著者
松葉 祥一
出版者
神戸市看護大学
雑誌
神戸市看護大学紀要 (ISSN:13429027)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.1-9, 2005-03

フランスの心理学者トビ・ナタンが提唱する民族精神医学(ethnopsyhiatrie)とは何かを明らかにし,日本への適用の可能性を考察する。移住者は言語や生活習慣の違いなどからストレス状況におかれることが多く,心の病いを訴えることが多い。しかし,言語,および精神疾患の原因とその治療に対する考え方の違いのせいで,治療は困難なものになりがちである。そこで,トビ・ナタンは,移民の精神疾患を,患者の出身文化の枠組みの中でとらえること,西欧医学とは異なる治療法も導入することが必要だと主張し,30年以上にわたって実践している。本稿では,まず第1にこのトビ・ナタンの民族精神医学が生まれた社会的状況を明らかにし,第2にその理論的背景を分析する。第3にナタンの実践を概観し,第4に主著の一つである『他者の狂気』に従ってその理論的枠組みを検討する。その上で,この民族精神医学に対する批判を考察し,その問題点を指摘する。日本では,今後移民が増加することが予想されている以上,民族精神医学を批判的に導入する必要があると結論する。
著者
大辻 隆夫 塩川 真理 加藤 征宏 松葉 健太朗
出版者
京都女子大学・京都女子大学短期大学部
雑誌
京都女子大学発達教育学部紀要 (ISSN:13495992)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.39-50, 2005-01-31

本研究の目的は,高校心理学導入の是非に関する基礎資料の収集及び導入にあたっての課題を明確にすることにある。高校2年生252人(男子96人,女子156人)及び教員42人を対象に調査及び考察をおこない,次の知見を得た。(1) 高校生は全体として高校心理学への関心を高く示し,とくに女子が積極的な関心を示した。(2) 高校生及び教員が,高校心理学の内容として期待する領域は,高校生で1位心理検査,2位コミュニケーション,3位カウンセリングであり,教員では1位メンタルヘルス,2位コミュニケーション,3位青年心理学であった。(3) 高校心理学の授業担当者として,高校生及び教師のいずれもが臨床心理士による授業を望んだ。(4) 教師は,高校心理学を新教科として設置すること,あるいは総合学習の授業時間を利用して教えることに関心を示した。これらの知見を受けてあえて提案するならば,高校心理学は,総合学習ないしは選択制教科として導入し,現時点では現在配置されている臨床心理士であるスクールカウンセラーを授業担当者として活用することが一案として考えられる。
著者
川村 美好 松葉 龍一 鈴木 克明 中野 裕司
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S45071, (Released:2021-09-13)
参考文献数
5

建築設計業界では人材不足により協力スタッフ(派遣社員)への依存度が高い状況であるため,一定水準の業務遂行能力と社内ルール習得のための協力スタッフ向け自学用学習支援ツールを開発した.協力スタッフと協働する社員へのヒアリング調査及びその分析から,協力スタッフが習得すべき内容を,技術レベルの異なる3分野と全員必要な社内ルールの1分野に分類・整理した.それに基づき,TOTE モデルを用いて,自学用学習支援ツールを設計し,Moodle 上に実装した.専門家レビューと形成的評価により改善をおこなった.結果,ばらつきに対応した実務直結型の学習支援ツールを開発でき,限られた範囲内であるが,意欲の向上を確認した.
著者
松葉 ひろ美
出版者
千葉大学
巻号頁・発行日
2014

学位:千大院人博甲第学22号
著者
松葉 友惟
出版者
日本近世文学会
雑誌
近世文藝 (ISSN:03873412)
巻号頁・発行日
vol.114, pp.31-43, 2021

