著者
小山 秀美 加世田 景示 上西 愼茂 今村 清人 坂元 信一 大島 一郎 片平 清美 河邊 弘太郎 岡本 新 小林 栄治 下桐 猛
出版者
日本動物遺伝育種学会
雑誌
動物遺伝育種研究 (ISSN:13459961)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.3-7, 2019 (Released:2020-01-28)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

黒毛和種で発生する白斑は、品種の特性に負の影響を与え、一部で経済的損失となる損徴の1 つである。本研究では、Fontanesi ら(2012)によって西欧品種で白斑の有無と関連があると報告されたMITF 遺伝子の変異(g.32386957A&gyT )が黒毛和種でも存在することを確認し、白斑の有無との関連性を検討した。材料には鹿児島県産黒毛和種79頭(正常40 頭および白斑39 頭)のゲノムDNA を供し、ダイレクトシークエンス法および対立遺伝子特異的PCR法(AS PCR)により当該変異の確認および遺伝子型判定を行った。その結果、黒毛和種でも当該変異の存在を確認できた。さらに、これらを白斑群と正常群に分け、遺伝子頻度についてカイ二乗検定を試みた結果、両群間の遺伝子型構成に高度な有意差があり(P = 1.53 × 10-6)、当該変異が黒毛和種の白斑の有無にも強く関連することを示した。しかし、一部で例外が確認されたことから、当該変異だけでは白斑発生の全てを説明できないことも示唆された。
著者
小山 良太
出版者
公益財団法人 日本学術協力財団
雑誌
学術の動向 (ISSN:13423363)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.4_36-4_40, 2022-04-01 (Released:2022-08-25)
参考文献数
2

2021年4月、政府は廃炉に伴う汚染水を処理し、トリチウム水の形で海洋放出することを決めた。ALPS小委員会では海洋放出すれば「社会的影響は特に大きくなる」と指摘されていた。それを、政府が決めるのであれば、①元の汚染水と処理水との違いやトリチウムについての国民の理解が深まる、②それを踏まえて地域の漁業者らと対策を協議したうえで合意に至る、③今も輸入を制限している周辺諸国に日本政府が説明して理解を得る、という三つの課題を達成する必要がある。福島県漁業は、2021年3月に試験操業を終了し、同年4月1日に本格操業に向けて新たなスタートしたばかりであり、最悪のタイミングであった。廃炉を進めることと復興を妨げることが同時に行われてはならない。被害地に更なる困難を与え続けることにならない政策が必要である。
著者
青山 雅史 小山 拓志 宇根 寛
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.87, no.2, pp.128-142, 2014-03-01 (Released:2019-07-12)
参考文献数
48
被引用文献数
2 1

2011年東北地方太平洋沖地震で生じた利根川下流低地における液状化被害の分布を詳細に示した.本地域では河道変遷の経緯や旧河道・旧湖沼の埋立て年代が明らかなため,液状化被害発生地点と地形や土地履歴との関係を詳細に検討できる.江戸期以降の利根川改修工事によって本川から切り離された旧河道や,破堤時の洗掘で形成された旧湖沼などが,明治後期以降に利根川の浚渫砂を用いて埋め立てられ,若齢の地盤が形成された地域において,高密度に液状化被害が生じた.また,戸建家屋や電柱,ブロック塀の沈下・傾動が多数生じたが,地下埋設物の顕著な浮き上がり被害は少なかった.1960年代までに埋立てが完了した旧河道・旧湖沼では,埋立て年代が新しいほど単位面積当たりの液状化被害発生数が多く,従来の知見とも合致した.液状化被害の発生には微地形分布のみならず,地形・地盤の発達過程や人為的改変の経緯などの土地履歴が影響を与えていたといえる.
著者
小山 なつ
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.47-55, 2022-04-25 (Released:2022-04-25)
参考文献数
28

神経系における「抑制機構」は,単に伝導・伝達されつつある信号の遮断や減弱を引き起こすとは限らない.感覚の情報処理における「側方抑制」は,感覚情報のコントラストを上げる仕組みに深く関わっている.カブトガニの複眼の研究で最初に報告され,ヒトでは網膜における視細胞と水平細胞の間の相反性シナプスによる側方抑制が,双極細胞の受容野を限局させる役割を果たしている.体性感覚系においても類似の抑制機構があり,どこが痛いのかをピンポイントに判別できることに結びつくとも考えられる.中脳中心灰白質(PAG)は単なる痛みの制御に関わる神経核ではなく,多彩な機能がある.PAGは脳の広汎な領域と双方向性の線維連絡があり,睡眠・覚醒や性行動にも関与し,循環系,呼吸器系,体温調節などの自律神経系を介する制御に関わる.背外側PAGが関与するノルアドレナリン神経系を介する下行性の疼痛制御系も,腹外側PAGが関与するセロトニン神経系を介する疼痛制御系も,抑制系だけでなく,促進系として機能する可能性がある.痛みの発現も下行性疼痛制御系も共に,侵害刺激に対抗するための生体防御機構の一部であり,脳内に何重にも存在するホメオスタシスを維持するための神経回路によって引き起こされると考えられる.
著者
小倉 悠紀 小山 純一 福原 忠雄
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.397-401, 2012-05-05 (Released:2012-06-07)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

