著者
望月 響子 新開 真人 中村 香織
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.377-382, 2015-05-31 (Released:2015-09-08)
参考文献数
15

大型高性能リチウム電池の普及に伴い小児のボタン電池誤飲は危険性が増大している。当院におけるボタン電池誤飲例の治療経験をもとに小児のボタン電池誤飲の最近の治療成績と問題点を検討した。対象は1988年1月から2014年10月までに受診した124例とした。3歳以下が92%を占め,診断時の電池滞留部位は食道8%,胃65%,腸27%であった。食道内滞留例は嘔吐・食欲不振・発熱等の症状を有し,2時間以上滞留した例では全身麻酔下内視鏡摘出を要し,食道潰瘍形成を6例で認めた。胃内滞留例ではマグネットチューブによる摘出を原則とし,マグネット非接着例かつ小型電池例は自然排泄させ,大型電池例は内視鏡下に摘出した。小型電池で幽門部損傷により開腹摘出を要した乳児例もあった。小児ボタン電池誤飲では,食道内滞留例は食道壁潰瘍壊死の危険性から緊急摘出を要する。胃内滞留例も乳児や大型電池例では早急な対処が望ましい。
著者
望月 俊男 佐々木 博史 脇本 健弘 平山 涼也 久保田 善彦 鈴木 栄幸
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.319-331, 2013-11-20 (Released:2016-08-10)

ロールプレイはさまざまな分野の学習において,学習者の視点の拡大や転換を促進する強力な学習方法として知られている.本稿では,とくに複雑で非構造的な(ill-structured)問題状況下におけるコミュニケーションや意思決定についてロールプレイする上で,対面協調学習の中で人形劇を使うことで,これまでにない多様な視点からの洞察を促す可能性について議論する.複数の人形を操作して人形劇をすることで,演者である参加者と,直接演じている人形との間の心理的距離を作り出すとともに,多様な役割で演技をしやすくすることができる.本稿ではこれを理論的に示した後,人形劇のロールプレイによって演者がより現実的な状況を再現するように様々な役割を演じることを事例研究から示した.そして,そうした人形劇をロールプレイの媒介として利用する上で,学習支援テクノロジの可能性について議論した.
著者
菊地 謙次 寺田 信幸 望月 修
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.232-237, 2008-04-10 (Released:2008-10-06)
参考文献数
4
被引用文献数
1

Many researches and developments have tried to realize a μTAS in several fields, but it has not been realized yet because of a scale effect in the course of miniaturization. It is difficult to make an enough volume of flow in a micro tube. This is a bottleneck of realizing the μTAS. We have tried to apply a unique mechanism of insects to the μTAS devises. In this paper, we focused on a blood-sucking mechanism of a mosquito that can obtain blood at the rate of approximately 1.0 μl/min. To understand the structure of their pumps, we made a mosquito into many slices, and anatomized under a microscope; we also let mosquitoes feed on human blood on a glass plate. We found the following results: 1) a manner of blood sucking, 2) a power density of the pump system by an analysis of flowing red blood cells at a tip of proboscis of mosquito. We have succeeded to reveal the blood-sucking mechanism of the mosquitoes, which can be applied to micro fluid devices.
著者
野村 和之 望月 貴子
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.169, pp.1-15, 2018 (Released:2020-04-26)
参考文献数
29

点数至上主義の競争文化で学歴が社会的威信に直結する香港では,学校が強い影響力を持ち,学校での競争で優位に立てない青少年は抑圧や劣等感に晒される。本稿はエスノグラフィーの手法で香港人青少年の日本語学習を社会文化的文脈に絡めて分析し,青少年学習者にとって,日本語学習が学校での抑圧から逃れるための「心の拠り所」 (safe house) として機能していることを明らかにする。香港において日本語は大学入学資格試験の選択科目になるなど十分な威信を持ち,学校内外での日本語学習は青少年が学校からの抑圧への「対抗的アイデンティティ」 (subversive identity) を構築する基盤となっている。その反面,心の拠り所となるはずの日本語学習も香港の競争文化と無縁ではない。香港で広く普及するSNS を媒介した青少年学習者同士の繋がりの中にも,言語能力・文化的知識・新情報の入手速度などをめぐり,学校での競争と共通した優越感と劣等感のせめぎ合いが存在している。
著者
木村 紀子 戸出 浩之 辻本 恵美 小林 さゆき 玉野 正也 望月 純二 二階堂 暁 幡 芳樹
出版者
一般社団法人 日本超音波検査学会
雑誌
超音波検査技術 (ISSN:18814506)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.32-38, 2020-02-01 (Released:2020-02-05)
参考文献数
16

