著者
宮川 朗子
出版者
広島大学大学院文学研究科
雑誌
広島大学大学院文学研究科論集 (ISSN:13477013)
巻号頁・発行日
vol.69, pp.61-77, 2009-12

パンフレは、詩や小説よりも文学的ジャンルとは見做されにくいものの、フランス文学における雄弁術の伝統に位置づけられうるものであり、いつの時代にも愛読者を獲得してきた。また、近年の研究では、その作者のイデオロギーがいかなるものであれ、パンフレには、共通する攻撃の戦略や発表方法などがあることが明らかにされてきた。この点は、十九世紀後半で最も知られたパンフレといって過言でないゾラの«J'accuse...!(私は告発する...!)»と、ゾラが文壇に登場したころからの敵であり、このパンフレに反応し、以前よりもさらに強力なゾラに対する誹謗中傷をJe m'accuse...(『私は自分の罪を告発する...』)というタイトルの下にまとめたレオン・ブロワのパンフレについても確認できる。つまり、彼らの立ち位置の違いにもかかわらず、その攻撃は、ゾラが軍法会議ではなく軍人の人格攻撃をしたことや、ブロワが、«J'accuse...!»よりも、むしろゾラの小説『多産』を誹謗しながら、やがてゾラに限らず、政治家や文学者、新聞など四方八方にその攻撃の矛先をむけたことに認められる。つまり、どちらも敵の論に正面から対立する論をぶつけるというやり方ではなく、いわば、対立する敵の争点とは関係ない点を攻める方法を取り、その攻撃も次第に脱線してゆくのである。ところで、その一種卑怯な戦法は、逆説的ながら、ゾラがその後に発表する『四福音書』の小説の文体を準備し、理想社会を描くためのエクリチュールに転化させたように、あるいは、ブロワがひたすら下品な言葉で罵りながらも自らの信仰の真実に到達しようとしたように、理想世界観の記述へと容易に転化しうるのである。彼らの攻撃のエクリチュールは、理想への接近を探求し、果てしなく続けられる文体練習なのである。
著者
宮川 雅至
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.127, 2006

本研究では高速道路インターチェンジ(IC)の設置間隔を時間圏域を用いて評価する.高速道路が一直線に延び,一般道路上は直線距離で移動できるような単純なモデルを構築し,IC間隔と目的地および最寄りICまでの時間圏域との関係を把握する.そして,時間圏域の性質として,IC間隔の短縮によって目的地までの時間圏域は最寄りICまでの時間圏域に比べてより顕著に拡大することを明らかにする.次に,スマートICの導入によって時間圏域がどのように拡大するのかを観察する.スマートICとはETC専用のインターチェンジであり,導入に向けた社会実験が2004年から実施されている.そして,スマートICの導入効果は,IC間隔が長く一般道路の走行速度が低い地域で大きいことを示す.また,モデルから求めた時間圏域の面積で実際のスマートICの利用台数をある程度説明できることを確認する.
著者
綾田 練 白木 仁 福田 崇 竹村 雅裕 向井 直樹 宮川 俊平
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.125-130, 2007-02-01 (Released:2007-05-15)
参考文献数
9
被引用文献数
2 3

The purpose of this study was to investigate the pathologic changes of jumper's knee before and after jumping and effects of icing after jumping. Sixteen healthy college students and sixteen collegiate volleyball players with jumper's knee were divided into two groups by eight, without icing group and with icing group after jumping exercise. Without icing groups rested for 20 minutes, while with icing groups were treated with ice for 20 minutes after eighty times of jumping. Signal to noise ratio (SNR) and sectional area of patellar tendon with Magnetic Resonance Imaging and the tenderness of patellar tendon with visual analog scale were measured before and after exercise, following with or without icing and 24 and 48 hours later from the treatment. In jumper's knee group, significant increase was found in the SNR, sectional area of patellar tendon, and tenderness of patellar tendon after exercise compared to before exercise. In addition, in jumper's knee with icing group, significant decrease was found in the SNR, sectional area of patellar tendon after icing and 24 and 48 hours after icing, and the tenderness of patellar tendon after icing compared to after exercise. These results suggested that icing was an effective treatment for jumper's knee after exercise.
著者
川澄 未来子 塚田 敏彦 赤尾 美佳 宮川 博充
出版者
日本感性工学会
雑誌
日本感性工学会論文誌 (ISSN:18845258)
巻号頁・発行日
pp.TJSKE-D-20-00067, (Released:2021-07-21)
参考文献数
13

