著者
望月 博之 藤澤 隆夫
出版者
日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.1166-1174, 2008
参考文献数
22
被引用文献数
2

【背景・目的】これまで未就学児の呼吸器症状の有症率についての検討は十分ではなかった.【方法】未就学児の母親を対象に,呼吸器症状の有症率等について全国規模のアンケート調査を実施した.【結果】発送数1375,有効回答数1168,有効回答率84.9%であった.最近1年間の呼吸器症状では鼻水・鼻づまりが最も多く,乾性咳嗽,湿性咳嗽,喘鳴の順であった.呼吸器症状による医療機関の受診率は高く,湿性咳嗽で91.9%,喘鳴で94.0%であった.いずれの呼吸器症状も8月に最も少なくなり,12〜3月の期間に最も多くなる傾向が認められた.呼吸器症状が悪化する時間帯は,乾性咳嗽と湿性咳嗽では寝入り後,喘鳴では深夜,鼻水・鼻づまりでは昼間が顕著であった.呼吸器症状の出現で困ることは,患児では「症状のために夜眠れなくなる」,保護者では「介抱のために夜眠れない」が多かった.【結語】未就学児の呼吸器症状の有症率は高く,季節的変動や夜間の悪化が認められ,低年齢児を取り巻く呼吸器症状の現状が確認された.
著者
田原 雄一郎 望月 香織
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.139-143, 2005
参考文献数
9
被引用文献数
2

33種のハーブのエタノール抽出液をベニヤ板製のゴキブリのシェルター(5cm×5cm, 5mm隙間)に浸漬させ, チャバネゴキブリ10頭(♂または♀)を放ったプラスチック円形容器(半径15cm, 高さ17cm)に無処理シェルターとともに対角の位置に置いた.それぞれのシェルター区に48時間で落下した糞の数から忌避性を求めた.その結果, デイル, セロリ, キャラウェイ, クミン, コリアンダー(以上, セロリ科), シナモン(クスノキ科), メース(ニクズク科)およびトウガラシ(ナス科)を処理したシェルター区には糞の落下数が極めて少なく, 無処理区のシェルターに90%以上の糞が落下した.これは, これらのハーブを処理したシェルターを忌避したからと判断した.忌避性は1ヵ月以上持続した.また, ハーブ抽出液を80倍程度希釈しても効力は維持した.他方, アニス, サンショ, オニオン, ユーカリなどの抽出液では誘引性が確認された.
著者
望月 眞弓
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.133, no.12, pp.1315-1318, 2013 (Released:2013-12-01)
参考文献数
4
被引用文献数
1

Teaching the three health principles and proper use of medicines are the basis of education on medicines. Before seeking prescription drugs, day-to-day health management is important. It is also important to understand that if a minor ailment persists, self-treatment with over-the-counter medications should be attempted. Since medications are double-edged swords, their proper use is the responsibility of patients to minimize the risk and maximize the effectiveness. This awareness should be taught during education on how to use medicines. A better understanding of medicines and fostering awareness through education on medicines will contribute to reductions in healthcare costs and promote the health of patients when they participate in their own care and learn how to self-medicate.
著者
望月 哲男 越野 剛 後藤 正憲 鈴木 正美 鳥山 祐介 長縄 宣博 中村 唯史 沼野 充義 野町 素己 松里 公孝
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

ヴォルガ地域の文化的な様態を、各流域の民族・宗教文化的特徴、および中世期から現代までの複雑な歴史的経緯を踏まえて整理し、包括的文化圏としてのヴォルガ地域像を解明した。ヴォルガ河の表象にみられる多義性・多面性とその変遷を、18世紀以降の文芸の諸ジャンルにおいて検討し、その特徴や文化的機能を分析した。近現代の宗教・文化思想を題材に、東西文化論におけるヴォルガ地域の特徴と機能を整理した。
著者
望月 貴裕 蓼沼 眞 藤井 真人 伊藤 崇之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.88, no.8, pp.1729-1739, 2005-08-01
被引用文献数
3

