著者
林 悠子
出版者
佛教大学
雑誌
社会福祉学部論集 (ISSN:13493922)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.77-94, 2011-03-01

本稿の目的は,保育の質において重要であるとされる「過程の質」は保育者にとってどのように経験されているのかを,保育記録の質的分析より明らかにすることである。筆者が保育者として記した保育記録の内容をKJ法を用いて分析した結果,保育者がその日の実践を振り返り書き残したことは8つのグループに分類でき,その特徴から保育者は子ども・保育者・職員・保護者との関係性を重視していることが明らかになった。グループ間の意味の連関からは,子どもの育ちへの願いを持った保育者が子どもと出会い,子どもの行為の意味を考え,次の関わりを展開する,保育者と子どもとの関わりの積み重ねの中に「過程の質」が見いだせることが考察できた。
著者
福林 徹 鳥居 俊 柳沢 修 倉持 梨恵子 井田 博史 奥脇 透 赤居 正美 赤居 正美
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

膝前十字靱帯損傷のメカニズム解明, およびその予防法の構築を行った. メカニズムの解明においては, Point Cluster法を用いた三次元動作解析法により着地動作や切り返し動作を計測し, こうした動作時の脛骨の内旋および膝外反の強制が,そのメカニズムに関連していると考えられた.予防法については,バスケットボール,サッカー,スキー,テニスの各競技において外傷予防プログラムを作成し,各団体において普及,推進を行った.また,その効果検証を行った.
著者
河野 一郎 秋本 崇之 赤間 高雄 河野 一郎 福林 徹
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

簡易型SIgA測定キットの開発本年度はまず市販のSIgA特異的なモノクローナル抗体を用いて,比濁法による測定を行ったが,おそらく抗体自体の力価のあるいは抗体のエピトープの問題により良好な測定系を構築できなかった.そこで,比濁法に適応可能なモノクローナル抗体の作製を試みた.現在,クローンを選別しているところであり,本補助期間にはキットの開発までにはいたらなかった.しかし,キットの開発に必要となる基礎的なデータは得ることができ,今後の展開に利するところは大と考えられた.SIgAレベルと感染症の関係昨年度,2ヶ月に渡って30名の被験者から唾液を採取し,SIgAと上気道感染症の関係を調査し,SIgAの低下と,上気道感染症の発現に一定の関係があることを見出した.本研究成果は臨床スポーツ医学に掲載された.また,高強度トレーニング(試合期)のSIgAの変化と,心理的・肉体的ストレスに関する成果についてまとめ,論文としてアメリカスポーツ医学会の機関紙(Med Sci Sports Exerci)に掲載された.本研究の結果,SIgAと上気道感染症罹患リスクには一定の関係があることが明らかとなり,今後SIgAを上気道感染症リスク把握の手段として応用することが可能であることが本研究の結果により示されたと考える.また,SIgAの測定は非侵襲的であり,その応用範囲は大と考えられた.本研究の成果により論文発表5件(国内誌3件,国際誌2件),学会発表7件を公表することができ,基礎研究としては十分な研究成果が得られたと考える.
著者
小林 孝一
雑誌
科学研究費補助金研究成果報告書
巻号頁・発行日
pp.1-4, 2011-06-10

本研究課題では,ハイブリッドシステムの制御における計算の効率化に取り組んだ.成果として,有限オートマトンの安定化に基づくモデル予測制御手法,およびオフライン計算とオンライン計算の両方を用いた精度保証付き近似解法を提案した.また,数値実験により計算の効率化が実現されたことを確認した.さらに応用として,ブーリアンネットワークモデルで表現される遺伝子ネットワークの解析と制御にも取り組んだ. : In this research, fast computation algorithms for hybrid systems control have been addressed. As important results, a stabilizing model predictive control method using stabilization of finite automata, and an approximate algorithm using both offline and online computations have been proposed. In addition, the effectiveness of the proposed methods has been shown by numerical examples. Furthermore, analysis and control of gene regulatory networks has been addressed using Boolean network models.
著者
林研
雑誌
日コレ誌
巻号頁・発行日
vol.36, pp.16-20, 1994
被引用文献数
1
著者
村上 かおり 鈴木 明子 一色 玲子 藤井 志保 林原 慎
出版者
広島大学学部・附属学校共同研究機構
雑誌
学部・附属学校共同研究紀要 (ISSN:13465104)
巻号頁・発行日
no.39, pp.225-230, 2010

2012年から全面実施される中学校新学習指導要領技術・家庭, 家庭分野では, 浴衣など和服について調べたり着用するなどして, 衣生活文化に関心をもたせたり, 和服の基本的な着装を扱うことが有効な手だてとなり得ることが述べられている。そこで本研究では, 衣生活題材における製作教材をカジュアルベストから甚平に代えて, 衣生活文化に着目した題材を提案した。本題材は広島大学附属三原中学校にて平成22年度中学3年生を対象として行った。指導にあたっては, 幅広く衣生活に関心を持ち, 学んだことを生かせるように, 個性に応じた着装の工夫という視点に加え, 甚平をなぜ作るか, どのように作るか, どう活用するかの道筋を示し, 課題を解決しながら学ばせた。また和服についての調べ学習を行わせ, 身近な衣服や技術が我が国の伝統や文化の中で受け継がれていることに気付かせることをねらった。その結果, 甚平製作を通して, 生徒は和服の特徴や衣生活文化について多くの気付きを示した。このことから, 甚平製作が衣生活文化の題材として有意義であることが示唆された。しかし実習時間の不足という課題も改めて認識できた。
著者
前林 清和
出版者
人体科学会
雑誌
人体科学 (ISSN:09182489)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.89-99, 1992-04-30