肌状態と過酸化脂質との関連を調べるため,Diphenyl-1-pyrenylphosphine(DPPP)を蛍光試薬としフローインジェクション分析(FIA)システムを用いた高感度で迅速なヒト皮脂中の過酸化脂質分析法を開発した.リノール酸メチルにブラックライトを照射してリノール酸メチルヒドロペルオキシド(MLHP)を得て,固相抽出法を用いて精製した後,NMRを用いてMLHPの純度を確認し過酸化脂質標準品とした.FIA分析条件の最適化を行い,確立したシステムの検出限界は0.51 pmol,定量限界は1.1 pmolであり,分析時間は10分であった.さらに,確立した前処理法により作成したろ紙を用いてヒトの微小部分から皮脂を採取し,そのろ紙から皮脂中の過酸化脂質を抽出する方法を開発した.ろ紙を用いたときの定量限界は3.8 pmolであった.開発した方法を用いて24名のヒト皮膚上の皮脂中過酸化脂質を分析し,実際ヒトを用いた試験への適用が可能であることが確認され,個人間の差が大きいことが明らかとなった.
著者
小山 裕 コヤマ ユタカ Yutaka Koyama
雑誌
嘉悦大学研究論集
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.115-131, 2009-03-30

平成20年12月、明治以来100年以上続いた民法第34条に基づく公益法人制度が、準則主義と公益認定による新たな制度に衣替えした。この世紀の改革とも言える公益法人制度改革がいかに始まったのかについては、あまり知られていない。公益法人制度改革は、平成12年の「行政改革大綱」によるものとしばしば誤解されるが、実はそこで予定されていたものではなく、内閣官房行政改革推進事務局公益法人室スタッフの問題提起によって、新たに政府の方針として浮上したものである。その背景には、先行して行われていた行政委託型公益法人に関わる改革、KSD事件を契機とする国所管公益法人の総点検及び中間法人法の成立があるが、この時代背景がなければ、公益法人という官の世界では「重宝な道具」と考えられていた制度を、官の裁量による公益の認定と法人設立の許可(主務官庁制)から、準則による法人格の取得(準則主義)と第三者委員会による公益性認定へという劇的な変革が行われることはなかったであろう。本稿は、「行政改革大綱」から公益法人制度抜本改革への取組みが閣議決定された平成14年3月までの内閣官房の動きを示したものであるが、これは改革前史のほんの序章にすぎない。
著者
加藤 大輔 小山 隆夫 中野 雅子 新井 高 前田 伸子
出版者
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.58-65, 2010-02-28 (Released:2018-03-29)
参考文献数
49
被引用文献数
1

根管治療は根管の複雑性や治療の困難さから,しばしば失敗することがある.治療成績向上のためには,根管消毒剤の使用が不可欠とされている.しかしながら,根管内に残存する微生物に対するこれらの消毒剤の抗菌性の有効性は確認されていない.そこで,本研究ではin vitro根管モデルを使用して,難治性根尖性歯周炎の歯に残存することが知られている微生物に対する根管消毒剤の抗菌性の有効性を調べた.被験微生物は,Enterococcus faecalis,Candida albicans,Pseudomonas aeruginosa,Staphylococcus aureusを用いた.また,根管消毒剤にはホルムクレゾール(FC),カンフル・カルボール(CC),水酸化カルシウム(Ca(OH)2),ヨードチンキ(J),メトロニダゾール,ミノサイクリンおよびシプロキサシンの3種混合薬剤(3Mix)を使用した.根尖病巣実験モデルは,根管を90号サイズに形成し,病巣部に相当する部位を半球状に形成した.微生物を含んだ病巣部は根尖から離し,生理食塩水寒天で挟み,サンドイッチ様の3層構造とした.それぞれ37℃で1時間,1,3,7日間薬剤を作用させた後,根尖部より無菌的に寒天を採取した.寒天はトリプティックソイ(TS)液体培地にホモジナイズし,適宜希釈してTS寒天培地上で37℃にて好気培養を行い,出現したコロニー数(log cfu/ml)を計測した.その結果,FCが4種の微生物すべてに十分な抗菌性を有し,それ以外の薬剤は,FCに次いで,J,Ca(OH)2の順で抗菌性をもつこと,また,CCはP.aeruginosa以外の3菌種には抗菌性をもっていないこと,3Mixは4種の微生物すべてに十分な抗菌性をもっていないことが示された.この研究から,FCが最も有効であることが示唆された.
著者
河野 功 杢野 正明 鈴木 孝 小山 浩 功刀 信
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会論文集 (ISSN:13446460)
巻号頁・発行日
vol.50, no.578, pp.95, 2002 (Released:2003-08-19)
参考文献数
9
被引用文献数
7 7

