著者
小林 定教
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間と生活環境 (ISSN:13407694)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.11-19, 2005 (Released:2018-03-22)
参考文献数
5

本研究は、山陰地方の中山間地域における若手居住者を対象に、今後の自立した生活づくり、生き方についてアンケート調査を行い、より生き甲斐のある中山間地域の村・住まいづくりに関する資料を得ることを目的とする。若手居住者の約半数は、村に住み続けることを希望しており、その理由として「地域の風土」「人との交流」「現在の生活にほぼ満足」などがあげられている。しかし村の現状は、若者の就職、若者の離村による過疎化、住環境、医療、教育、交通、降雪時の生活など多くの問題を抱え、その整備が望まれる。若手居住者の住みたい村づくりには、上記の項目に加え、「仕事」「I、Uターン」「若者向け住居」「女性に魅力ある村」などへの対策が求められている。なお、高齢者を対象とした既報の結果を併記する。
著者
高橋 功次朗 丹原 惇 森田 修一 小林 正治 池田 順行 林 孝文 齋藤 功
出版者
特定非営利活動法人 日本顎変形症学会
雑誌
日本顎変形症学会雑誌
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.1-7, 2017

Cephalometric prediction is still widely used for treatment planning in surgical orthodontic patients. However, there have been few reports on the relationship between mandibular midline changes by orthognathic surgery and the amount of bilateral setback movement on lateral cephalograms. The aim of this study was to clarify the relationships between the difference in mandibular setback amount for deviated and non-deviated sides and the amount of middle region displacement on cephalometric prediction in patients with mandibular prognathism and deviation.<br>The subjects comprised 15 patients diagnosed as mandibular prognathism with skeletal deviation at the orthodontic clinic, Niigata University Medical and Dental Hospital. All patients underwent only mandibular setback surgery involving midline correction by sagittal split ramus osteotomy(SSRO). Frontal and lateral cephalograms taken just before and immediately after orthognathic surgery were used for measurements. X-Y coordinates were constructed using the occlusal plane on the preoperative lateral cephalogram for the X coordinate and the perpendicular line drawn intersecting the X line at the Sella for the Y coordinate. The amount of posterior movement of the distal segment and middle region displacement were determined by superimposition of pre-and postoperative lateral cephalograms. The postoperative midline changes were measured linearly using a study model taken at just before orthognathic surgery. We examined the relationship between the average amount of operative movement for deviated and non-deviated sides and the amount of anteroposterior changes of the incisal region. The relationship between the difference in operative movement for deviated and non-deviated sides and postoperative midline changes was also examined.<br>Significant correlations were found between the bilateral difference of operative movement and the amount of anteroposterior changes of the incisal region. A significant correlation was also revealed between the bilateral difference of operative movement and horizontal middle region. In addition, a significant regression formula was obtained as β=0.65α+1.17(α: bilateral difference of mandibular posterior movement (mm), β: lateral movement of mandibular midline(mm))by regression analysis.<br>The present results suggest that, in cases with skeletal deviation, it is possible to regard the average value of anteroposterior movement of distal segments on both sides as a predictive factor for the posterior position of the incisal region. Also, the results suggest that the amount of midline correction can be predicted from the bilateral difference of operative movement. Since there is diversity and much variation in the movement of distal segments, it is not easy to predict the amount of midline displacement during orthognathic surgery. However, this regression formula may be useful for orthodontists and surgeons to plan surgical orthodontic treatment.
著者
小林 大吉 加藤 孝明 河原 大
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.327-330, 2016-07-01 (Released:2016-07-29)
参考文献数
8

VR(仮想現実)を用いて,地震火災時の市街地延焼からの避難行動を把握する予備実験を行った.本研究の成果は以下の2 点である.第一に,リアリティのある地震火災避難VR を作成し,市街地火災の状況の表現手法を開発したことである.第二に,避難行動特性把握のための実験計画の立案及び予備実験を実施したことである.なお,予備実験の主な結果は,以下の2 点である.第一に,火災1 個の場合,火災までの距離が300m で,半数の人間が避難する.第二に,火災までの実際の距離よりも,近くで発生していると感じる傾向にある.
著者
小林 悠記 小林 真輔 坂主 圭史 武内 良典 今井 正治
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.1311-1321, 2004-05-15
被引用文献数
14

