著者
濱田 浩美 真砂 佳菜子 小林 静江
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.000017, 2003 (Released:2003-04-29)

1.調査地域の概要 日光国立公園内にある日光白根山五色沼は、北緯36度48分5秒、東経139度23分5秒に位置する湖沼である。栃木県日光市と群馬県片品村の県境付近にあり、日光火山群の最高峰といわれる日光白根山の東北東1kmに位置し、白根山の火成作用によって形成された日光火山群唯一の火口湖で、湖水面標高は2170mである。五色沼は西南西に位置する白根山の火成作用によって形成された日光火山群唯一の火口湖である。冬季は完全結氷し、2001年11月下旬の調査において氷の厚さは13cm、2002年11月末では18cmであった。2.研究目的 同湖沼に関する調査は、日光地域の一湖沼として観測された研究が数編報告されている。宮地・星野(1935)は氷殻下における水温・pH・溶存酸素量・溶存酸素飽和度を測定し、1979年7月に小林純ら(1985)が、湖心部における水温・電気伝導度・pHの測定および19項目の水質分析を行った。水質は無機化学成分の濃度が非常に希薄で、清澄な水であったと報告している。しかし、今までに日光白根山五色沼に関する継続的な調査は行われておらず、水温・水質の鉛直分布の測定、湖盆図さえ報告されていない。 五色沼は閉塞湖であり、水位を安定に保とうとする自己調節機能をもっているが、水温・水質の季節変化と同様に明らかにされていない。そこで本研究では、日光白根山五色沼において、水位変動および水温変化を連続観測し、湖水の主要イオン濃度の分析を行うとともに、光波測量を行い、正確な湖盆図を作成した。これらの観測結果から、閉塞湖における水温・水質の季節変化および水収支を明らかにした。3.研究方法a.現地調査 現地調査は2001年11月21日,2002年5月19日,6月8日,8月28日,10月5日,11月27日の計6回行った。観測は全て湖心部において行い、採水は1mまたは0.5mおきに行った。水温および水位の連続観測は、2002年5月19日よりデータロガーを設置し、記録を開始した。湖の北側湖岸の1地点に(株)コーナーシステム製の水圧式自記水位計(KADEC-MIZU)を設置した。b.室内分析 採水して持ち帰った湖水は、後日実験室にて、主要イオン(Na+,K+,Mg2+,Ca2+,Cl-,NO3-,SO42-)濃度の分析とpH4.8アルカリ度の測定を行った。4.結果および考察a.水温・水質の季節変化 五色沼が水深5m弱と浅く、光が湖底に達している。夏季の成層は極めて小さいことがわかったが、透明度は最大水深より大きく、水体および湖底全体が受熱していると考えられる。冬季は逆列成層が形成されていた。b.主要イオン濃度分析 年間を通して、湖水の主要イオン濃度は極めて希薄であり、雨水に近い値を示した。白根山は休火山であるにもかかわらず、硫酸イオンや塩化物イオンは低濃度を示しており、火山性の影響が認められなかった。c.日平均気温と水温変化 水温変化は、日平均気温の低下が続くと、少し遅れて低下傾向を示すことから、気温が影響しているといえる。常に水温が日平均気温よりも高いのは、日光白根山五色沼は透明度が高く、日射により水体および湖底の全体が受熱しているために、高い水温を示すと考えられる。d.水収支 日光白根山五色沼は閉塞湖である。調査期間における13ヶ月の降水量は約1560mmであり、流入河川および流出河川を持たないために、相当量の漏水がなければ水位は維持されない。漏水深は、水位が上昇するにしたがって、大きくなる傾向が認められた。7月10日に131mmの日降水量があり、水位は4日間で約50cm上昇するが、漏水深も大きくなるために、無降水時および2~3mm/day程度の降雨時には水位降下の傾向がみられた。
著者
貝戸 清之 小林 潔司 青木 一也 松岡 弘大
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.255-271, 2012 (Released:2012-10-19)
参考文献数
36
被引用文献数
12

