著者
松井 遼太 長谷川 麻美 竹川 佳成 平田 圭二 柳沢 豊
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.789-797, 2020-04-15

本稿では,ピアノ演奏時の悪癖アノテーション機能を持つ,ピアノ教師向け悪癖発見支援システムの構築について述べる. ピアノ演奏者にとって正しい指使いを身につけることは,高度な演奏技術を修得するうえで必須となる. 指使いは身体や運動に依存するため,個人の体格や弾き方に影響されやすい.そのため,演奏者が誤った指使いを身につけた場合,指使いは悪癖として定着しやすく,定着後に修正することが難しい.したがってピアノ教師は,生徒の指使いに関する悪癖を発見し,指導する. しかし,生徒に悪癖があっても上手に演奏できている場合もあり,教師が一聴しただけでは悪癖の発見が難しい.一方,悪癖を視覚的に判断する手段も存在するが,演奏時の手指の動きは素早いため,教師は実時間で単方向から見ただけでは生徒の悪癖を見逃してしまう. そこで,提案システムは生徒の演奏を3視点から撮影した映像それぞれをコマ送り再生できる機能,打鍵間隔や打鍵の強さを可視化する機能を持つ.これにより,教師は単に映像を見るよりも効率良く生徒の悪癖を発見できる.また,提案システムは深層学習を用いた悪癖アノテーション機能により,演奏中に悪癖がある箇所を推定し,教師の見逃しを防止できる. 一般的な動画再生機能を持つツールを使用した従来手法群と,提案システムを使用した提案手法群を比較した評価実験の結果,提案手法群が悪癖発見に役立つことが示唆された.
著者
平田 令子 高松 希望 中村 麻美 渕上 未来 畑 邦彦 曽根 晃一
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.89, no.2, pp.113-120, 2007 (Released:2008-05-21)
参考文献数
25
被引用文献数
14 6

スギ人工林へのマテバシイの侵入に係わる野ネズミの働きを解明するため,2003年4月から2005年1月まで,鹿児島大学演習林内の常緑広葉樹林とそれに隣接するスギ人工林において,堅果の落下状況,野ネズミによる堅果の散布状況,マテバシイ稚樹の生育状況を調査した。自然落下による分散距離は平均2.4m,人工林への侵入距離は最大4.4mであった。2003年と2004年の秋に200個ずつ設置した磁石付き堅果のうち,それぞれ66個,58個を野ネズミは人工林内に運搬し,林分の境界から貯食場所までの距離は,2003年は最大34.5m,2004年は18.5mであった。2003年の貯蔵堅果のうち6個は翌春まで人工林内に残存した。人工林内のマテバシイ稚樹の生育密度は林分の境界から距離とともに減少したが,境界から10m以内は広葉樹林内と有意差がなかった。以上のことから,人工林へのマテバシイの侵入に野ネズミは種子散布者として大きく貢献していると考えられた。
著者
平田 智也 石永 一 竹内 万彦
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.113, no.12, pp.775-780, 2020

<p>Inflammatory pseudotumor is a benign disease that is histopathologically characterized by the presence of non-specific chronic inflammatory cells. Clinically, these tumors often show neoplastic growth, and it is difficult to differentiate them from neoplastic lesions by imaging findings alone. Inflammatory pseudotumors have been found to occur at various sites, but are rarely found in the head and neck region. Although surgical excision and steroid therapy are effective, no evidence has been established yet. We report a case of an inflammatory pseudotumor that occurred in the cheeks.</p><p>A 51-year-old man with right cheek swelling and pain had visited a local physician a month earlier and antibiotics had been prescribed. Since the symptoms did not improve, CT was performed as an aid to diagnosis, and an abscess or neoplastic lesion was suspected in the cheek. Cytologic examination revealed many neutrophils and histiocytes, but no evidence of malignancy. MRI showed an abscess in the masseter muscle with spread of the inflammation to the surrounding tissues. Antibiotics and steroid therapy were initiated and the swelling diminished in size. When the steroid was withdrawn, the swelling enlarged again. Therefore, inflammatory pseudotumor, non-epithelial tumor, and malignant lymphoma were considered in the differential diagnosis. An excisional biopsy was performed and the diagnosis of inflammatory pseudotumor was established. A subset of the cells was positive for IgG4, but there was no definitive evidence of IgG4-related diseases.</p><p>Treatment of inflammatory pseudotumors includes surgical resection, steroid therapy, radiation therapy, chemotherapy; the efficacy of steroid therapy has been reported for inflammatory pseudotumors in the head and neck region. Although evidence has still not been established, steroid maintenance therapy is effective for preventing recurrence. The patient is currently receiving steroid maintenance therapy on an outpatient basis, and has shown no evidence of recurrence of the inflammatory pseudotumor.</p>
著者
神野 真吾 竹田 美和 茜 俊彦 平田 智也 久野 尚志 羊 億 磯貝 佳孝 渡邊 直樹 藤原 康文 中村 新男
出版者
日本結晶成長学会
雑誌
日本結晶成長学会誌 (ISSN:03856275)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, 2002

