著者
工藤 泰三
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集. 言語・文化篇 = Journal of Nagoya Gakuin University (ISSN:1344364X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.39-50, 2018

ヨーロッパの複言語主義を基盤とする内容言語統合型学習(CLIL)は,日本においてもその実践例が多く見られるようになった。ヨーロッパの文脈ではCLILの効果を立証する研究結果が多く発表されているが,日本における研究においては質・量ともにまだ不十分な段階にある。本論では,地球的課題の理解とグローバル・シティズンシップの涵養を目的とするCLIL授業の実践において,CLILにおいて重視される認知プロセス,特に高次思考力(HOTS)を意識した授業内活動を行うことにより,学習者の英語運用能力を高めるとともに学習者の高次思考を促すことができることを証明することを試みた。分析の結果,英語運用能力が有意に向上したこと,および学習者の授業コメントから高次思考力の活性化に寄与することができることが明らかになった。
著者
工藤 朋子 古瀬 みどり
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.287-294, 2018 (Released:2018-09-10)
参考文献数
19

【目的】死別後支援が必要な家族介護者を訪問看護師が予測する要因を抽出する.【方法】訪問看護師が,終末期利用者の家族介護者105人に,自作の質問紙を基に死別後支援を予測する要因の調査(死別前),死別後支援の必要性を判断する調査(死別後)を行った.そのうち同意を得た死別後の家族介護者30人に,研究者が聞き取り調査(うつ病自己評価尺度CES-D,健康関連QOL尺度SF-8TM)を行い.数量化2類により分析した.【結果】治療中の疾患あり,医療への不満あり,経済的負担あり,後期高齢夫婦世帯,同居家族は介護を任せがち,頼れる別居家族・親戚がいない,周囲の助けを遠慮する傾向,が抽出された(判別的中率76.7%,相関比0.42,P=0.001).訪問看護師による判断は,基準関連妥当性が検証された.【結論】これら7項目は,死別後支援が必要な家族介護者を見極めるための重要な要因である可能性が示された.
著者
工藤 昭夫
出版者
応用統計学会
雑誌
応用統計学
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.59-66, 1980

遺伝学の基礎概念である,表現型,遺伝子型,遺伝子頻度,任意交配,近親交配,などについて述べた後,著者の工夫による,系図の二進法的表現を用いた方法で,近交係数を定義する.方眼紙に長方形を描き,近親交配の共通祖先に相当する部分に影をつけると影の部分の面積と全体の面積との比が近交係数に等しくなる.この計算方法は,性染色体上の遺伝子についての近交係にも利用できる.また,自殖が可能な生物,さらには,父親候補が複数あってその確率が既知な場合にまで適用できる.
著者
小西 典子 尾畑 浩魅 甲斐 明美 大塚 佳代子 西川 禎一 寺嶋 淳 工藤 由起子
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.161-166, 2018-08-25 (Released:2018-08-30)
参考文献数
29
被引用文献数
2

腸管毒素原性大腸菌(ETEC)は,発展途上国において一般的な病原体として知られており,汚染した野菜や水を介して食中毒を引き起こす.また,ETECは,先進国でも食中毒を引き起こすが,その原因食品はしばしば不明である.そこで,食中毒統計を基に日本で発生したETEC食中毒事例を分析した.その結果,野菜および井戸水が原因食品の50%および22.2%を占めた.これら主な原因食品は発展途上国の場合と同様であった.また,ETECの血清群も分析され,血清群O6,O25,O27,O148,O153,O159およびO169が主要7血清群であった.ETECの代表的な血清群O148による食中毒発生事例について,その食品での検査法を中心に詳細に検討した結果,二段階増菌法および耐熱性エンテロトキシン遺伝子を対象としたリアルタイムPCR法によって本菌が効率的にカットネギから検出された.本研究では,日本でのETEC食中毒の原因食品および主要O血清群が明らかになり,ETECの国内環境での生存が示唆された.また,食中毒事例での原因食品究明において効果的な検出法が示された.
著者
工藤 桃成
出版者
神戸市立工業高等専門学校
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2018-08-24

数学とその応用分野において,曲線は古くから研究されてきた重要な研究対象であり,その中でも特に代数曲線は,主に代数幾何学・整数論と呼ばれる分野で研究されている図形である.本研究では,特殊な代数曲線の探索・決定を目的としており,理論と計算の融合的なアプローチによって解決を目指している.本研究で得られる特殊な代数曲線は,暗号・符号理論への応用可能性を併せ持ち,将来的には情報通信などへの応用が期待される.
著者
大熊 達義 佐藤 洋湖 湯浅 光悦 幡手 雄幸 長内 智宏 石田 正文 渡辺 孝芳 高梨 信吾 金沢 武道 小野寺 庚午 花田 勝美 方山 揚誠 工藤 一 藤田 〓 松井 哲郎 吉田 穣
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.21, no.12, pp.1213-1221, 1983-12-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
13

A 32-year-old taxi driver was admitted with complaints of coughing and exanthema. The respiratory symptoms and exanthema had appeared in April, 1980 and he had been tatooed on his back and arms about a year previously. His tatoo was composed of four distinctive colours (red, yellow, green and black). Exanthema was seen in only the red, yellow and green parts. Bilateral axillar and cervical lymph nodes were palpable. Chest X-ray films revealed diffuse shadows in both lung fields. Serum and urine test were normal. a biopsy of skin tissues and a lymphotic gland showed granulomatous changes caused by the tatoo dyes. Analysis of the dyes suggested that the red coloring matter consisted of organic mercury.Pathological findings of the specimen obtained from a lung biopsy showed thickening of the alveolar wall, with infiltration of lymphocytes and epitheloid granuloma. Electron microscopy showed that the tatoo dyes were localized in his skin, lymph nodes and lung. We concluded that this was a case of diffuse, granulomatous interstitial pneumonia due to his tatoo.
著者
工藤 和美
出版者
日経BP社
雑誌
日経アーキテクチュア (ISSN:03850870)
巻号頁・発行日
no.1097, pp.76-79, 2017-06-08

