著者
田岡 正宏 山本 千恵子 金 成泰 高杉 昌幸
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.34, no.13, pp.1543-1548, 2001-12-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
12

血液透析濾過 (HDF) は慢性腎不全患者体内に蓄積する大分子物質の除去を目的とするが, 液置換が大量になるほど血清アルブミンの漏出が過大となる傾向がある.今回, 定圧濾過におけるアルブミン漏出の動態を調べる目的で, 5名の安定維持血液透析患者にポリスルフォン膜を使用し, 血流250ml/分で血液透析およびon-line HDFを施行した. 濾過条件は前希釈法および後希釈法それぞれにおいて膜間圧力差 (TMP) を50, 150, 250, 350mmHgに設定し, 5時間の治療時間中, 経時的に透析排液を採取しアルブミン濃度を測定した. いずれの濾過圧においてもアルブミン漏出は濾過開始時に最大となり, 60分の経過で急峻に低下し, その後は終了まで漸減傾向を示した. 同じ濾過圧であれば後希釈の方が, 前希釈よりもアルブミン漏出量が大きかった. また, 濾過圧が大きいほどアルブミン漏出量は有意に増大した. ただし, 後希釈HDFにおいてTMPを350mmHgに設定した場合は高度の膜劣化による細孔狭小化により, アルブミン損失は150および250mmHgに設定した場合や前希釈法で同じ350mmHgに設定した場合よりも有意に低下した. アルブミン損失を制御する観点から, 漏出が過大となる治療開始後5分間は濾過を行わず, その後60分かけて濾過速度ないしTMPを漸増させ, 以後終了時まで最高の濾過量を確保できる条件に設定すれば, 大量液置換を行いつつ, 1回治療あたりのアルブミン損失量を4g以下に抑えることができる.
著者
山本 佳世子
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.90, no.1, pp.99-123, 2016 (Released:2017-07-03)

「非宗教者」によるスピリチュアルケアの営みを支えるビリーフを検討するために、臨床現場から逃げずに、ケア対象者の「今」を無条件に受け入れるという営みにおける「祈り」について考察する。その際に、「信仰に基づかない祈り」に言及した論考として、小説家の大江健三郎と写真家の藤原新也の論考を検討する。そこから見えてくるのは、自身の限界が身に沁みるとき、私たちは所詮「なんでもない人」なんだと覚悟を決め、開き直ることで受け入れる祈りであった。それは「それでも世界は続いていく」という確信のもと、「なんでもない人」である私が、「なんでもない人」であるあなたを受け入れたいと、「なんでもない人」として死んでいった小さな存在・無名の存在を愛おしみ、慈しむ「祈り」である。このような確信と行為は、日本独自の無常観と、愛おしみ慈しむことで死者を賦活させ、交流する先祖供養に基づく死生観に支えられている。
著者
福市 彩乃 山本 佑実 菅村 玄二
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.369-377, 2019-03-20 (Released:2019-03-25)
参考文献数
50
被引用文献数
2

正座が,通常の椅座位やあぐらと比べて,授業場面でどのような影響を与えるか検討した.研究1では,カウンターバランスしたうえで36名が同じ椅子に3種類の姿勢で座り,それぞれ5分ずつ論文を読んだり講義を聞いたりした.その結果,あぐら条件や椅坐位条件よりも正座条件で参加者の眠気が低かった(ps < .02).また,正座条件では肉体的疲労が高かった(p = .013)が,精神的疲労は他条件との差が見られなかった.研究2では,実際の大学の授業でそれぞれ同一の椅子に座った83名の参加者を正座群と椅坐位群にランダムに割り付けた.その結果,正座群で,正座中及び正座後10分後の両時点で正座前よりも眠気が低く(ps < .05),足の痛みが高かった(ps< .002).一方で,姿勢間には肉体的疲労度,精神的疲労度,ストループ課題及び文字流暢性課題の有意差はなかった.正座は足の痛みをもたらすものの,痛みでは説明されない眠気緩和効果をもたらした.
著者
山本 政幸
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第66回春季研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.266, 2019 (Released:2019-06-27)

明朝体とゴシック体の読みやすさについて、書体サイズ12Q(18H送り)、16Q(24H送り)、24Q(36H送り)における比較実験を行った上で、ゴシック体の本文(400字の本文横組み)への適性を検証することを目的とした。12Qと24Qでは明朝体の読了時間が短かったが、16Qではゴシック体がわずかに短かかった。
著者
山本(前田) 万里
出版者
日本電気泳動学会
雑誌
生物物理化学 (ISSN:00319082)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.37-40, 2009 (Released:2009-12-04)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

O-Methylated (−)-epigallocatechin gallates (EGCGs) have an anti-allergic action, and the Japanese tea cultivar ‘Benifuuki’ is rich in EGCG3''Me, which is lost due to processing in black tea. Oral administration of O-methylated EGCGs significantly and dose-dependently inhibited type I allergic reactions in mice. O-methylated EGCGs also strongly inhibited mast cell activation through the prevention of tyrosine phosphorylation of cellular protein and high-affinity IgE receptor expression, as well as histamine/leukotriene release. Over a one-month period, drinking ‘Benifuuki’ green tea was useful to reduce some of the symptoms of Japanese cedar pollinosis, and did not affect any normal immune response in subjects with seasonal rhinitis. The AUC (area under the drug concentration time curve) of EGCG3''Me was 6.4 times that of EGCG in healthy human volunteers. Furthermore, many foods and household goods used ‘Benifuuki’ green tea were developed and sold by several manufacturers.
著者
山本 靖
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子 (ISSN:04541138)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.264-265, 2002-04-01 (Released:2011-10-14)
参考文献数
12
著者
山本 真功
出版者
学習院大学
巻号頁・発行日
2017

application/pdf
著者
山本 堅一
出版者
北海道社会学会
雑誌
現代社会学研究 (ISSN:09151214)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.41-57, 2023 (Released:2023-08-01)

