耳で判断するためにあいまいさが残ること,誤差を見積るのが難かしい等の問題がある.このため充分に定量的な実験とは言いかねる欠点があった.そこで音叉のかわりに低周波発振器と低周波増幅器に接続されたスピーカーを音源に用い,更に共鳴点ではスピーカーコーンの振幅が大きくなることを利用してスピーカーボイスコイルからコーンの振幅に比例した電圧を取出し,これをメータで読むことにより共鳴点を見出すことにした.これにより実験の精度および再現性が向上し,気柱の直径を変えた時の音速の変化等も検知することができた.
著者
鈴木 貴之 鈴木 真 笠木 雅史 井頭 昌彦 太田 紘史
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

今年度は、本研究プロジェクトの5つの研究課題のうち、従来の哲学方法論の批判的評価、哲学的自然主義の可能性と限界、実験哲学の哲学的意義の評価、という3つの課題についておもに研究を進めた。従来の哲学方法論の批判的評価に関しては、2017年10月に香港大学からマックス・ドイッチュ氏およびジェニファー・ネド氏を招いて、科学基礎論学会秋の研究例会および東京大学で、哲学における直観の重要性と信頼性に関するワークショップを開催した。また、笠木雅史が同月に開催された日本科学哲学会のシンポジウムで、分析哲学における哲学方法論の歴史について発表を行った。哲学的自然主義の可能性と限界に関しては、井頭昌彦が自然主義の定式化や代替案を論じた論文を発表し、鈴木貴之と太田紘史が、自然主義的な心の哲学の現状や課題について、論文や共著を発表した。また、鈴木貴之が道徳に関する心理学研究の哲学的意義について、2018年2月に東京大学で開催された社会心理学コロキウムで発表を行った。実験哲学の哲学的意義の評価に関しては、笠木雅史が文化間の実験哲学研究に関する問題について論文を発表し、鈴木貴之が哲学における責任をめぐる議論の現状と、そこにおける実験哲学の意義について論文を発表した。また、鈴木真が実験哲学についての辞典項目を執筆した。さらに、来年度以降に本格的に研究を進める予定であるメタ哲学的観点からの哲学史の見直しに関しても、2017年8月に東京大学で研究会を開催し、小山虎氏が20世紀前半における分析哲学と科学哲学の関係について講演した。
著者
熊谷 孝三 天内 廣 太田原 美郎 西村 健司 森田 立美
出版者
公益社団法人日本放射線技術学会
雑誌
日本放射線技術學會雜誌 (ISSN:03694305)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.1072-1077, 2004-08-20
被引用文献数
2

医療に向けられる社会の評価はかつてなく厳しいものになっており,その厳しさを示す具体的なものとして,医療事故をめぐる紛争,訴訟の増加が挙げられる.また日常の診療においては,患者への危害のみならず,物損や患者からの苦情など病院のイメージダウンを引き起こす要因が潜んでいる.これらも医療事故,紛争に直結するおそれがあり,病院の経済的損失につながる.したがって,自分の職場ではどのようなリスクが存在しているのか,また実際に起こっているかを調査し,その内容を把握することが重要である.これらのことを受け,本報ではアンケート調査を実施し,放射線業務において発生している患者からの苦情・質問についてモダリティ別に事例集としてまとめたので報告する.
著者
太田 光輝 丁 林堅
出版者
関東東山病害虫研究会
雑誌
関東東山病害虫研究会年報 (ISSN:03888258)
巻号頁・発行日
vol.1994, no.41, pp.9-11, 1994

イネ育苗期に発生する苗立枯細菌病及びもみ枯細菌病の同時防除を想定して, 種子消毒及び土壌施用薬剤について検討した。その結果, 従来から防除効果が認められていたコサイドSD, スターナ水和剤, カスミン粒剤単用以外に, 種子消毒剤 (テクリードCフロアブル, ヘルシードT水和剤, スポルタックスターナSE, ベンレートT水和剤) と床土施用剤 (カスミン粒剤) との併用による防除効果が高いことが判明した。
著者
Ohta Asuka Yamamoto Yuuki Kamihata Hidenobu Lee Young Hoon Ichikawa Fusao Ohta Kazuchika Abe Yuriko Hoshino Naomi Kojima Masaaki Hayami Shinya オオタ アスカ ヤマモト ユウキ カミハタ ヒデノブ イチカワ フサオ オオタ カズチカ アベ ユリコ ホシノ ナオミ コジマ マサアキ ハヤミ シンヤ 太田 明日香 山本 裕貴 上畠 秀允 市川 聡夫 太田 和親 阿部 百合子 星野 直美 小島 正明 速水 真也
出版者
Elsevier
雑誌
Inorganic Chemistry Communications (ISSN:13877003)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.89-91, 2012-02
被引用文献数
12