本論文では, 検索対象データベース(DB)に出現頻度の高いテクスチャ及び色集合(代表テクスチャ, 代表色)を用いて描画した問合せ画像による画像検索手法を提案する. 代表テクスチャは, DBの画像特徴ベクトル集合のクラスタ分析により抽出する. また, 代表色は, DBのHSVヒストグラムに基づき求める. 更に, 提案手法によるユーザインタフェースを試作し, これを用いた画像検索実験により, 利用者の検索意図を反映した良好な結果が得られることを確認した.
著者
望月 俊男 藤谷 哲 一色 裕里 中原 淳 山内 祐平 久松 慎一 加藤 浩
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.15-27, 2004
被引用文献数
12

本研究では,CSCLにおける協調学習に参加している学習者の発言データをもとに,学習者自身や教師がその学習コミュニティのコミュニケーション活動を評価するための方法を提案した.その方法とは,電子掲示板の議論内容と個々の学習者との関係を,コレスポンデンス分析を用いて可視化することである.この方法を用いて,実際に異文化間CSCL実践の一部のデータを分析し,可視化した議論データについて,日本人学習者・外国人学習者の約半数,および日本人教師1名にインタビューを行い,評価情報としての妥当性と適用可能性を検討した.その結果,可視化されたマップによって,コミュニティの話題の分担や,学習者一人一人の知識共同体への関わりの状態が示され,自分や他者の興味関心に対する内省や気づきを促進し,学習者間の議論を活性化する可能性が示された.また,教師にとっては教育プログラム期間中の討論の評価やモデレーションに有効である可能性が示された.
著者
和崎 春日 上田 冨士子 坂井 信三 田中 重好 松田 素二 阿久津 昌三 三島 禎子 鈴木 裕之 若林 チヒロ 佐々木 重洋 田渕 六郎 松本 尚之 望月 克哉
出版者
中部大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

「グローバル化時代における中下層アフリカ人の地球的移動と協力ネットワーク」現代社会において、グローバライゼーションを生きるのは、北側社会や特別なアフリカ人富裕層だけではなく、「普通の」アフリカ人たちが、親族ネットワーク等を駆使して、地球を広く縦横に生き抜いている姿が、本共同研究から析出された。その事実を基礎にした外交上の政策立案が必用になってくることを、本共同研究は明らかにした。
著者
森田 和宏 望月久稔 山川 善弘 青江 順一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.39, no.9, pp.2563-2571, 1998-09-15

自然言語辞書に構築される基本語彙は有限であるが,それら基本語の関係を定義することで,膨大な数の関係情報が作り出される.複合語,慣用表現,格関係などもこの関係情報の範疇に属し,これらを基本単語の共起情報と呼ぶ.共起情報を基本単語の並びとして格納すると,記憶効率が非常に悪くなるので,これら関係情報の効率的な記憶検索技法は重要な課題である.本論文では,基本単語からなる共起情報をトライ構造で効率的に記憶検索する手法を提案する.本手法では共起情報を構成する2つの基本単語を1つのトライに登録し,関係情報をトライの葉ノード間のリンク関数で定義する.共起情報の登録による記憶量の増加はこのリンク情報のみとなり,リンク情報もトライに格納する.本手法では,トライのアークを高速にたどる必要があるので,これをO(1)の計算量で実現するダブル配列法を適用する.この結果,共起情報の検索時間は,基本単語数や葉ノード間のリンク数に依存しない一定の計算量となった.約10万語の基本単語に対して,複合語,同音語判定の共起語,格構造辞書などの約100万の関係情報を構築した実験結果より,検索時間は1.2msと一定となること,また記憶量は従来法より1/3に圧縮できることが分かった.Collocational information is very useful for natural language processing systems and it includes compound words,cooccurrency words,verbs and the role of nouns in the case slot,and so on.Collocational information can be constructed by combining basic words infinitely,so it is important to propose a fast and compact structure representing them.This paper presents an efficient data structure by introducing a trie that can define the linkage among leaves.It enables us to decrease the amount of memory required for the same basic words.Theoretical observations show that the worst-case time complexity of retrieving collocational information is a constant,independent of the number of words and linkages.From the simulation results for collocational information,it is shown that the presented method is about 1/3 smaller than that of the competitive methods.
著者
望月 正哉
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.629-641, 2021-12-01 (Released:2021-12-15)
参考文献数
99
被引用文献数
1