コロナ禍をきっかけに,世界中でオンライン授業の普及が進んだ。学生を教 室に集めて対面で授業を行うことは,リスクがあったからだ。オンライン授業 をやってみると,意外と良いなと感じている教員,学生がいれば,やはり対面 の方が良いと感じている教員,学生もいる。 オンライン授業を2年経験し,ある程度コロナ禍が落ち着いてきた中で,わ れわれが進むべき道が目の前で二つに分かれている。コロナ禍以前の対面授業 に戻すか,オンライン授業の活用を継続するか,である。前者は平坦な,後者 は険しい道である。 オンライン授業を活用したこの2年間,さまざまな課題が噴出したのは確か である。その一方で,やはり授業は対面でなければいけない,という確たる根 拠も出てきていない。しかしながら,オンラインは止めて対面に戻そうという 動きの方が強いように感じられる。 本稿では,オンライン授業の実践例,北海道大学の学生と教員に取ったオン ライン授業に関するアンケート調査結果を紹介し,オンライン授業の可能性に ついて考察した。解決が難しい課題はあるものの,オンライン授業は部分的に でも継続していくべきである,ということは示されたのではないだろうか。特 に,講義形式の授業においては,オンライン授業を活用することで,学習者中 心の授業へと転換しうるという点は,教育効果と共に検証が期待される論点と なった。
著者
岩崎 英治 仲井 大樹 山本 寧音
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.8, pp.23-00035, 2023 (Released:2023-08-20)
参考文献数
12

鋼トラス橋は,他の橋梁形式に比べて,構造冗長性は高くなく,主構部材の損傷により橋梁全体の構造安定性を損なう恐れがある.一方,鋼トラス橋は多くの骨組部材で構成されているため,腐食損傷の発生パターンは多様であり,損傷部位の力学的な合理性に基づいた定量的な健全性の診断方法は確立していない.トラス橋の斜材の断面は,鋼板のすみ肉溶接や部分溶け込み溶接により構成することが多く,溶接部に腐食減肉を生じると分離することがある.そして,腐食切れの範囲が長くなると,圧縮斜材では構成する板の局部座屈を生じる可能性がある.そこで,圧縮斜材の柱としての全体座屈と斜材を構成する板の局部座屈の連成座屈強度による健全性レベルの分類を示す.また,腐食切れ部を含んだ板の座屈強度式,および連成座屈評価式を提案する.
著者
馬場 慎介 澤村 大地 村串 まどか 柳瀬 和也 井上 暁子 竜子 正彦 山本 雅和 中井 泉
出版者
公益社団法人 日本分析化学会 X線分析研究懇談会
雑誌
X線分析の進歩 (ISSN:09117806)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.284-307, 2017-03-31 (Released:2023-08-18)
参考文献数
40

日本で出土する古代ガラスの化学組成の違いは,ガラスの製造地や原料の違いを反映することが知られている.日本では古代ガラスの研究が盛んに行われてきたが,平安時代以降の中世のガラスに着目して研究をした例は少ない.本研究では中世以降の京都府出土のガラスについてポータブル蛍光X線分析を用いて非破壊化学組成分析を行った.分析結果を他地域の中世のガラスと比較することで,ガラスの流通について考察することなどを目的として研究を進めた.まず,全資料を主成分組成により分類したところ,カリ鉛ガラス(K2O-PbO-SiO2),カリ石灰ガラス(K2O-CaO-SiO2),アルミナソーダ石灰ガラス(Na2O-Al2O3-CaO-SiO2)の3種類が確認された.カリ鉛ガラス,カリ石灰ガラスは中世を代表するガラスであり,化学組成に差が見られるものもあり,異なる起源を有することがわかった.アルミナソーダ石灰ガラスについては古代日本で広く流通したガラスタイプであるが,微量重元素組成においても古代のアルミナソーダ石灰ガラスと類似した組成を持つため,古代からの伝世品である可能性が示された.
著者
岩田 泰介 高橋 里沙子 伊藤 舞 今井 有紀 岸 竹美 戸村 慎太郎 山本 杏菜 藤田 淳
出版者
Japanese Society of Veterinary Anesthesia and Surgery
雑誌
日本獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:21896623)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.17-23, 2022 (Released:2022-12-21)
参考文献数
15

術中出血リスクが高い待機手術を受ける犬猫42頭に対して、術前希釈式自己血採血・輸血を実施した。日本自己血輸血学会のガイドラインを基に、プロトコルを作製した。希釈式自己血採血・輸血の関連する重度な有害事象は認められず、安全に実施できた。また、同種血輸血を回避できた症例がいたことから、希釈式自己血輸血は有用性が高いと考えられた。