著者
上村 直人 藤戸 良子 樫林 哲雄
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.310-316, 2020-09-30 (Released:2021-10-01)
参考文献数
6
被引用文献数
1

近年, 高齢者と自動車運転の問題, 特に認知症と自動車運転は社会的にも問題化し, 臨床現場でも様々な対応や試みが行われている。さらに 2017 年 3 月 12 日からは 75 歳以上の高齢ドライバーは 3 年ごとの免許更新時と基準行為と呼ばれる特定の交通違反を犯すと, 更新を待たずに認知機能検査を受検することが必要となった。その結果, 認知症が疑われる第一分類に判定されれば, 医師の診断を受けることが義務化された。現在, わが国では認知症と判定されれば, 現行法でも既に自動車運転が禁止されているが, どのような状態であれば運転を中断すべきか, という医学的基準や評価方法は確立されていない。認知症といっても軽度から重度まで, また認知症の原因疾患によっても事故の危険性には差異がある可能性があり, 今後さらなる医学的検討が必要である。そこで今回, 臨床現場における認知症と運転行動の関連性のほか, 現時点での課題について解説した。
著者
小林 哲則 関根 英敏
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.47, no.8, pp.539-544, 1991-08-01 (Released:2017-06-02)
被引用文献数
1

実音声における基本周期の揺らぎの統計的性質について調べると共に、規則合成のための揺らぎを考慮した基本周期生成モデルについて検討した。実音声の分析の結果、基本周期の揺らぎの系列相関は、35〜70次を周期とする減衰波状の概形を示すことが明らかになった。次にこの性質を考慮しながら種々の揺らぎを有する基本周期生成モデルを構成し、揺らぎの性質と合成音声の自然性との関係について検討した。聴取実験の結果、ARフィルタを用いて実音声における揺らぎの系列相関を合成音に与えるよう構成したモデルの性能が良いことが分かった。この揺らぎを有する基本周期生成モデルによる合成音声の自然性は実音声の揺らぎを用いた合成音声と同程度であることが示された。
著者
徳永 あゆみ 今川 彰久 西尾 博 早田 敏 下村 伊一郎 阿比留 教生 粟田 卓也 池上 博司 内潟 安子 及川 洋一 大澤 春彦 梶尾 裕 川﨑 英二 川畑 由美子 小澤 純二 島田 朗 高橋 和眞 田中 昌一郎 中條 大輔 福井 智康 三浦 順之助 安田 和基 安田 尚史 小林 哲郎 花房 俊昭 日本人1型糖尿病の成因診断病態治療に関する調査研究委員会
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.12, pp.840-849, 2018-12-30 (Released:2018-12-30)
参考文献数
29
被引用文献数
2

劇症1型糖尿病は急激な発症と重症代謝異常が特徴である.本委員会では膵臓MRIのうち水分子の拡散制限を反映する拡散強調画像に注目し,劇症1型糖尿病発症早期における診断への有用性を検討した.画像データが存在する劇症1型糖尿病症例14例について,拡散の定量化指標であるADC(Apparent Diffusion Coefficient)値を算出し,非糖尿病対照例21例と比較した.劇症1型糖尿病症例では膵臓の全領域でADC値が有意に低下し,膵全体にわたる単核球浸潤による細胞密度上昇が示唆された.ADC値の最良のカットオフ値を用いると,診断感度86 %,特異度71 %であり,非典型例2例の診断にも有用であった.また,劇症1型糖尿病症例におけるADC値は血糖値および動脈血pHと有意に相関し,発症後経過とともに上昇傾向であった.以上より,膵臓MRI拡散強調画像は劇症1型糖尿病の効率的な診断の一助となることが示唆された.
著者
松林 哲也
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.47-60, 2016

有権者を取り巻く投票環境の変化は投票率にどのような影響を及ぼすのだろうか。本稿では投票環境として市町村内の投票所数とその投票時間に注目し,それらの変化が市町村内の投票率に与える影響を推定する。2005年から2012年の3回の衆院選における34都府県の市町村パネルデータを用いた分析によると,1万人あたり投票所数が1つ増えると投票率は0.17%ポイント上昇し,また市町村内の全ての投票所で投票時間が2時間短縮されると投票率が0.9%ポイント下落する。これらの効果は市町村の人口規模や人口密度にかかわらず一定である。投票環境の制約を少しでも取り除き投票の利便性を高めるためにこれまでにもさまざまな制度の変更が提案・実施されているが,本稿の研究結果は投票所の設置数や開閉時間を見直すだけでも投票率が上昇する可能性があることを示唆している。
著者
三浦 麻子 小林 哲郎
出版者
日本行動計量学会
雑誌
行動計量学 (ISSN:03855481)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.1-11, 2018
被引用文献数
11

