著者
杉原 慶治 真田 俊之 城田 農 渡部 正夫
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.402-408, 2007-09-20
参考文献数
20
被引用文献数
1 21

超純水中での単一気泡の挙動を定量的に計測・評価した.超純水製造装置で精製した水の純度を保つため,異物の混入や溶出を抑えた材質の配管・水槽を用いて実験系を構築し,テストセクション出口側で比抵抗値およびTOC値を計測することで,水の純度を定量的に評価した.実験は,超純水中に単一気泡を発生させ,高速度ビデオカメラを用い気泡挙動を,スチルカメラを用いて気泡形状をそれぞれ詳細に観察した.まず,気泡が直線運動からジグザグ・螺旋運動に遷移する臨界<i>Re</i>数を調べ,<i>Re</i>=650程度では気泡が終端速度に達した後100 mm程度も直線上昇しその後遷移したのに対し,<i>Re</i>=700程度では終端速度に達すると直ちに遷移を行い,臨界<i>Re</i>数は一意に決定できなかった.定常状態の気泡の上昇速度や抗力係数を調べ,半径<i>r</i><0.5 mm程度では理論解とほぼ一致するが,<i>r</i>>0.5 mmでは実験値と理論解のかい離が観察された.また気泡形状を,ルジャンドル関数を用いて定量的に評価を行い,気泡形状と抗力係数との比較を行った.さらに気泡形状を表現する新たな実験式を提案した.
著者
岩上 さやか 杉原 素子
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.151-158, 2014-12-25 (Released:2017-10-27)

本研究は,回復期リハビリテーション病棟に入院した脳血管障害患者がその入院生活時に何をきっかけに自身の生活に再び目を向けることができたのかを探ることを目的とした。入院生活時に自身の病前生活に目を向けていたと判断され,現在地域生活を行っている3名に対し,半構造化面接を行い得られた資料の分析を行った。資料の内容分析を通して5つの共通項目が得られた。それらは「病前生活での自身の役割の明確な再認識の機会」と「作業療法場面での家事活動」が,生活に目を向けるきっかけとして,「病前の具体的な役割の存在」「前向きな考え方」「病気の体験を今後の生活にプラスに活かす姿勢」が,きっかけを導く背景の項目として挙げられた。このことから,患者一人ひとりの病前の役割や習慣的な活動を訓練に活かす事が,生活に目を向けるきっかけとなる可能性が示唆された。今後,患者の病前生活の情報を得る技能が必要になると思われた。
著者
杉原 四郎
出版者
關西大学經済學會
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1-2, pp.1-19, 1963-06-20
著者
島田 和高 鈴木 尚史 飯田 茂雄 杉原 重夫
出版者
明治大学
雑誌
明治大学博物館研究報告 (ISSN:13420941)
巻号頁・発行日
no.11, pp.1-28, 2006-03

Yadegawa sites, which have yielded many localities of microblade assemblage are located at Minamimaki village, Minami-saku county, Nagano prefecture. Microblade industries are distributed widely throughout Japan in the final stage of Late Paleolithic period. In Yadegawa sites, Yadegawa I site is a place of the first discovery that maicroblade industry exists in Japan in 1954. Afterward, Yadegawa I site was excavated twice in 1954 and 1963, and assemblages composed of microblades, microcores, scrapers and flakes and chips were recovered. Now the mass of them are garnered at Meiji University Museum. In this article, we would report a result of obsidian source analysis by using X-ray fluorescent (EDXRF). The materials are thirty-nine microcores excavated at Yadegawa I site. The analysis of EDXRF was operated at Meiji University Cultural Properties Laboratory. As a result of analysis, it proves that seventeen of microcores are identified with obsidian that came from Onbase Island, nine from Tsumetayama/Mugikusa pass, six from west Kirigamine, two from Wada pass/Takayama, one from Omekura and four were not identified. Onbase Island is situated in the Pacific at a distance of about 50km from the edge of Izu peninsula. Of course some kinds of the voyage technology might had existed for obsidian transportation from the Pacific to the main land. In addition, it has a distance of about 150km from the edge of Izu peninsula to Yadegawa sites. Other obsidian sources mentioned earlier are located at the central highlands in Nagano prefecture, the region of which is close to Yadegawa sites westward beyond Yatsugatake mountain range. It has a distance of about 20-40km. Based on these results, we attempted to do comparative studies in the technology and the form of microcores between those made from "exotic obsidian" and from "local obsidian". A category of "Ryo-chu type microcore" is applicable to them likewise. When "exotic obsidian" and "local obsidian" are compared in this context, some distinct chracteristics become apparent as follows. Whereas thick flakes are applied to microcores made from "exotic obsidian" as blanks, the numbers of microcores made from "local obsidian" were manufactured from small size of obsidian rocks directly. This represents that the differences of obsidian source bring large varieties into the technology and the form of "Ryo-chu type" microcores. In addition, this implicates the existence of a complex obsidian circulation network between areas of the mountain and the ocean in the final stage of Japanese Late Paleolithic period as well.
著者
杉原 重夫 叶内 敦子 梅本 亨 竹迫 紘 小疇 尚
出版者
明治大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1992