症例は70代女性.胸痛にて救急搬送され,心臓CTで左冠動脈主幹部から左前下行枝にかけて高度狭窄と左室内に異常隔壁様構造物を認めた.心臓超音波検査にて隔壁は左室を2分するように基部から心尖部までの下壁中隔から下壁にかけて存在し,乳頭筋レベルで複数の切れ込みを有して心基部で大きく開口していた.さらに大動脈弁輪部左室流出路側には膜様構造物を観察し,ひも状構造物により僧帽弁前尖弁腹に繋がっていた.また多胞性膜様部心室中隔瘤を認めた.以上より僧帽弁副組織及び膜様部心室中隔瘤が併存する左室二腔症と診断した.急性冠症候群にて来院し,心臓CTおよび心臓超音波検査にて診断しえた貴重な症例と考え報告する.
著者
芦田 裕介 市田 知子 松村 和則 望月 美希
出版者
日本村落研究学会
雑誌
村落社会研究ジャーナル (ISSN:18824560)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.13-44, 2021-10-25 (Released:2022-10-03)
参考文献数
50
被引用文献数
1 1

2020 年度の日本村落研究学会大会では、「ジャーナルセッション」を企画した。これまで『村落社会研究ジャーナル』(以下『村研ジャーナル』)が担ってきた意義と役割を検討しながら、今後のジャーナルのあり方、ひいては村落研究のあり方を考えようというのがこのセッションの目的である。 いうまでもないことだが、本学会においては、農林漁業、農村、地域社会といった対象をめぐり学際的に研究が展開されてきた。つまり、研究対象に対する関心そのものは大きなところで共有されながらも、分析手法や問いの設定の仕方には多様性を有してきたということになる。イエ・ムラ論は本学会にとっては大きな意味を持つ理論設定ではあるのだが、必ずしもそれぞれの研究がその枠づけのなかにあったわけではない。そして『村研ジャーナル』では媒体の性質上、既存の議論の方法を超えて、先進的な研究の試みを展開されてきた。 ただ、学会を取り巻く事情は大きく変化している。投稿論文数の減少の要因にもなる大学院生数の減少、類似の研究を展開できる場となるような大小さまざまな学会の存在、大学等の研究機関における独自のプロジェクトや研究枠組みの創出といった動きのなかで、村研とはどのような問題関心や議論を共有する場なのかということを問われるべき時期にさしかかっている。もちろん、これは本学会に限ったことではなく、さまざまな学会や学問分野においても同様の事態に直面しており、少なくとも人文科学の諸領域においてそれぞれが問うていかねばならない問題でもある。 この「ジャーナルセッション」では、「村落研究」が、自明な領域であるかのようにみえながらも、それぞれの時代の要請や、広く学界の動向を背景に、問いの立て方の幅が転位/変容してきたことのたどり直しを試みた。この「問い」の転位/変容は、学がどうあるべきなのか、という問いとつながっている。いくつかの切り口から、これまでの『村研ジャーナル』の掲載論文を検証し、今後、どのような研究の展開があるべきで、そしてどのような関心を共有していくべきなのかを考える礎にしたい。 *日本村落研究学会では、1994 年から『村落社会研究』の刊行を開始し、第14 巻から『村落社会研究ジャーナル』と改題した。 この特集では、叙述が繁雑になることを避けるため、適宜『村研ジャーナル』の略称を用いることとする。
著者
菅野 直之 藤井 健志 川本 亜紀 望月 小枝加 伊藤 聖 吉沼 直人
出版者
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.385-389, 2013-08-31 (Released:2017-04-28)

目的:歯周病は歯周病細菌により引き起こされる炎症性疾患であり,発症により唾液中の酸化ストレスマーカーが上昇,治療により減少することから,活性酸素が関与する疾患の一つと考えられている.本研究では,軽度から中等度の歯周病を有するボランティアを対象に,ユビキノール(還元型コエンザイムQ10)の摂取が歯周組織の臨床症状,口臭,唾液の抗酸化能に及ぼす効果を検討することを目的とした.材料と方法:被験者を2群に割り付け,実験群には還元型コエンザイムQ10(50mg)を含むサプリメントを,対照群にはプラセボを毎食後摂取させ,4,8週後に口腔内診査,口臭検査および唾液の採取を行った.成績:投与前後での臨床症状では,実験群でプラークの付着程度およびプロービング時の出血点の割合,対照群でプロービング時の出血点の割合に有意な低下が認められた.抗酸化能は,実験群ではやや増加したが,対照群では有意な低下がみられた.口臭の評価では,実験群で低下する傾向がみられた.結論:本結果から,還元型コエンザイムQ10の服用は歯周病による口腔内の症状改善に有用である可能性が示唆された.
著者
鳥居 修晃 望月 登志子
出版者
日本基礎心理学会
雑誌
基礎心理学研究 (ISSN:02877651)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.60-72, 2020-09-30 (Released:2020-11-18)
参考文献数
35

We examined the process of learning to see 2-dimensional forms, 3-dimensional solids and short distance in eight congenitally or early blind patients who acquired varying degree of sight after surgery. When we first asked them to recognize geometric solids such as cube, cylinder, cone and tetrahedron by using vison, it was found that this task was too difficult for them, even though they had the visual ability to identify 2-dimensional forms. The learning processes involved in attaining successful discrimination and identification are described here. The front distance of them became estimated mostly by the size of object at last. This study reveals the difficulty in transitioning from 2-dimensional discrimination to a 3-dismensional knowledge base.
著者
野田 航 岡田 涼 谷 伊織 大西 将史 望月 直人 中島 俊思 辻井 正次
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.84, no.2, pp.169-175, 2013-06-25 (Released:2013-09-01)
参考文献数
29
被引用文献数
9 3