<p>This study investigated the influence of satisficing on response behavior in online surveys. We compared online response data to psychological scales and logical thinking tasks conducted by an online survey company and a crowd sourcing service. In previous studies, satisficing was found to be more likely to occur among online survey monitors than among crowd sourcing service contributors. Results of the present study replicated it and showed that satisficing in terms of inattentively reading items significantly damages the integrity of psychological scales. On the other hand, it was also found that the influence of satisficing in terms of inattentively reading instructions carefully can be reduced by raising respondents' awareness. Those conducting online surveys should discuss taking active measures to minimize satisficing. </p>
著者
藤村 謙次郎 山下 彰久 白澤 建藏 城戸 秀彦 原田 岳 林 哲生 牛島 貴宏
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.27-31, 2009

【目的】当院で2000年以降に経験した化膿性膝関節炎を検討し,今後の治療方針決定に役立てる.【対象および方法】2000年から2008年2月までに当科で化膿性膝関節炎と診断されたのは21例21膝.うち合併症のために最終的に下肢切断術を余儀なくされた2例とACL術後感染1例,真菌性膝関節炎1例を除外して検討を加えた.平均年齢69.5(32~89)歳,男性8例,女性9例であった.手術方法は関節鏡下滑膜切除+持続灌流を基本とし,症例に応じて適宜変更した.【結果・考察】退院時のBallard評価基準はgood 2,fair 13,poor 1,死亡1であった.起炎菌の同定,早急な外科的治療および抗生剤投与が重要であり,また,MRSAは治療遷延化および変形性膝関節症(OA)の進行を招き機能予後を低下させる原因であった.さらに2006年以降の4例中3例はMRSA感染であり,近年のMRSA感染増加が示唆された.
著者
堀内 正子 相良 篤信 吉田 梨紗 小林 百代 竹ノ谷 文子 琉子 友男 小林 哲郎 仲間 若菜 黄 仁官 里 史明 湯本 哲郎
出版者
日本社会薬学会
雑誌
社会薬学 (ISSN:09110585)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.27-35, 2021-06-10 (Released:2021-06-29)
参考文献数
19

Introduction: Recently, doping among athletes has been on the rise, and pharmacists have an important role in both the promotion of anti-doping (AD) and in providing accurate information and effective support. In this study, we examined various fact-finding surveys that targeted physical education university (PEU) students, and we focused on their use of pharmacies/drugstores, their involvement with pharmacists, and knowledge about AD. We also examined the necessary AD-related professional competencies of pharmacists. Method: Questionnaire surveys were prepared, and the responses of 1,249 students were analyzed. Results : From a survey on what students buy at pharmacies/drug stores it showed that medicines for flu common colds sell the most. Most of the students did not receive any drug consultations at pharmacies/drug stores before purchasing, because they preferred to make their own decisions about drug use. Also, many students were wary of doping with supplements. Although the students who participated in international sports competitions and events possessed a wealth of doping-related knowledge and awareness, PEU students lacked them. Discussion : We determined that it was necessary to gather relevant patient information and explore methods so that intentions could be discussed when purchasing medications from pharmacies/drug stores. We also recognized the need for early doping education programs in light of the inadequate AD-related knowledge and awareness among university student-athletes. Therefore, all pharmacists should strive to acquire a wide range of knowledge to support athletes in this effort. Furthermore, we believe that expanding the professional functions of pharmacists would increase the awareness of AD among athletes.
著者
林 哲
出版者
日本鳥学会
雑誌
(ISSN:00409480)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.21-29, 1983

(1)1981年および1982年における福井県内のオオミズナギドリの迷行落下個体数は,53件(羽)であった.このうち39件(羽)(73.6%)は若狭地区の記録である.<br>(2)落下期日は,11月に多く認められ(48件,90.6%),このうち34件(羽)(64.2%)が11月5日から15日の10日間に集中していた.これは,近畿地方での調査結果(吉田,1973)と同じ傾向を示すものであった.<br>(3)迷行落下の要因は,主として最大風速6m/s以上の季節風によるものと考えられた.風速 6m/s以上の季節風が吹いた日の数日後に迷行落下がみられる傾向があった.
著者
横井 愼一 関口 麻衣子 加納 塁 小林 哲郎
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.211-215, 2010
被引用文献数
2

