著者
加藤 茂孝 棚林 清 鈴森 薫 川名 尚 竹内 薫
出版者
国立予防衛生研究所
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

1.風疹ウイルスゲノムの増幅検出風疹ウイルスゲノムの増幅検出については、最終的に、(1)ウイルスRNAをグアニジン・フェノ-ル・クロロフォルムで抽出する。(2)RNAの逆転写後の相補的DNAのPCRによる増幅は2段階で行う(mested PCR)、(3)増幅DNAの検出は、アガロ-スゲル電気泳動後のDNA断片のエチジウムブロマイド染色による、事とした。2.妊娠中の風疹遺伝子診断妊娠中に発疹が出現し、風疹IgM抗体が検出された10症例について、抗体上昇以前の母血清6例、胎盤絨毛10例、治療中絶された胎児の組織5例について、ウイルス遺伝子の検出を試みた。陽性例は、血清2例、絨毛9例、胎児5例であった。胎児陽性例は全て絨毛陽性であったので、絨毛での陽性結果は、即、胎児陽性と診断して差しつかえないものと考えられた。3.風疹感染胎児におけるウイルス増殖部位臓器別に遺伝子検出を行なった胎児の症例について、ウイルス遺伝子陽性は、胎盤、腎、肝、脳、〓帯の各臓器であり、胎児感染は全身感染であると思われた。陰性の臓器は、脾、心、肺、眼、胸腺であった。この時、胎児血の風疹IgM抗体は陽性であったので、〓帯血IgM抗体陽性とウイルス遺伝子陽性、即ち、胎児でのウイルス増殖とが相関していることが確認された。4.先天性風疹症候群患児からのウイルス遺伝子の検出出生した患児の髄液、リンパ球、血清、咽頭ぬぐい液、尿、白内障手術の為摘出したレンズからも遺伝子が検出され、胎内持続感染であると思われた。
著者
小池 説夫 林 高見 山口 知哉 吉田 均
出版者
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

通常の花が咲くイネに比べて、花が咲かない突然変異の閉花性イネは、暑さ(38℃)あるいは寒さ(12℃)の温度処理いて稔実歩合が高く、障害を受けにくかった。閉花性イネは、めしべの上に受粉する花粉の数が非常に多く、また発芽している花粉数が通常のイネに比べて多かった。閉花イネでは花の中の温度が外気温より2℃低いことが分かった。このことが暑さの害を低くしていると推測された。
著者
新井 良保 小林 芳文
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.53-60, 2000-03-30
被引用文献数
1

近年、重度重複障害児(以下,重障児と略す)の感覚運動指導が、大型遊具など動的環境の中でさかんに行われるようになってきた。本研究は、首の不安定な低緊張の重度脳性まひ児が、ムーブメント法を中心とした約8年間の指導経過の中で、支持歩行まで可能になった事例を通し、重障児のための感覚運動発達アセスメントの意義や遊具活用の教育効果、さらには感覚運動指導のあり方について検討したものである。方法は、本研究対象児の定期的参加による「ムーブメント教室」での遊具活用を中心とした感覚運動プログラムの関わりの中でMEPA-IIを軸とした発達の変化を捉えることであった。結果として重障児O.Yの姿勢・移動面では、介助立位・支持歩行が確認でき、また操作面では両手動作が、そしてコミュニケーション面では自発的要求行動の発達が把握できた。このことより、重障児の感覚運動指導に連携した感覚運動プログラムの必要性、また子どもの成長・発達、教育効果の向上にとって魅力的な遊具環境を設定することの重要性、そして楽しさと喜びの中に発達があるとする療育の意義が示唆された。
著者
緒方 博司 林 泰夫 上村 光治 泉 清治 外園 不二夫 小糸 博文 伊達 徹 田中 宏明 高木 茂
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.1197-1202, 1991-03-25 (Released:2010-02-25)
参考文献数
8

