著者
山縣 恵美 渡邊 裕也 木村 みさか 桝本 妙子 杉原 百合子 小松 光代 岡山 寧子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.6, pp.369-379, 2020-06-15 (Released:2020-07-02)
参考文献数
33

目的 高齢者の閉じこもり予防および改善の支援に向けて,地域在住自立高齢者を対象とした体力測定会に参加した者の2年間の閉じこもりに関する状態の変化とその関連要因を明らかにすることを目的とした。方法 亀岡市10地区の高齢者6,696人に対し2011年7月に日常生活圏域ニーズ調査(以下,ベースライン調査)を実施し,その回答者に2012年3~4月に体力測定会を開催し1,379人が参加した。この1,379人に対し2013年9月に再度体力測定会の案内を郵送し,参加を希望した638人に質問紙調査(以下,追跡調査)を実施した。本研究の対象者は,両調査で閉じこもり関連項目に回答した522人とした。分析には,ベースライン調査より基本属性,日常生活状況,健康状態,基本チェックリスト,生活機能に関する項目を,追跡調査より閉じこもりに関する項目を用いた。閉じこもりは,基本チェックリストの2項目のうち,1項目以上該当したか否かで評価した。両調査から,1) 非閉じこもりであった者が,そのまま非閉じこもり(非閉じこもり維持群)であったか,閉じこもり項目に該当(閉じこもり移行群)したか,2) 閉じこもり項目該当者が,それを改善(閉じこもり改善群)したか,そのまま(閉じこもり継続群)であったかで対象者を分類した。各群の特性を比較後,ロジスティック回帰分析を行い,閉じこもりに関する状態の変化に関連する要因を明らかにした。結果 ベースライン調査で非閉じこもりであった375人中,非閉じこもり維持群が326人(86.9%),閉じこもり移行群が49人(13.1%)であった。また,閉じこもり項目に該当した147人中,閉じこもり改善群が85人(57.8%),閉じこもり継続群が62人(42.2%)であった。2年後に新たに閉じこもり項目に該当する要因として,社会的役割が低いこと(OR=1.481,CI=1.003-2.185)が,閉じこもり改善の要因として,治療疾患がないこと(OR=14.340,CI=1.345-152.944),知的能動性が高いこと(OR=2.643,CI=1.378-5.069)が選択された。結論 2年間の縦断研究より,非閉じこもりであっても社会的役割の乏しい高齢者への支援の必要性が,また,閉じこもり項目該当者に対しては,治療疾患,知的能動性を考慮した支援の必要性が示唆された。
著者
杉原 桂太
出版者
名古屋工業大学技術倫理研究会
雑誌
技術倫理研究 = Journal of engineering ethics (ISSN:13494805)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.99-121, 2007-11-30

技術者は専門職であるという認知は日本の社会では定着していない。このことは技術者倫理分野における社会契約モデルが技術者に当てはまっていないことを意味する。そゆえに、技術者が倫理規定に従うべき理由づけや、技術業に就く者が特別の責任を負うべき理由として社会契約モデルは採用できないという見解には一定の説得力がある。しかし、社会契約モデルは技術者倫理分野において重視されるべきは、日本の技術者の専門職化を促そうとするものに他ならない。つまり、社会契約モデルを技術者に適用しようとするコンテクストにおいて技術者倫理分野が注目されている。そこで、倫理規定や責任について社会契約モデルと関連づけておく必要性があることになる。
著者
伊藤 真 濟川 貴 杉原 歩 堀江 遥 井内 志穂 粟木 陽子 岡田 みなみ 勝部 遥子 山本 千尋
出版者
広島大学大学院教育学研究科音楽文化教育学講座
雑誌
音楽文化教育学研究紀要 (ISSN:13470205)
巻号頁・発行日
no.24, pp.11-20, 2012