ETS–VII is a test satellite to perform in-orbit demonstration of autonomous rendezvous docking (RVD) technology, which will be necessary for advanced space activities in the early 21st century. ETS–VII performed three RVD experiment flights, and verified all technical items. ETS–VII demonstrated first autonomous RVD between unmanned vehicles, and remote piloted rendezvous flight position accuracy at docking was about 1cm, and acceleration was less than 1.5mG (low impact docking). In the second RVD experiment flight, ETS–VII detected attitude anomaly and executed disable abort for safety insurance. We present the results and evaluation of three RVD experiment flights in this paper.
著者
小山 洋司
出版者
日本EU学会
雑誌
日本EU学会年報 (ISSN:18843123)
巻号頁・発行日
vol.2020, no.40, pp.175-198, 2020-05-30 (Released:2022-05-30)
参考文献数
33

In all new EU member states from Central and Eastern Europe except Slovenia, the Czech Republic and Slovakia their total populations have been decreasing since their EU accession. Especially striking are cases of Lithuania, Latvia, Romania and Bulgaria. A natural increase in population turned negative already in the 1990s in all the countries, but a decrease in total population in these four countries can be mostly ascribed to a massive emigration to advanced EU member states. As the EU has a principle of free mobility of people labor migration within the region is quite natural, but a too rapid outflow of people has been giving serious influences on the economic development of sending countries. In Lithuania, for example, during 27 years from 1992 through 2019 its population has decreased by about a quarter (24.6%). As an aging society with fewer children in parallel with such a too rapid decrease in population is causing a lack of skilled workers and a fear that the pension budget could not be maintained in the future, this situation is taken by many people with a sense of crisis. Such a phenomenon affects also host countries. They show great consideration for migrant workers’ social integration, but it takes a time and a certain cost. If foreign workers flow into advanced EU member states at a too rapid pace, it might cause friction in their society. As for international labor migration, a majority of studies so far have focused on host countries, but this paper considers the problem from a standpoint of sending countries. It examines causes of such an intense emigration from Lithuania, taking into account differences from the case of Estonia where emigration is not so intense. Larger income inequality within the country has been a key factor urging people to emigrate. It seems that a series of reforms after the system change, especially the Lithuanian government’s desperate efforts to enter the Eurozone have caused strains on the society. A decrease in income inequality in the country would require an effective taxation reform and other measures. Assistance to new EU member states from the EU has been directed mainly to the improvement of infrastructure in poorer regions, but such assistance has not brought a creation of sufficient jobs in peripheral member states. It would be better for policies makers as well as researchers to pay more attention to challenges of development of human capital in peripheral member states.
著者
井上 猛 小山 司
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.291-297, 2009-04-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
17

選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)はほとんどすべての不安障害亜型に対して有効であるが,その作用機序は十分に解明されていない.われわれは恐怖条件づけストレス(conditioned fear stress;CFS:以前に逃避不可能な電撃ショックを四肢に受けたことのある環境への再曝露)を不安・恐怖の動物モデルとして用い,不安・恐怖とセロトニンの関連について検討してきた.すくみ行動を不安の指標として用いると,ベンゾジアゼピン系抗不安薬と同様に,SSRIはラットのCFSで抗不安作用を示す.SSRIの両側扁桃体基底外側核への局所投与はCFSで抗不安作用を示した.さらに,CFSによって扁桃体基底外側核のc-Fos蛋白発現は亢進し,SSRI全身投与はCFSで抗不安作用を示すと同時に,CFSによるc-Fos蛋白発現を抑制した.以上のことから,SSRIの不安障害への効果は扁桃体に対する抑制効果を介していることが示唆された.
著者
小山 静子
出版者
実践女子大学
雑誌
実践女子大学下田歌子記念女性総合研究所 年報 = The Annual Bulletin of the Shimoda Utako Research Institute for Woman (ISSN:24342718)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.(71)-(86), 2021-03-15