Since 1984, we have performed osteosynthesis for intertrochanteric fracture of the femur using CHS method.79 Compression Hip Screws and 12 Captured Hip Screws were used for 46 stable and 45 unstable intertrochanteric fractures of the femur.The mean age was 77.9, ranging from 61 to 96 years.Among 91 patients, 8 patients could not walk even before the injury. 62 patients out of the remaining 83 patients (74.7%) were discharged with one cane gait.The major symptoms of 62 patients who could walk postoperatively were knee pain (25.8%) and thigh pain (9.7%).The major radiographic findings of those 62 patients were shortening of the neck more than 5mm (25.8%). But the shortening of the neck and the knee pain don't seem to correlate to each other.21 patients out of 83 patients (25.3%) were not able to walk on one cane. But systemic complications seemed to be the main causes in more than half of those 21 patients.
著者
松村 潔 小林 茂夫
出版者
大阪工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究ではマウスの脳出血-発熱モデルを作成し、血小板由来サイトカインCD40Lが発熱に関与している可能性を検討した。マウス視索前野へのコラゲナーゼ投与は脳出血を引き起こし、発熱とシクロオキシゲナーゼ2(COX-2)の発現を引き起こした。CD40Lの脳内投与は発熱と脳血管内皮細胞でのCOX-2発現を引き起こした。これらの結果はCD40Lが脳出血時に内因性発熱物質として働く可能性を支持する。
著者
小林 由典 大河内 博 緒方 裕子 為近 和也 皆巳 幸也 名古屋 俊士
出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.33-44, 2012-01-10 (Released:2012-06-27)
参考文献数
32
被引用文献数
1

26種類のAVOCs(塩素化炭化水素17種、単環芳香族炭化水素6種類、二環芳香族炭化水素3種類)の大気および大気水相のサンプリングを、2007年から2010年まで富士山と新宿で行った。2010年における大気中AVOCs濃度は富士山頂で最も高く(7月の平均総濃度:11.6 ppbv、n=5)、新宿(10~12月の平均総濃度:7.9 ppbv、n=52)、富士山南東麓(7月の平均総濃度:6.8 ppbv、n=9)の順であった。富士山頂における単環芳香族炭化水素(MAHs)の大気中濃度は都市域の新宿や国内外の高高度観測地点に比べて異常に高く、局地的な影響を受けている可能性がある。一方、2010年における大気水相中AVOCs濃度は富士山南東麓の雨水で15.8 nM(n=8)、富士山頂の雲水で15.7 nM(n=19)であり、新宿の露水で5.33 nM(n=15)、雨水で3.36 nM(n=30)であった。富士山における大気水相にはAVOCsが高濃度に含まれており、とくに塩素化炭化水素(CHs)は富士山南東麓の雨水および富士山頂の雲水ともにヘンリー則からの予測値以上に高濃縮されていた。大気水相へのAVOCsの高濃縮は大気中濃度、気温、各AVOCsの疎水性だけでは説明ができず、大気水相中の共存物質の影響が大きいものと推測された。
著者
西村 光博 林 恵介
出版者
九州大学農学部附属農場
雑誌
九州大学農学部農場研究報告 (ISSN:13465643)
巻号頁・発行日
no.11, pp.6-10, 2003-03

本報告では,荒廃した草地の植生回復を簡易的に図るための追播技術を確立することを目的として,追播翌年における一番草の刈取時期が追播オーチャードグラス(Dactylis glomerata L.)の茎数と全牧草収量に及ぼす影響について検討を行った. 実験では,短草型子種優占の放牧草地を長草型草種主体の採草地へ簡易更新する際,草地用条播機を用いて追播した翌年の刈取時期が追播草の茎数密度および全牧草収量に及ぼす影響について検討を行った.実験の結果,追播を行った場合,翌年一番草において早刈りを行うことは,梅雨明け7月の茎数密度において遅刈りの場合の5割増加を示したことや,追播を行わない場合の2割程度の増収が認められた.これらのことから,追立翌年の一番草の早期刈取りを行うことは追播オーチャードグラスの定着を促進し、全牧草の増収に寄与することなど,荒廃草地の植生回復あるいは草地の簡易更新に有効であることが示唆された.This study was designed to examine the stem density of Orchardgrass (Og) drilled in the previous year into the pasture and the dry matter yield of grasses of it. The objective was to examine a mechanism for the establishment Og on a directly drilled pasture sward and the grass yield with the intent of recovering degrading grassland. In this experiment, in the case of an early cutting of the grass in the next year, the stem density of Og sown the previous year showed a 50% increase than the late cutting, while the dry matter yield of the pasture grasses in that case showed a 20% increase over that of non-overseeding. Result from this study suggested that all early cutting of the grass the next year keeps the stem density of Og (sown the previous year) as high as possible, resulting in a higher dry matter yield of grasses than that of non-overseeding. The present method would be effective in improving direct drilling technology in terms of recovery of the vegetation in the degrading grassland. 10
著者
秋山 美紀 武林 亨
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.3-11, 2013-06-28 (Released:2013-07-05)
参考文献数
12
被引用文献数
3