Many Chinese poems were written about the big earthquake in Edo which occurred on October 2, 1885 or the second year of the Ansei Period. This fad for earthquake poetry was more widespread than has ever been thought before. This paper examines what it was through the bibliographical and textual analysis of <i>Kafuku-shū</i>, the collection of earthquake poems in the Gakken Library of the National Diet Library. As the collection shows, most of those poems were protestation against the government made by poets who fell victim to the earthquake. It tells us that the act of writing in Chinese verse was an important means of expressing one's political consciousness. The frequent use of the title "Jisin-kō" refers back to the earthquake songs in the Qing dynasty or those written about the Iga earthquake in 1884 which must have triggered the popularity of earthquake poetry in 1885.
著者
松葉 和久 半谷 眞七子 長谷川 信策 小池 香代
出版者
一般社団法人日本PDA製薬学会
雑誌
日本PDA学術誌 GMPとバリデーション (ISSN:13444891)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.11-17, 2000 (Released:2006-08-01)
参考文献数
5

During 1987-1997, Nagoya City University Hospital experienced 22 cases of claim/complaint and recall of the pharmaceutical products. This included 9 cases of abnormality of container and package, 6 cases of contamination, 3 cases of content excess/shortage, and 2 cases of content abnormality and mislabeling. When observing from dosage form, a lot of complaint and recall were the injections of 9, and, next, the external preparations of 7. After enforcing PL law, claims/complains have increased in our hospital. We made the pharmaceutical companies claims of upgrading them and we got the improvement plans as the answer books of how these pharmaceutical companies resolved these problems as follows: contaminations of parts of manufacturing processes, insects, denatured ingredients etc. By using these answers from the companies, each reason of specific and interesting incident was observed and analyzed with the idea of Human Factors. As the results, reasons of most incidents were in the relationship between Liveware and Software.
著者
松葉佐 正
出版者
日本重症心身障害学会
雑誌
日本重症心身障害学会誌 (ISSN:13431439)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.176, 2017

目的 放課後等デイサービスと児童発達支援は、在宅障害児に対する通所支援サービスで、近年多くの事業所が開設されている。それぞれ4カ所ずつの事業所の職員の業務のタイムスタディ調査を行った。うち1カ所の重症心身障害児を受け入れている事業所の結果を示す。 方法 8事業所の職員の毎分の業務を記録者が記録し、業務コード(旧身体障害者療護施設におけるタイムスタディ時のものを転用)に置き換えてEXCELで集計、解析した。 成績 上記の1事業所の11名の利用者のうち、重症心身障害児(以下、重症児)は2名(大島分類1、小学部前半;大島分類2、高等部)、他は、発達障害4名、知的障害3名、ダウン症と脳炎後遺症が各1名であった。重症児への医療的ケアはなかった。事業所のサービス時間は14時から19時(土は9時から18時)、週間スケジュールは、月・木は創作的活動(月:書道、木:絵画、創作活動)、火・水・金は機能訓練(火:音楽、水:リズム体操、金:スポーツ)、土は月〜金の内容を週替わりで行っていた。大島分類1の重症児がある日の放課後等デイサービスで受けたケアは、学校からの迎え、トランスファー、声かけ、手指消毒、おやつ介助、カード遊び、習字の介助、水分補給、トイレ介助、帰り支度、着衣、トランスファー、乗車介助、家庭への送りなどであった。重症児2名とその他9名が1日に受けたケア時間の平均は、それぞれ99.0分と181.4分であった。8施設で比較すると、放課後等デイサービスでは、児童発達支援に比べて行動障害への対応とコミュニケーション、レクリエーションに多くの時間を費やしていた。 結論 1カ所の放課後等デイサービスにおいて、重症心身障害児に対するケアは十分な配慮のもとに行われていたが、他児の多動への対応等に時間を取られることが多く、他児に比べて約1/2のケア時間であった。放課後等デイサービス全体の傾向を知る必要がある。
著者
桑原 明大 松葉 成生 井上 幹生 畑 啓生
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.91-103, 2017 (Released:2018-04-01)
参考文献数
49