Nagoya Cochin is one of Japan’s famous chicken breeds and was also the first domestic commercial chicken. The eggshell is a pink cherry-blossom color, with white speckles on its surface. The purpose of this study is to develop an eggshell color index for quality control to improve the commercial value. This study consists of two experiments. In the first experiment, the eggshell color of sixty eggs was measured by a colorimeter TC-8600A, and a visual evaluation using photo images of each egg was conducted by fourteen visual inspection experts. They scored on a Likert scale of five steps on four criteria: attractiveness of color, attractiveness of white speckles distribution, overall attractiveness, and preference. The relationship between the eggshell color and the visual impression was analyzed on a Hunter Lab color space. In the second experiment, a range of color variations of eggshells were generated on a screen using Adobe Photoshop, and a visual evaluation of three hundred and fifteen egg images was conducted by seven experts. It is hoped the results from both experiments will be useful for agricultural producers to develop more attractive products and increase the commercial value of Nagoya Cochin chickens.
著者
宮川 経邦
出版者
日本植物病理學會
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.224-230, 1980
被引用文献数
27

ガラス室内の条件下で,接木接種によって<i>Citrus</i>および近縁植物におけるリクビン(アジア系グリーニング病)の病徴を観察した。<br> <i>Citrus</i>および<i>Fortunella</i>属幼実生または接木苗におけるリクビンの典型的な病徴は,成葉における発病初期の不規則な葉脈に沿った黄斑,さらに罹病度の進展にともなう黄化葉,ならびに節間短縮による小葉化,矮化症状の発現であった。これらの病徴は28~32Cの好適条件下においては接木接種後2~3カ月目から現われた。<br> 供試したカンキツ品種のなかで,ポンカンおよびオーランドタンゼロの病徴がとくに顕著で検定植物としての利用価値が高い。ついでスイートオレンジ,ウンシュウミカン,シークワシャーなどであった。サワーオレンジ,グレープフルーツ,セクストンタンゼロなどのCTV-SY反応型品種はリクビンによっても黄化,矮化症状を現わすが, CTV-SYによる病徴がより顕著に現われることから,被検試料にCTV-SYが保毒されるときは検定植物としては不適当である。<br> カラタチは外見上無病徴か,まれに軽い黄化葉を現わしたが,これらの実生苗にポンカン,スイートナレンジなどの感受性品種を接木すれば顕著なリクビンの病徴を現わした。ミカンキジラミの好適な宿主植物であるゲツキツは接木接種によって外見上感受性を示さなかった。
著者
宮川 泰明
出版者
日経BP社
雑誌
日経パソコン (ISSN:02879506)
巻号頁・発行日
no.717, pp.103-106, 2015-03-09

同じチップセットでも数倍もの価格差がある場合もある。台湾エイスーステック コンピューターの「Z97-DELUXE(NFC&WLC)」と「Z97-K」で見てみよう。実勢価格はそれぞれ4万円と1万4000円だ。 内容物を見ると、付属品の違いが目立つ。
著者
宮川 繁 ミヤガワ シゲル Shigeru Miyagawa
雑誌
メディア教育研究
巻号頁・発行日
no.12, pp.1-8, 2004

高速通信をベースにした双方向メディアが普及するにしたがって、「パーソナル・メディア」の出現という現象が起こっている。「パーソナル・メディア」は、「マスメディア」とは対照的に、ユーザーが双方向な場に、まさに双方向参加することで形成されるものであり、メディアの生産者と消費者の間に引かれた境界線が曖昧になってゆくような視点をもたらしてくれる。本論では、私がMITで製作した「スターフェスティバル」(starfestival.com)というプログラムを通じて、「パーソナル・メディア」のいくつかの特徴を解説する。「スターフェスティバル」では、プログラム内に準備されたモデルをベースにして、ユーザーは自分自身の視点を見つけ、自分だけのストーリーを作り出してゆくことができる。また、それをするために、様々な他のメディアの流用をすることもできる。このような自分のストーリー作りや、流用といった視点は、「パーソナル・メディア」が持つ重要な特徴である。
著者
松尾 卓見 宮川 守 斎藤 英毅
出版者
日本植物病理學會
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.860-864, 1986
被引用文献数
8