The chiral and racemic oxovanadium(IV)salmmencomplexes, [VO(X)-(C16-salmmen)] (X =R(1),S(2), and rac(3); C16-salmmen = N,N'-monomethylenebis(5-hexadecyloxysalicylideneimine))containing 5-substituted alkoxy chains on aromaticrings were synthesized, and their mesomorphicbehaviorsand ferroelectric properties were alsoinvestigated. All complexes exhibited bothsmectic Aand chiral smectic C mesophasesabove 360 K, andtheyshowed ferroelectric properties in the chiral smectic Cmesophase.
著者
喜古 健敬 鳥塚 尚樹 太田 恵津子 永山 裕子 揚村 京子 今出 寿雄 藤川 康浩 菅沼 彰純 築舘 一男
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.38, pp.20183, 2011

【目的】非臨床安全性研究における薬剤性肝障害の早期予測・評価は,ヒトでの有害事象や開発中止等のリスク回避に向けての重要な課題である。近年,循環血中に存在する25塩基前後のmicroRNA(miRNA)が,既存の血中肝毒性マーカーであるALTやASTなどの血中酵素よりも鋭敏に肝毒性を評価するマーカーになりえると報告された。そこで本研究では,肝細胞壊死,胆汁うっ滞,フォスフォリピドーシスを誘発する化合物をラットに投与し,血漿miRNAの変動を解析した。【方法】8週齢の雄性Crl:CD(SD)ラットに肝細胞壊死誘発化合物としてアセトアミノフェン,ブロモベンゼン,四塩化炭素,胆汁うっ滞誘発化合物としてα-ナフチルイソチオシアナートを単回経口投与した。また,フォスフォリピドーシス誘発化合物として,アミオダロン,クロロキン,トリパラノール,フロキセチンを2週間反復経口投与した。ALTを含む生化学検査を行うとともに,マイクロアレイ(GeneChip miRNA Array)にて包括的に血漿miRNAを解析するとともに,特に注目すべき変動を示したmiRNAについて定量的PCR解析を実施した。【結果及び考察】肝細胞壊死化合物の投与により,miR-122およびmiR-192は,ALTの上昇が見られた用量で著明に増加し,さらにALT上昇が認められない用量でも増加した。また,ALT上昇は24時間後のみに見られた一方で,miR-122およびmiR-192は投与1時間後から上昇した。したがって,これらmiRNAはALTの増加と相関を示すのに加え,より早期に肝毒性を検出できることが示唆された。肝細胞壊死,胆汁うっ滞,フォスフォリピドーシス誘発化合物の比較では,それぞれのメカニズムで特異的に変化するmiRNAが複数見出された。以上より,血漿miRNAは,特異性と感度に優れた新規肝毒性マーカーとしての利用が期待された。
著者
加藤 千佳 太田 昇一
出版者
図学研究
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.103-108, 2007

葛飾北斎は, 国際的にも有名な日本を代表する絵師の1人である.彼は狩野派・土佐派・洋風画・漢画など様々な画風を学んだとされ, それらを吸収しながら彼独自の作風を作り上げた.北斎の構図は独創的であり, いくつかの著作の中でその構図の基礎を著している.「三ツワリ法」や「コンパスと定規を用いての作図法」を絵手本で紹介し, また遠近法と陰影を強調する手法を用いて「洋風木版画シリーズ」を描いている.本研究では, 彼の代表作である「冨嶽三十六景」の「神奈川沖浪裏」を対象に, 「神奈川沖浪裏」の芸術性を高めている重要な要因の1つが北斎独特の構図に因ることを, 「おしおくりはとうつうせんのづ」との関連性から検証した.さらに幾何学的観点から構図に潜む比の果たしている役割について考察を行い, 特に構図の要となる不変な黄金矩形が存在することを幾何学的に立証する.