ErP/InP heterostructure is one of the candidates for realizing new functional high-speed magneto-electronic devices. We have investigated growth morphology of ErP on InP (001) and (111)A. ErP/InP heterostructures were grown by face-down OMVPE. ErP formed islands on each orientation, while island size and height were quite different between two orientations.
著者
小井戸 一光 向谷 充宏 水口 徹 福井 里佳 木村 康利 信岡 隆幸 平田 公一
出版者
Japan Biliary Association
雑誌
胆道 (ISSN:09140077)
巻号頁・発行日
vol.18, no.5, pp.607-613, 2004

胆嚢,総胆管に同時に発生した重複早期胆道癌の1例を報告した.症例は70歳, 女性.当科に入院の2年前から指摘されていた胆嚢壁肥厚が腫瘤様となったため,精査目的に当科入院となった.US,CT,EUSの画像所見から固有筋層にとどまる早期胆嚢癌と診断し手術が施行されたが,術中ゲフリールにて胆嚢管断端陽性のため肝外胆道切除術D2郭清と胆管空腸吻合が施行された.膵・胆管合流異常は認められなかった.病理組織学的に胆嚢体底部と胆嚢管,さらに中部胆管に,それぞれ独立した早期乳頭状腺癌を認めた.胆嚢体底部,胆嚢管と中部胆管病変は,それぞれ大きさが3×1.5cm,0.7×0.5cm,0.2×0.2cmで,胆嚢管と中部胆管病変は画像・肉眼上確認できなかった.これらの病変問に連続性はなかった.胆嚢癌に遭遇した場倉,重複胆道癌を念頭において診断を進める必要がある.
著者
平田 昌弘 清田 麻衣
出版者
日本酪農科学会
雑誌
ミルクサイエンス (ISSN:13430289)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.103-114, 2010

これまでにアジア大陸各地の乳加工体系を調査し、乳加工の起原と伝播について論考してきた。乳加工は、西アジアに起原し、乾燥地帯のアジア大陸では北方と南方に二極化していった。南方圏での乳加工の特徴は、生乳に対する最初の働きかけが酸乳化することであり、北方圏の特徴はクリームを最初に収集することである。いずれも、バター・バターオイルとして乳脂肪の分画・保存、脱脂乳を乾燥化させて乳タンパク質の分画・保存が成し遂げられている。このアジア大陸の乾燥地帯で発達した乳加工体系が、冷涼・湿潤地帯に伝播して、どのように変遷していったかを明らかにするために、先ず亜湿潤地帯のコーカサスのグルジア・アルメニアにおいて調査した。本稿では、ヨーロッパのフランス中南部の冷涼・湿潤地帯において2009年6月14日〜6月20日まで観察とインタビューにより、乳牛を飼養しながら乳加工・販売もおこなう酪農家合計4世帯を調査したのでここに報告する。
著者
平田 秀
出版者
東京大学大学院人文社会系研究科・文学部言語学研究室
雑誌
東京大学言語学論集 = Tokyo University linguistic papers (TULIP) (ISSN:13458663)
巻号頁・発行日
vol.41, no.TULIP, pp.103-115, 2019-09-30

