著者
宮川 渉
出版者
日本音楽表現学会
雑誌
音楽表現学 (ISSN:13489038)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.1-20, 2018-11-30 (Released:2020-05-25)
参考文献数
42

武満徹の《秋庭歌一具》は雅楽の重要な作品として知られているが、この作品を書く上で下地となった作品が二 曲存在すると考えられる。それは《ランドスケープ》と《地平線のドーリア》である。本稿はこれらの三作品において、どのようなかたちで雅楽の要素が現れているかを検証することにより、これら三作品の共通性を明らかにすることを目的とする。そのためにこれらの作品における音組織と反復性の二点に焦点を当てて分析に取り組んだ。また《地平線のドーリア》には、 ジャズ・ミュージシャンのジョージ・ラッセルが提唱した理論であるリディアン・クロマティック・コンセプトからの強い影響もあると武満自身が語っており、武満は、この理論を用いてジャズよりも雅楽の響きに近いものを追求したと考えられる。 その点も合わせて検証した。
著者
岩澤 絵里子 宮川 浩 菊池 健太郎 新見 晶子 原 まさ子 鎌谷 直之
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.210-218, 2007 (Released:2007-05-29)
参考文献数
30
被引用文献数
5 5

原発性胆汁性肝硬変(PBC)は,自己免疫異常に基づく肝疾患で,各種膠原病を少なからず合併する.しかしながら,各種膠原病におけるPBCの合併については不明な点も少なくない.そこで今回,各種膠原病を対象として,PBCの血清診断に必須の抗ミトコンドリア抗体(AMA)を検索し,その臨床的意義を検討した.各種膠原病と診断された302例を対象として,間接蛍光抗体法とELISA法にてAMAをスクリーニングし,さらにWestern blot法にてAMAの解析を行った.AMAは302例中14例(4.6%)と比較的高率に検出され,疾患別には,強皮症で4例,全身性エリテマトーデスで3例,慢性関節リウマチと血管炎で各2例に検出された.PDC-E2抗体(74kDa)は6例に検出されたに過ぎなかったが,BCOADC-E2抗体(50kDa)は10例と多数に検出された.この14例のうち6例に,抗セントロメア抗体が検出された.さらに,14例中9例は経過中PBCの合併は疑われておらず,今回の検討で初めてAMA陽性と判明した症例であった.膠原病の診療においてもPBCの合併を念頭に入れていく必要があると結論された.
著者
千葉 慎一 関屋 曻 宮川 哲夫
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.58-67, 2019 (Released:2019-08-10)
参考文献数
26

