著者
岡本 健
出版者
北海道大学観光学高等研究センター = Center for Advanced Tourism Studies, Hokkaido University
雑誌
CATS 叢書 (ISSN:21853150)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.139-176, 2012-03-31

観光資源としてのコンテンツを考える : 情報社会における旅行行動の諸相から = Current Issues in Contents Tourism : Aspects of Tourism in an Information-Based Society
著者
岡本 至
出版者
東京大学社会科学研究所
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.109-139, 2005-02-07

1990年代の「金融ビッグバン」は,日本の金融システムの抜本的自由化を図り,自由で公正でグローバルな金融市場を創出することを目指したものだった.しかし現在,証券市場の停滞や銀行の不良債権問題などに見るように,改革は所期の目的を果たしていない.これはなぜか,論文は,ビッグバン失敗の原因を,改革が証券業の自出化に留まり銀行部門への政府の保護が継続したこと,そして政府の証券市場に対する場当たり的介入にあることを確認する.その上で論文は,この問題は,改革が大蔵省証券局のイニシアティブによる「ボトムアップの改革」であったこと,大蔵省解体後,政治家が金融行政に介入するようになったこと,という金融ガバナンス上の問題に起因していると結論する.
著者
横山 仁史 髙垣 耕企 神原 広平 神人 蘭 岡本 泰昌
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.295-306, 2021-09-30 (Released:2022-01-12)
参考文献数
20

心理療法のエビデンスは介入前後の標的指標の差に基づくものが多く、その治療効果がどのように実施された結果得られたのかについて定量的な情報は乏しい。心理療法は言語を主手段とするが、近年、言語情報に対してデータ駆動型の計算アプローチによって客観的かつ再現可能なモデルを生成するトピックモデルが注目されている。本研究では、構造化された1事例の行動活性化中の会話データから、時系列構造を有する動的トピックモデルが治療セッション内容を抽出可能かについて検討を行った。結果として、会話に関する潜在的な四つのトピックが抽出され、それらの量的変動過程が治療プログラムを反映していることが示された。本研究は動的トピックモデルを心理療法中の会話に対して用いた最初の研究であり、これによる実際の治療プロセスの定量化と作用エビデンスの蓄積が期待できる。
著者
岡本 誠 宮本 圭
出版者
一般社団法人 日本魚類学会
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
pp.21-034, (Released:2022-02-08)
参考文献数
29

In an on-going faunal study of deep regions of the East China Sea, using a Remotely-Operated Vehicle (ROV), a single specimen (57.4 mm in standard length: SL) of Epigonus elongatus Parin and Abramov, 1986 was collected at 410 m depth off the west coast of Okinawa Island, Japan. The species has been previously reported only from the type locality in the Farquhar Islands, Western Indian Ocean, the present report being the first of the species from waters adjacent to Japan. The new standard Japanese name “Kogeme-yasemutsu” is proposed for the species, which belongs to the E. pandionis group, and is characterized by the following combination of characters: dorsal-fin rays VII-I, 10; pectoral-fin rays 18–20; gill rakers 22 or 23; vertebrae 10 + 15; pyloric caeca 7–9; pored lateral-line scales 48–50 + 2; pungent opercular spine absent; maxillary mustache-like process absent; lingual teeth absent; a pair of ribs on last abdominal vertebra absent; tubercle on inner symphysis of lower jaw absent; orbital diameter 12.1–13.6% SL; lowerjaw length 13.4–15.1% SL; and body depth 16.4–18.5% SL. An in-situ ROV photograph of E. elongatus from Okinawa Island is provided. The genus Epigonus is represented in Japanese waters by six species including E. elongatus; Epigonus atherinoides (Gilbert, 1905); Epigonus ctenolepis Mochizuki and Shirakihara, 1983; Epigonus denticulatus Dieuzeide, 1950; Epigonus fragilis (Jordan and Jordan, 1922); and Epigonus pectinifer Mayer, 1974.
著者
三木 武寛 大林 由美子 目黒 敬一郎 岡本 雅之 岩崎 昭憲 小川 尊明 三宅 実
出版者
日本小児口腔外科学会
雑誌
小児口腔外科 (ISSN:09175261)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.105-108, 2008-12-25 (Released:2011-08-11)
参考文献数
17