本稿では,コンフィギュラブルなVLIW プロセッサのアーキテクチャモデルに基づいたプロセッサ仕様記述から,合成可能なHDL 記述を生成する手法を提案する.本生成手法では,パイプラインステージの数やスロットの数,発行された命令を適切なリソースに割り付けるディスパッチ処理のルールなどを変更することが可能である.これらの変更パラメータや各命令の動作は,プロセッサ仕様記述中に表現されてり,VLIW プロセッサのパイプライン制御を含む制御部,命令デコーダ部,データパスはこのプロセッサ仕様記述から生成される.提案手法で用いるプロセッサ仕様記述の記述量は小さく,変更量もまた小さいため,提案手法を用いることで,設計者は効果的に設計空間探索をすることができる.評価実験では,約8 時間で36 種類のプロセッサ仕様を記述でき,その記述量は生成されるHDL 記述の記述量と比較して約82%削減できることを確認した.This paper proposes a synthesizable HDL code generation method using a processor speciffication description based on a configurable VLIW processor model.The proposed approachcan change the number of pipeline stages,the number of slots,and a dispatching rule that manages issued operations assigned to resources,and these parameters and each instruction behavior are represented in the processor specification description.The control logic including the pipeline controller,the decode logic,and the data path for VLIW processor are generated from the processor specification.Designers can explore ASIP design space using the proposed approach effectively,because the amount of description is small and the modification cost is also small.Using this approach,it took about eight hours to design 36 VLIW processors. Moreover,this approach provides a 82%reduction on the average compared to the description of the HDL code.
著者
小林 昭裕
出版者
公益社団法人 日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.589-592, 1996-03-28 (Released:2011-07-19)
参考文献数
6
被引用文献数
2 2

大雪山国立公園内の2箇所の区域を対象に, 利用者が利用体験を重視する程度と, 利用行為に伴うインパクトに対処する管理方策への支持やインパクトに対する不快感との関係について検討した。 利用者が示す態度の違いは区域間で小さかった。 しかし, 利用体験を重視する程度と管理方策の支持との関係は, 区域間で異なり, 利用者が支持する管理方策を用意するには, 区域毎に利用者が示す態度に応じた対応が求められた。 また, 対人的接触へのインパクトに比べ, 利用行為が自然環境に及ぼすインパクトについて, 対処の必要性や緊急性が高く, 利用者の不快感が強い傾向を示した。
著者
小林 昭裕
出版者
公益社団法人 日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.673-678, 2001-03-30 (Released:2011-09-13)
参考文献数
36
被引用文献数
2 5

国立公園では, 野外レクリエーション需要の高まりと利用形態の多様化によって, 生態系だけでなく自然体験の質の劣化が生じている。自然環境と自然体験の質を維持するには, 既存の計画手法に, 新たな方策を導入する必要がある。本研究では, 利用体験の質の保全に清眼し, その概念の導入を検討した。その結果, 機会を, 利用者が予想した利用体験を実現するため, 一定の空間で, 活動する利用者にとって好機ととらえ, 機会の多様性を図るという考え方は, 過剰利用に対応し, 自然体験の質を保全する上で有効な概念であり, 既存の国立公園の計画や管理を補完し, 統括的な計画や管理行為を考える上で, その有効性は大きいと判断された。
著者
小林正 桜田佐 那須辰造訳
出版者
講談社
巻号頁・発行日
1960
著者
谷 茂 小林 秀匡 福原 正斗
出版者
日本情報地質学会
雑誌
情報地質 (ISSN:0388502X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.118-119, 1999-06-10
被引用文献数
2

兵庫県南部地震では土構造物に多数の被害が発生し,小規模な農業用ため池でも多くの被害が発生した。2次災害を防止するためにも、地震時にはすみやかにため池の安全性を点検する必要がある。今回、高度地理情報を有するため池の防災データベースを開発した。本データベースは堤高、貯水量、洪水吐などの諸元、維持管理に必要な管理著名、管理状況、および地震時の災害予測情報等の情報を有するもので、貯水容量1,000m^3以上の農業用ため池を対象としている。現在、データベースには全国のため池、約82,000箇所についての諸元、画像情報のデータが入力されている。
著者
小林 誠 渡邊 定元
出版者
日本森林学会
雑誌
日本林学会大会発表データベース 第114回 日本林学会大会
巻号頁・発行日
pp.98, 2003 (Released:2003-03-31)
参考文献数
3