The framework of embodied cognition, which claims that sensorimotor information is crucially involved in language comprehension, has made considerable contributions to the development of concept processing and word recognition research in recent decades. Current debates, however, have been criticized for the difficulty of fully explaining the characteristics of concept or sematic representations with this framework alone. In this brief article, I reviewed empirical studies of mental simulation in concept processing and word recognition based on the framework of embodied cognition, and presented criticisms for those studies. I then outlined some of the major models and theories of conceptual and semantic representations, including accounts of abstract concept representations, which have been widely discussed in recent years. These studies suggest that we should not examine whether concepts are embodied, but rather examine how they are grounded in diverse systems such as sensorimotor system, mental states, language system, environment, and context.
著者
森 磨美 工藤 彰 望月 祐希 Adam Degenhardt 安藤 英由樹 清川 清
雑誌
エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2014論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, pp.58-60, 2014-09-12

新たな恐怖感の提示手法として本研究では重量変化を用いたキャラクタとのインタラクションシステムを提案する.体験者が背負っている人形に取り付けられたゴムロープの長さを変化させて下向きへの力を生じさせることで重量の変化を実現し,人間におぶさり押しつぶしてしまう妖怪“こなき爺”を,視覚,聴覚に加えて重量変化という触覚に関しても再現する.
著者
谷口 圭祐 望月 吉勝
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.22, no.5, pp.689-696, 2019-10-31 (Released:2019-10-31)
参考文献数
20

目的:救急現場活動において救急隊員が受ける急性ストレスとその作用を修飾すると思われる因子について推論する。方法:北海道内の消防本部に勤務する救急隊員を対象として,否定的な評価の知覚,自己効力感,救急現場活動中の情動的反応,救急現場活動での失敗経験について調査した。結果:「救急現場活動中の情動的反応」を目的変数とした重回帰分析では,ストレス負荷が高い救急現場の場合に自己効力感,現場や訓練の経験,経験年数が有意な負の標準偏回帰係数を示した。結論:自己効力感の高い救急隊員は,ストレス負荷が高い救急現場において,急性ストレスによる影響を受けにくいことが示唆された。職場において職員相互に肯定的な関係を構築し,自己効力感を高めるような教育体制を確立することが,急性ストレス下における救急現場活動を改善するために重要であると考えられた。
著者
望月 和樹 木村 真由 川村 武蔵 針谷 夏代 合田 敏尚
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.18, no.8, pp.375-381, 2018 (Released:2019-09-02)
参考文献数
26
被引用文献数
2 2

中鎖脂肪(MCT)は,中鎖脂肪酸とグリセロールによって構成される。MCTは,小腸において脂肪酸に素早く分解され,その後長鎖脂肪と比較してエネルギー源として素早く代謝される。これは,MCTの消化吸収には胆汁によるミセル化のステップが必要ないことや,小腸で消化された中鎖脂肪酸は,中性脂肪に再合成されることなく,ミトコンドリアのβ酸化の律速ステップである脂肪酸とカルニチンとの結合が必要ないことによる。加えて,MCTを動物モデルに投与すると,β酸化,解糖系,クエン酸回路,電子伝達系,脂肪酸合成経路といったエネルギー代謝経路の遺伝子発現や酵素活性を増大することが明らかとなっている。また,MCTの摂取は,インスリン抵抗性や低栄養を有する動物モデルにおいて,インスリン作用を増大させることがわかっている。これらの結果は,MCTは,エネルギー源としてだけではなく,律速酵素の活性や発現を増大させることによって積極的にエネルギー代謝を活性化する作用を有することを示唆している。さらに,近年の研究によって,β-ヒドロキシ酪酸やクエン酸のようなMCTの代謝産物は,エピジェネティックメモリーの一つであるヒストンアセチル化修飾を増大させる能力を有することがわかってきた。我々は,中鎖脂肪酸であるカプリル酸は,小腸において脂肪や糖質の消化吸収関連遺伝子だけではなく,転写因子であるペルオキシソーム増殖因子活性化受容体やヒストンアセチル基転移酵素であるCBP/p300の遺伝子発現を増大させることを明らかにした。これらの研究成果は,MCTは,代謝関連遺伝子やヒストンアセチル化修飾を誘導する遺伝子の発現を増出させることによって,代謝や栄養素の消化吸収を増大しうることを示唆している。
著者
今村(滝川) 寿子 望月 敦史
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.221-227, 2008 (Released:2008-07-25)
参考文献数
29