診療所による在宅医療の実施状況を把握するとともに,診療所がどのような課題を認識しているのかを明らかにすることを目的に,7都道府県20地区・郡市医師会で,内科,外科,整形外科のいずれかを標榜する2990件の診療所を対象に質問紙調査を行った。回答を得られた1201診療所のうち,在宅療養支援診療所として算定の実績があったのは215施設(34%),届出のみ算定なしが43(7%),届出取り消し済みが5(0.8%),届出なしが367(58%)であった。2010年一年間の在宅看取りが一例以上あった施設数は409(59%),年間看取り数0は280(41%)だった。年間看取り件数が7件以上あったのは77施設で,全在宅看取りの62%を担っていた。在宅療養支援診療所の届出・算定を行っている215施設の46%(99施設),在宅療養支援診療所の届出を行っていない367施設の約50%(182施設)が年1~6件の看取りを行っていることから,現状の地域の看取りは,在宅療養支援診療所の届出の有無によらない幅広い診療所群が支えていると考えられる。看取り数上位10パーセンタイルに含まれる診療所の半数が,24時間体制を構築しており,地域における診療協力体制への関与を持ち,また地域医療連携に関わる職員も積極的に配置していた。とりわけ,看護・介護に関わる他施設とのカンファレンスの実施割合は高く,このことからも,在宅医療推進における地域連携,多職種連携の重要性が示唆される。
著者
伊勢 雄也 恩田 光子 三浦 義彦 島崎 真知子 川田 佳子 萩原 研 片山 志郎 菊池 有道 亀井 美和子 小林 宏司 白神 誠
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.127, no.6, pp.1021-1025, 2007 (Released:2007-06-01)
参考文献数
9
被引用文献数
2 5

The contents of pharmacist interventions, which were carried out by the ward pharmacists in their routine pharmacy service activities, were sorted and analyzed to evaluate the contributions of pharmacists. In the ward where pharmacists were stationed, there were a total of 196 cases of pharmacist intervention. The prescription was changed in 170 cases, giving a rate of prescription change of 86.7%. The breakdown of the pharmacist intervention was as follows: “efficacy/safety”, 106 cases, followed by “dosage regimen” (48 cases) and “compliance” (10 cases). Cost savings achieved during the investigation period were calculated to be 440,639 yen, and cost avoidance was valued at 1,941,847-3,883,695 yen using the Diagnosis Procedure Combination (DPC). The results of the present investigation showed that pharmacists contribute to through not only their pharmacy services, but also through the promotion of proper drug use and risk management, thereby contributing to hospital management through cost savings and avoidance.
著者
左近 直美 上林 大起 中田 恵子 駒野 淳 中村 昇太
出版者
大阪府立公衆衛生研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

ノロウイルスの長期にわたるシステマティックな疫学研究により、ノロウイルスに対する免疫は集団レベル、個体レベルともに遺伝子型特異的であり、その持続期間は2~3年であることを示した。また、繰返される感染によって免疫は増強されることが推察された。多様な遺伝子型の存在下で、年齢や感染歴を背景にダイナミックにヒトの中で流行している。これらはノロウイルスワクチンの基礎的知見となる。
著者
大町 基 岩田 和彦 小林 哲則
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLC, 言語理解とコミュニケーション (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.355, pp.159-163, 2009-12-14
参考文献数
7