ニンニクの鱗茎腐敗による地上部枯死(病名:乾腐病)を起因する <i>Fusarium oxysporum</i>の分化型を知るためにユリ科に関係ある既知分化型のf. sp. <i>cepae</i>(タマネギ), f. sp. <i>tulipae</i>(チューリップ), f. sp. <i>asparagi</i>(アスパラガス), f. sp. <i>lilii</i>(ユリ), f. sp. <i>allii</i>(ラッキョウ)との相互接種検討を行った。ニンニク菌(長野県産)はニンニクに対し鱗茎付傷接種・ポット土壌接種とも明瞭な病原性を示したが,他の供試分化型菌は病原性を示さなかった。なおニンニク菌は上記ユリ科植物やグラジオラス,スイセンほか14植物に対して病原性を示さなかった。以上の結果からニンニク菌に対し<i>Fusarium oxysporum</i> Schl. f. sp. <i>garlic</i>なる新分化型名を与えたいと思う。
著者
宮川 裕二
出版者
法政大学公共政策研究科『公共政策志林』編集委員会
雑誌
公共政策志林 = Public policy and social governance (ISSN:21875790)
巻号頁・発行日
no.5, pp.29-41, 2017-03

「新しい公共」およびその類義語は,しばしばその多義性が指摘されてきた概念である。筆者はその「新しい公共」概念を,市場・市民社会・統治という3つのコンテキストから導いた6つのポジション類型,すなわちロールバック新自由主義,左派,参加型市民社会派,新国家主義,ロールアウト新自由主義,統治性研究という類型によって整理し,各代表的論者の文献や発言にあたりつつ,それぞれの性格を論じた。そしてその枠組みから,1990年代後半以降政府によって採用され,日本の新たな国家・社会の改革・形成指針として大きな影響を及ぼしてきた「新しい公共(空間)」政策言説を分析し,以下のような見解を得た。それは,「新しい公共(空間)」政策言説とは,どのポジションが主調を成したのかによって揺れを伴ったものとなっており,第1期:ロールアウト新自由主義型言説の形成,第2期:ロールバック新自由主義型言説の隆盛,第3期:ロールアウト新自由主義型言説の実現,第4期:「新しい公共(空間)」政策言説の停滞,として時期区分することが可能である,というものである。そして最後に,ロールアウト新自由主義とその言説―具体的には主に松井孝治が提唱・推進した「公共性の空間」と「新しい公共」―は,従前の研究では看過されがちであったことに触れ,その問題構成を浮き彫りにする統治性研究の重要性について言及した。
著者
髙松 俊介 宮川 誠一郎 佐藤 久弥 鈴木 航 西澤 剛 中村 雅美 梅田 宏孝 崔 昌五 加藤 京一 中澤 靖夫 池田 純
出版者
公益社団法人 日本放射線技術学会
雑誌
日本放射線技術学会雑誌 (ISSN:03694305)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.549-555, 2014 (Released:2014-06-20)
参考文献数
13

The hamate bone, one of the carpal (wrist) bones, has a large uncinate process protruding from the palm side. In sports such as golf and tennis, the hamate bone can break if is subjected to a high external force, such as from the handle of a racquet or club. At our hospital we take X-ray images of the hamate bone from two directions: an axial image through the carpal tunnel and an image at the base of the hamate hook (conventional method). While the conventional method makes it easy to create images of the base of the hamate hook, the patient may suffer pain during image-taking because the hamate bone is pulled to cause radial flexion. We therefore investigated a method of imaging that would create three-dimensional computed tomography (3DCT) images of the base of the hamate hook in which the patient would only have to only rotate the wrist externally and elevate the fore-arm without any radial flexion. Our results suggest that it is possible to obtain images of the base of the hamate hook as clear as those acquired using the conventional method with the patient in a comfortable and painless position taking images at an external rotation angle of 50.3° and a forearm elevation angle of 20.3°.
著者
宮川 智子 中山 徹
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.253-258, 2000-10-25 (Released:2018-02-01)
参考文献数
7

This paper aims to investigated twenty-eight cases of treatment and redevelopment of contaminated land such as brownfield site from the view of care for the public consultation, and decision-making meetings are practiced by local governments, and care for the public is clearly seen as one of the core element in the approach of treating and redeveloping contaminated land. The presence of residential groups and environmental groups is found to be effective to promote public participation. Especially, residential groups have promoted for the participation to the meeting, which is the most direct and active form of public participation. Citizen participation is found to be promoted by environmental groups and Groundwork Trust.