著者
寺澤 捷年 土佐 寛順 平崎 能郎 小林 亨 地野 充時
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.309-312, 2014 (Released:2015-03-30)
参考文献数
27

宿便という用語は単に便秘によって消化管内に内容物が停留していることを意味するのではなく,通常の排便では排泄できない消化管内の貯留物を想定したものである。しかし,その実態は不明であった。筆者らは硫酸バリウムによる上部消化管検査を受けた過敏性腸症候群の一患者において,検査後に下痢がみられたにも拘わらず3日後の腹部単純X 線撮影よって,下部消化管壁に附着した硫酸バリウムを確認し,これが宿便の一つの形態であることを示唆するものと考えた。また,宿便という用語が何時から用いられたかについて過去の文献検索を行い,尾台榕堂の方伎雑誌が初出であり,この用語が宿食から派生したものであると考察した。
著者
津田 智史 小林 茂雄
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会環境系論文集 (ISSN:13480685)
巻号頁・発行日
vol.71, no.609, pp.85-91, 2006
被引用文献数
1 1

The purpose of this research is to examine the effects of interpersonal distance from others on the emotions and behavior of couples staying along by the sea. An investigation to observe the behavior of actual couples, and an experiment to assess the opinions of the couples were carried out in the early evening and the nighttime. In the results, the following points were demonstrated. ・ Couples tended to stay together longer and more closely when the distance from others was large. This tendency appeared more strongly in the nighttime than in the early evening. Couples expected to maintain a private space of at least 2 to 3 meters on both sides. ・ Women tended to notice the proximity of others more in the early evening. This tendency was stronger when the others were groups of men rather than mixed male-female groups. ・ Generally in the evening, couples' behavior was not affected by the attributes of others. In some cases, couples moved even closer together when another couple approached than when no-one was near.
著者
池添 冬芽 小林 拓也 中村 雅俊 西下 智 荒木 浩二郎 市橋 則明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2015, 2016

【はじめに,目的】近年,低強度の筋力トレーニングであっても疲労困憊までの最大反復回数で行うと,高強度と同程度の筋力増強・筋肥大効果が得られることが報告されている。しかし,疲労困憊までさせずに最大下の反復回数で低強度トレーニングを実施した場合,高強度と同等の筋力増強・筋肥大効果が得られるかどうか,また筋の質的要因に対しても改善効果が得られるかどうかについては明らかではない。本研究の目的は,健常若年男性を対象に低強度・高反復および高強度・低反復の膝関節伸展筋力トレーニングを8週間実施し,1)低強度・高反復トレーニングは高強度と同程度の筋力増強や筋肥大・筋の質改善効果が得られるのか,2)各項目の経時変化に両トレーニングで違いはみられるのかについて明らかにすることである。【方法】対象は下肢に神経学的・整形外科的疾患の既往のない健常若年男性15名とした。対象者を無作為に低強度・高反復トレーニング群(低強度群)と高強度・低反復トレーニング群(高強度群)に分類した。膝関節伸展筋力トレーニングは筋機能運動評価装置(BIODEX社製System4)を用いて,低強度群では30%1RM,高強度群では80%1RMの強度で週3回,8週間実施した。8回の反復運動を1セットとし,低強度群では12セット,高強度群では3セット実施した。介入前および介入2週ごとに1RM・最大等尺性筋力,超音波測定を行った。1RM・最大等尺性筋力測定には筋機能運動評価装置を用い,膝伸展1RMおよび膝関節70°屈曲位での最大等尺性膝伸展筋力を測定した。超音波診断装置(GEメディカルシステム社製LOGIQ e)を用いて,大腿直筋の筋量の指標として筋厚,筋の質の指標として筋輝度を測定した。なお,筋輝度の増加は筋内の脂肪や結合組織といった非収縮組織の増加を反映している。トレーニングの介入効果を検討するために,各項目について分割プロット分散分析(群×時期)を行い,事後検定にはBonferroni法による多重比較を行った。【結果】分割プロット分散分析の結果,1RM・最大等尺性筋力,筋厚および筋輝度のいずれも時期にのみ主効果がみられ,交互作用はみられなかったことから,いずれの項目も2群間で効果の違いはないことが示された。事後検定の結果,両群ともに1RMおよび最大等尺性筋力はPREと比較して2週目以降で有意な増加がみられた。また両群ともに筋厚はPREと比較して4週目以降で有意に増加し,筋輝度は8週目のみ有意に減少した。【結論】本研究の結果,両トレーニング群ともに筋力増強,筋肥大,筋の質の改善がみられ,その変化の程度や経時変化に違いはみられなかったことから,低強度であっても12セットと反復回数を増やすことによって,高強度3セットのトレーニングと同様の筋力,筋量,筋の質の改善効果が得られることが明らかとなった。
著者
高橋 春樹 出口 善純 阿部 勝 山田 創 秋月 登 小林 尊志 中川 隆雄
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.226-231, 2009-04-15 (Released:2009-09-04)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