本論では、日本語歌謡曲における特殊モーラの自立性について、2010 年代に活躍した2 名の男性シンガーソングライター・星野源と米津玄師の対照を通して論じる。特殊モーラが独立した1 つの音符を付与されている割合は、星野の楽曲において高く、米津の楽曲では低いという結果であり、2 名のシンガーソングライター間で大きな差がみられた。その一方で、二重母音の第2 モーラであるイ音・撥音は自立性をもちやすく、長母音の第2 モーラ・促音は自立性を失いやすい点は共通していた。本論では、単独で独自の音色を有する特殊モーラである二重母音の第2 モーラであるイ音・撥音は自立性をもちやすく、独自の音色をもたない特殊モーラである長母音の第2 モーラ・促音は自立性を失いやすいことを指摘する。
著者
平田 達哉
出版者
山口県農林総合技術センター
雑誌
山口県農林総合技術センター研究報告 = Bulletin of the Yamaguchi Prefectural Technology Center for Agricultural and Forestry (ISSN:21850437)
巻号頁・発行日
no.5, pp.30-37, 2014-03

機能性が高いと認められた山口県産農産物6品目を用いて、調理加工時における機能性成分の変動要因を調査し、以下の結果を得た。1 田屋なすの活性酸素消去能は、加熱方法と加熱温度が消長の要因であり、炒めるより茹でる方法で、また温度が70℃以上で機能性は低下しやすい。DPPHラジカル消去能は、加熱方法と酸度が消長の要因であり、炒めるより茹でる処理が機能性の維持に優れ、また酸の添加で機能性は維持される。2 白オクラのDPPHラジカル消去能は、炒めるより茹でる処理が機能性の維持に優れる。粘性は、酸が要因であり、酸の添加で粘性は維持される。3 ヤマノイモのヒアルロニダーゼ阻害活性は、加熱温度が消長の要因であり、温度が高いほど機能性は消失し、70℃が機能性の維持に優れる。炒めるより茹でる処理が機能性維持に優れるが、茹でる時間が長いほど、機能性は消失しやすい。4 アザミナのリパーゼ阻害活性は、加熱温度が消長の要因であり、80℃を超えると機能性は消失しやすい。辛味成分は、60℃、30秒の処理または70℃、90秒の処理が機能性の維持に優れる。また、摩砕よりカット処理が機能性の維持に優れる。5 はなっこりーのリパーゼ阻害活性は、温度が消長の要因であり、温度が高いほど、特に80℃以上で機能性は消失しやすい。6 タマネギの活性酸素消去能は、加熱温度が消長の要因であり、温度が高いほど機能性は減少する。また、ヒアルロニダーゼ阻害活性は、加熱方法が消長の要因であり、茹でるより炒める処理が活性の維持に優れる。
著者
平田 達哉
出版者
山口県農林総合技術センター
雑誌
山口県農林総合技術センター研究報告 (ISSN:21850437)
巻号頁・発行日
no.1, pp.1-10, 2010-03

山口県の農産物のうち、農産物53品種の機能(抗酸化機能、抗アレルギー機能、脂質代謝改善機能)を調査した。抗酸化機能の活性酸素消去能では、ナス「田屋」、ナシ、カリン、イチゴ、タマネギ「山口甲」、ニガウリ、トマト、茶葉に強い活性が認められた。またコッコウ、フェイジョアにやや強い活性が認められた。また、DPPHラジカル消去能では、ゴボウ、シュンギクに強い活性が認められた。またイチゴ、白オクラ、ショウガ、ナシ、リンゴにやや強い活性が認められた。抗アレルギー機能では、カリンに強い活性が認められた。また、カブ「萩ころげ」、ヤマノイモ、サツマイモ、タマネギ「山口甲高」、ショウガにやや強い活性が認められた。脂質代謝改善機能では、アザミナ、「はなっこりー」に強い活性が認められた。また「とっくり大根」、ホウレンソウ、イチゴ、パプリカ(赤)にやや強い活性が認められた。以上のことから、抗駿化機能、抗アレルギー機能、脂質代謝改善機能に有効である農産物を探索することができた。
著者
浦口 健介 假谷 伸 岡 愛子 津村 宗近 石原 久司 宮武 智実 平田 裕二 牧原 靖一郎 西﨑 和則
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.119, no.10, pp.1290-1299, 2016-10-20 (Released:2016-11-16)
参考文献数
23
被引用文献数
5