2復活した連載「私の駆け出し時代」の2人目は、シーラカンスK&Hの共同代表である工藤和美氏。シーラカンス時代の「千葉市立打瀬小学校」(1995年竣工)で注目を浴び、シーラカンスK&Hに改組してからも、学校建築を中心に活躍している。就職活動では女性差別の…
著者
矢部 沙織 高橋 博之 後藤田 裕子 森 孝之 井川 裕之 工藤 ひとみ 松本 哲 紅粉 睦男 関口 雅友
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.34-40, 2015-01-30 (Released:2015-02-04)
参考文献数
16
被引用文献数
1

62歳男性.30歳時に糖尿病を発症しインスリン治療を開始され,10年前より1日4回のインスリン強化療法を施行していた.62歳時,糖尿病性壊疽のため左足第I趾切断術目的に当院の心臓血管外科に入院.術後創部治癒は良好であったが,空腹時血糖値が50~500 mg/dl台と激しく変動したため,血糖コントロール目的に当科転科となった.インスリンを増量したが,600 mg/dl以上の高血糖が数日間持続した.腹部の診察をしたところインスリン注射部位に,径4 cm大の皮下硬結を2カ所認めた.皮膚生検の結果,インスリン頻回注射部位に形成された皮下限局性アミロイド沈着と診断した.注射部位変更後,血糖コントロールは著明に改善し,総インスリン量は減少した.長期インスリン治療患者に対しては注射手技指導を徹底し,さらに血糖コントロール不良例では,皮下限局性アミロイド沈着の形成を念頭に置いた丹念な身体診察が重要である.
著者
工藤 晶人
出版者
公益財団法人 史学会
雑誌
史学雑誌 (ISSN:00182478)
巻号頁・発行日
vol.110, no.10, pp.1775-1804, 2001-10-20 (Released:2017-11-30)

Historians studying settler European society in Algeria have their roots in classical assimilation theory, and usually argue that the "fusion" among the European races took place at the turn of the nineteenth century. Other scholars confine their study to the ideological aspect and claim that the so-called rise of the "Algerien europeen" is a myth. This article provides a more subtle portrait of European society in Oran based on the quantitative approach. The analysis of the electoral college and of the dossiers of concessionaires points out that a second generation emerged during the late nineteenth century, especially in this coastal city. This study also reveals the mobility patterns of European immigrants and the complex functions that the city performed in this migration. Finally, the structure of urban society is analysed from a perspective of the conflict between European and Jewish communities. Contemporary discourse on the Europeans of Algeria made reference to these social transformations. However, this is not to say that the "Europeans" were simply integrated into a "European-Algerian" community;rather, the settlement developed local identities and socioeconomic differences between generations.
著者
工藤 正隆 青木 成美
出版者
宮城教育大学特別支援教育総合研究センター
雑誌
宮城教育大学特別支援教育総合研究センター研究紀要
巻号頁・発行日
no.2, pp.15-20, 2007-03

本研究では、日本全国の盲学校(66校)のホームページを中心に見やすさについて検討した。見やすさには、画面のコントラストやフォント、特にウェブの閲覧に際しては、背景の色・ハイパーリンク文字色などが大きく関与していると考え、実際に盲学校のホームページのトップページを調べた。同時に駅の券売機や銀行ATMも調査を行い、その見やすさについても検討した。その結果、見やすさに関しては、盲学校のホームページも券売機や銀行ATMも十分に満足できる水準とは言えない実態が明らかになった。その背景には、基準があってもその周知徹底がなされていないことなどが考えられる。特に盲学校のホームページは、地域の視覚障害教育の中心として、いろいろな人が情報を得るために閲覧する。また、学校の情報を地域に知らせる役割もあり、その役割は非常に重要であり、誰もが見やすいホームページ作りがとりわけ必要と言える。そこで今回は、画面表示に関わる制度上の問題点なども含めて、見やすい画面表示について検討することにした。
著者
小川 仁 舟山 裕士 福島 浩平 柴田 近 高橋 賢一 長尾 宗紀 羽根田 祥 渡辺 和宏 工藤 克昌 佐々木 巌
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.455-459, 2004-08-01
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

症例は23歳女性.5年前にスプレー缶の蓋を膣内に留置してしまったが医療機関を受診せず放置し,次第に月経周期に類似した下血と腰痛が出現したため近医を受診した.大腸内視鏡検査で膣内異物と直腸膣瘻を指摘され経肛門的に異物除去術が施行されたが,2カ月後も瘻孔が閉鎖しないため当科を紹介された.初診時2横指大の直腸膣瘻と膣狭窄を認めた.回腸にループ式人工肛門が増設されたが6カ月後も瘻孔は閉鎖せず,根治目的に手術が施行された.瘻孔周辺の直腸と膣は高度の線維化により強固に癒着しており直腸・膣の修復は不可能であったため,再手術により子宮摘出・直腸切除,結腸肛門吻合術が施行された.3年2カ月の間にこれらの手術を含む計6回の手術が行われ直腸膣瘻は根治した.膣内異物による直腸膣瘻はまれな病態であるが,治療に難渋した自験例を若干の文献的考察を加え報告する.