7歳6カ月齢の雄のヨークシャーテリアの顔面,右後肢から臀部にかけて,丘疹,鱗屑および痂皮を伴う脱毛が認められた。病変部の皮膚押捺塗抹検査では棘融解細胞を疑わせる円形の細胞が見られ,皮膚掻爬検査では鱗屑中に糸状菌の菌糸を認めた。病理組織学的には液状変性を伴う表皮内および毛包壁へのリンパ球浸潤からなる境界部皮膚炎の像を示し,角層中にはPAS陽性の菌糸様構造物を認めた。角層の真菌培養および遺伝子検査の結果, <i>Trichophyton rubrum</i>が検出されたことから,本症を<i>T. rubrum</i>による皮膚糸状菌症と診断した。<br>
著者
小林 哲生
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLP, 非線形問題 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.625, pp.71-76, 2003-01-27
参考文献数
32
被引用文献数
1

両眼視野闘争とは、物理的には左右の網膜上に視覚刺激が与えられ続けているにも関わらず、競合する視覚刺激が交互に知覚され、一方の刺激が知覚されている時、他方の刺激が意識にのぼらないという視知覚現象であり、視覚的意識の脳内機構を実験的に調べる上で、主観的体験を定量的に観測できる稀少な現象であるとして重要性が再認識されるようになってきた。ここ数年、特に機能的MRIや脳磁図、事象関連電位といった脳機能イメージング研究により、その機構解明の手がかりとなる重要な結果が報告されるようになってきており、視野闘争には、一次視覚野のみでなく、高次視覚野、頭頂連合野、前頭連合野といった複数の部位が関わっており、相互に結合している機能領域間の情報統合プロセスの結果生ずるらしいことが明らかになってきている。
著者
小林 哲
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.113-130, 2000
被引用文献数
22

日本の本州・四国・九州などを流れる河川に生息するカニ類の生態をまとめ,河川環境におけるカニ類の生態的地位と現状について考察を加えた.カニ各種の分布と回遊のパターンから,6タイプを分けた.タイプAとタイプBは感潮域付近でのみカニ期を過ごし,タイプAは繁殖のための回遊はないがタイプBは繁殖のため河口域から海域へ水中を移動する.タイプCとタイプDはカニ期を感潮域から淡水域に沿った陸域で過ごし,タイプCは河川の淡水域から感潮域にかけてで卵を孵化させ,幼生は広い塩分耐性があり感潮域へと流れくだる.タイプDは繁殖のためカニが海域へと移動し,海域で孵化を行う,タイプEは河川の淡水域でカニ期を過ごし,成熟したカニが川を降り感潮域に達しそこで繁殖する.これらのタイプはいずれも浮遊生活期の幼生が海域を分散する.タイプFは全生活史を淡水域上流部で過ごし,幼生期は短縮される.<BR>河川ではカニの分布は感潮域周辺に集中している.干潟に多くみられるスナガニ類は底質の粒度組成に応じてすみわけており,ヨシ原など後背湿地にはイワガニ類が多く出現する.淡水域の下流~中流域では,モクズガニが水中に,ベンケイガニ類3種(ベンケイガニ,クロベンケイガニ,アカテガニ)が水辺から陸上に出現する.上流域では,サワガニが水中から陸上にかけて分布する.代表的なスナガニ科8種,コブシガニ科1種イワガニ科10種,サワガニ科1種についての生態をまとめ,紹介した.<BR>河川生態系においては,カニ類は感潮域で腐食連鎖の上で重要な位置を占めていると考えられる.特にスナガニ類およびイワガニ類は,感潮域において有機物を消費している.また巣穴を多数掘ることで堆積物に沈積した有機物の分解を助け,環境浄化を助けている.近年,底質の変化によりカニ類の生息場所が損なわれ,堰の建設による流れの遮断により回遊の過程が妨害を受けている.河川改修による後背湿地における植生の喪失も,カニ類の生息場所を奪う危険性がある.以上のような,カニ類の生態を考慮に入れた改修事業が必要と考えられる.
著者
安東 孝久 増谷 健 竹本 賢史 東野 政弘 濱岸 五郎 小林 哲郎
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.33-36, 2002
参考文献数
2

高解像度LCDパネルを用いてメガネなし3Dディスプレイを開発した.左右の視差画像を発生させるパララックスバリアに,これまで我々が開発してきたイメージスプリッタ方式の代わりにピンホールアレイを使用した.ピンホールアレイが片眼に対してVGA解像度の視差画像を垂直方向と水平方向に発生させるので,多人数が同時に広い範囲で立体映像を観察できる.本3Dディスプレイは,構造が簡単で低コスト化が可能であり,将来の3Dテレビに適用できると考えられる.本研究は,NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の平成11年度委託研究を受け,その後発展させた研究である.