In clinical oral surgery, we often encounter cases of infants who fall down while holding a toothbrush in their mouth and receive an oral injury from a toothbrush. This particular case was that of a 5-year-old girl who accidentally injured her left buccal mucosa with a toothbrush. After the injury, she was immediately brought to the hospital by ambulance. When she arrived at our hospital, the toothbrush was still embedded in the oral wound. We examined her oral wound by computer tomography (CT). We found that the tip of the toothbrush was located in the vicinity of the left medial pterygoid muscle, and there was neither damage from the toothbrush itself nor on the maxillary artery and basal skull. We removed the toothbrush carefully under local anesthesia, and then cleaned the wound by adequate normal saline and administered antibacterial drugs (SBT/ABPC) intravenously. No serious complications were seen after the treatment.It is strongly suggested that in such a case an immediate examination be conducted by CT in order to avoid severe complications and to insure a good healing process.
著者
伊藤 秀一 小川 杏美 平田 彩夏 岡本 智伸
出版者
東海大学農学部
巻号頁・発行日
vol.31, pp.21-29, 2012 (Released:2013-10-08)

動物園の飼育環境は,野生環境と比較すると刺激が乏しいことから,動物が異常行動を発現するなどの問題が指摘されている。近年の動物園では野生環境の再現を行う生態的展示と呼ばれる管理法の導入が試みられている。しかしこの管理法では,動物が陰に入ってしまい,動物を目にする機会が極端に減少してしまう可能性があることから,動物園への来園者が"動物体を見る"ことに重点をおいている場合は,動物園の利用が減少する可能性が考えられる。そこで本研究では,動物園来園者が動物園に求めていることを知るために,動物飼育と遊園地等の複合施設においてアンケート調査を行った。調査項目は(1)来園者の属性に関する項目(2)動物園の利用頻度についての項目(3)来園の目的に関する項目(4)来園者が動物園に求めている内容に関する項目とした。5日間の来園者数は9548人で,アンケートの回収数は972人だった。解析の結果,動物の飼育環境を野生に近づけて動物体が見にくくなる環境に関して,見える方が良いという回答と見えにくくても良いという回答はほぼ同数だった。また,動物への好みに関しては,"珍しいが寝ている動物"よりも,"どの動物園にもいるが活発に動く動物"を見たいという回答が多かった。
著者
岡本 健
出版者
北海道大学観光学高等研究センター = Center for Advanced Tourism Studies, Hokkaido University
雑誌
観光創造研究
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1-13, 2008-07-14
被引用文献数
2

本報告の目的は、アニメ聖地巡礼者の行動や態度を把握する方法として、アニメ聖地巡礼ノート分析を提案し、その有効性と課題を抽出し、報告することである。具体的には、埼玉県鷲宮町にある大酉茶屋に設置されたアニメ聖地巡礼ノートを分析の対象とし、その有効性と課題を抽出した。埼玉県鷲宮町は、アニメーション作品「らき☆すた」によってアニメ聖地として価値付けをされ、鷲宮神社を中心にアニメ聖地巡礼が活発におこなわれるようになった地域である。大酉茶屋は、鷲宮神社に隣接する飲食店兼休憩所であり、アニメ聖地巡礼者が多く訪れる場所である。This paper has two purposes. One is to discuss about a method for investigation of pilgrims' behavior in "Sacred Place for Anime Fans". Another is to report the result of analyzing thepilgrimage note written by Anime Fans who visited Washimiya-cho in Saitama Pref. (This place is one of the most popular Sacred Places for Anime Fans in Japan). This report also suggests that "Pilgrimage Note Analysis" could be considered as the analytical method for understanding pilgrims' behavior, and indicates validity of this method.
著者
上村 一貴 山田 実 紙谷 司 渡邉 敦也 岡本 啓
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.101-110, 2021-01-25 (Released:2021-02-25)
参考文献数
35
被引用文献数
4 3