愛媛県松山平野には、イシガイ、マツカサガイ、ヌマガイ及びタガイの4種のイシガイ科貝類が生息しており、愛媛県のレッドリストでイシガイとマツカサガイはそれぞれ絶滅危惧I類とII類に、ヌマガイとタガイは準絶滅危惧に指定され、減少が危惧されている。これらの二枚貝は絶滅危惧IA類であるヤリタナゴの産卵床でもあり、その保全が重要である。本研究では、松山平野の小河川と湧水池において、イシガイ類の分布と生息環境の調査を行い、過去の分布との比較を行った。また、マツカサガイの殻長のサイズ分布、雌成貝によるグロキディウム幼生の保育、幼生の宿主魚への寄生の有無を調べた。マツカサガイは小河川の流程およそ3.3 km内の15地点で確認され、その生息密度は最大で2.7個体/m2であった。イシガイは小河川の2地点のみで、最大生息密度0.05個体/m2でみられ、ヌマガイとタガイを合わせたドブガイ類も1地点のみ、生息密度0.02個体/m2で確認された。いずれのイシガイ類も、1988-1991年の調査時には国近川水系に広く分布し、最大生息密度は、マツカサガイで58個体/m2、イシガイで92個体/m2、ドブガイ類で5個体/m2であり、この25年間に生息域と個体群サイズを縮小させていた。また、マツカサガイの在不在に関与する要因を予測した分類木分析の結果、マツカサガイの分布は河口に最も近い堰堤の下流側に制限され、砂泥に占める砂割合が38.8%より大きい場所で多く見られるという結果が得られた。このことから、堰堤が宿主魚の遡上を制限することによりマツカサガイの上流への分散が阻害されていること、マツカサガイは砂を多く含む砂泥を選好していることが示唆された。また、殻長51.5 mm未満の若齢個体にあたるマツカサガイは全く見つからなかった。一方、雌成貝は4-8月にかけ最大87.5%の個体が幼生保育しており、5-9月にかけ、グロキディウム幼生が主にシマヨシノボリに多く寄生していることが確認された。したがって、このマツカサガイ個体群では再生産がおよそ10年間にわたって阻害されており、その阻害要因は稚貝の定着、または生存にあることが示唆された。以上のことから、松山平野では、イシガイ個体群は絶滅寸前であり、マツカサガイ個体群もこのまま新規加入が生じなければ急速に絶滅に向かう恐れがあることがわかり、これらの保全が急務であることが示された。
著者
右田雅裕 杉谷賢一 松葉龍一 中野裕司 喜多敏博 入口紀男 武藏泰雄 辻一隆 島本勝 木田健 宇佐川毅
出版者
国立大学法人 情報系センター協議会
雑誌
学術情報処理研究 (ISSN:13432915)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.14-22, 2007-09-14 (Released:2019-04-06)
参考文献数
10

熊本大学では,2004年度より2年生の約2/3に相当する約1100名を対象に,情報処理概論をe-Learning形式の科目として開講している.本稿では,同科目の学期末試験としてLMS(Learning Management System)を用いて実施された一斉オンラインテストについて報告する.本試験は,不正行為防止策として試験中のネットワークアクセス及びPC操作を限定した上で実施されたオンラインテストである.
著者
川田 寿里 山田 裕道 松葉 よう子 小川 秀興
出版者
Meeting of Osaka Dermatological Association
雑誌
皮膚 (ISSN:00181390)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.137-142, 2000 (Released:2010-08-25)
参考文献数
10
被引用文献数
1

電解酸性水の手指洗浄効果を検討した。外来診療終了時に医師・看護婦の計12名が電解酸性水 (弱酸性水, 強酸性水) の流水にて30秒間手揉み式の手洗いを行なった。対照には水道水を用いた。手洗いの前後で寒天培地に手掌を接触させて, 37℃, 48時間培養し, 手洗い後の細菌コロニー数の減少率より有効性の判定を行なった。弱酸性水は有効率79.2%, 著効率54.2%, 強酸性水は有効率79.2%, 著効率66.7%, 水道水では有効率56.3%, 著効率27.5%であった。通常の手洗い行為において電解酸性水による手指洗浄効果は水道水よりも有意に優れていることが示された。
著者
高山 レイ子 牧内 洋子 松葉 美佐子 森田 耕司 志賀 鑑時
出版者
杏林医学会
雑誌
杏林医学会雑誌 (ISSN:03685829)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.13-19, 1978-03-30 (Released:2017-02-13)