The present study examines the relationship among inattentive, and hyperactive-impulsive behavior, aggression, and depression in elementary school and junior high school students. The participants were 3,885 children and their teachers and caregivers. Children’s inattentive and hyperactive-impulsive behavior was rated by their teachers and caregivers (ADHD-RS). Children rated aggression (HAQ-C) and depression (DSRS-C) themselves. Inattentive and hyperactive-impulsive behavior rated by teachers and caregivers were positively related to aggression and depression. Inattention predicted higher levels of aggression and depression. Inattentive and hyperactive-impulsive behavior as rated by teachers was more highly related to depression than those behaviors as rated by caregivers. The relationships among inattentive, and hyperactive-impulsive behavior, aggression, and depression were almost the same for both elementary school and junior high school students. This study suggests the importance of assessing inattentive and hyperactive-impulsive behavior from multiple views to examine the relationship between inattentive and hyperactive-impulsive behavior and mental health problems.
著者
荒井 智大 宮田 剛 臼田 昌広 井上 宰 村上 和重 手島 仁 中村 崇宣 中川 智彦 中西 渉 藤尾 淳 島岡 理 望月 泉
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.12-18, 2018 (Released:2018-08-01)
参考文献数
21
被引用文献数
1

急性虫垂炎の発症については季節性変化を報告した論文がみられ,特に高気圧時の化膿性疾患の増加を指摘した報告もある.2012年1月1日から2014年12月31日までの3年間に,当院で手術を施行した急性虫垂炎450例について,診療録をもとに後方視的に発症時期を調べその季節性変動を検討した.対象の平均年齢は38.3歳で,男女比は1.5:1であった.手術症例は7-9月が11-12月に比べ有意に多かった(p<0.05).気候要因としては,気温が高いほど発症が多い傾向があるが,気圧には先行研究で示されたような化膿性疾患の増加との関連性は認められなかった.急性虫垂炎の病因は複合的であり更なる検証が必要だが,この季節性変動の情報が急性虫垂炎の発症機序解明に僅かながらも寄与する可能性があると考えられた.
著者
望月 詩史 Shifumi Mochizuki
出版者
同志社法學會
雑誌
同志社法學 = The Doshisha Hogaku (The Doshisha law review) (ISSN:03877612)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.979-1021, 2016-07-31

本稿では、清沢洌の提案により1928年に発足した二七会の活動状況について検討した。活動の中心は、毎月27日に開催された定例懇談会である。政治や経済などをテーマに議論したり、時折、来賓を招いて時局談を聞いたりした。会員は主に、『中央公論』に寄稿していた評論家と文学者である。この会は学術組織ではないため、会員の間で思想的な統一性や時局に対する共通の見解が存在したわけではない。だが、そこには「自由」に特徴付けられる独特の雰囲気が存在していた。
著者
高橋 秀俊 石飛 信 原口 英之 野中 俊介 浅野 路子 小原 由香 山口 穂菜美 押山 千秋 荻野 和雄 望月 由紀子 三宅 篤子 神尾 陽子
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.103-108, 2015 (Released:2017-02-16)
参考文献数
42
被引用文献数
3

聴覚性驚愕反射(ASR)は,精神医学領域におけるトランスレーショナル・リサーチにおいて,国内外で広く研究されており,特にプレパルス・インヒビション(PPI)は,精神障害の有力なエンドフェノタイプ候補と考えられている。自閉症スペクトラム障害(ASD)では,知覚処理の非定型性についてよく知られているが,ASD の PPI に関しては一貫した結論は得られていない。最近我々は,ASD 児では ASR の潜時が延長しており,微弱な刺激に対する ASR が亢進していることを報告した。そして,いくつか異なる音圧のプレパルスを用いて PPI を評価したところ,ASR の制御機構である馴化や比較的小さなプレパルスにおける PPI は,一部の自閉症特性や情緒や行動の問題と関連するという結果を得た。ASR およびその制御機構のプロフィールを包括的に評価することで,ASD や他の情緒と行動上の問題にかかわる神経生理学的な病態解明につながることが期待される。
著者
上間 陽子 仲嶺 政光 望月 道浩 芳澤 拓也 辻 雄二 長谷川 裕 打越 正行
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

沖縄の貧困を解明するために、本助成をうけることで次の3つの調査を行うことになった。まずひとつは沖縄の風俗業界で働く若者のインタビュー調査を実施した。この調査では、彼らの生育環境、友人関係、結婚、就職、文化などについて調べた。次に全国学力・学習状況調査の沖縄の結果の分析(2013年、2014年)を行った。最後に沖縄の教員が、貧困世帯の子どもをどのように捉えて、関わりを作ったのかについて、各年代ごとにどういった傾向があるのかについて分析した。