- 著者
-
望月 修
- 出版者
- 東洋大学
- 雑誌
- 挑戦的萌芽研究
- 巻号頁・発行日
- 2009
物体が水面に衝突する際,水しぶきが上がり,バシャン,ピチャンといった音がすることは身近によく経験する.本研究の工学的目標は生物に見習って(バイオミメティクス)このような水しぶきの飛散を低減すること,生活騒音を低減することである.模型を用いて,先頭形状,後尾形状,表面性状(親水性,疎水性など)の水しぶきおよび発生音に対する影響をレイノルズ数,ウェーバー数,フルード数を系統的に変えて、高速度カメラを用いた計測・観測を行うことによって調べた.高分子ゲル表面上の速度分布計測(PIV法)を行い,水流と壁面材質の干渉を調べた結果、高分子ゲルでも膨潤度が高いとスリップ速度が大きくなることがわかった.すなわち,突入物体表面上の水膜流の速度が速くなるのでスプラッシュを飛ばし易くなる.このことは本研究によって初めて明らかになったことであり,予想と全く逆の結果であった.気泡の取り込みに関しては,物体の突入速度によって,3通りに分類できることを明らかにした.その結果,発生する音も3通りあることがわかる.すなわち,水の音は気泡の音であるから,音の発生は気泡の取り込まれ方に依存する.親水性の表面であると,物体が水中に空気柱を作りやすくなり,それが細かくちぎれることによって,多くの気泡が水中に取り込まれる.先頭形状および後尾形状として半球,円柱,円錐,頭を切った円錐,回転放物体,流線型物体の組み合わせを試した結果,先頭形状は細かな水滴状の飛沫の形成に影響し,後方形状は水中に形成される空気柱のちぎれ,すなわち,気泡形成に影響することを明らかにした.