ブナは冷温帯の標徴種とされ、その分布の北限は北海道南部黒松内低地帯に存在する。北海道における冷温帯領域と、冷温帯の標徴種であるブナの北限が一致しない事実は、現在に至るまで様々な説が提唱されてきているが、いまだ定説は存在しない。現在ブナ林の最北限は「ツバメの沢ブナ保護林」であり、黒松内低地帯を越え、孤立した標高約600mに成立するブナ純林である。ツバメの沢ブナ林における林分構造の調査(真山ら1988)は、1986年以降行われておらず、本研究では1986年の調査資料を基に、ツバメの沢ブナ林における林分構造、およびその16年間の推移変化を解析することを目的とした。また、ブナ個体群の動態から、急傾斜地における齢構造の連続性、ブナの分布北限域における樹齢の短命化・今後の動向を検討した。 調査地は、ブナ林分布の最北限に位置する、北海道蘭越町ツバメの沢ブナ保護林である。尾根部にはミズナラ林、北西斜面の急傾斜地にはブナ林が成立し、地形に対応した優占樹種の交代がみられる。調査は2002年6月および8月に、1986年に標高600mの等高線上に設定された水平推移帯状区(10m×190m)を使用した毎木調査、また保護林内におけるブナの胸高直径の再測を行った。これらの調査は、北海道上川支庁真山良氏からご提供いただいた1986年当時の調査資料を基に、帯状区の再現およびブナ各個体の識別を行った。また階層構造の解析には、出現した樹木の樹高を、当該群落における最高樹高の相対値であらわし、それを基に群落を5階層に分ける、渡邊(1985)の順位係数を用いたSynusiaの解析を行った。 水平推移帯状区において、北海道における林冠層構成種(M1-Sy構成種(渡邊1985))の階層分布をみると、尾根部に成立するミズナラ林においては、ミズナラ、ダケカンバが林冠層を獲得し、ブナは中間層までしか階層をすすめていなかった。しかし、ブナ林が成立する北西斜面の急傾斜地に向かうほど、ブナが林冠層に出現し、かつ各階層に連続的に存在し、後継木も多数存在していた。 またブナの直径階分布は、小径木が多数存在し、各直径階に連続的に存在するL字型分布を示したのに対し、ミズナラは小径木をほとんど欠き、ある直径階にモードを持つ分布型を示した。このように、急傾斜地においてブナのサイズ構造は連続し、連続して更新していることが示唆された。またブナは個体数が他種に比べ圧倒的に多いが、胸高断面積合計(BA)がミズナラの約40%程だったことからも、ブナの小径木の多さが伺えた。また、直径階分布の16年間の変化として、ブナは26個体が新規進界個体だったのに対し、ミズナラは1個体のみで、ブナ個体群の変化は著しかった。 ツバメの沢ブナ林における16年間のブナ個体群の動態として、直径成長量の頻度分布は、平均5.205cm、モード5.5cm、歪度0.162と、正規分布に似た分布型を示した。本州における同様の調査によると、分布はL字型分布をとることから(村井ら編1991)、直径成長量のモードは分布の北限域において高いほうへとシフトしていることが明らかとなり、相対的に成長の良い個体が多いことが伺えた。また、各直径階における成長量の平均値を表すと、ほとんどが5cm付近にあり、北限域におけるブナの肥大成長は、生育期間を通じてほぼ一定に持続されることが明らかになった。このことから、急傾斜地におけるブナのサイズ構造の連続を、齢構造の連続と置き換えることが可能となり、μ+1σ、μ、μ-1σの3つの成長パターンにおいて、樹齢の推定を試みた。その結果、枯死木のほとんどが胸高直径70から80cmだったことから、樹齢190から250年程度で枯死していくことが推定された。このことから、ブナの最高樹齢は、本州中部の分布の中心に比べ、北限域において低下していることが示唆された。 このようなツバメの沢ブナ林の様態から、更新阻害などブナにとっての生育難は見受けられず、またブナは北西斜面の急傾斜地において、個体群の再生産を持続的に行っていた。連続的な更新に起因する個体群の拡大は、ツバメの沢ブナ林域での分布拡大の可能性を示唆した。
著者
花井 孝明 小林 昭久 盛永 健郎 日比野 倫夫
出版者
鈴鹿工業高等専門学校
雑誌
紀要 (ISSN:02865483)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.39-42, 2013-02-28

改良した最大エントロピー法を,そのデコンボリューション効果を調べるために,大きく焦点ずらししたTEM像の修復に適用した.最大エントロピー修復法の改良のために,推定ノイズに空間的ランダム分布制約を課した.この制約は,量子ノイズの統計的性質と矛盾しないものである.フェリチン粒子の焦点ずらし像から,粒子の元の形状と大きさが復元できたが,シミュレーションで見られたような,従来法を上回るような改良法の優位性は得られなかった.大きく振動していたコントラスト伝達関数は,よく再構築されて,正しいコントラストを与えている.
著者
田島 靖久 松尾 雄一 庄司 達弥 小林 哲夫
出版者
特定非営利活動法人日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.55-75, 2014

