著者
川瀬 啓祐 木村 藍 椎原 春一
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.7-14, 2018-03-30 (Released:2018-07-21)
参考文献数
31
被引用文献数
1

ツキノワグマUrsus thibetanus,キリンGiraffa camelopardalis ssp.,トラPanthera tigris ssp.,ライオンPanthera leo 2個体,サバンナモンキーChlorocebus aethiops,マンドリルMandrillus sphinxの6種7個体に対してハズバンダリートレーニングを用いた行動的保定により定期的に採血を行い,血液学検査値および血液生化学検査値を得た。得られた血液検査値を既報と比較したところ,少なくともツキノワグマ,キリン,マンドリルにおいては,ハズバンダリートレーニングを用いた行動的保定による採血はストレスが少ないと推察された。本報告は日本国内において,上記の動物種における行動的保定で得られた血液検査値の初めての報告である。また,定期採血が可能となることで,各個体の健常値を得ることができ今後の飼育管理や健康管理に役立つものと考えられる。
著者
木村 嘉孝
出版者
公益財団法人宇部市常盤動物園協会
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2016

生息環境展示は、動物の生息環境を来園者が理解することを目的とした展示法で、放飼場に植栽や自然物などが設置されているため、飼育動物の正常行動発現にも有効であると考えられていたが、従来の檻型施設と比較しても行動発現割合が変化しないことが報告されている。一方で、動物は成長過程の環境がその後の行動特性に影響を及ぼすことから、生息環境展示方式で正常行動を発現するためには、その場所で成長することが重要である可能性が考えられる。そこで本研究では、生息環境展示において生まれ成長したシロテテナガザルの若齢個体の行動を調査し、従来の檻型施設で生まれ成長した若齢個体との比較を行った。宇部市ときわ動物園において、生息環境展示方式で飼育されている雄個体(1頭)と、檻型放飼場で飼育されている雌個体(1頭)を供試個体とし、約1歳齢時において15項目の行動カテゴリー(採食飲水・休息・身繕い・探査・個体遊戯・位置移動・社会的探査・敵対・親和・社会的遊戯・社会的摂食・授乳吸乳・抱擁・母子遊び・その他)について, 1分間隔の瞬間サンプリング法による直接観察を、それぞれの施設で行った。行動調査の結果、両個体共に活動的な行動である位置移動は1日の約50%、非活動的な行動である休息は約20%発現し、施設間で差は認められなかった。さらに、観察を行ったすべての行動項目について、檻型放飼場と生息環境展示方式で大きな違いが認められなかった。本研究では対象個体が2個体のみであることから、今後も調査を継続して行う予定ではあるが、生息環境展示で生まれて成長した個体についても、檻型施設で生まれて成長した個体と同様の行動特性であったことから、飼育動物の正常行動発現のためには、生息環境展示方式をそのまま導入するだけでは効果が小さく, 環境エンリッチメント等の試みと併用して利用していく必要があると考えられた。
著者
葛西 光希 木村 圭司
出版者
北海道地理学会
雑誌
地理学論集 (ISSN:18822118)
巻号頁・発行日
vol.88, no.2, pp.37-48, 2014-02-26 (Released:2014-04-30)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

日本でケッペンの気候区分を適用すると,東北から北海道にかけての地域で,温帯から亜寒帯の遷移帯がみられる。本研究では,この遷移帯付近に位置し,かつ比較的小さな範囲である北海道(北方領土は除く) を対象としてケッペンの気候区分を適用した。また,気候の面的な分布を見られるよう,気象台やAMeDAS観測所のデータより詳細な,1kmメッシュデータを用いて区分を行った。この結果,北海道の代表的な気候区とされている亜寒帯のDf(Dfa・Dfb・Dfc) 以外にも,温帯のCfa・Cfb・Cs* や,それにわずかながらDwb,寒帯のETと,さまざまな気候区が存在することが分かった。また,1971~2000年,1981~2010年の2期間について同様の解析を行い,気候区が変化した地域を明らかにした。2期間で生じたすべての気候区変化パターンをクロス集計により明らかにした。さらに,各変化パターンの代表メッシュを抽出し,気温や降水量のデータを用いて,変化が生じた理由を説明した。北海道において,ある気候区が変化するパターンとその逆方向の気候区への変化パターンが混在した地域が見られ,この地域は気候区の遷移帯であると判断できる。遷移帯において気候区が変化したメッシュ数を比較すると,温暖化の傾向を示すメッシュ数が多かった。北海道という比較的小さな地域でもケッペンの気候区分により気候変動の一側面が把握できたことから,小地域におけるケッペンの気候区分が有効性を持つ場合があることが確認された。
著者
木村 智哉
出版者
美学会
雑誌
美学 (ISSN:05200962)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.49-60, 2010