平成4年度は、伊豆半島先端部の蛇石大池湿原において、深度40mまでのオールコア採取の機械ボーリングを行った。ここでは、深度35.3mまで池沼性の有機質堆積物が認められ、示標テフラの同定、^<14>C年代測定から最終氷期以降の堆積物であることが明らかになった。また花粉分析の結果、約5万年以降の植生変化が明らかになった。このほか東北地方南部から中部地方にかけての湿原(矢の原湿原など)においてシンウォールボーリングを行い、試料を採取して^<14>C年代測定などの分析を行った。平成5年度は、内陸の乾燥地域の湿原(長野県の八島ヶ原湿原)と、日本海側の多雪地域の湿原(福島県の大曽根湿原)においてボーリング調査を行った。八島ヶ原湿原では採取した約6mの試料全層について、微化石(花粉・珪藻)分析とテラフの同定・レスの検出を行った。大曽根湿原(福島県)では約3mの試料を採取し^<14>C年代測定と花粉分析を行った結果、完新世に形成された湿原であることが明らかになった。平成6年度は、日本海側の多雪地域の湿原(福島県苗場山山頂湿原・新潟県小松原湿原)においてボーリング調査を行った。これらの湿原の泥炭層から妙高系、浅間系のテフラが数枚検出された。湿原堆積物の花粉分析の結果、両湿原とも完新世に形成された湿原であることが明らかになった。本年度までに行った各地の湿原調査・研究の結果、湿原の形成年代や成因が明らかになった。また、湿原堆積物の花粉分析から最終氷期の寒冷化の開始時期について新たな知見を得て、湿原の気象観測結果と既在の気象データを整理し、実験的に山地の降雪現象をシミュレイトした。
著者
遠藤 和人 中川 美加子 肴倉 宏史 井上 雄三 井 真宏 杉原 元一
出版者
公益社団法人 日本材料学会
雑誌
材料 (ISSN:05145163)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.31-36, 2012-01-15 (Released:2012-01-20)
参考文献数
8
被引用文献数
1

Necessity to promote a recycle of waste plaster board is mounting, since the waste plaster board has been legally prohibited to dispose into inert landfill site. However, it is concerned that the recycled waste plaster board (recycled gypsum) produces hydrogen sulfide gas, so that it is one of the interference with the recycling. There is a possibility to control the hydrogen sulfide gas production from the recycled gypsum by artificially changing into alkaline condition or adding iron oxide. In this study, we discussed the hydrogen sulfide gas production from a ground improvement with the recycled gypsum, quick lime, and/or iron oxide powder. In addition, unconfined compression strength of the ground improvement is evaluated in order to obtain an incentive of the recycling. Adding only the recycled gypsum cannot improve strength of a soft ground having much amount of fine particles. Quick lime was required for strength improvement. If pH of the ground improvement is greater than 9, it was observed that the hydrogen sulfide gas production potential is negligible. Increasing pH by adding the quick lime is able to more effectively control the production of the hydrogen sulfide gas than adding the iron oxide powder. The production of the hydrogen sulfide gas is able to be controlled by adding the quick lime more than half of the amount of gypsum addition.
著者
武藤 徹一郎 小西 富夫 上谷 潤二郎 杉原 健一 久保田 芳郎 安達 実樹 阿川 千一郎 斉藤 幸夫 森岡 恭彦 沢田 俊夫
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.492-499, 1983