脳幹・小脳梗塞は耳鼻咽喉科に関連するさまざまな脳神経障害を来すことが知られている. 急性期脳梗塞は早期治療を目的に MRI の拡散強調像 (DWI) で評価されるが, 急性期の場合は DWI が偽陰性になることがあり脳神経障害の精査のため耳鼻咽喉科を受診することがある. 香川労災病院に脳幹・小脳梗塞のため入院した245人250例を対象とし, 初回 DWI で偽陰性だった脳幹・小脳梗塞の16症例について検討した. 初回 DWI 偽陰性は脳幹梗塞12例, 小脳梗塞3例, 脳幹・小脳梗塞1例であった. 16例全例が12時間以内に初回 DWI 撮影をされていた. 250例中めまいや嚥下障害の精査目的で耳鼻咽喉科を受診し脳幹・小脳梗塞と診断された耳鼻咽喉科診断例は8例あり, そのうち3例が初回 DWI偽陰性であった. 初回 DWI で梗塞像がないが脳梗塞が疑われる場合は定期的な神経診察や DWI 再検をする必要がある.
著者
生間昇一郎 本宮 善〓 常深 邦彦 平田 直也 妻谷 憲一 森田 昇 植村 天受 金子 佳照 守屋 昭 吉田 克法 貴宝院 邦彦 平尾 佳彦 岡島 英五郎
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日泌尿会誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.903-909, 1988
被引用文献数
1

electroconductivity detectorを用いた高速液体クロマトグラフィー法による新しい尿中蓚酸測定法を開発し,この測定法はディスポタイプカラムを用いることによって前処置を簡便化し,さらに発色剤と反応させることなく直接蓚酸イオンをelectroconductivity detectorで検出できる.本法での測定範囲は1〜100mg/lで,再現性はtriplicate assayで,変動係数2.0±3.9%であり,健康成人10人の24時間尿中蓚酸排泄量の平均は25.6±4.7 mg/dayであった.
著者
平田 未来
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.64, 2012

【目的】20世紀初頭、イギリスで婦人参政権運動が盛んとなった。1903年にマンチェスターでエメリン・パンクハーストによって結成された女性政治社会連合(Women&rsquo;s Political Social Union:略称WPSU)では、1908年頃より衣服問題が生じた。これまでの研究では、女性史や教育史の中で婦人参政権運動の政治的な動きが注目されており、近年では消費社会と関連していたとの見解もある。本発表では、20世紀初頭のイギリスで起きた婦人参政権運動で着用された衣服の社会的文化的役割と意義を明らかにする。 <br><br>【方法】分析の中心となるのは、1907年10月にローレンス夫妻によって刊行されたWPSUの機関紙『婦人に参政権を!』(<i>Votes for Women</i>)である。また女性参政権協会全国連合の『コモン・コーズ』(<i>Common Cause</i>)と比較検討する。さらに、同時代の新聞、雑誌、自伝や現存する衣服を用い、衣服の機能や役割を検証する。研究の対象期間は、1908年から第一次世界大戦がはじまる1914年である。 <br> <br>【結果】婦人参政権論者たちは、エドワード朝時代の白いブラウスに裾の長いスカート、それにつばの広いピクチャー・ハットを取り入れ、女性らしさを保持しつつ、活動に参加していた。さらに「紫、白、緑」という「純潔、希望、それに威厳」を意味するカラーズのついたバッジ、ブローチそれにバナーズが運動の団結心を高める機能を果たしていた。これらの衣服やアイテムは、彼女たちの自立心を育て、団結心を与えると共に、婦人参政権運動への実現を果たす役割を担っていた。