社会基盤施設の劣化過程においては,施設の構造特性や使用・環境条件の違いにより劣化速度に多大な異質性が存在する.個々の施設に特有な異質性がもたらす劣化速度の過分散の問題を克服するために,施設グループ間の劣化速度の異質性を明示的に考慮した混合マルコフ劣化ハザードモデルが提案されている.本研究では,劣化速度の過分散が,施設グループ間における劣化速度の異質性と,グループを構成する個々の施設間における異質性というレベルの異なるつの異質性が複合された結果により発生すると考える.その上で,階層的異質性を導入した混合マルコフ劣化ハザードモデルを定式化し,その階層ベイズ推計法を提案する.最後に,橋梁床版に対する目視点検データを用いた実証分析を通して,本研究で提案する手法の妥当性を検討する.
著者
嵯峨田 淳 八島 由幸 小林 直樹
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告オーディオビジュアル複合情報処理(AVM) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2000, no.24, pp.25-30, 2000-03-03
参考文献数
7
被引用文献数
1

従来のゼロツリー符号化はゼロツリールートの出現確率が極めて高いため,単純に可変長符号化した場合,そのエントロピーと比較して効率が低下する.このため,各シンボルの符号化には,一般的に算術符号化が用いられる.また,ゼロツリー符号化はその符号体系自体に冗長性があり,親子係数間の相関を効率的に除去できないという問題がある.本稿では,ある変換係数の直接の子供係数のうち,この子供係数がZTRである個数と,変換係数のレベルの絶対値からなる二次元可変長符号を用いてエントロピー符号化を行う.本手法により,解像度スケーラビリティを有しつつ,符号化効率を損なうことなく,可変長符号化を用いてウェーブレット変換係数を符号化することができる.This paper describes an efficient and effective entropy coding strategy for the compression of wavelet transformed, motion compensated prediction residuals. The proposed entropy coding algorithm consists of two dimensional variable length coding(2D-VLC), which encodes both the level of transformed coefficient and and the number of ZTRs in its direct children-coefficients simultaneously. At this time, 2×2 cluster of adjacent wavelet coefficients are jointly coded with the 2D-VLC to exploit the spatial correlation of neighboring coefficients. Along with the 2D VLCs of each cluster, the proposed zerotree-map code is appended at the head of them to remove the redundancies of any conventional zerotree encoding algorithms. Simulation results show that the proposed coding method is superior to conventional arithmetic coding, or variable length coding with the length ZTR runs.
著者
糟谷 大河 小林 孝人 黒川 悦子 Hoang N.D. Pham 保坂 健太郎 寺嶋 芳江
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.31-45, 2016

<p>3種の日本新産のチャツムタケ属菌,<i>Gymnopilus crociphyllus </i>(オオチャツムタケ),<i>G. dilepis</i> (ムラサキチャツムタケ)および<i>G. suberis</i> (エビイロチャツムタケ)について,本州(茨城県,富山県,石川県,愛知県),鹿児島県(奄美大島)および沖縄県(西表島)で採集された標本に基づき,形態的特徴の記載と図を添えて報告した.核rDNAのITS領域を用いた分子系統解析の結果,これら3種はそれぞれ,最節約法のブートストラップ値で強く支持される単系統群を形成した.</p>
著者
永井 祐吾 勝見 正治 田伏 克惇 田伏 洋治 青山 修 江川 博 野口 博志 小林 康人 森 一成 山上 裕機 中井 健裕
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.28, no.7, pp.1511-1518_1, 1986

当教室ではじめて開発した内視鏡的マイクロ波凝固療法を早期胃癌25例に行い,本法による局所的癌完全消滅の可能性について検討した. 14例は根治手術予定の症例であり,術前内視鏡検査時に病巣の部分または全域凝固を行い切除標本にてマイクロ波凝固の影響を検討した.部分凝固群7例においては,凝固部はulII~IVの潰瘍となり,潰瘍底にはviableな癌細胞は認められなかった.全域凝固群7例中,3例においては,摘出標本の連続切片のいずれの部位にも腫瘍細胞は認められず,本法による局所根治例と考えられた.残りの4例中2例は凝固後の潰瘍底のsm層に,あとの2例では辺縁粘膜に,いずれも微少な癌病巣が残存していた. 内視鏡的治療のみを行った11例のほとんどは高齢や重篤な併存疾患のために手術の適応外となった症例であった.生検にて悪性所見が消失するまでに1~6回の凝固療法を要し,2~50カ月(平均17カ月)の経過観察中2例にのみ再発を認めた.再発例にはさらに凝固を追加し,再び悪性所見は消失した. 以上より局所的癌完全消滅という点においては,本法はsmまでの浸潤胃癌にまで有効であり,現時点においては,手術不適応となった早期胃癌の治療法として期待できると考える.
著者
山下 純一 松本 宏 小林 和弘 野口 和春 安本 三治 上田 亨
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Chemical and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.37, no.9, pp.2287-2292, 1989-09-25 (Released:2008-03-31)
参考文献数
30
被引用文献数
7 15

