著者
湯田 厚司 小川 由起子 鈴木 祐輔 荻原 仁美 神前 英明 太田 伸男 清水 猛史
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.67, no.8, pp.1011-1019, 2018 (Released:2018-09-21)
参考文献数
9
被引用文献数
13

【背景・目的】スギ花粉舌下免疫(SLIT)の開始後4年が経過した.花粉多量飛散年にSLIT1~4年治療例を検討した.【方法】2018年(飛散総数5041個/cm2)飛散ピーク時にSLIT4年目83例,3年目72例,2年目48例,1年目67例と比較対照の初期療法320例,未治療群424例を対象とした.JRQLQ No1の鼻眼症状,薬物・総鼻症状薬物スコア,視覚的症状尺度(VAS)で評価した.【結果】SLIT各治療年は全てで未治療より,総括症状で初期療法より有意に良かった.治療3・4年目は鼻眼症状で初期療法より有意に良かった.併用薬なしで鼻症状スコア1以下の寛解率はSLIT4年目から1年目の順に41.0%,31.9%,18.8%,20.9%で,症状スコア全て0点の例は順に12.0%,12.5%,4.2%,4.5%であった.SLIT全例で処置を要する副反応は無かった.【結語】スギ花粉多量飛散年のSLITは初期療法や未治療より効果的であった.治療は短期よりも4年の長期に行う方が良いと考えた.
著者
セティアプラジャ ハリ 原 考佑 柴田 元 小川 英之
出版者
公益社団法人 自動車技術会
雑誌
自動車技術会論文集 (ISSN:02878321)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.461-466, 2012 (Released:2012-07-13)
参考文献数
7
被引用文献数
1

ブタノールと非エステル化植物油が高い相溶性を有し,その混合により低粘度の高含酸素燃料が得られることに着目し,そのディーゼル燃焼特性を検討した.両者が体積割合で等量の混合燃料を用い,パイロット噴射と高EGRを組み合わせることで,低黒煙・低NOxで静粛な運転を実現できることが分かった.
著者
中村 誠宏 吉川 雅之 松田 久司 藤本 勝好 田邉 元三 中嶋 聡一 松本 崇宏 太田 智絵 小川 慶子 村岡 修
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.PosterP-6, 2013

<p>1.序論</p><p> 花は古くから観賞用のほかに食用や薬用にも供されてきた.中国伝統医学 (中医学) や漢方医学では,紅花,槐花,菊花,金銀花などの花部由来の生薬が処方中に配剤されている.西洋ハーブとしても,マリーゴールド,カモミール,デージー,エバーラスティングなどの薬用花が数多く知られている.欧州においては,アロマセラピーなどにおいて花の精油がしばしば用いられてきた.また,1930年頃にイギリス人医師のエドワード バッチによって花エキスを用いた"フラワーレメディ"の考え方が提唱され,今日でも信奉する人も多い.しかし,花の成分レベルでの薬効解明研究はまだ十分ではない.そこで著者は,伝統医学で用いられる重要な薬用花である椿花 (Camellia japonica, 花部) および蓮花 (Nelumbo nucifera, 花部) の生体機能性成分の探索を行った.</p><p> </p><p>2. 中国産椿花 (Camellia japonica, 花部) の新規サポニン成分とメラニン生成抑制作用</p><p> ツバキ科植物ツバキ (C. japonica) は日本を原産とする常緑広葉樹の一種で, 台湾, 朝鮮, 中国,インドネシア等アジア各地に広く分布する. その花部である椿花は中国では「山茶花」と記載され,古来より抗炎症薬,健胃薬,止血薬および打撲傷の治療 (外用薬) 等に用いられてきた.我々はこれまでに,日本産椿花からノルオレアナン型トリテルペンサポニン camellioside A–D を得て,胃粘膜保護および血小板凝集作用を有することを明らかにした.<sup>1,2</sup> 今回,椿花の生体機能性成分の探索研究の一環として,中国産 (雲南省) 椿花の抽出エキスの生物活性評価を行ったところ,マウスのメラノサイト由来 B16 melanoma 4A5 へのテオフィリン刺激によるメラニン生成抑制作用を示すことを見出したことから,含有成分の探索研究に着手した.すなわち,中国産椿花のメタノール抽出エキスを,酢酸エチル,n-ブタノールおよび水にて分配抽出し,n-ブタノール移行部を各種カラムクロマトグラフィーおよび HPLC を用いて繰り返し分離精製した.その結果,8 種の新規サポニン sanchakasaponin A–H (1–8) および 8 種の既知サポニン 9−16を単離した (図 1).得られたサポニン成分のメラニン生成抑制作用について検討を行ったところ,サポニン 2–6, 8, 10, 12−14, 16 は強い抑制作用 [IC<sub>50</sub>: 1.7−4.7 mM] を示すことが明らかとなり,その作用は positive controlであるアルブチン [IC<sub>50</sub>: 174 mM] よりも強いことが明らかとなった.一方,サポニン 3–6, 8, 10, 16 にはメラノーマ細胞に対する細胞毒性 [10 mM による細胞増殖抑制率: 78.7–88.3%] が認められた.以上の結果から,16位,21位および22位に結合したアシル基の存在は,メラニンの生成抑制や細胞毒性において重要であることが示された.<sup>3,4</sup></p><p>図 1. 中国産椿花の新規サポニン成分</p><p>3. 韓国産椿花 (Camellia japonica, 花部) の新規サポニン成分とメラニン生成抑制および繊維芽細胞増殖促進作用</p><p> 中国産椿花の成分探索と同様の方法を用い,韓国産 (済州島) 椿花のサポニン成分の探索を行った.その結果,2 種の既知サポニン [camellioside A (17), D (19)] とともに2 種の新規サポニン camellioside E</p><p>(View PDFfor the rest of the abstract.)</p>
著者
筧 祐未 金谷 悠司 宮下 和也 真柴 久実 光井 康博 小川 浩平 宮川 史 浅田 秀夫 竹内 三佳 宮田 梨世 萬木 聡 桑原 理充
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.18, no.5, pp.295-299, 2019 (Released:2020-05-20)
参考文献数
19