症例は75歳の女性。主訴は呼吸困難 飼い犬に左手を噛まれた2日後,呼吸困難で近医を受診した。動脈血ガス分析にて低酸素血症を認め,血液検査にて敗血症,播種性血管内凝固症候群,多臓器不全と診断され,当センターに転送された。集中治療(エンドトキシン吸着,持続血液濾過透析)にて軽快し,第14病日退院した。後日,血液培養よりCapnocytophaga canimorsusが検出された。C. canimorsusはイヌ咬傷後の敗血症の原因菌として米国では死亡例も多数報告されており,高齢者・易感染者に重症例が多い。本邦での報告は稀であるが,早期に適切な抗生剤を選択する上で念頭に置くべき病原体と考える。
著者
小林 謙 五十嵐 岳史
出版者
一般社団法人 日本めまい平衡医学会
雑誌
Equilibrium Research (ISSN:03855716)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.108-114, 2008 (Released:2008-05-29)
参考文献数
15
被引用文献数
5 3

We performed a demographic analysis of 2293 vertiginous patients seen at our clinic from February 1995 to November 2005. While a definitive diagnosis could be made in 1287 cases (56%), the diagnosis remained tentative in 622 (27%), and the cause diagnosis remained unknown in 384 cases (17%). The most common vertiginous disease was benign paroxysmal positional vertigo (456 cases), followed in prevalence by Meniere's disease (232 cases). Most patients had visited other medical facilities before visiting our clinic. Analysis of the medical facilities visited by the patients suggested that the vertiginous patients visited both physicians and otolaryngologists; while. physicians saw the patients in primary care settings, otolaryngologists examined the patients at general hospitals and university hospitals. This discrepancy may complicate the care of vertiginous patients.
著者
池辺 正典 田中 成典 古田 均 中村 健二 小林 建太
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.1687-1695, 2006-06-15

近年のインターネットの複雑化にともない,Web の自動解析による情報取得に対する需要が高まっている.そのため,Web ページをカテゴリに分類する手法やWeb の関係情報を解析する手法が数多く提案されてきた.しかし,既存の研究では,Web の自動解析は,リンク関係を中心とした解析を行っており,リンク関係のないWeb ページを関連付けることが困難であった.このため,本論文では,リンク構造解析だけでなく,形態素解析によって任意の単語から関係情報の抽出を行うことで,リンク関係のないWeb ページを関連付ける.また,その結果と品質判定を行ったリンク構造解析結果を組み合わせることで,信頼性の高いWeb ページの関係図を作成する.さらに,アルゴリズムの評価として,Web から取得した情報を利用して,組織の関係図を作成する.そして,既存研究においての主要な方式であるリンク構造解析による結果との比較を行った.評価方式には,リンク構造解析で一般的に用いられている評価値とグラフ理論による可視化を採用し,その結果から本方式の有用性を確認した.
著者
小林 益江 中嶋 カツエ 田中 佳代
雑誌
母性衛生 = Maternal health (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.370-374, 1998-12-01
被引用文献数
4
著者
富田 基史 小林 聡 阿部 聖哉 津田 その子
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.45-50, 2018-08-31 (Released:2019-05-10)
参考文献数
33

緑化工事において地域性種苗を使用する場合,種苗の移動可能範囲を定めることがまず必要となる。本研究は,種苗移動可能範囲の設定に向け,日本の暖温帯(東北〜九州)において海浜植物6種の葉緑体DNA非コード領域(3,010〜3,647 bp)の遺伝変異にもとづく地域差を評価することを目的とした。ハマエンドウでは主要2グループが,日本海側と太平洋側に分かれて分布する傾向が認められた。一方,ハマヒルガオ・ネコノシタでは複数のハプロタイプが得られたものの明瞭な地域差は認められなかった。コウボウムギ・コウボウシバ・イワダレソウはすべてのサンプルが同一ハプロタイプであった。
著者
伊地知 美知子 小田巻 淑子 小林 茂雄
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.213-220, 2010-04-15 (Released:2012-12-13)
参考文献数
11

The purpose of this study is to investigate the relationship between female students' attitudes toward body images and dressing ideas by compaing the results of two surveys which were conducted in 1992 and 2006 .Two hundred female university students who live in the metropolitan area filled out the questionnaire in 1992 and 2006,respectively.The main items of the questionnaire are the consciousness of their real and ideal body images,and the daily patterns of wearing clothes.These questionnaire data were analyzed by using statistical testing,factor analysis and Quantification Method Ⅲ. As to the female students' consciousness of their own body images,5 common factors which express stoutness,bust size,hipline level,height and shoulder slopes were extracted by factor analysis in 1992 and 2006,respectively.Two factors which express stoutness and bust size were different statistically between ideal and real body images.But the structure of factors indicated the same tendency in both 1992 and 2006.Among the factors from dressing ideas by Quantification Method Ⅲand the factors from body images by factor analysis, some correlations were found in 1992, but none were found in 2006.
著者
小林 盾
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.81-93, 2010