The purpose of this study is to develop music classes using Etenraku, which is one of the oldest existing music in Japan called Gagaku (traditional Japanese court music), as a material in elementary and junior high school. The main points of view on developing music classes are as follows: (1) to pursue the musical substance, (2) to center a proactive and action-oriented learning of students, and (3) to promote and enhance language activity.The music class in elementary school has two goals. One is that students develop an understanding for a mechanism of producing sounds with double reed through the activity to make hand-made musical instrument. The other is that students understand the role of hichiriki (a kind of flute) in Gagaku ensemble, discovering sound aspects of hichiriki, and expressing the sound aspects with their own words.The music class in junior high school has two goals. One is that students understand the musical style of Gagaku through creating rhythm patterns of percussion section for the melody of Etenraku. When creating, students write musical note using composition software. The other is that students engage in entire learning process with language activity, for example, talking together about what they want to express in their work, describing their intention put into their work, or expressing what they feel when they listen other's work.
著者
杉原 隆之 中川 照彦 三森 甲宇 石突 正文 四宮 謙一
出版者
Japan Shoulder Society
雑誌
肩関節 (ISSN:09104461)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.511-514, 2001

We performed a comparative study on shoulder injuries between snowboards and skis.<BR>1665 patients injured by snowboarding or skiing visited our hospital from 1997 to 1999 (males: 1173, females: 492, averagc age: 25.3). There were 883 patients injured by snowboarding (males: 667, females: 216, average age: 23.6) and 782 patients injured by skiing (males: 506, females: 276, average age: 27.3).<BR>There were 523 patients (59.2%) with upper extremity injuries caused by snowboarding. Among them there were 191 patients (21.6%) with shoulder injuries. There were 62 fractures (clavicle: 40, proximal end of the humerus: 22),78 dislocations (acromioclavicular joint: 32, shoulder joint: 46) and 1 dislocation fracture (shoulder joint). There were 235 patients (30.1%) with upper extremities injured by skiing. Among them there were 133 patients (17.0%) with shoulder injuries. There were 53 fractures (clavicle: 36, proximal end of the humerus: 14, scapula: 3),41 dislocations (acromioclavicular joint: 10, shoulder joint: 31) and 6 dislocation fractures (shoulder joints).<BR>Snowboarders fall on their hands frequently. Therefore upper extremity injuries and shoulder injuries caused by snowboarding are considered to be more than by skiing.
著者
丸山 和昭 佐藤 万知 杉原 真晃 立石 慎治 MARUYAMA Kazuaki SATO Machi SUGIHARA Masaaki TATEISHI Shinji
出版者
名古屋大学高等教育研究センター
雑誌
名古屋高等教育研究 (ISSN:13482459)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.91-110, 2020-03

大学教員における教育と研究の分業が、高等教育政策をめぐる議論のなかで取り上げられている。教育と研究の両立、分業については、大学教員を対象とする調査研究の蓄積があるが、大学外の人々の認識は十分に検討されてこなかった。そこで本研究では、大卒者へのウェブ調査の結果をもとに、教育、研究を行わないタイプの働き方が「大学教員にふさわしい」と判断されるか否かについての分析を行った。分析からは、教育と研究を両立する働き方が「大学教員にふさわしい」と判断される傾向が強いことが明らかとなった。他方、分業を認める立場も一定割合を占めており、特に私大出身者に分業を許容する傾向が見られた。ただし、分業を認める立場にあっても、“教育と研究を両立しつつ、社会貢献や管理運営にも関わる”という従来型の教員像への評価が、分業型の教員像に対する評価を上回る傾向にあった。教育と研究の分業化が先行する英語圏の動向を踏まえても、細分化された役割を担う教員は、不安定な身分に置かれやすい。分業の導入を巡る議論においては、新しいタイプの教員が相対的に評価の低い地位に固定化されることがないよう、格別の配慮が求められる。The division of education and research among university faculty is an issue arising upstream of the debate on higher education policy. Regarding the balance between education and research, and the division of labor, previous studies have been accumulating, which target university teachers, but its recognition by people outside the university has not been fully examined. Therefore, in this study, based on the results of an internet survey of university graduates, we analyzed whether or not the type of work that does not involve education or research was judged to be “suitable for university teachers.” Analysis revealed that work styles that balance education and research tend to be judged as “suitable for university teachers.” Conversely, the position of allowing a division of labor also occupies a certain percentage, and there was a tendency to allow a division of labor especially for those from private universities. However, even if they are in a position to recognize the division of labor, the evaluation of the traditional teacher image of “being involved in social contribution and management while balancing education and research” tends to exceed the evaluation of the image of research-only professors and teaching-only professors.
著者
田中 研太郎 杉原 正顯 須田 礼二
雑誌
情報処理学会研究報告ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.49(2001-HPC-086), pp.13-17, 2001-05-25