72歳,男性。約50年前に工場の爆発で熱傷を受傷した。その後左大転子部外側の熱傷瘢痕部に変化が生じてきたため当科を紹介され受診した。初診時,左大転子部外側に手掌大の淡紅色局面を認め,表面には鱗屑・痂皮が付着していた。また辺縁は全周性に黒色調を呈しており,病変周囲には拘縮と瘢痕を認めた。皮膚生検を施行したところ,表皮から連続して真皮浅層に腫瘍細胞が胞巣を形成していた。胞巣辺縁は柵状配列を示し胞巣周囲にムチンの沈着を認め,真皮内には瘢痕形成が著明であった。病理組織学的所見から基底細胞癌と診断し,5mmマージンで皮膚腫瘍切除術と左遊離広背筋皮弁術を施行した。全切除標本の病理組織学的所見からは,基底細胞癌と真皮から皮下に広範囲の瘢痕形成を認めた。熱傷瘢痕上に有棘細胞癌が生じることは良く知られているが,熱傷瘢痕癌の中では基底細胞癌は比較的まれである。 (皮膚の科学,18 : 295-299, 2019)
著者
小川 竹一
出版者
沖縄大学地域研究所
雑誌
地域研究 = Regional Studies (ISSN:18812082)
巻号頁・発行日
no.1, pp.9-30, 2005-06-30