脊柱の運動は上肢挙上運動に直接的に影響し,また,肩甲上腕関節と肩甲胸郭関節の協調運動に間接的に影響すると考えられ,その運動機能の低下は肩関節障害を招く原因となりうる.したがって,脊柱の運動機能の改善を図ることが,肩関節疾患患者に対する治療手段の一つとなることが予想される.本研究の目的は,①上肢挙上運動時の胸椎,腰椎,骨盤運動の関与をキネマティクス的に明らかとすること,②各セグメント間の協調関係を明らかにすることである.対象は肩関節および体幹に外傷や疾患の既往のない健常者(男性9名,年齢:22歳〜37歳,平均 28.4±5.8歳)である.被験者に自然な椅座位で肩関節の両側同時屈曲および同時外転を最終可動域まで挙上させ,VICON社製三次元動作解析装置(VICON MXシステム)を用いて肩関節屈曲および外転運動時の胸椎伸展角度,腰椎伸展角度および骨盤前傾角度を計測した.統計学的処理は,肩関節屈曲角度と外転角度を要因として,胸椎伸展角度,腰椎伸展角度,骨盤前傾角度に関する一要因反復測定分散分析を行った.また,ピアソンの相関係数を用いて各セグメント間の相関分析を行った.分散分析の結果,胸椎は肩関節屈曲運動に伴い2次関数的に伸展し,最終的に約7°伸展し,胸椎伸展角度に上肢屈曲角度の主効果が認められた.腰椎は屈曲75°までに約3°伸展したが,屈曲80°から140°までの間には約2°屈曲し,上方凸の2次関数的変化を示し,腰椎角度に屈曲角度の主効果が認められた.骨盤は運動前半にはほとんど動かず,後半にわずかに前傾し,骨盤前傾角度に肩関節屈曲角度の主効果が認められた.肩関節外転運動では,胸椎は運動開始直後から直線的に約10°伸展し,胸椎伸展角度に肩関節外転角度の主効果が認められた.腰椎と骨盤には肩外転角度との関係は認められなかった.相関分析の結果,肩関節屈曲運動において,肩関節屈曲動作中に腰椎が屈曲するときに骨盤は前傾する傾向(r=−0.380)を,胸椎が伸展するときに腰椎は屈曲する傾向(r=−0.618)を,胸椎が伸展するときに骨盤は前傾する傾向(r=0.688)を示した.肩関節外転運動において,腰椎は屈曲するときに骨盤が前傾する傾向(r=−0.463),胸椎が伸展するときに腰椎は屈曲する傾向(r=−0.306),胸椎が伸展するときに骨盤が前傾する傾向(r=0.218)が認められた.上肢挙上動作には胸椎,腰椎,および骨盤の運動がそれぞれ関連しあいながら関与することが確認された.特に胸椎の伸展運動は上肢挙上運動に直接的に寄与するとともに,肩甲骨の運動に必要な運動面を形成することに寄与するが,腰椎および骨盤の運動は,上肢挙上に伴う上半身重心位置の変化に対応するための代償的運動であることが示唆された.
著者
松原 直義 宮元 敬範 丹野 史朗 宮川 淳 阿部 祐也 横尾 望 金子 和樹 高橋 大志 中田 浩一
出版者
公益社団法人 自動車技術会
雑誌
自動車技術会論文集 (ISSN:02878321)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.100-105, 2023 (Released:2023-01-25)
参考文献数
12

カーボンニュートラル社会の実現に向けて様々な産業の脱炭素化に資する水素が注目されており,運輸部門においてはFCEVに加えて水素エンジンの検討がなされている.水素はガソリンと比較して着火しやすいという特性があるため異常燃焼が生じやすい.本論文では,水素特有の異常燃焼の発生メカニズムの解析を実施した.
著者
伊藤 尚 前田 義信 谷 賢太朗 林 豊彦 宮川 道夫
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.117-130, 2012 (Released:2013-03-18)
参考文献数
12
被引用文献数
2

ジニ係数は標本間格差を評価する代表的な指標のひとつである.しかし,ジニ係数は全標本が非負であることを前提としているため,負の標本を含む標本間格差を評価することは出来ない.Chenらはこの場合でも標本間格差を評価できるようにするためジニ係数の拡張を試みた.しかし彼らの提案した拡張ジニ係数は全標本の合計が0以下である場合において標本間格差を評価することが不可能であった.そこで本論文では,負の標本を含む場合および全標本の合計が0以下の場合においても標本間格差を評価するために,ジニ係数の幾何的表現の拡張を提案する.提案された拡張ジニ係数では負の標本を含む場合および全標本の合計が0以下の場合においても標本間格差を評価することが可能であり,全標本が非負である場合において拡張ジニ係数は従来のジニ係数と一致する.さらに,拡張ジニ係数の代数的表現を検討し,得られた代数的表現から本論文で提案する拡張ジニ係数が母集団原理と拡張移転原理を満たすことを示す.
著者
小島 晋爾 勝見 則和 宮川 浩 奥村 猛 植田 貴宣
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 B編 (ISSN:03875016)
巻号頁・発行日
vol.65, no.638, pp.3523-3529, 1999-10-25 (Released:2008-03-28)
参考文献数
9
被引用文献数
2 1