A practical synthesis of 3'-O-benzyl-2'-deoxy-5-trifluoromethyluridine (1), a candidate antitumor agent for clinical testing, was developed from 2'-deoxy-5-iodouridine (3). Benzylation of 2'-deoxy-5-iodo-5'-O-trityluridine (14) with benzyl bromide and sodium hydride in tetrahydrofuran gave the 3'-O-derivative (16). Benzoylation of 16 afforded the N3-benzoyl derivative (17). Coupling of 17 with trifluoromethylcopper, prepared from bromotrifluoromethane and copper powder in the presence of 4-dimethylaminopyridine, gave the 5-trifluoromethyl derivative (19) minimally contaminated with the 5-pentafluoroethyl compound. Deprotection of 19 furnished 1.
著者
福田 直也 小林-吉中 美湖 鵜生川 雅巳 高柳 謙治 佐瀬 勘紀
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.509-516, 2002-07-15
参考文献数
19
被引用文献数
5 17

数種人工光源の光質がペチュニアの生育に及ぼす影響について, 光強度, 照射期間などの関連する要因とともに評価した.環境制御室に設置したメタルハライドランプ(MH), 高圧ナトリウムランプ(HPS)および青色光ランプ(B)下でわい性中輪咲ペチュニア'バカラブルーピコティ'を栽培し, 生育の比較を行った.実験では, 光質, 光強度および照射期間などの光環境要因と, 各要因との相互作用が生育に及ぼす影響を調査した.さらに, GA<SUB>3</SUB>およびウニコナゾール処理を行い, 光質がペチュニアの生育に及ぼす影響とジベレリンとの関連について考察した.1. MHやB下に比べて, HPS下で栽培したペチュニアは, 草姿がわい化する傾向があった.HPS下の最大側枝長はMHやB下よりも約30%わい化し, 節間長も短くなった.HPS下において草姿がわい化したのは, HPSの赤色/遠赤色光比(R/FR)が高いことから, フィトクロム反応が原因であると考えられる.2. MHおよびHPSの両光源下では, 光強度が低いほど草丈が高くなった.しかし, いずれの光強度においても, HPS下で生育した植物体の草丈はMHよりも低かった.3. 生育期間中に植物体をMHからHPS下に移動したところ, 草丈の伸長速度が低下した, このことから, ペチュニアの草丈は生育後半に受けた光質の影響を大きく受けること, ならびにペチュニアの草丈に及ぼす人工光源の光質の影響には残効性がないことが示された.4. HPS下の植物体ではGA<SUB>3</SUB>処理により草丈の著しい増加が認められたが, ウニコナゾール処理による茎伸長抑制効果はほとんど観察されなかった.以上のことから, R/FRが高い光環境下では, 内生ジベレリン濃度が低下し, その結果として草丈が短くなる可能性が示唆された.
著者
小林 一樹 山田 誠二
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.63-72, 2006 (Released:2006-01-06)
参考文献数
18
被引用文献数
2 3

In this paper, we first propose a novel interaction model, CEA (Commands Embedded in Actions). It can explain the way how some existing systems reduce the work-load of their user. We next extend the CEA and build ECEA (Extended CEA) model. The ECEA enables robots to achieve more complicated tasks. On this extension, we employ ACS (Action Coding System) which can describe segmented human acts and clarifies the relationship between user's actions and robot's actions in a task. The ACS utilizes the CEA's strong point which enables a user to send a command to a robot by his/her natural action for the task. The instance of the ECEA led by using the ACS is a temporal extension which has the user keep a final state of a previous his/her action. We apply the temporal extension of the ECEA for a sweeping task. The high-level task, a cooperative task between the user and the robot can be realized. The robot with simple reactive behavior can sweep the region of under an object when the user picks up the object. In addition, we measure user's cognitive loads on the ECEA and a traditional method, DCM (Direct Commanding Method) in the sweeping task, and compare between them. The results show that the ECEA has a lower cognitive load than the DCM significantly.
著者
平野正章 小林菊衛著
出版者
柴田書店
巻号頁・発行日
1976
著者
吉村 英徳 岡本 辰憲 濱本 英利 石橋 賢樹 小林 勝則 三原 豊
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
年次大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.109-110, 2009