本件は、金武町金武区において、入会権を有していた者の女子孫が入会団体(金武部落民会)から入会権を認められないことに対して、入会権の確認を求めると同時に入会地が米軍用地になっていることから生じている賃貸料の配分を求めて訴訟を提起した事件である。金武区の部落住民は、琉球王府時代から杣山を維持管理し、山林の利用権が認められていた。明治32年に沖縄県土地整理法によって、これらの山林が官有とされたが、明治39年に地元部落に30年年賦で払い下げられた。一旦、部落所有山林となったが、大正時代から国策として進められた「部落有林野統一事業」により、昭和8年ころ無償で金武村有となった。そのとき村と区の統一条件として、林野の収益を区6村4で配分するほか、部落が従来通り山林を利用するなど、部落が地役的入会権を留保することになった。入会権は、民法において共有の性質を有する入会権(294条)と地役権の性質を有する入会権(263条)が規定されているが、相違は、土地の所有権が入会集団に帰属するか否かであり、土地の用益内容については違いはない。権利内容は基本的に「地方の慣習に従う」とされている。入会権は、部落に基礎を置く入会集団の統制のもとに一定の土地を共同で管理し利用する権利である。入会集団が土地所有権を有しない場合が地役権的入会権である。入会地の利用方法は、入会集団の決定によって定まる。入会集団の統制の元に共同で利用したり、その決定によって、構成員が分割して利用したりすることもある。また、第三者に賃貸して収益を得ることもあり、また利用を行わずに保全を行うことも含まれる。入会権者の範囲は慣習によって定まるが、本件部落民会は、会則で女子孫排除原則を定めている。このような慣習が存在したのか、あるいは存在したとしても公序良俗に反する慣習であって無効であるということが法律上の争点である。第1審では、入会慣習に触れることなく会則が男女差別を行っていることから公序良俗違反として原告女子孫の請求を認めたが、第2審では、女子孫を排除する慣習が存在し慣習を尊重するとして原告が敗訴し、原告女子孫側が上告した。会則が定める資格基準は、沖縄の門中集団に見られる祭祀継承の慣行であるトートーメー継承の禁忌に基づいている。しかし、ある世帯が部落の構成員として認められるか、すなわち入会集団権者資格に関わる慣習とは次元が異なる問題である。本件は、入会権慣習とは関係の無いトートーメー慣行が軍用地料配分をめぐって再編されて利用されたことから生じたのであり、沖縄社会に根深くある女性差別と新たな社会問題である軍用地料問題が、複合して現れている問題である。不労所得である軍用地料が勤労意欲の低下を引き起こしたり、地域の中で不公平感を生じさせたりするなどの地域問題を引き起こしている。本件訴訟の原告女性らが提起した問題は、巨額の軍用地料の配分のあり方や米軍用地からの開放された後の利用の仕方という長期的な展望に立って、地域資源の管理のあり方を考えなければならないことを明らかにした。
著者
小川 眞
出版者
森林立地学会
雑誌
森林立地 (ISSN:03888673)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.57-65, 1988-12-30 (Released:2017-10-20)
著者
福本 昌人 吉迫 宏 小川 茂男
出版者
農業・食品産業技術総合研究機構農村工学研究所
雑誌
農村工学研究所技報 (ISSN:18823289)
巻号頁・発行日
no.210, pp.307-317, 2010-03
被引用文献数
1

農林水産省は、耕作放棄地の解消を図るため、耕作放棄地全体調査と呼ばれる現地調査を市町村・農業委員会を通じて2008年度に全国規模で実施した。この調査は、市町村全域のすべての農地を踏査し、耕作放棄地の位置と状況を一筆毎に把握するものである。この調査で「農地」と判断された耕作放棄地は営農再開や保全管理(草刈り、耕起等)が求められ、その実施を確認する追跡調査が行われることになっている。しかし、その実施が確認されても、その後再び耕作放棄地になる可能性がある。また、2008年度には耕作放棄地でなかった農地が新たに耕作放棄地になる可能性もある。このため将来、再度、現地調査を行う必要が生じると考えられる。しかし、現地調査は多大な労力を要し、容易には実施できないため、現地調査の省力化が喫緊の課題となっている。本研究では、上記の調査で取得したADS40によるオルソ画像を用いて耕作放棄田等の目視判読性を雑草タイプ等の面から詳細に検討し、航空撮影画像を用いた耕作放棄田の調査手法を事例的に提案する。なお、耕作放棄地の現地調査のためだけに航空撮影を行うことはコスト的に難しいが、別途、水土里情報利活用促進事業等により、地理情報システム(GIS)データの整備・更新のために最新のオルソ画像が作成されていれば、そのオルソ画像を現地調査に利用することができる。また、ここでは目視判読はパソコンのディスプレイにオルソ画像を表示して行うが、オルソ画像のプリントも現地調査において有用であることから、そのオルソ画像プリントの活用についても述べる。
著者
小川 剛志 大西 隆 石川 允
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.265-270, 1988-10-25 (Released:2020-08-01)
参考文献数
6