The slant-shaped squish chamber recently developed by our company improves charging efficiency and raises compression ratio of its gasoline-engines. We clarified its knock suppression mechanism using rapid compression-and-expansion machine, autoignition simulation, and 3-dimensional turbulent flame propagation simulation. The results indicate the following: 1. Timing of flame acceleration is a key of knock suppression, that is, optimum timing of flame acceleration exists in the latter half of combustion, because expansion stroke suppresses the temperature rise in the end gas. This universal mechanism improves knock-limited ignition timing and compression ratio of the above engines. 2. A cause of the flame acceleration in the slant-shaped squish chamber is strengthened turbulence occurring in front of the flame and in reverse squish flow which separates at the squish lip. 3. The reverse squish flow, which is well known to be induced by the suction due to the larger expansion ratio of squish region than the other region of combustion chamber, is enhanced by the thermal expansion of burning mixture.
著者
立花 誠 大久保 範聡 勝間 進 諸橋 憲一郎 菊池 潔 長尾 恒治 深見 真紀 田中 実 宮川 信一
出版者
大阪大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2017-06-30

本研究領域では「性スペクトラム」という新たな概念のもとに、性を再定義することを目指す。領域の全ての研究者が「性はこれまで言われれてきたような二項対立的なものではなく、連続的な表現型である」という視点を共有し、上記の領域目標の達成にむけて研究を推進する。このような目標のもとで、本領域では領域代表の下に総括班を置き、領域活動をサポートしていく2020年9月25日から10月23日にかけて、自己紹介を兼ねた公募班員のセミナーを開催した。新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、オンラインでの発表となった。9月25日、10月2日、16日、23日の4日間で、全16名が研究発表を行った。活発な議論が交わされ、オンラインにもかかわらず大いに盛りあがった。2020年12月21日(月)から23日(水)までの3日間、東京農業大学世田谷キャンパスにて、新学術領域研究「配偶子インテグリティの構築」・「全能性プログラム:デコーディングからデザインへ」合同公開シンポジウムが開催され、立花が特別講演を行った。2021年3月25日(木)と26日(金)の2日間、第4回領域会議をオンラインにて開催した。本会議では、計画研究の研究代表者・分担者のほか、班友の3名、そして新たに公募研究班に加わった研究者1名も研究発表を行った。また、領域外からも講師1名を招き、ショウジョウバエ類の性染色体進化に関してご講演をいただいた。対面方式での会議の開催が叶わなかったが、非常に活発な議論が交わされ、各班員が順調に成果を上げていることを確認した。
著者
原 毅 高橋 良介 尾原 裕康 岩室 宏一 下地 一彰 志村 有永 佐藤 達哉 宮川 慶 奥田 貴俊 野尻 英俊
出版者
一般社団法人 日本脊椎脊髄病学会
雑誌
Journal of Spine Research (ISSN:18847137)
巻号頁・発行日
vol.12, no.7, pp.926-932, 2021-07-20 (Released:2021-07-20)
参考文献数
9

DuragenⓇは多孔性のcollagen matrixにより形成されている吸収性の人工硬膜で,内部に血小板が浸潤することでフィブリン塊による膜を形成し,早期の髄液漏防止効果が得られる.DuragenⓇの脊椎脊髄手術における髄液漏防止効果について,後方視的に検討した.DuragenⓇを用いた脊椎脊髄手術34例中,髄液漏発生は2例であった.DuragenⓇは脊椎脊髄手術において髄液漏予防に有用と考えられる.水との親和性により様々な使用方法が期待できる素材と考える.
著者
難波 敦子 成 暁 宮川 金二郎
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.187-191, 1998-02-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
5