The Kirishima volcanoes located in southern Kyushu are comprised of more than 20 volcanic edifices. The volcanoes occupy an elliptical area of approximately 330km^2 with the WNW-ESE direction. Among the different types of volcanic edifices, the typical ones are compound maars and lava flows in Ebinokogen. We studied the volcanic history of Ebinokogen by geological examination of tephra layers and lava flows. After the Karakunidake-Kobayashi plinian eruption, seven tephra were formed in this area. We determined the ages of those tephra and two lava flows. The magmatic eruptions, produced Tamakino B tephra, occurred after Karakunidake-Kobayashi tephra eruption. The first activity in Ebinokogen from about 9.0 cal ka BP generated Fudoike lava flow, and Fudoike-Tamakino A tephra erupted from Fudoike crater. Karakunidake north-Ebino D tephra was generated from the northwest flank of Karakunidake at 4.3 cal ka BP, with debris avalanche and lahars. Phreatic Fudoike-Ebino C tephra erupted from the Fudoike crater at 1.6 cal ka BP. Ioyama-Ebino B tephra eruption started from around the 16^<th> to 17^<th> century with lava flow. Phreatic Ioyama east-Ebino A tephra erupted from Ioyama east crater in 1768 AD. The Ebinokogen area is one of the active regions of Kirishima volcanoes explicated by geophysical observations. Our results indicate cyclical tephra depositions mainly produced by small magmatic and strong phreatic eruptions in this area after the Karakunidake-Kobayashi pyroclastic eruption. Furthermore, the vent locations were found to migrate with each eruption.
著者
井上 創造 木實 新一 小林 隆志 土田 正士 喜連川 優
出版者
日本データベース学会
雑誌
日本データベース学会letters (ISSN:13478915)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.81-84, 2006-06

学術会議は,口頭発表や資料による形式的な情報だけではなく,参加者が面と向かって交流をすることにより非形式的に情報交換ができるという点に意義があると言える.しかし,学術分野の専門化と細分化が進む今,初めて面と向かった参加者どうしに,互いのネームタグに書かれた情報だけで有意義な交流のきっかけが十分に用意されるとは言い難い.我々は,居合わせた参加者間の関係を発見し大画面に表示するシステム「DeaiExplorer」を開発し,数百人規模の国際学術会議において利用した.本システムは,居合わせた参加者が持つ RFID タグに反応し,文献データベースから参加者や他の著者をノードとするグラフを生成する.本論文では,利用で得られた結果を用いて,本システムが参加者間の関係発見にどのような影響を及ぼしたかを定性的,定量的に明らかにし,今後のシステム設計および研究課題の展望を示す.Academic conferences offer informal as well as formal opportunities to interact with each other. However, the physical appearance of participants and the information printed on their conference badges could not be enough to provide the effective opportunities. We developed "DeaiExplorer", which is an RFID application that discovers interpersonal connections by allowing collocated conference participants to mutually reveal their social networks on a large display device, and deployed it at a recent international conference. The system responds to nearby participants and dynamically derives inter-connected social networks from a publication database. We address the uncovered requirement for the system and challenges with the experience.
著者
三部 良太 田中 匡史 小林 伸悟 小林 隆志
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.1150-1160, 2018-04-15

昨今の業務システム開発では,既存システムが存在し,その既存システムの仕様の一部踏襲を求められることが多い.しかし,既存システムには最新の仕様書が残っていることが少なく,踏襲すべき仕様の特定が困難になっている.この課題に対して,ログなどを用いて操作の流れのフローを復元する取り組みはあるが,ユーザと仕様の議論をするには粒度が細かすぎて,上記の用途には適さない.本稿では,既存システムからの業務フロー仕様の復元を目的として,システムの操作ログから詳細な業務フローを復元する手法および操作したユーザの組織情報を用いて業務フローの粒度を抽象化する手法を提案する.操作ログの一連の操作をクラスタリングし,代表となる操作を抽出することで,業務の全体像の俯瞰に適した抽象化を実現する.提案手法を実際のシステムで適用した結果に基づき手法の有効性を議論する.
著者
星野 裕司 萩原 健志 小林 一郎
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.339-348, 2001-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
14

本研究では、事象を含めた景観を考察するためには、事象の想起とそれへの参画を主要な機構とする場所論的把握が必要であると考え、そのモデル化のための1つのサンプルとして明治期につくられた沿岸砲台から得られる眺望景観に着目した。九州内の3要塞 (下関・佐世保・長崎) を対象に、各砲台から得られる眺望景観を事象パターンの相違に着目し、4パターンに分類した。それらのパターンに対して、場所論的な考察を行い、現在公園化が進んでいない「疾走型」、「斜行型」は、観察者・事象・眺めの関係の中で何れかに不備があり、公園化の進んでいる「擦過型」、「周流型」は、事象の想起あるいは参画の何れかが優れていることを明らかとした。