教室におけるCrohn病17例の経験を報告し,最近の外科的治療方針の動向について文献的考察を行った.手術は9例に行われ,残る8例はいずれも経静脈栄養によって管理することができた.9例中6例には吻合術が可能であった,痔瘻は8例に合併していたが,7例は通常痔瘻と性状が変わらず,lay openにて治癒した.<BR>欧米ではCrohn病に対する外科的治療として,小範囲切除を行う一派と広範囲切除を行う一派とがあり,主として前者には英米の専門家が,後者にはスカンジナビア,ドイツの専門家が属している.広範囲切除派は術中の凍結切片標本の検索により,病変の取り残しを防ぐことを主張している.これら欧米のCrohn病に対する外科治療方針の現況を紹介し,われわれの方針についても述べた.
著者
中島 光一 水道 裕久 江口 徹 中村 正一 杉原 邦夫 村山 洋二
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.463-471, 1987-06-28 (Released:2010-08-25)
参考文献数
45
被引用文献数
8 5

歯周病の化学療法をめざし, 歯周病原性細菌に有効な抗生物質を選択する目的で, 6菌種の歯周病原性細菌に対する10種の抗菌物質の最小生育阻止濃度, および歯肉縁下プラーク細菌に対する感受性を検討した。その結果, 被験抗菌物質の中でミノサイクリン (MINO), テトラサイクリン (TC), ペニシリンG (PCG), セフメタゾール, クリンダマイシン (CLDM), メトロニダゾール (MD), が黒色色素産生性Bacteroidesに強い抗菌性を示した。さらにMINOはほかの被験菌種に対しても強い抗菌作用を示した。また, 縁下プラーク細菌に対しては, MINO, PCGが強い抑制効果を示し, 1μg/mlの濃度で95%以上の細菌を抑制した。CLDM, TCは5μg/mlで同様の抑制効果を示したが, MD, クロルヘキシジンの抑制効果は低かった。以上の結果より, 歯周病原性細菌に対して強く幅広い抗菌活性を有するMINOは歯周病治療に用いる抗生物質として優先される薬剤であると考えられた。
著者
本間 憲治 八反田 葉月 篠原 悠人 鈴木 康太 杉原 俊一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>近年,脳血管疾患(以下,CVA)死亡数は減少傾向にあるが,要介護状態となる主原因疾患とされている。一方,心不全(以下,HF)は高齢化に伴い患者数は増加傾向にあり,今後はCVAとHFなど重複障害例の増加が予想される。</p><p></p><p>当院は脳神経外科に加えて循環器科,心臓血管外科を併設した141床の一般病院で,回復期病棟も併設しており,急性期から在宅まで一貫したリハビリテーションを提供している。当院の地域は脳卒中地域連携パスによる医療連携が積極的に行われており,生活期との連携については,退院時の申し送りを中心に行っている。</p><p></p><p>そこで今回,CVAとHFの重複障害例の申し送り内容に特徴がないか後方視的に検討する事を目的とした。</p><p></p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>対象はH26年9月からH28年9月に当院回復期病棟から自宅退院したCVA症例中,退院前に申し送りを行った者110例とし,既往にHF及び入院中にHFを併発したHFあり群29例とHFなし群81例の2群に分類し,申し送り書の内容について比較検討した。</p><p></p><p>分析方法は退院時申し送り書より抽出した年齢,退院時の合計FIM,運動FIM,認知FIMの2群間比較には対応のないt検定,性別,高次脳機能障害,及び認知機能の低下の有無の2群間比較にはχ二乗検定を用い有意水準を5%未満とした。また,退院時申し送り書の項目より,「予想される問題点」と「依頼事項」の記述内容を,計量テキスト分析ソフト「KH-Coder」を使用し,2群の上記各項目に対し共起ネットワーク分析(サブグラフ検出・媒介)を用いjaccard係数を0.2以上とした。共起ネットワーク抽出語数,線の数,グループ数を抽出した。なお,共起ネットワークとは,テキスト中の単語間の出現パターンが類似したものを線で結んだ図で,結びつきの強さをjaccard係数で表している。</p><p></p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>年齢,性別,退院時の合計FIM,運動FIM,認知FIM,高次脳機能障害の有無,認知面低下の有無の全てにおいて,両群で有意差を認めなかった。「予想される問題点」について,共起ネットワーク抽出語数はHFあり32,HFなし98,線の数はHFあり46,HFなし77,グループ数はHFあり8,HFなし11で,HFありで全てにおいて少なかった。「依頼事項」について,共起ネットワーク抽出語数はHFあり41,HFなし126,線の数はHFあり73,HFなし117,グループ数はHFあり12,HFなし11で,HFありでグループ数を除き少なかった。</p><p></p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>「予想される問題点」「依頼事項」について,共起ネットワーク抽出語数,線の数はそれぞれHFありで少なく,障害が重複し,問題点の細分化が難しく,抽象的で個別性の低い内容となる傾向が示唆された。</p><p></p><p>HFありでは「予想される問題点」に比べ「依頼事項」のグループ数は増加しており,HFありの抽象的で個別性の低い内容から具体的な依頼事項を絞り込むことが困難なため,依頼事項が散在化した可能性が示唆された。</p><p></p><p>今後の展望として,重複障害例の申し送り時には身体活動の増加や予防を目的とした個別性の高い内容を伝え,生活期との連携を行いたいと考える。</p>
著者
今泉 有美子 杉原 俊一 鈴木 康太 市場 友梨 八反田 葉月 本間 憲治 篠原 悠人
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2013, 2014