日常よく用いられる15種の培地について,酸化還元電位(Eh)と浸透圧を測定した結果次のような成績を得た。細菌を接種せず培養条件を変えたとき,培地の種類に関係なく,Ehは好気条件では+0.3V前後を示し,嫌気条件では低下を示したが,いずれの培地でもマイナスのEhは測定されなかった。細菌を接種した後では培地の種類,培養条件・菌の増殖によりEhの変動に一定の傾向が認められた。また各培地の浸透圧はTCBS, BTBティポール,スタヒロ110培地でそれぞれ,700,900,2300mOsm/lと高い値を示したが,その他の培地ではヒトの体液に近い250〜300mOsm/lの浸透圧を示した。
著者
水野谷 武志 粕谷 美砂子 齊藤 ゆか 伊藤 純 天野 晴子 斎藤 悦子 松葉口 玲子 天野 寛子 伊藤 セツ
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.53, no.9, pp.877-885, 2002

以上, 本報ではまず, 2000年世田谷生活時間調査の重要な調査設定として, 調査単位, 典型的標本, 公募方式による調査協力者, を検討した.次に, 年齢, 学歴, 職業および収入の分布についての政府統計調査データとの比較対照によって, 本調査協力者の代表性を検討した.その結果, 調査協力者は, 高学歴, ホワイトカラー的職業, 高収入, である可能性が高いことが示唆された.<BR>調査結果から注目される点は, 平日の生活時間配分では, (1) 妻常勤の夫妻の睡眠時間が特に短いこと, (2) 夫の収入労働時間は1日の約半分に達していること, (3) 家事的生活時間には明確に夫妻差 (妻>夫) があり, さらに, 妻の収入労働時間が長いほど妻の家事的時間が減少し夫の時間が増加する傾向 (常勤妻<パート妻<無職妻, 常勤妻の夫>パート妻の夫>無職妻の夫) を確認した.休日では, 収入労働時間以外の時間が平日に比べて全体的に増えるが, 無職妻の家事的生活時間は減り, また, 夫に比べて妻の社会的・文化的生活時間は短くなる傾向にあった.<BR>次に家事的生活時間および社会的・文化的生活時間の行為者比率では, (1) 平日の「食事の準備と後片付け」は, 妻が7割以上であるのに対して夫は4割以下であった, (2) 「テレビ・ラジオ」の時間が夫妻の社会的・文化的生活時間の中で平日, 休日とわず最も長くなっていた, (3) 常勤夫妻の平日の「だんらん」が他の夫妻に比べて低かった, (4) 夫に比べて妻の「読書」の比率が全体的に高かった, (5) 常勤妻の平日の行為者比率は, 全般に, 他の妻に比べて低い, (6) 無職妻の休日の行為者比率は, 全般に, 平白に比べて減少する傾向にあった.<BR>最後に過去3回の調査結果 (1990, 1995, 2000年) を比較してみると, 全体的な傾向として, 平日では収入労働時間が増加し家事時間および睡眠時間が減少し, 休日では社会的・文化的生活時間が増加した.
著者
高橋 弘志 大町 美歩 松葉 育雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLP, 非線形問題 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.614, pp.1-6, 2002-01-22

経済時系列の分布は一般的にガウス分布ではなくレヴィ分布に従うことが知られている.しかし, 実際にその分布がレヴィ分布に起因するような原理は発見されていない.ただ, 経済時系列の特徴である長期記憶性によってレヴィ分布が発生することは知られている.そこで一般化エントロピーの最大化原理を用いることで, レヴィ分布のスケーリング指数μとTsallisのq-エントロピーのパラメータであるqとの関係を導き出すことができると考える.その関係性を実データとして1991年から2000年までの日次日経平均株価を用いることでその妥当性について検証した.