目的:本研究の目的は,高齢者のヘルスリテラシーが2年後のフレイルの有無に及ぼす影響を検討することとした.方法:解析対象は,65歳以上のフレイルでない地域在住高齢者218名〔平均年齢72.5±4.9歳(範囲:65から86歳),男性81名〕とした.機能的ヘルスリテラシーをNewest Vital Signにより,包括的ヘルスリテラシーをEuropean Health Literacy Survey Questionnaireにより評価した.包括的ヘルスリテラシーは総得点に加えて,ヘルスケア,疾病予防,ヘルスプロモーションの3領域の得点についても算出した.2年後のフォローアップ評価(郵送調査)における基本チェックリストの合計点が8点以上の場合をフレイル有とした.結果:フォローアップ評価の対象者253名のうち,226名から回答が得られた(追跡率:89.3%).欠損値ありの8名を除いた218名のうち,2年後にフレイル有となったのは25名(11.5%)であった.年齢,性別,教育年数,BMI,歩行速度,認知機能,Comorbidityで調整したロジスティック回帰モデルにおいて,包括的ヘルスリテラシーの得点のみがフレイルと有意な関連を示した〔1SDあたりのオッズ比(95%信頼区間)=0.54(0.33~0.87)〕.包括的ヘルスリテラシーのヘルスケア,疾病予防領域の得点についても同様に有意な関連を示し,いずれも得点が高いほど,フレイルのオッズ比が低いことを示した.結論:包括的ヘルスリテラシーが高い高齢者では,2年後にフレイルを有する危険性が低いことが明らかになった.
著者
岡本 一 川村 軍蔵 田中 淑人
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.449-454, 2001-05-15
被引用文献数
1 7

魚の摂餌行動に及ぼす背景色の影響をみることを目的とした水槽行動実験を行った。供試魚にはスズキを用い, 白, 赤, 緑, 青を背景色として擬餌5種類(白, 赤, 緑, 青および透明)を同時に投入し, 擬餌に対する魚の行動記録を水中ビデオカメラで撮影記録し, 解析した。背景が白では, 緑の擬餌に対する食付き頻度が顕著に高かった。また, 背景が赤および青では, 透明および白の擬餌に高い食付き頻度を示した。高頻度で選択される擬餌の色は背景色によって異なり, 背景色とルアー色の普遍的な組み合わせは見出せなかった。
著者
岡本 真
出版者
公益財団法人 史学会
雑誌
史学雑誌 (ISSN:00182478)
巻号頁・発行日
vol.124, no.4, pp.38-62, 2015

&emsp;本稿は、従来大内氏の独占時代とされてきた寧波の乱後の遣明船派遣の実像を明らかにするため、史料上に「堺渡唐船」と記される遣明船について、関係諸勢力の立場、搭乗者と派遣目的、歴史的位置づけの三点を究明した。その結果明らかになった事柄は以下の通りである。<br>&emsp;まず、関係諸勢力については、『天文日記』やその他の古文書等に見られる遣明船が、いずれも「堺渡唐船」を指すことを確認したうえで、同船の派遣を中心となって推進したのは、細川晴元と堺商人だった点を論証した。また、本願寺や土佐一条氏は協力者に過ぎず、大内義隆や畠山稙長は同船の派遣を阻止しようとしていた点を指摘した。<br>&emsp;次に、搭乗者と派遣目的については、その解明に先立ち、新史料である『活套』所収外交文書二通を紹介し、同書の収録内容や文書末尾の年月日をもとに、これらが「堺渡唐船」関連文書であることを明証した。そして、これを根拠に、従来の遣明船と同様に朝貢使節としての形態を整えたうえでの派遣が図られており、正使は忠叔昌恕という禅僧で、ほかに医師半井明英も乗り組むことになっていたことを指摘した。また、派遣目的は、寧波の乱の際に明側に留められていた前回使節の朝貢品の献上、同使節の遺留品の返却、収監されていた宋素卿の送還、新勘合および新金印の下賜、半井明英の明医学伝習の許可などを要請することだった点を解明した。<br>&emsp;それから、歴史的位置づけについては、寧波の乱後に足利義晴・細川高国が明側とおこなった交渉の延長上に「堺渡唐船」があることを明らかにし、従来の研究では存在が確認されていなかった嘉靖准勘合に関する考察をもとに、状況の推移を論じた。また、大内義隆の経営した天文八年度船と同船を比較すると、寧波の乱の際の遺留品の返却や新勘合の獲得などが、両者に共通する派遣目的だった点を指摘した。<br>&emsp;そして、以上を踏まえて、これまで大内氏の独占時代とされてきた寧波の乱後においても、それ以前と同様、遣明船をめぐる同氏と細川氏の抗争が継続していた点を明らかにした。
著者
相川 達也 小島 眞樹 宮本 久仁子 上野 ちさと 高橋 雅春 岡本 宏明
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.49, no.8, pp.352-361, 2008 (Released:2008-09-10)
参考文献数
44
被引用文献数
3 3