ニューラルネットの学習において、学習の停滞期(プラトー)が起きて、なかなか学習が進まないことがある。そのプラトーを避け、もっと速く学習する方法として、自然勾配学習法が甘利らによって考えられた。本論文では、この自然勾配学習法がうまくいかない場合があることを示し、その解決策として、普通の勾配学習法と自然勾配学習法を組み合わせることを提案し、数値実験で有効性を示す。
著者
杉原 伸治
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.69, no.10, pp.567-579, 2012-10-25 (Released:2012-10-25)
参考文献数
75
被引用文献数
4 6

新規重合系として,HCl·Et2Oを用いたメタルフリーリビングカチオン重合を開発した.これにより,新規生体適合/生分解性ブロック共重合体の合成も可能となった.さらにこの重合系だけに留まらず,可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合や他の重合系を組合せた極性変換へと展開し,それら重合系の特徴を利用したワンポット自己組織体の分子設計も検討した.刺激応答ゲル,球状ナノラテックス,シェル架橋型ミセル,ナノケージ,ウォーム,ベシクル,ランピーロッドがその分子設計例である.その際,RAFT水系分散重合を用いると,両親媒性ジブロックコポリマーとその自己組織化をin situで達成できた.とくに,これまでと同様に,得られるポリマーの親水/疎水ブロック占有体積比を変化させ,得られるナノ組織構造を制御しただけでなく,重合の固形分濃度を変化させることでも,その組織体構造制御を可能とした.
著者
杉原 努
出版者
佛教大学
雑誌
社会福祉学部論集 (ISSN:13493922)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.31-45, 2015-03-01

日本は世界でも群を抜いて多数の精神科ベッドおよび長期入院者があり,その対応は精神保健福祉政策の喫緊の課題である。そこで,長期入院者への退院支援に関する先行研究の論点を明らかにするとともに,退院を困難にしている要因の検証を行った。さらに,先行研究が着目した研究視点をカテゴライズした。その結果,17 の概念,5つのサブカテゴリー,2 つのカテゴリーに分類できた。一つのカテゴリー(表2 の番号1 から9) では,日本の精神科医療政策の問題点が明らかになった。地域における社会資源整備の遅れにより長期入院を生じさせてしまった現状があった。もう一つのカテゴリー(表2 の番号10 以降) では,考え方や実践における退院支援の観点が明らかになった。退院支援方法の確立と地域における支援システムの形成がなされつつある現状があった。これらは,長期入院者の社会的復権に向けた取り組みの一つとして位置づけられよう。本稿では主に前者のカテゴリー内容について論じる。後者のカテゴリー内容については第2 稿に示す。
著者
坂本 直治 杉原 栄一郎 朴 宗晋 福田 洋 礒沼 弘 饗庭 三代治 檀原 高
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.47-51, 2010 (Released:2010-03-25)
参考文献数
19
被引用文献数
3 2

目的:肺炎は一般臨床の場でよく遭遇する疾患であり,高齢者にとっては死因の上位を占めている.我が国は高齢化社会を迎えており,高齢者肺炎患者を診る機会も多い.そこで高齢者市中肺炎の死亡例を解析し予後因子の検討を行った.対象と方法:順天堂東京江東高齢者医療センター高齢者総合診療科に2005年1月から2006年12月までの間に入院を要した65歳以上の高齢者の一般市中肺炎患者200例を対象とした.これらの200症例を死亡群,治癒群に分け,入院時において早期に把握できる項目として患者背景,基礎疾患,身体所見,一般検査所見,胸部レントゲン所見,A-DROPを用いた重症度の比較検討を行った.結果:対象患者の死亡率は15%であった.平均年齢は死亡群の方が高く,入院までの期間も死亡群の方が長い経過を要していた.基礎疾患では脳血管障害,循環器疾患,認知症を多く認めたが,複数の基礎疾患を合併している症例が多くみられた.検査所見では死亡群の方が,総蛋白値,アルブミン値は低値,BUN値は高値であった.胸部レントゲン所見では死亡群のほうが陰影の広がりが大きい傾向がみられた.A-DROPによる重症判定では死亡群の方が重症,超重症例を多く認めた.考察:高齢者肺炎死亡例を検討したが予後因子として治療までの期間,総蛋白質値,アルブミン値などの栄養状態や,脱水などの臨床所見,胸部レントゲン所見の広がり具合が重要であった.A-DROPによる重症度判定は簡易に日常臨床の場で行うこともでき有用であると考えられた.
著者
駒沢 伸泰 飯塚 徳重 筒井 秀作 川崎 富夫 杉原 勝子 松澤 佑次 門田 守人
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.193-198, 2003-06-25 (Released:2011-08-11)
参考文献数
6