A new fabrication method of a painless micro needle array for high reliable vaccine delivery system through a epidermis is proposed. This method has been developed to realize the inexpensive and mass production of the needle array. For safety against the break of the needle, the needle is made with biogradable polymer (PLA). The proposed method has the following processes, (1) Si tool in a shape of micro needle array is heated, (2) tops of the needles over the Si tool are touched onto the surface of the polymer plate to melt the contacting areas, and (3) the Si tool is detached from the plate to form the needles by elongating the melted polymer. In order to make the uniform needles over the plate, temperature, touching time, and withdrawing speed of the Si tool and tolerance of the polymer plate are examined. By the optimized working conditions, keen corn-type needles having the height of about 500μm can be formed enable to penetrate into the epidermis.
著者
関根 理敏 小林 一樹 伊加田 恵志
出版者
人工知能学会
雑誌
2018年度人工知能学会全国大会(第32回)
巻号頁・発行日
2018-04-12

近年,主に製造業の分野において,工場設備や工業製品の機器の予防保全に向けたセンサデータの収集・分析による異常検知のニーズが高まっている.そこでは機器の状態監視において,センサデータをリアルタイムに収集・分析し,観測対象の故障の兆候を自動的に把握する.機器の異常検知において,従来手法では一例として,機器の正常・異常に関連する特定の周波数帯のパワーに着目し,そのパワーの大小を比較することによって異常検知を行っている.しかしながら,正常・異常に関与する周波数帯が複数ある場合や,広域にまたがる場合,また検知対象に個体差がある場合等では,周波数帯を明確に特定し,パワーの大小から異常検知を行うのが困難な場合がある.そこで本稿では,教師なし学習アルゴリズムである非負値行列因子分解(Non-negative Matrix Factorizationを利用し,学習段階と判別段階でNMFの基底行列を共通化することで,係数行列を特徴量とした異常検知手法を提案する.機器を利用した異常検知の性能評価を行った結果,振動データの自動特徴抽出によって,異常部位の動作区間における異常検知が可能であることが分かった.
著者
下山雄大 小林亜樹
雑誌
第76回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, no.1, pp.493-494, 2014-03-11

多くのユーザにツイートを届けるためには,ツイートの閲覧されやすい時間帯に投稿することが有効である.このため,特定のユーザについてツイート行動を観測し,それぞれの時間帯でのツイート閲覧確率を推定する手法を提案してきた.しかし,多数のユーザについての閲覧されやすい時間帯を統合して推定する手法は未開発であったため,本稿ではその手法について提案する.本手法では,各ユーザのツイート閲覧確率を基に,それぞれの時間帯でのツイートを閲覧するユーザ数の期待値を推定する.提案手法の効果を実験によって検証する.
著者
小林 創太 筒井 俊之 山本 健久 西口 明子
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.69, no.12, pp.1255-1258, 2007-12-25
参考文献数
20
被引用文献数
11

我が国のヨーネ病摘発農場に対して全国的な疫学調査を実施し,感染農場の初摘発時におけるヨーネ病の農場内浸潤度を示唆する疫学的指標を検討した。本研究では初摘発から1年以内に感染牛が再摘発される農場では,その農場が初摘発される以前に農場内伝播が成立していると仮定し,各農場の監視期間中の追加摘発状況を観察したところ,新規に摘発された594農場のうち,158農場(27%)で再摘発が認められた.また,初摘発時の疫学情報をロジスティック回帰分析に供したところ,3つの疫学的な指標が再摘発と関連していた.すなわち,「初摘発時に発症牛がいる」,「初摘発時に複数頭摘発される」,および「牛舎形態がつなぎ飼いでない」農場は,「初摘発牛に発症牛がいない」,「初摘発頭数は1頭のみ」,および「つなぎ飼い」の農場に比べ,それぞれ3.8(95% confidence interval: 2.2,6.8),2.8(95% CI: 1.8,4.5),および2.0(95% CI: 1.1,3.6)倍再摘発されやすいことが示唆された.家畜衛生関係者にとってこれらの疫学的指標は,より集中的な防疫対策を実施するべきか否かをヨーネ病の初摘発時に判断する際の重要な指標になると思われた.