Shimoda Utako (1854–1936), a renowned female educator, was severely criticized in the socialist daily newspaper The Heimin Shinbun in 1907. The newspaper insulted her and printed as many as 41 serial articles between February 24th and April 13th where she was referred to as “the vamp.” This paper examines the logic and background of the Shimoda-bashing in relation to contemporary insults directed at female students, and considers their historical meaning. The results are the following. First, Shimoda, along with female students, was sexualized, and baselessly slandered in the media as being sexually “corrupt.” Second, both Shimoda and female students were perceived as threats to the conventional gender order, who challenged the traditional idea of femininity, since Shimoda was active in a male-dominated area and female students were considered to be getting secondary education that was supposed to belong to men. Third, Shimoda, in particular, was seen as an “enemy of the working class” by socialists in the context of class conflict. The relentless personal attacks on Shimoda were based on a two-fold antipathy toward her, induced by class politics as well as gender politics.
著者
布施 理美 長谷川 崇 清水 民子 廣岡 大吾 坂 慎弥 布施 明 横堀 將司 小山 博史 猪口 正孝
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.672-678, 2022-08-31 (Released:2022-08-31)
参考文献数
13

目的:首都直下地震で未治療死が生じないために発生傷病者数をどの程度に抑制しなければならないかを明らかにすること。方法:災害医療シミュレーション・システムを用いて内閣府の首都直下地震東京湾北部地震想定を用いて,想定から1割ずつ発生負傷者数を減じた場合の未治療死数やその内訳を検討した。災害医療の動きは東京都の災害時医療救護活動ガイドラインに準じた。結果:内閣府想定では発災後初回トリアージが赤タグの傷病者(4,296人)のうち1,507人(35.1%),黄タグの傷病者(17,224人)のうち4,775人(27.7%)が未治療死となった。未治療死は災害拠点病院よりも連携病院で多く発生していた。負傷者数を想定の4割まで減らすことができれば未治療死は30人(負傷者数の0.4%)に減じた。結論:首都直下地震発生直後に未治療死が多数発生するという“医療崩壊”を起こさないためには発生負傷者数を内閣府想定の4割程度に減らす防災・減災対策が必要である。
著者
小山 靖人
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.129-139, 2022-05-16 (Released:2022-05-20)
参考文献数
10

2021年 4 月に改正されたGMP省令では,医薬品品質システム(PQS)に関する規定が新たに加えられた.品質システムはISO9001が提示する考え方であり,製品そのものの品質だけでは品質を保証したことにはならず,その製造が品質システムに基づいて実施されたということが品質保証の考え方の要点なのである.このISO9001の考え方を医薬品の開発から製品の終結まで,すなわちライフサイクルに特化したものが医薬品品質システムのガイドライン(ICH Q10)である.グローバルのGMPであるPIC/S-GMPはQ10の考え方を取り込んでおり,今般のGMP省令の改正の骨子はこのPIC/S-GMPとQ10の考え方にある.従って,GMP省令におけるPQS規定は医薬品の品質保証の核心であるといえる.GMP省令ではPQSは第 3 条の 3 に規定されており,その考え方をISO9001とQ10に即してまとめると次のとおりである.まず,省令における製造業者等という文言はQ10及びPIC/S-GMPにおける上級経営陣に相当する.上級経営陣並びに経営陣には医薬品の品質確保のための積極的な関与が求められており,昨今の製薬企業の品質に関わる不祥事で特に上級経営陣の責任が厳しく問われていることは周知のとおりである.次に,上級経営陣は品質方針を確立しなければならない.品質方針は従業員をはじめ社内外に周知徹底する必要がある.品質方針を達成するために,品質目標を規定し,経営陣が資源と訓練を提供し,品質目標に対して達成度を数値化した業績評価指標(PI)を確立して運用することが求められる.複数のPIはQuality Metricsとして統合され,製造所のPQSの実効性の評価の指標となる.その評価は最終的に上級経営陣によって評価される.これがマネジメントレビューであり,その目的は,過去を振り返り,品質課題を抽出し,後の改善につなげてゆくことにある.PQSでは,品質方針の確立からGMP活動を経て,その評価,マネジメントレビューに至る一連の作業をPDCAサイクルとして理解することが重要であり,このサイクルを回すことによって継続的改善が達成される.こうした製造所におけるPQSのあり方の概要を示す文書が品質マニュアルである.PQSがGMP省令に規定されたことによって,わが国の品質保証の体制は新たな段階に入ったといえる.より一層の医薬品品質保証の確立に向けて,今後の製薬企業の対応が期待される.
著者
小山 清男
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.21-27, 1994 (Released:2010-08-25)

絵巻は日本美術独自の形式である。絵巻に描かれた場景には, しばしば建物の外形, 内部があらわされており, 図学の用語でいえばそれらはすべて, 斜投象的図法で描かれているようにみえる。この図法にはいくつかの種類がある。絵巻の画面にはそれらを適切に用いて描かれた, すぐれた作例が多くみられる。ここではこれらの斜投象的図法から, 二つの著名な絵巻, 源氏物語絵巻と当麻曼茶羅縁起絵巻とを考察してその絵画空間を明らかにしたい。