【はじめに,目的】脳卒中片麻痺者において,一時的な移動手段として車いすを利用することは多い。その際,非麻痺側上肢ではハンドリムを回し,下肢では床面を蹴り駆動するため,非対称な動作を助長している場面を多く経験する。片麻痺者の車いす座位について,先行研究では殿部荷重パターンの報告は散見されるが,車いす駆動中の座圧の変化について言及している報告は少ない。本研究の目的は,健常成人にて片麻痺患者を模した環境を設定して片手片脚駆動を実施し,前額面上で座位姿勢の影響を明らかにすることである。【方法】対象は健常成人6名(性別:男性3名・女性3名,年齢:25.7±0.8歳)とした。計測にはモジュラー車いす(松下電工株式会社製)を使用し,前座高は下腿長+2cm,後座高・フットサポートの長さは下腿長,アームサポートの高さは肘頭高+2cmに調整した。課題は右上下肢での片手片脚駆動による直進走行とし,座クッションを外したシートの上にベニヤ板を水平に設置(以下,水平条件),ベニヤ板を右側が高くなるよう5°傾斜させて設置(以下,傾斜条件),座面の中心がたわむように調整した張り調整シートのみ(以下,たわみ条件)の3条件で,10秒間の安静座位を保持した後,任意のスピードで5メートル駆動するよう指示した。計測項目は,静止状態からの座圧中心の変化と,体幹の前額面上での傾斜角度とした。座圧中心には,3条件の座面にSRソフトビジョン数値版(東海ゴム工業製)を設置して測定した。体幹の傾斜角度は,胸骨部の高さで巻きつけた加速度センサーと,デジタルビデオカメラで撮影した正面画像から,両肩峰を結んだ線と水平面のなす角をImage Jを使用して測定した値を使用した。分析方法としては,右手でハンドリムを掴んだ瞬間からハンドリムから手を放した瞬間までを1駆動周期とし,1駆動周期中と安静状態の座圧中心の差の平均値と,1駆動周期の駆動開始時と駆動終了時の体幹傾斜角度の差(以下,体幹傾斜角度の変化)の平均値を各条件で比較した。【倫理的配慮,説明と同意】本研究の実施にあたり,被験者に研究の趣旨と測定の方法について説明を行い,協力の同意を得た後に測定を行った。【結果】座圧中心の安静状態と1駆動周期中の差の平均は,水平条件で右方向へ6.9±2.2mm,傾斜条件で右方向へ9.6±2.2mm,たわみ条件で右方向へ3.5±1.0mmであり,傾斜条件で駆動側への偏倚が大きく,たわみ条件では小さかった。加速度センサーで測定した体幹傾斜角度の変化の平均は,水平条件で右方向へ0.5±2.8°,傾斜条件で右方向へ1.1±1.0°,たわみ条件で左方向へ1.1±1.2°であり,傾斜条件で駆動側への傾斜が大きく,たわみ条件では駆動側と反対側への傾斜がみられた。画像から計測した体幹傾斜角度の変化の平均は,水平条件で右へ10.1±0.7°,傾斜条件で右へ11.7±1.0°,たわみ条件で右へ8.0±1.5°であり,傾斜条件で駆動側への傾斜が大きく,たわみ条件では小さかった。【考察】水平条件と傾斜条件では,駆動中の座圧中心の駆動側への偏倚,体幹の駆動側への傾斜を認め,いずれも傾斜条件で大きかった。健常者であっても,片手片脚駆動では体幹の前額面上での非対称性が生じると考えられた。また,傾斜条件は片麻痺者に見られる麻痺側股関節周囲筋の筋緊張低下や股関節外旋などによる骨盤の麻痺側への傾斜を模擬的に設定していることから,片麻痺者の片手片脚駆動では,骨盤の傾斜角度により体幹の非対称性が増強することが示唆された。今回たわみ条件では,座圧中心の偏倚と体幹傾斜角度ともに他の2条件に比べ小さかった。座面がたわんでいる環境では,駆動方向の重心移動が困難であることが考えられた。【理学療法学研究としての意義】脳卒中片麻痺者では,将来的に歩行を獲得する場合においても一時的に車いすを移動手段として利用する症例は多い。歩行獲得に向けて理学療法を進めていく上でも,車いす駆動中の身体の非対称性を軽減していくことは重要であると考えられる。車いすの片手片脚駆動での体幹の非対称性を明らかにすることで,車いす駆動の指導方法を検討する一助となると考えられる。
著者
杉原 俊一 鈴木 康太 八反田 葉月 松村 亮 三浦 いずみ 田中 敏明 加藤 士雄 棚橋 嘉美 宮坂 智哉
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p>【はじめに】今後の介護予防・日常生活支援総合事業では,元気な高齢者と二次予防事業対象者を分け隔てることなく,高齢者のニーズに応じた介護予防の取り組みが求められ,リハビリテーション専門職(以下リハ職)による互助活動を支援する仕組み作りが重要となる。そこで本研究では,二次予防事業終了者の自主体操グループにアセスメント訪問を実施し,今後の互助活動のリハ専門職の関与について検討することを目的とした。</p><p></p><p></p><p>【方法】対象は,T区地域包括支援センターが後方支援している自主体操グループ参加者のうち(10グループ),リハ職によるアセスメントを実施した4グループ28名(平均年齢76.4±6.1歳,69~86歳)とした。調査項目は生活空間の評価としてLife space assessment(LSA),日本語版Montreal Cognitive Assessment(MoCA-J,cut-off値26点),ハンドヘルドダイナモメーターによる等尺性膝伸展筋力の体重比(下肢筋力),Timed Up And Go Test(TUG),開眼片脚立位時間(片脚立位),CS-30とした。更に携帯型加速度計(AYUMIEYE,GE社製)により,垂直・側方・前後方向の体幹部の加速度の二条平均平方根(root mean square,以下RMS)を算出し,RMSを歩行速度の二乗値で除して正規化した後,TUG,片脚立位,CS-30との各指標の関連性についてピアソンの相関係数を求め,危険率5%未満を有意とした。</p><p></p><p></p><p>【結果】LSAは70.5±26.7点,MoCA-Jは20.7±4.4点,下肢筋力は31.9±12.4%BW,TUGは7.1±1.6秒,片脚立位は17.8±9.6秒,CS-30は16.5±4.2回で,MoCA-Jでは参加者の86%が,下肢筋力及び片脚立位では50%以上が転倒リスクのcut-off値以下であった。加速度との関連性は前後方向のRMSで相関を認めず,上下及び左右方向のRMSでTUG,CS-30,片脚立位時間で有意な相関を示した。</p><p></p><p></p><p>【考察】対象者の多くがMoCA-JによるMCIのスクリーニングでcut-off値以下を示し,生活機能において多面的な低下が危惧されることから,MCIの早期発見に向けたリハ職による関与の必要性が示唆された。LSAの結果より町内レベルの外出を行う対象者を含む場合,TUGやCS-30のみでは,転倒スクリーニングは困難な可能性が考えられた。一方,TUG等の各評価指標と歩行加速度については関連性を認めており,多様な参加者のアセスメントには,鋭敏に転倒リスクを捉えうる可能性がある加速度歩行指標の組み合わせが必要と考えられる。</p><p></p><p></p><p>【理学療法の意義】リハ専門職による互助活動の包括的な訪問アセスメントによる介護予防データの蓄積により,各地域における介護予防のスクリーニング法の確立に繋がる可能性がある。</p>
著者
徂徠 正夫 後藤 宏樹 杉原 光彦 西 祐司 中尾 信典
出版者
一般社団法人 資源・素材学会
雑誌
Journal of MMIJ (ISSN:18816118)
巻号頁・発行日
vol.137, no.4, pp.46-50, 2021-04-30 (Released:2021-04-28)
参考文献数
17