This paper aims to discuss the meaning of the revolution that happened to animation in Japan from the 1950's to the 60's. There are two features to which I pay attention: the historical peculiarity of the revolution, and the common trend of the animation movies for commerce and those for non-commerce. There are three topics that are the points of the discussion: the trends of domestic production companies, the introduction of overseas animation movies, and the transition of criticisms. This paper clarifies the following: first of all, the revolution of the animation expression at that time invented a new image by the abstraction of form or movement and by the unification with sound; secondly, the revolution supported the attempt of small-scale productions or independent animators who opposed to major movie companies; and thirdly, however, the same revolution contributed to the lowering of the cost of commercial studios. These phenomena can be related to the revolution of the expression of the audiovisual arts that happened widely from the 1950's to the 60's.
著者
木村 麻衣子
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.147-165, 2018 (Released:2018-12-18)
参考文献数
55

国内で構築されている漢籍デジタルアーカイブの運営状況を明らかにし,漢籍デジタルアーカイブの横断検索を実現するために解決すべき問題点を整理することを目的として, 2 段階の質問紙調査と訪問調査を実施した。68 機関より合計77 件の漢籍デジタルアーカイブに関する有効な回答を得た。デジタルアーカイブの連携を目指して策定されたガイドラインの枠組みに沿って問題点を整理した結果,これらの漢籍デジタルアーカイブは,画像データの作成や提供に関しては必要なレベルをおおむね満たしているものの,メタデータの提供や共有についての達成度が比較的低かった。特に,漢籍のメタデータのみを抽出することができるデジタルアーカイブは43.4%に留まり,今後漢籍デジタルアーカイブの横断検索を実現するためには,個々の漢籍デジタルアーカイブがメタデータをより連携しやすい形で再整備する必要がある。
著者
木村 利昭 藤原 正弘 小川 敬子 藤野 良子 相良 康重 神武 正信 井筒 雅 中島 一郎
出版者
社団法人日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.70, no.12, pp.1343-1350, 1996-12-01
参考文献数
25
被引用文献数
7 3

A scanning electron microscope (SEM) was used to study the morphology of starch granules and the strength of market Udon (Japanese noodles), that is, fresh Udon, frozen Udon and cooled Udon after cooking. Udon samples were cooked for a given time and observed with SEM and also we measured the breaking strength. The following results were obtained. 1.The degree of swelling of starch granules in cooked Udon samples differed with the position from the surface. The starch granules near the surface swelled extremely and did not retain their original granular form. 2.A black ring was observed in the cross-section of all cooked Udon in SEM images. The black ring may be caused by the difference in the water content between near the surface and the core of cooked Udon. 3.The starch granules in the core of cooked Udon had a distinct form, but they were not a round shape. The shallow surface layer of each starch granule swelled and gave high contrast. The core of the each starch granule showed low contrast because of its compact structure, which looked black in the SEM images. The area of the black zone was different among Udon samples. 4.There was a correlation between the total area of low contrast zone in the starch granules and the breaking strength of Udon. The area of low contrast zone can be used for an evaluation scale of cooked Udon.
著者
土田 辰郎 木村 浩
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会和文論文誌 (ISSN:13472879)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.132-143, 2011 (Released:2012-03-17)
参考文献数
21

Media coverage plays an important role in delivering information to the public in a rapid and easy-to-understand manner in terms of the subjects of nuclear energy. The mass media has so far covered nuclear accidents that occurred in nuclear facilities. The media coverage usually gains the attention of the public through the news media, such as TV and newspapers. In this study, three main cases of nuclear accidents were quantitatively examined by using the database of a newspaper. In addition, various comments of journalists whom the author interviewed were added for the evaluation of the three cases. As a result, it was revealed that the amount of media reporting commonly reached a maximum just after the nuclear accidents occurred. It became also clear that the smoothness of the information flow from the nuclear industry to the mass media affected the trend of the media coverage from the viewpoints of the duration and number of news reports. Most of the journalists considered that it was significant for the nuclear industry to strengthen the initial reaction on the occasion of nuclear accidents. The nuclear industry should understand the characteristics that are typical of the media coverage on nuclear accidents in the future.
著者
木村 誇 後藤 聡 佐藤 剛 若井 明彦 土志田 正二
出版者
公益社団法人 日本地すべり学会
雑誌
日本地すべり学会誌 (ISSN:13483986)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.43-49, 2016 (Released:2016-04-27)
参考文献数
15
被引用文献数
3