An investigation of post-heated and fermented teas (pickled teas) in Yunnan, China revealed that Liang-pan tea (a salad tea) which is considered to be made by Jinuo-zu in South Yunnan, is widely made by Thai-zu in Dehong Thai-zu Jingpo-zu Province of Yunnan. Liang-pan tea is prepared from fresh raw tea leaves, dried tea or Lephet-so, which is one of the post-heated and fermented teas of Myanmar, with salt, various spices, vegetables and oils being added. Liang-pan tea is just like a salad tea, and it is presumed that this tea originated as an edible food material, before emphasis was placed on drinking.
著者
宮川 長二 羽田 紘一 後藤 公美 宮原 鉄洲
出版者
公益社団法人 日本金属学会
雑誌
日本金属学会誌 (ISSN:00214876)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.1168-1176, 1989 (Released:2008-04-04)
参考文献数
26
被引用文献数
2 1

Small particles of Fe3C (cementite) in an acicular shape (0.2 μm in length, 10/1 in axial ratio) have been synthesized by heating acicular shaped powders of iron (α-Fe) in a flow of carbon monoxide or/and hydrogen gas mixture. X-ray analyses, electron microscopy, magnetic measurements and Mössbauer spectroscopy are employed for the characterizations. The chemical treatment required to obtain single phase Fe3C particles has been studied in the carburizing temperature range from 623 to 873 K. The saturation magnetization (σs) and intrinsic coercive force (iHc) attained are around 138×10−6 Wb·m·kg−1 (110 emu·g−1) and 51.7 kA·m−1 (650 Oe), respectively. Possible applications for magnetic recording powders are found for Fe3C particles synthesized at 823 K and above through a durability test of magnetic properties, by placing the particles in air of 333 K-90% relative humidity for a prolonged time.
著者
佐久間 拓也 池辺 正典 石井 信明 川合 康央 釈氏 孝浩 宮川 裕之
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータと教育(CE)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.64(2008-CE-095), pp.45-48, 2008-07-05

以前に行われていた入学課題では出題や提出が難しく,また入学前に入学予定者との交流は皆無であった.今回入学予定者を対象に SNS を構築して,入学前課題の出題や提出および入学前での教員・入学予定者・在学生間の交流を行った.本稿はこの報告である.
著者
深尾 京司 宮川 努 川口 大司 阿部 修人 小塩 隆士 杉原 茂 森川 正之 乾 友彦
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2016-05-31

無形資産推計を含む新しい日本産業生産性(JIP)データベース等を完成させ、OECDやEU KLEMSなど海外組織と連携しながらサービス産業生産性の決定要因を分析した。その結果、近年のサービス産業における労働生産性停滞の主因が人的・物的資本蓄積の著しい低迷や人材の不活用、市場の淘汰機能の不足にあることを明らかにした。また医療、教育、建設、住宅等のアウトプットの質を計測する手法を開発し、非効率性の原因を探った。4つのテーマについて主に以下の分析を行った。①統括・計測:サービス産業の生産性計測と生産性決定要因の分析、各産業の特性を考慮した上での非市場型サービスの質の計測、ミクロデータによる生産性動学分析、②生産と消費の同時性:応募時に計画した、余暇とサービス消費の不可分性を考慮した効用関数の推計、③資本蓄積:産業レベルの無形資産データの作成とそれを利用した分析、および無形資産と有形資産間の補完性の分析、④労働・人的資本:教育や医療サービスが労働の質を高めるメカニズムの研究と、個人の生産性計測、サービス購入と労働供給の関係の分析。これらの具体的な成果は、下記に纏めた。深尾京司編(2021)『サービス産業の生産性と日本経済:JIPデータベースによる実証分析と提言』東京大学出版会、423頁;第1章深尾他、第2章深尾・牧野、第3章宮川・石川、第4章川口・川田、第5章森川、第6章阿部・稲倉・小原、第7章杉原・川淵、第8章乾・池田・柿埜、第9章小塩他、第10章深尾他、第11章中島、終章深尾。
著者
宮川 幸子
出版者
日本ベンチャー学会
雑誌
日本ベンチャー学会誌 (ISSN:18834949)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.25-39, 2021-03-15 (Released:2022-12-01)