現在, 日本の医学教育においては, 医学部の学生を低年次の間に何らかの形で患者と接触させ現実の医療現場を観察させるという早期臨床体験実習が行われ始めている. 高年次における臨床実習では, 医師の視点から見る医療現場という側面が強くなってしまうが, 医学的知識も少ない低年次においては, 医療現場を, 医療者でもなく患者でもない第三者の立場から観察することができる. 今回, われわれは全国数か所の大学の医学生にコミュニケーションを中心とした早期臨床体験実習に関するアンケートを行い, 医学生たちが実習で何を感じたかを調査した. また, 大阪大学で見られた実習後の学生達の自発的な探求活動についても報告する. 早期臨床体験実習は学生達に医療の現場のさまざまな側面を認識させ, 医療における問題意識を与えることができると言えるのではないだろうか.
著者
川上 永子 堀 芽実 濱元 一美 杉原 勝美 Eiko Kawakami Megumi Hori Kazumi Hamamoto Katsumi Sugihara
雑誌
四條畷学園大学リハビリテーション学部紀要 = Annual reports of Faculty of Rehabilitation, Shijonawate Gakuen University
巻号頁・発行日
vol.6, pp.37-41, 2010

著者は先行研究にて、歯磨きの専門家でない作業療法士が歯磨き訓練を実施する際の具体的な訓練方法を提案した. その方法は1.歯磨き訓練マニュアルによる個別指導、2.手鏡を用いた視覚的フィードバックによる個別指導の2点であった. 今回、もともと左利きで69歳時に左片麻痺、71歳時に右片麻痺を呈した症例を対象に歯磨き訓練を実施した. 症例は69歳時の左片麻痺発症時に右手への利き手交換にてADLは自立していたが、71歳時の発症にて右片麻痺の方が重度であったために、再度機能低下した左手でのADL獲得をもとめられている. 歯磨き訓練内容については前回の報告とほぼ同様の方法を用いた. ただし、実施期間は3ヶ月としOTRが直接指導するのは週5回とした. 判定は歯科衛生士によるO'Learyのプラークコントロールレコードにより口腔内の磨き残しを算出した. その結果、口腔内の磨き残しが顕著に減少し、口腔機能も改善したので考察を含め報告する.
著者
安藤 仁介 位田 隆一 西井 正弘 杉原 高嶺
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1994

本研究は、冷戦構造崩壊後の国際秩序の再編と安定の時代における国際連合の機能変化と役割について、全体的に分析検討することを目的とした。安藤は、設立後50周年を迎えた国連の活動の全般的な再検討を行った上で、日本との関係にも目を配りつつ、人権分野を中心に研究を進めた。とくに人権の実効的保護に視点をおいて、B規約人権委員会で実践する傍ら、人権条約に対する保留の問題を検討し、また国際人権規約全般についてまとめた作業を発表した。杉原は、同じく国連50年をふりかえりつつ、紛争解決の分野、とくに国際司法裁判所の機能について、個別の判例研究をつづけ、また政治的紛争の司法的解決可能性について理論的検討を加えた他、最終年度に国際司法裁判制度全般について研究を集大成することができた。西井は、これまでの国際環境問題の展開を跡付けつつ、国際環境法の発展をたどるかたちで国連のこの分野での活動を捉らえようとしてきた。特に、単に自然環境のみでなく社会環境の視点で人権を捉えて、国際機構による人権保障制度の枠組みを検討した。位田は、一方で、リオ宣言や平和維持、開発協力、人権、海洋法などの諸分野を見渡して、国連の持つ国際法形成機構に着目して理論的研究を進め、他方で、国際機構による発展途上国問題の解決に焦点をあてて、資源国有化紛争の実効的解決や地域協力システムにおける持続的発展を検討した。本研究計画の全体のまとめとして統合した研究成果をまとめて発表するにはまだ至っていないが、安藤を中心とする研究体制は継続しており、機会を捉えて近い将来に総合的に21世紀の国連の役割を示唆できるであろう。