A cyanobacterial clock protein KaiC shows circadian cycling of the phosphorylation level in vitro. We first developed an observation-based model. The KaiC-KaiA complex formation consequently reduces free KaiA molecules, thereby may exert a negative feedback effect toward KaiC phosphorylation. However, this model was shown not to be adequate to generate the KaiC phosphorylation cycle. Then, we analyzed generalized models and determined necessary conditions to generate the cycle. Based on the result, we realized the observed pattern of the KaiC phosphorylation cycle and predicted an unknown state that lies between KaiC phosphorylation and the formation of the KaiC/KaiA complex.
著者
望月 正道
出版者
鹿児島県立短期大学
雑誌
人文 (ISSN:13410520)
巻号頁・発行日
no.36, pp.一-十, 2012-08-31
著者
N.ホーソーン(著) 望月 善次(訳)
出版者
人文科教育学会
雑誌
人文科教育研究 (ISSN:09131434)
巻号頁・発行日
no.7, pp.60-70, 1980-03-31 (Released:2013-12-25)
著者
中村 博昭 角皆 宏 石川 佳弘 玉川 安騎男 渡部 隆夫 望月 新一 松本 眞 徳永 浩雄 古庄 英和 星 裕一郎 角皆 宏 石川 佳弘 玉川 安騎男
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009-04-01

数論と代数幾何学の交錯する豊かな理論が期待されている分野として,遠アーベル幾何学を推進し,とりわけ代数曲線とそのモジュライ空間から生じる数論的基本群の系列がなすガロア・タイヒミュラー被覆塔について国際研究交流を推進した.特に2010年の10月に京都大学数理解析研究所で第3回日本数学会季期研究所を開催し,その研究成果を論文集「Galois-Teichmueller theory and Arithmetic Geometry」として出版した.また無限遠を除いた楕円曲線の数論的基本群から生じるモノドロミー表現について研究を進め論文発表を行った.
著者
上野 健爾 加藤 文元 川口 周 望月 新一 高崎 金久 桂 俊行 木村 弘信 山田 泰彦 江口 徹 森脇 淳 加藤 和也 吉田 敬之 三輪 哲二 丸山 正樹
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2002

上野のグループは複素単純リー代数をゲージ対称性に持つ共形場理論(WSWN モデル)とアーベル的共形場理論を使ってモジュラー函手を構成し、このモジュラー函手から構成される位相的場の理論の性質を解明した。また、共形場理論で登場するモジュラー変換を記述するS行列が種数0のデータから完全に決まることを示した。さらに共形場理論の応用として4点付き球面の写像類群のNielsen-Thurston分類を考察し、この分類が正整数n≧2を固定したときに量子SU(n)表現から決定できることを示した。加藤文元のグループはこれまで提案されている中では一番広い意味での剛幾何学の建設を推進し、モジュライ空間の幾何学のもつ数論的側面を代数幾何学的に極限まで推し進めた。望月新一は代数曲線とその基本群との関係およびabc予想の定式化を巡って、代数曲線のモジュライ理論に関する今までとは異なる圏論的なアプローチを行い、函数体や代数体の被覆や因子の概念の圏論的に一般化して捉えることができるFrobenioidsの理論の構築、エタール・テータ函数の理論の構築など、今後のモジュライ理論のとるべき新しい方向を示唆する重要な研究を行った。さらに、モジュライ空間の代数幾何学的・数論幾何学的研究で多くの新しい成果が得られた。無限可積分系の理論に関しては、高崎金久のグループは種々の可積分系を考察し、モジュライ空間がソリトン理論でも重要な役割をしていることを示した。また、パンルヴェ方程式とモジュライ空間との関係、無限次元代数と関係する統計モデルの考察、旗多様体の量子コホモロジーに関して種々の重要な成果が得られた。本研究によってモジュライ空間が当初の予想以上に深い構造を持ち、また数学の基礎そのものとも深く関わり、その理解のためには、さらに数学的な精緻な道具を作り出していく必要があることが明らかになった。また、そのための準備やヒントの多くが本研究を通して明らかになった。