本論文は、中国シャオミの事例研究に基づき、後発のスタートアップ企業の短期的な成長の原動力となったユーザーイノベーションの独創的な仕組みについて考察したものである。シャオミが、後発だったにもかかわらず短期間で急速に成長できた理由は、複数のコミュニティに属するリードユーザーが各コミュニティに属する人々の情報を集約する仕組みを作ったことにより、持続的にコミュニティへのアク セスと製品の機能向上が進み、リードユーザーのロイヤルティ向上とともに新規顧客獲得の促進につながった結果、短期間に大量の顧客を獲得できたからであった。そこでは企業が一般ユーザーに直接アプローチするのではなく、リードユーザーに一般ユーザーのコミュニティを活性化させ、そこで生まれた情報を、リードユーザーを介して企業に還流させるという間接的マネジメントが行われていた。
著者
難波 敦子 宮川 金二郎 大森 正司 加藤 みゆき 田村 朝子 斎藤 ひろみ
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.49, no.8, pp.907-915, 1998-08-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
25

This report continues our study of post-heated and fermented tea which are produced in the northern area of South-East Asia and Japan. A search of Chinese literature for Suancha (a sour, non-salted pickled tea) reported it to be produced by hill tribes in the south-west of Yunnan province in China by a two-step fermentation process (under aerobic and anaerobic conditions) like Goishi-cha in Japan. Our study, however, clarifies that the present Suanchas are produced by a one-step fermentation process under anaerobic conditions like Lepet-so in Myanmar, Miang in Thailand and Laos, and Awa-bancha in Japan. Suancha is now produced by the Bulangzu living near Mt. Bulang in Xysanbanna and by the Daizu in Dehong province of Yunnan. Edible pickled teas, including Liangpan-tea and Yancha that is the other kinds of pickled tea in Yunnan are also discussed.
著者
松本 光太郎 菊池 健太郎 守時 由起 茂木 千代子 山田 はな恵 綱島 弘道 小澤 範高 馬淵 正敏 梶山 祐介 土井 晋平 宮川 浩 安田 一朗
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.179-185, 2015-05-20 (Released:2015-05-29)
参考文献数
13
被引用文献数
2 2

当院における敗血症性肝障害の臨床的特徴をretrospectiveに調査し,発症早期に予後予測に役立つ因子を検討した.過去1年間の敗血症116例中,敗血症性肝障害を61例(52.6%)に認めた.敗血症性肝障害を合併した例は非合併例に比べて死亡率が有意に高かった.敗血症性肝障害合併例は非合併例と比較してDICの併発例が多く,DIC非併発例でも血清FDP, D-dimer値が高値であることから,敗血症性肝障害の発生にDICが関与していると考えられた.またDICを併発した敗血症性肝障害における死亡例と生存例の比較では死亡例で血清ALPが有意に高値であり,γ-GTPも死亡率に影響を与える可能性があった.敗血症性肝障害例において総ビリルビン値の推移を生存例と死亡例で比較したところ,死亡例で有意に総ビリルビン値の上昇を認め,経過中に黄疸を呈し死亡した例は10例であった.また死亡した10例中,3例からMRSAが検出されており,菌種別の死亡率ではMRSAが最も高かった.予後予測因子について多変量解析(ロジスティック回帰分析)で検討した結果,敗血症性肝障害発生時においてはALP高値が唯一の予後予測因子であった.以上から敗血症性肝障害の発症時に血清ALP, γ-GTPが高値であること,またMRSAが検出されることは,早期の予後予測マーカーになる可能性があると考えられた.
著者
宮川 俊夫 渡辺 信 横山 明 黒田 貴一
出版者
社団法人 日本写真学会
雑誌
日本写真学会誌 (ISSN:03695662)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.168-172, 1972-06-30 (Released:2011-08-11)
参考文献数
8