平成25年台風26号の通過に伴う豪雨によって,伊豆大島火山のカルデラ外縁斜面では,火山砕屑物層の表層崩壊と崩土の長距離移動が発生し,元町地区で甚大な土砂災害を引き起こした。このような火山地域特有の土砂災害を防ぐためには,崩壊予備物質となる火山砕屑物の層厚分布を把握する必要がある。伊豆大島火山の噴火史研究(小山・早川,1996)に記載されたデータをもとに,クリギング法を用いて斜面に堆積したテフラとレスの互層からなる火山砕屑物の層厚分布を推定し,現地で実測した層厚と比較した。その結果,テフラの降下量が均質でほぼ同じ層序・層厚をもつと考えられた範囲(大金沢流域:1.2km2)において,テフラ層厚および累積層厚に,推定値との比でそれぞれ0.2~2.2倍と0.8~1.9倍の較差があることが明らかになった。
著者
木村 翔 筧 康明 高橋 桂太 苗村 健
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.91, no.12, pp.2781-2790, 2008-12-01
被引用文献数
1

筆者らは,プロジェクタ映像の中に,人間には見えないメタ情報を埋め込んで投影できる可視光通信プロジェクタの開発を進めてきた.このメタ情報による機械の制御は,人が目にする映像と画素単位の精度で一致させることができる.本研究は,実世界に根ざした様々なインタフェースを実現するための基盤技術として位置づけられる,これまで,埋め込まれたメタ情報を読み出すにあたり,ホトセンサ付きの受光端末を用いて,映像中の1点での情報を取得していた.本論文では,高速度カメラを用いてこのメタ情報を読み出す手法を提案する.高速度カメラを用いることで,映像全体から複数のメタ情報を同時に取得可能になる.いくつかのアプリケーション例を示すとともに,実験を通じて,その有効性を明らかにする.
著者
尾上 英俊 飯田 博幸 木村 一雄 有永 誠
出版者
West-Japanese Society of Orthopedics & Traumatology
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.774-776, 1990-10-25 (Released:2010-02-25)
参考文献数
4

During past 2 years from 1987 to 1989, 30 fingers of 22 cases of finger tip injuries and finger amputations were treated conservatively using aluminium foil (aluminium for cooking). The dressing was changed fist on the following day of injury and then every three days.The average wound healing period was 32.7 days, ranging from 26 to 38 days. The created stump was free from severe pain and tenderness and tolerated daily use excellently.The injured finger tip was packed by aluminium foil, so that the wound was always wet and epithelialization was promoted and a round shaped stump was created.The conservative therapy for finger tip injuries is economical and simple, and the result is stable regardless the ability of the doctors.
著者
奥山 秀樹 三上 隆浩 木村 年秀 占部 秀徳 高橋 徳昭 岡林 志伸 平野 浩彦 菊谷 武 大野 慎也 若狭 宏嗣 合羅 佳奈子 熊倉 彩乃 石山 寿子 植田 耕一郎
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.352-360, 2014-04-01 (Released:2014-04-10)
参考文献数
12

摂食機能障害において,全国で 26 万人と推定されている胃瘻造設者は最近の 10 年間に急速に増加してきた。胃瘻については,その有効性,トラブル,および予後等に類する報告が今までにされているが,対象者は,胃瘻を管理する医療施設や高齢者施設に軸足が置かれており,実際に胃瘻を造設した術者や,患者側の視点での調査はほとんど行われていない。 そこで今回,医療施設,高齢者施設に加えて,胃瘻を造設した医療施設と在宅胃瘻管理者(家族)とを対象にして,胃瘻に関する実態を調査し,課題の抽出,胃瘻を有効な手段とするための要因等について検討を行った。調査対象は国民健康保険診療協議会(国診協)の直診施設(国保直診施設)全数の 833 件,国保直診の併設および関連介護保険施設(介護保険施設)の 138 件,および国保直診票の対象施設において入院中もしくは在宅療養中の胃瘻造設者の家族 485 件である。 その結果,国保直診施設において胃瘻造設術件数は「減っている」が 53.1%であり,過去 3 年間に減少傾向にあるものの,介護保険施設では「減っている」が 20.3%であり,胃瘻造設を実施する側と,それを受け入れる側とに差を生じた。患者側の胃瘻に対する満足度は,造設前に胃瘻の長所,短所の説明があり,それも医師以外の職種からも説明を受け,自宅療養であること,また結果的に造設後 3 年以上経過しているといったことが,満足する要因になっていた。
著者
木村 真梨
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.699-701, 2017 (Released:2017-07-01)
参考文献数
22

近年鍼灸の臨床効果が世界各国で科学的に解明されようとしている。うつに対する鍼灸治療の効果としては筋緊張の緩和、免疫の活性化、前頭葉の活動や自律神経の調整、オキシトシンの分泌を促し、セロトニンの分泌を増加させる等、不安やストレス軽減にも寄与することが明らかになってきた。本稿では、最近の鍼灸の基礎・臨床研究の現状を紹介するとともにうつに有効なツボや東洋医学の理論について概説する。