この論文では,社会階層の違いがどのように食生活の違いとして現れているのかを,健康への影響に着目して調べた.食生活として野菜と海藻を事例とした.分析の結果,高階層の人ほど野菜と海藻をよく食べ,そうした人たちほど健康と感じていた.野菜と海藻は,バランスのとれた食生活を象徴していると考えられる.これまで,社会階層が食生活にどう影響するのかは分かっていなかった.そこで,東京都西東京市在住の35~59歳女性を対象として,郵送調査を実施してデータを得た(回収人数822人,回収率68.7%).分析の結果,以下のことが明らかになった.第一に,高階層の人ほど野菜と海藻を毎日食べていた.たとえば,高校卒のうち15.4%が毎日海藻を摂っていたのにたいして,大卒だと27.5%,大学院卒だと50.0%であった.第二に,野菜や海藻を毎日食べる人ほど,健康と感じていた.野菜と海藻のどちらも毎日は食べない人のうち,健康に幸せまたはやや幸せと感じるのは81.2%,両方を毎日食べる人のうちでは91.1%だった.第三に,教育から健康への影響を調べた結果,野菜と海藻の摂取が媒介変数となっていた.第四に,みそ汁摂取と朝食摂取が効果をもたなかったので,伝統的な食生活や規則正しい食生活が,健康を促すわけではなかった.
著者
米田 諭 小林 洋三 布居 剛洋 竹田 幸祐 松森 篤史 安藤 稔 辻之上 裕久 西村 公男 福井 博
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.103, no.11, pp.1270-1273, 2006 (Released:2006-11-06)
参考文献数
15
被引用文献数
1

症例は28歳女性.近医でインフルエンザBにてリン酸オセルタミビルなどを処方され,翌日夜間より下腹部痛,下痢,血便が出現し当院を受診.大腸内視鏡検査で横行結腸左半部に全周性にわたる表層の出血,びらんを認めた.内服薬中止にて症状,内視鏡所見の治癒を認めた.薬剤リンパ球幼若化試験でリン酸オセルタミビルのみ陽性であった.本症例はリン酸オセルタミビルが誘因と考えられた急性出血性腸炎第1例目であり報告した.
著者
渡辺 哲也 小林 真 南谷 和範
出版者
ヒューマンインタフェース学会
雑誌
ヒューマンインタフェース学会論文誌 (ISSN:13447262)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.13-20, 2018-02-25 (Released:2018-02-25)
参考文献数
17

A user survey on Braille transcription and audio recording services for the blind was conducted. The use rates of these two services were both more than 40%. The top two providers of these services were either of Braille transcription or audio recording circles and Braille libraries. Nearly half of the users were using these services at a frequency of once in a few months. The problems faced when using these services were long waiting times for the books to be translated. The difference between these two services were documents to be translated and the frequency: Braille transcription service was used mostly for work-related documents, product manuals, music materials, and technical books whereas audio recording service was used for novels, technical books, magazines, and non-fictions: A certain amount of people were using audio recoding service more frequently, once in a week to a few times a month, than Braille transcription service.
著者
小林 一樹 齊藤 由空 廣神 奏音 広井 勉 小野田 淳人
出版者
一般社団法人 日本エネルギー学会
雑誌
日本エネルギー学会誌 (ISSN:09168753)
巻号頁・発行日
vol.96, no.6, pp.199-206, 2017-06-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

世界中で消費され始めている日本の伝統的な食材の一つにこんにゃくがある。こんにゃく製品を製造する過程で多量のこんにゃく飛粉が副産物として生み出されているが,有効な活用方法が少なく,その付加価値を高めるために利用方法を模索する研究が求められている。本研究は,こんにゃく飛粉から再生可能エネルギーの一つであるバイオエタノールを生成することが可能かどうか検証することを目的として行った。硫酸,塩酸または硝酸を用いてこんにゃく飛粉中に含まれる多糖類を単糖類に分解(糖化)し,発酵で単糖類をエタノールと二酸化炭素に分解,蒸留による精製を行うことでエタノールの濃縮を試みた。また,糖化,発酵,精製の各工程後に生成する物質を明らかにするため,高速液体クロマトグラフならびにガスクロマトグラフによる成分分析を行った。本研究により,硫酸を用いた糖化を経ることで,こんにゃく飛粉(30 g)から他の食糧廃棄物と同様にエタノール水溶液(9.1 g/L,600 mL)の生成が可能であることが,明らかになった。本研究は,肥料や家畜飼料の他に,こんにゃく飛粉の新たな活用方法としてバイオエタノールが製造できる可能性を示した。
著者
小林 和夫 Kazuo KOBAYASHI
出版者
創価大学社会学会
雑誌
SOCIOLOGICA (ISSN:03859754)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.87-108, 2018-03-20

本論の目的は,日本占領期ジャワにおける隣組制度が,1944年1月のジャワ全土での導入前に,段階的に各地で設置されていたことをあとづけることにある.本論では,日本占領期のジャワで隣組制度がいちはやく導入されたバンドゥン市における既存の隣保制度,隣組の法的位置づけ,設置目的,機能を論じる。 分析の結果,本論で示したバンドゥンをはじめとする各地の隣組は,ジャワ軍政による動員と統制を容易にする機能をはたしていたこと,インドネシアの「伝統」とされ,相互扶助を表象するゴトン・ロヨンを制度化するかたちで導入されたことが明らかになった。