The light fading rate of magenta dye, 4-aza-(p-diethyl-aminophenyl)-pheny1-3-methyl-pyrazole-5-one, was studied. The dye was prepared by the method of coupling development, and extracted from the reaction product. Then, it was dispersed into a cellulose acetate film.According with spectral fading of the dye, absorptions of 270 nm and 540 nm contributed to the fading reaction each other, but 440 nm did not.The kinetic expression of fading rate for 540 nm light was as follows.-dC/dt= (K/C0)ΔI·CK: rate constant Co: initial concentration of the dyeI: absorbed light C: concentration of the dye
著者
梅田 剛利 太田 剛 浅岡 壮平 森 康浩 嶋谷 頼毅 手島 信貴 宮川 創 馬場 武志
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.88, no.1, pp.19-24, 2017-02-25 (Released:2017-04-06)
参考文献数
19
被引用文献数
1

ブナシメジ廃菌床(以下,廃菌床)が泌乳牛用発酵混合飼料(発酵TMR)の原料として利用可能であるかを検討するため,ホルスタイン種泌乳牛4頭に廃菌床を乾物あたり8%含む発酵TMR(廃菌床区)あるいは含まない発酵TMR(対照区)を給与した1期14日間の試験を行い,2期目には処理を反転した.発酵TMRは発酵品質を調査し,TMRの粗濃比,水分含量,有機物含量,粗タンパク質含量およびNDFom含量は両区でそろえた.廃菌床を添加した発酵TMRの発酵品質は良好であり,廃菌床区の乳成分は乳タンパク質率が対照区と比べて低かった(P<0.01)ものの,乳タンパク質生産量は有意差が認められず,乳脂肪率と乳糖率は対照区と比べて有意差が認められなかった.廃菌床区の乾物摂取量および乳量は対照区と比べて有意差が認められなかった.これらのことから,ブナシメジ廃菌床は発酵TMRの原料としての利用可能性が示された.
著者
宮川 真一
出版者
ロシア・東欧学会
雑誌
ロシア・東欧研究 (ISSN:13486497)
巻号頁・発行日
vol.2018, no.47, pp.131-143, 2018 (Released:2019-10-08)
参考文献数
40

In 1949, international peace campaign was formed systematically. The Russian Orthodox Church participated in the international peace movement and played a leading role. In the same year, a column “In Defense of Peace” was newly established in the “Journal of the Moscow Patriarchate”. In the “Peace” column, information on the peace campaign and the Russian Orthodox Church's participation in that movement and the most important documents of the World Peace Council began to be published. However, no specialized research on the peace activities of the Russian Orthodox Church in the 20th century exists in Russia, and this theme has not been reviewed and evaluated academically.In this paper “war and peace” image presented by the Russian Orthodox Church in early postwar years is considered, analyzing the articles published in the “Peace” column in the “Journal”. The followings are observed as features of the “Peace” column. It closely reflects the trend of the peace organizations both inside and outside the Soviet Union, a wide variety of articles are published primarily as editorials, and authors consist mainly of the Orthodox high priests, such as Metropolitan Nikolai. In addition, as character of the “Peace” column, the most articles relate on the Christian Church and the world peace organizations, about half of the articles include direct criticisms directed toward the Western countries and direct praises to Stalin and the Soviet Union.Nikolai was a leader of peace activities in the Russian Orthodox Church. He talked about Christian church. He insisted that the Russian Orthodox Church contributed to peace, and that the Christian world had to cooperate each other. In addition, Nicolai wrote about world peace organizations. He reported favorably the condition of the various peace movements including the World Peace Council and praised Stalin and the Soviet Union. Furthermore, Nikolai preached about international relations. While striving for peace activities such as the award of the International Stalin Peace Prize, he condemned fighting acts of the Western countries including the United States of America in the Korean war.In this way, the “Peace” column is filled with the voice of peace as a Christian. However, the Orthodox Churches are praised in the field of Christian church, the Eastern countries are praised in the field of world peace organizations, and the Western countries are criticized in the field of international relations. The "war and peace" image presented by the Russian Orthodox Church in the early postwar period consists of an image of the Orthodox Church which serves peace, an image of the peace-loving Eastern countries, and a militant image of the Western countries. “Journal” actively discussed peace, but it reflected the intention of the Soviet state under the Cold War of those days.