Toward the implementation of geological CO2 storage, cost reduction of CO2 monitoring during and after injection into targeted reservoirs is the key issue. The continuous gravity measurement using a superconducting gravimeter, which has been applied to the demonstration project site in Japan ahead of the rest of the world, has a potential to resolve the issue from the viewpoint of a complement to the high-cost seismic survey. The concept is such that the continuous gravity measurement is substituted for constant monitoring and that the use of seismic survey could be limited only when any anomaly is detected. The comparison of the monitoring cost after the completion of CO2 injection indicated that applying gravity measurement can reduce costs by up to 15 to 50% of the seismic cost. The current detection limit of gravity change is around 1 μGal based on the application result in the coastal area in Japan. However, the time series analysis using pseudo gravity data suggested the possibility of anomaly detection even below the detection limit. Further improvement of analysis precision would lead not only to more rapid and more reliable anomaly detection but also to contribution to the cost reduction during the CO2 injection period.
著者
丸山 和昭 佐藤 万知 杉原 真晃 立石 慎治 MARUYAMA Kazuaki SATO Machi SUGIHARA Masaaki TATEISHI Shinji
出版者
名古屋大学高等教育研究センター
雑誌
名古屋高等教育研究 (ISSN:13482459)
巻号頁・発行日
no.20, pp.91-110, 2020-03