This paper analysed the recent tendency of the location of the electronic date processing division in the big companies the head quarter of which are now located in the heart of Tokyo. In addition to the secondary date analysis, a questionnaire survey was done to about a hundred companies to identify their behavior and the relating problems. Finally, the possibility of the reagglomeration of the divisions and the information processing industries to the suburban core cities are also discussed.
著者
小川 勇二郎 黒澤 正紀 平野 直人 森 良太
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2008年度日本地球化学会第55回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.303, 2008 (Released:2008-09-06)

陸上のオフィオライト・スイーツには島弧のシグネチャーを持つものが含まれ、また現在の島弧前弧域にもオフィオリティックな岩石が現出することから、オフィオライトの多くは島弧で形成されたものと信じられている。ある条件下で島弧の前弧域がスプレッディングを起こし、そこに拡大軸ができていわゆる拡大海嶺的なまた島弧的なセッティングが生じる、とのモデルは多いが、その実体に関しては推測の域を出ない。SSZ ophiolite, forearc ophioliteなどとされるものは次のどれかに属するか、その組み合わせである。1)沈み込みが開始した部分のかつての大洋プレートのリムナント(つまり島弧のできる前の大洋プレート)、2)島弧がその火山フロントから裂けて発達するときに、前弧へ押しやられた古い島弧部分、3)島弧そのもの、特にその発達初期に活動を停止したもの、4)別の場所にあったものが、島弧の発達とともに前弧域にもたらされたもの、5)島弧とは全く無関係の大洋側のプレートが、沈み込み帯へトラップされたもの(オブダクションを含む)、6)拡大海嶺の沈み込みやロールバックによって前島弧その場所に、in situで噴出・エンプレイスしたもの。7)背弧のもの。これらにエンプレイスメントのプロセスやメカニズム、発達順序などを組み合わせると、さまざまなセッティングがありうる。たとえば、島弧の火山フロントからはかけ離れた場所にある例(タイタオ;Espinosa et al., 2005 Island Arc)や、拡大海嶺近傍から次の沈み込みが始まって、結果的に拡大軸に島弧のものが重なった例(オマーンなど)もあり、改変(あるいは改編)という用語は適当だろう。われわれは房総半島嶺岡帯の例について以下のような知見を得たので、伊豆島弧の発達史からのアナロジーを展開したい(Hirano et al., 2003 GSLondonSpecPub; Ogawa & Takahashi, 2004 Tectonophysics; Mori et al., 2008 GSASpecPap, submitted)。房総沖には世界的にもまれなTTT-type triple junction(房総三重点)が存在し、それに関連した島弧-島弧の衝突が生じていると考えられる。このセッティングは”trinity clastics”(オフィオリティック、島弧、大陸由来の三者混合の砕屑岩)(Mori et al., 2008 GSASpecPap, submitted)の存在から、中期中新世からのものであろう。それはまた、四国海盆の拡大末期における日本海の観音開き、南部フォッサマグナの火山活動、伊豆弧の衝突開始などに符号することから、日本列島が現在の形となった時期に一致する。嶺岡帯は、基本的には四万十帯の延長であろうが、そのオフィオリティックな岩石と付随する地層・岩石群は、西南日本の一般の四万十帯に現れるものとは、産状などが根本的に異なっている。玄武岩はtholeiiteを主とし(MORBを主とするが、IATもある。すなわちフラットなスパイダーグラムで特徴的ないわゆるMORBタイプが多いが、一部にNb-Taがネガティブなアノマリーを示す島弧的なものが含まれる)、またwithin plate (A)のドメインに入るalkali basalt(petit spotかもしれない)もある。玄武岩は枕状溶岩からなり白亜紀(80Ma)から中新世(20Ma)までにわたる。斑レイ岩の大半は島弧的であるがMORB的なものもあり、ほかの玄武岩質岩類とともに熱水変質、マイロナイト化、ブレッチャ化など、拡大軸やトランスフォーム(コアコンプレックス)などに類似する変形・変質を受けている。時代的変化としては、明らかに島弧的な岩石は40Maころから普通になり(トーナライト、安山岩、ボニニティック(28.6+/-5.1Ma)など)、最後は15Maころののフォッサマグナ・グリーンタフと共通の安山岩のパミスフォールで終了し、相前後して形成される付加体である中新世前期(23Ma)以降の保田・江見層群には伊豆島弧由来の火山岩が顕著となる。以上のような状況からは、嶺岡帯のオフィオリティックな岩石は白亜紀から古第三紀のある時期までの大洋プレート(Ogawa & Taniguchi, 1988 Modern Geology; 佐藤暢ほか, 1999地学雑らの「嶺岡プレート」)と、40Ma以降の島弧的な玄武岩ほかの混合したものである蓋然性が高い。また、結晶片岩ブロック(4個)の存在も見逃せない。現在の伊豆・マリアナ弧には、1)30Ma以前のトランスフォーム断層(四国・パレセベラベイスンの最初の境界)に沿う大町海山には片状アンチゴライト蛇紋岩に伴って角閃岩相の結晶片岩が産する(Ueda et al., 2004 Geology)。2)島弧最前縁には、蛇紋岩ダイアピルが多産し、ブルーシスト、チャート(白亜紀)などが産する(Maekawa et al., 1995 AGUGeophMonog)、3)母島海山には、蛇紋岩、斑レイ岩、玄武岩などいわゆるforearc ophioliteが産する(Ishiwatari et al., 2006 Island Arc)。以上のような現在の産状をすべて組み合わせると、嶺岡帯の岩石を説明可能かもしれない。今後、すべての岩石の徹底的なケミストリー(同位体を含む)、年代測定、産状の考察が必要である。
著者
上野 太郎 伊藤 誠 小川 潤 青山 敦
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.S310, 2018