67歳の男性が結婚40年後にC型急性肝炎を発症した.その妻(68歳)がC型慢性肝炎患者であり,C型肝炎ウイルス(HCV)RNAが高力価陽性(>5,000 KIU/ml)であった.両者のHCV遺伝子型はともに1b型で,NS5B領域の1,087塩基長の配列において99.7%の一致率を示した.それに対し,これまでに報告されているHCV/1b株との一致率は最高でも96.7%に過ぎなかった.分子系統樹解析によっても,夫婦の持つHCV株は一つのクラスター(bootstrap値:100%)を形成し,同一株である可能性が強く示唆された.詳細な病歴聴取を行ったが,性交渉(月1, 2回)以外の感染経路はいずれも否定された.高齢夫婦間の感染には加齢に伴う生体側因子が関与していると考えられるが,高齢化社会を迎え,HCV感染者頻度の高い高齢者層でかかるHCV感染が起こる可能性を念頭に置く必要があると考え報告する.
著者
恩田 光子 今井 博久 春日 美香 安田 実央 下村 真美子 岡本 夏実 高田 百合菜 七海 陽子 田中 有香 荒川 行生
出版者
Japanese Society of Drug Informatics
雑誌
医薬品情報学 (ISSN:13451464)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.21-33, 2015 (Released:2015-06-28)
参考文献数
37

Objective: To examine the effect of pharmacists’ visits to homebound patients on the elimination of unused drugs.Method: We conducted a survey with pharmacies throughout Japan that provided home-visit service, asking them questions regarding their work with up to five patients (the survey period was from January 15 through the end of February, 2013).  Main survey questions were: (1) whether they managed unused drugs since the start of their home-visit, and (2) how they managed the unused drugs.  For (2), we conducted case studies by asking the pharmacists to choose the case that impressed them most and describe the unused drugs involved, actions taken, and the results.Results: Data on 5,447 patients were collected from 1,890 pharmacies throughout Japan (collection rate: 56.9%).  Pharmacists managed unused drugs from 2,484 patients (45.6%). 1,746 patients (3,590 cases) were qualified for analysis.  In 2,332 cases (65.0%), pharmacist intervention eliminated the incidences of unused drugs.  In 782 cases (21.8%), unused drugs were discarded, while the number of drug administration days was adjusted in 2,623 cases (73.1%).  In 21 cases (0.6%), drugs were both discarded and had the number of days adjusted.  There were others for 164 cases (4.5%).  The total price of the eliminated unused drugs was approximately 6,920,000 yen (4,000 yen/person).  Illnesses that benefited most from the elimination of unused drugs were chronic respiratory failure (16,306 yen/person), and Parkinson’s disease (4,803 yen/person).Conclusion: We confirmed the economic effect of eliminating unused drugs by pharmacists’ home visits.
著者
岡本 健
出版者
関西学院大学社会学研究科
雑誌
KG/GP社会学批評 別冊: 共同研究成果論集 / 山北輝裕・谷村要・稲津秀樹・吹上裕樹(編) pp.77-95
巻号頁・発行日
2011-02

本論文では,情報社会において旅行者と他者とのつながりがどのように創出されるのかということについて,ネット上のコミュニティオブインタレストと地域社会の地域コミュニティの出会いの場を形成しているアニメ聖地巡礼を事例として議論する.アニメ聖地巡礼は,アニメの背景に描かれた場所を聖地としてそこを訪ねる行為であるが,実際の地域に足を運ぶことから,地域住民と関係性を構築し,地域振興に展開する場合がある.本論文では,そのような展開が見られた埼玉県北葛飾郡鷲宮町を事例とする.特に,鷲宮町で催行される土師祭で「らき☆すた神輿」が登場したことに着目し,その発案や実施の経緯,担ぎ手への聞き取り調査や質問紙調査の結果を分析する.その結果,情報空間,現実空間の双方で多様なコミュニケーションがなされ,つながりが創出されていることが明らかになった.無論,このつながりは自動的に出来上がったわけでは無く,地域側が様々な形でファンの価値観を認めていることを発信し,ファンもそれに応えた結果であった.これは,ファン同士が現実空間で集まる「オフ会」とは異なる性質を持つ.特定の地域に身体的に赴く,という観光の機能によって,地域コミュニティの成員とのつながりが形成され,社会関係資本化している.いわば,つながるはずの無かった人々同士のつながりの形成であり,新たなコミュニティのあり方を提案した実践であると言えよう.