大学教員における教育と研究の分業が、高等教育政策をめぐる議論のなかで取り上げられている。教育と研究の両立、分業については、大学教員を対象とする調査研究の蓄積があるが、大学外の人々の認識は十分に検討されてこなかった。そこで本研究では、大卒者へのウェブ調査の結果をもとに、教育、研究を行わないタイプの働き方が「大学教員にふさわしい」と判断されるか否かについての分析を行った。分析からは、教育と研究を両立する働き方が「大学教員にふさわしい」と判断される傾向が強いことが明らかとなった。他方、分業を認める立場も一定割合を占めており、特に私大出身者に分業を許容する傾向が見られた。ただし、分業を認める立場にあっても、"教育と研究を両立しつつ、社会貢献や管理運営にも関わる"という従来型の教員像への評価が、分業型の教員像に対する評価を上回る傾向にあった。教育と研究の分業化が先行する英語圏の動向を踏まえても、細分化された役割を担う教員は、不安定な身分に置かれやすい。分業の導入を巡る議論においては、新しいタイプの教員が相対的に評価の低い地位に固定化されることがないよう、格別の配慮が求められる。The division of education and research among university faculty is an issue arising upstream of the debate on higher education policy. Regarding the balance between education and research, and the division of labor, previous studies have been accumulating, which target university teachers, but its recognition by people outside the university has not been fully examined. Therefore, in this study, based on the results of an internet survey of university graduates, we analyzed whether or not the type of work that does not involve education or research was judged to be "suitable for university teachers." Analysis revealed that work styles that balance education and research tend to be judged as "suitable for university teachers." Conversely, the position of allowing a division of labor also occupies a certain percentage, and there was a tendency to allow a division of labor especially for those from private universities. However, even if they are in a position to recognize the division of labor, the evaluation of the traditional teacher image of "being involved in social contribution and management while balancing education and research" tends to exceed the evaluation of the image of research-only professors and teaching-only professors.本研究はJSPS科研費17K04691の助成による。
著者
松尾 知明 杉原 由美
出版者
異文化間教育学会
雑誌
異文化間教育 (ISSN:09146970)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.82-97, 2016-08-31 (Released:2020-06-24)
参考文献数
11

Globalization, and the emergence of a multiethnic society in Japan, has posed an important question on how people with cultural differences should live together in this society. In order to promote a multicultural inclusive society, Japanese people also need to change their outlook as much as foreigners. This paper aims to discuss the design of educational programs aiming to promote a Japanese-style multicultural inclusive society while focusing on the Japanese majority.First, this paper proposes curriculum management (to consider an educational goal, concrete plan, action-research on the PDCA cycle, collaboration) as a framework for educational reforms. Second, this paper sheds light on the process of the creation of a multicultural inclusive society and focuses on the processes of construction to de-construction and re-construction of “Japaneseness” as the social norm and privilege. Third, this paper introduces a case study of a new educational program in a university based on the PDCA cycle of curriculum management. In the program, students with diverse cultural backgrounds collaborate and think over different multiethnic issues. Lastly, this paper points the importance of designing a multicultural curriculum to help create a Japanese-style multicultural inclusive society.