<p>前庭感覚系は, 体の傾きを察知するのに重要な役割を担っており,視覚系を始めとする複数の感覚系から情報を受け取っている.しかしながら, 前庭感覚系を調べる脳計測実験を設計するのは技術的に難しく,前庭感覚情報と視覚情報の相互作用については不明な点が多い.そこで本研究では,前庭感覚入力を操作するために反転台,前庭感覚入力の手掛かりを視覚的に与えないために Virtual Reality (VR) Display を使用し,反転台によって実験協力者の体勢を変えた上で VR Display を介した落下映像に対する脳波の計測を行った.事象関連電位解析において,視覚的な落下方向に関わらず, 倒立状態では直立状態と比較して落下開始後 100-200 ms から 視覚活動の減衰が確認された. また,Granger Causality 解析において,頭頂前庭領域から視覚領域への有意なコネクションが確認された.以上の結果により,異常な前庭感覚情報によって視覚活動が抑制され,視覚処理の比較的早い段階から視覚と前庭感覚の相互作用が始まることが示唆された.</p>
著者
井口 貴文 井口 守丈 手塚 祐司 青野 佑哉 池田 周平 土井 康佑 安 珍守 石井 充 益永 信豊 小川 尚 阿部 充 赤尾 昌治
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.50, no.10, pp.1102-1107, 2018-10-15 (Released:2019-12-06)
参考文献数
10

先天性アンチトロンビンⅢ(AT-Ⅲ)欠損症は比較的稀な常染色体優性の遺伝性疾患である.AT-Ⅲ欠損症においては静脈血栓塞栓症(VTE)が多発することが知られている.VTEの治療には従来からヘパリンが使用されていたが,ヘパリンの抗凝固作用は血中のAT-Ⅲレベルに依存するため,AT-Ⅲ血栓症に伴うVTEに対しては,ヘパリンの単独治療では十分な抗凝固作用が期待できず,AT-Ⅲ製剤の補充が必要とされる.近年,VTEの治療に対しては,ヘパリンに代わって直接型経口抗凝固薬(DOAC)が有効であるとの報告が相次いでなされている.DOACはAT-Ⅲを介さずに抗凝固作用を発揮するため,AT-Ⅲ欠損症に伴うVTEに対しても効果があると考えられるが,AT-Ⅲ欠損症に伴うVTEに対してDOACが有効であったとの報告は極めて限られている.今回われわれは,AT-Ⅲ欠損症に伴うVTEの症例に初期からDOACの1つであるリバーロキサバン単剤で加療し,比較的速やかに症状の改善,D-dimerの低下,および画像上の血栓の消退が認められた症例を2例経験した.2例ともその後リバーロキサバンを継続することでVTEの再発なく経過している.AT-Ⅲ欠損症に伴うVTEに対してリバーロキサバンの有効性を示唆する貴重な症例であると考え,ここに報告する.
著者
小川 公代
出版者
講談社
雑誌
群像
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.388-395, 2022-01