合成音声に,相手との距離に応じた距離感を与えることを試みる.人が,例えば,離れたところにいる相手に話しかけようとして大きな声を出す際には,通常よりも強く息を吐くなどの発声の仕方の変化を伴うと考えられる.このことは音量が大きくなる以外に,声質の変化をももたらすと予想される.そこでまず,人が,相手との距離を意識して発声した音声にどのような特徴が現れるかを調べた.話しかける相手との距離をいくつか設定し,声優がそれぞれの距離感を表現して発声した音声を収録した.これらの音声を分析した結果,距離感が遠くなるにしたがって(1)第1フォルマント周波数の高域へのシフト,(2)スペクトル傾斜の緩和が特徴として見られることがわかった.さらに,これらの特徴の変化を踏まえ,音声の距離感を変換する方法を検討した.
著者
小林 一郎 田中 尚人 星野 裕司 ギエルム アンドレ マルラン シリル 本田 泰寛 岩田 圭佑 永村 景子
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究は,高齢化・過疎化の著しい中山間地の農村を対象に,歴史的構造物や文化的景観を含む土木遺産を基盤とした,地域コミュニティと基礎自治体の協働による持続可能な観光支援システムを構築することを目的とする.そのために,地方分権により既存の道路ネットワークと農村の持つ利点を活かした観光支援政策,事業の先進地であるフランスに範を求め,同地と地理的・歴史的に共通点を多く有する熊本県,鹿児島県の中山間地域の農村を事例として,日仏の事例分析を行う.さらに,フランスにおける現地事例調査,国内における実践的地域づくり活動を通して,農村観光支援のための政策,人材育成,道路ネットワークの活用手法を提案する.本研究の研究対象地は,全て農業を主産業として発展してきており,道路や橋梁,運河,水利施設などを社会的資産としてストックしてきている.フランスにおける先進事例分析として文化的景観保全調査を行い,観光支援に繋がる社会的資産を分析,評価する.さらに,自立した農村観光を成功させている基礎自治体の政策立案・実施システムについて調査する.国内では,文化的景観保全調査及び,先進事例分析を受けて,日本でも実施可能な政策としていくための,地域コミュニティと基礎自治体の協働による地域づくりとして実践する.さらに,このシステム開発に有用と考えられる,研究者,行政担当者,実務者の交流を行う.研究の成果として,フランスの文化的景観制度ともいえるシット制度について,策定手法,住民参加の意味合い,歴史・景観の価値共有手法を整理した.この文化的景観保全地域の現地踏査を行うとともに,海外事例との比較調査を実施し,さらにフランスにおける景域保全計画策定への地域住民参画について整理した.日本においては,各地において,着地型観光の担い手となる観光ボランティアガイド導入の支援を行い,農業や各地の生活・生業の持続可能性に着目した地域内外の交流促進に資する視点・手法の提供を行った.

1 0 0 0 OA 雅俗山荘漫筆

著者
小林一三 著
出版者
小林一三
巻号頁・発行日
vol.㐧一, 1932

1 0 0 0 OA 雅俗山荘漫筆

著者
小林一三 著
出版者
小林一三
巻号頁・発行日
vol.㐧二, 1932
著者
小林 久泰
出版者
日本印度学仏教学会
雑誌
印度學佛教學研究 (ISSN:00194344)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.964-959, 2007-03-20
著者
小林 甫 ボロフスコーイ ゲンナデ ストレペートフ ヴィクト ベルナルディ ロレンツォ メルレル アルベルト デイアマンティ イルヴォ サルトーリ ディアナ グリサッティ パオロ ネレシーニ フェデリコ カヴァリエーヴァ ガリー カンコーフ アレクサンド 上原 慎一 横山 悦生 田中 夏子 土田 俊幸 新原 道信 浅川 和幸 小内 透 所 伸一 杉村 宏 木村 保茂 クム ソフィア コルスーノフ ヴィクトル KORSUNOV Victor KONKOV Alexander BOROVSKOI Gennadi STREPETOV Victor DIAMANTI Ilvo BERNARDI Lorenzo リム ソフィア カヴァリョーヴァ ガリー ディアマンティ イルヴォ グリサッテイ パオロ 山口 喬
出版者
北海道大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1993

昨年度までの研究によって、非重工業化地域の内発的な産業・社会の発展を将来的に担う、青年層における青年期自立の内実は、職業的自立と社会的自立との相互連関を追求することで考察しうることを確認した。本年度はそのことを、3カ国の青年層に対する「共通調査票」を作成して、定量的に分析することに主眼を置いた。イタリアでは、ヴェネト州内の国立技術高校、職業高校(ヴィチェンツァ市)、私立の職業訓練機関(ヴェロ-ナ市)の生徒を対象とした。サハリンでは、ユジノサハリンスク市、コルサコフ市の職業技術学校、普通科高等学校/リチェ-イの生徒、失業地帯マカロフ市の職業技術学校生と失業青年を取り上げた。日本は、北海道・長野県・岐阜県の工業高校生、東京の工業高等専門学校生、そして北海道と岐阜県の職業能力開発短期大学校生を選んだ。教育階梯差と地域差を考慮してである。この国際共通調査の結果を含め、2年数か月の研究成果を持ち寄り、国際研究報告会を札幌で行った(平成6年10月6日-11日。イタリアの報告4、ロシア3、日本6)。イタリア人の報告によれば、工業や手工業を学んでいる青年層は、現在校を自ら選んで入学し(学科への興味、技術・技能の習得など)、卒業後は家業を継ぐか、自らによる起業を望んでいる。ロシアにおいては、不本意入学的な職業技術学校生と、“意欲"を示す高校生/リチェ-イ生に二分されるが、卒業後の進路としては、いずれも第一次・第二次産業を志向せず、第三次産業の何かの部門を熱望している(銀行、商業、貿易など)。小売業、旅行業、漁業の中小企業を希望する者も25-30%いる。日本では、教育階梯差に関わりなく、一定の不本意入学生を含みつつ、おおむねは「就職に有利だ」という理由で入学し、(イタリア、ロシアと同じく)厚い友人関係を保持している。しかし、卒業後の進路には地域差が見られる。中小企業の選択は各々3分の1程度だが、他の地域への転出希望において北海道(工業高校生、ポリテクカレッジ生)、城南の中小企業地帯出身者が多い東京の高専生に高かった。対極に、岐阜(工業高校、ポリテクカレッジ)と長野とが来る。岐阜県では名古屋など愛知県内への通勤希望も多い。-だが、生活価値志向においては、日本(4地域)とイタリアには大きな違いは存しない。いずこにおいても、自由時間、家族、友情、愛情に高い価値を置き、やや下がって仕事が位置づく。シンナーや麻薬、理由のない暴力、汚職を否定し、結婚前の同棲を許容する。しかし、ロシアでは、高い価値の所在はほぼ同じだが、許し難いことの上位に、親や友人を援助しないことが入り、戦争時の殺人が許容される。ここには、ロシア(サハリン)的な生活上の紐帯と、反面での国家意識とが発現している。ところで、こうした共通の生活価値の存在は、一方では、若い世代が「市民社会」的なネットワーキングを形成しつつあることを示唆する。しかし、他方、職業的な価値志向としては“分散"することもまた事実である。私たちは現在、両者の相互関係の規定要因を見いだすべく分析を重ねているが、重要な要素として注目すべきは、「SOCIAL ACTORS」である。それは、イタリアでは「職業訓練-公的雇用斡旋(学校は不関与)-家族文化-労働組合-他のアソシエーション(社会的サービス分野でのボランティア)-地方自治政府」の連鎖として理解されているものである。青年層は、その生活価値・職業価値を、このような連鎖のなかにおいて、各自がそれぞれ意味づけてゆく。かつほぼ30歳位までは、多くの職業・職場を移動し、自らの“天職"を見いだすのだと言う。またロシアにおいても、1991年以前においては、90%以上の青年が第10学年まで進学して職業訓練を受けるとともに、アクタヴリストーピオニール-コムソモ-ルなどで社会生活のトレーニングを積み、同じく30歳位が各人“成熟"の指標であった。-こうしたイタリア、旧ロシアに対し、日本社会での青年期自立(職業的かつ社会的自立)の「SOCIAL ACTORS」は、企業内の教育・訓練が担ってきたとされる。だが、高等教育機関への進学率の上昇のなかの青年層は、アルバイトなどの学外生活を含む学校生活をそれに代用させているとも言い得る。この点の追究が、次回以降の研究テーマを構成する。