In general, people think that a view of the mind-body in the East is monism, but a specialist in Bugei and Geido of Japan thought realistic, fine mind-body theory. It is a theory formulated in light of the practice, not the Cartesian mind-body dualism, not the general mind-body monism in the East. The purposes of this study are to clarify this idea by a analysis of Jujutsu's historical materials in the Edo era. Our study can be summarized as follows; 1) The view of Jujutsu's mind-body founded on Confucianism's cosmology, so that it regarded nature as macro-cosmos, a man as micro-cosmos. This viewpoint was the basis of various levels in Jujutsu. 2) The characteristic of the technical theory in Jujutsu was expressed by the proverb "Ju yoku go wo seisu". This proverb means that a soft action controls a hard action, or a soft idea controls a hard action. In Jujutsu, it was used to express a ideal of mental state and quality of strength on a practice or on a battle. 3) The trainning theories of Jujutsu attach importance to a waist and "Seika Tanden" (a belly under a navel). "Seika Tanden" was grasped the tank of "Qi" in the East.
著者
河野 修三 小林 功 織田 豊 羽田 丈紀 大森 秀一郎 笹屋 一人 羽野 寛 山崎 洋次
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.200-204, 2000-02-01
参考文献数
18
被引用文献数
1

症例は73歳の男性.平成7年12月5日に直腸癌に対して前方切除を施行し, 平成9年8月26日には孤立性肝転移に対して肝S7を部分切除した.術中超音波検査では, 切除域に門脈浸潤などを疑う所見はみられなかった.しかし病理組織検査では, 腫瘍は長径17mmの腺癌の多発結節で, その結節は系統的に胆管の腫瘍浸潤として分布しており, 切除断端は陽性であった.平成10年7月8日に肝右葉切除, 横隔膜合併切除術を施行した.病理組織検査では, 前回の切除部位は壊死を伴い空洞状になっていて, この中に癌細胞の遺残はみられなかった.癌細胞は空洞直下の門脈域胆管内にみられ, 中枢側に向かって発育していたが, 切除断端は陰性であった.肉眼的にも認知される転移性肝癌の胆管内発育はまれである.門脈域胆管浸潤による断端陽性症例では系統的肝切除が有効である.
著者
大槻 明 川上 あゆみ 林 剛 川村 雅義
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.213-219, 2010-05-28 (Released:2011-06-25)
被引用文献数
1

学術俯瞰の分野における最近の研究動向は,参考文献の引用分析により実現するサイテーションマップが主流であり、ネットワーク構築やクラスタ化までの自動化はなされているが、各クラスタがどのような集団であるかの意味付けまでの自動化はなされておらず、専門家が手動で分析している現状である.ゆえに、各クラスタの自動解釈を最終的な目的として,本発表では各クラスタの主要論文の自動抽出を目指す。具体的には、論文をノード、引用をエッジとする有向グラフと考え、各ノードに発表年数を持たせたうえで、あるノードに入るエッジの元ノードの発表年数の分散を調べることでそれぞれの重要度の計算を試みる。そして、それらの重要度を基に、時間軸を持つ可視化グラフの構築を目指す。
著者
笹尾 哲夫 小林 秀行 川口 則幸 真鍋 盛二
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.313-320, 2002-05-05
参考文献数
4

国内4カ所の新しい電波望遠鏡を連動させて従来の百倍の精度で星の位置を測り,地球の公転を利用した三角測量でわが銀河系(天の川)の立体地図を作ろうという計画がスタートした.これにより,銀河系における暗黒重力物質(ダークマター)の質量の把握とか,宇宙距離尺度の直接検定などの新しい成果が期待される.この計画の現状を紹介するとともに,ねらいと意義,高精度実現の仕組み等について解説する.
著者
田中 隆昭 陣野 英則 新川 登亀男 小林 保治 吉原 浩人 高松 寿夫 蔵中 しのぶ 松浦 友久 丹羽 香
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

2000年12月、研究所発足。2001年3月、周以量氏(現在中国首都師範大学副教授)、林忠鵬氏(現在客員研究員)を招聘、田中所長が加わり、早稲田大学で講演会。参加者約50名。2001年9月、二日間にわたり国内・海外研究員全員と北京大学の韋旭昇氏、北イリノイ州立大学のジョン・ベンテリー氏等を招聘して早稲田大学にて国際シンポジウム「古代日本・中国・朝鮮半島文化交流の新展開」。参加者約150名。この成果は近刊の『交錯する古代』(勉誠出版)に反映される。2002年7月、シンポジゥム「21世紀に向けての日中比較文学」を中国・長春市にて東北師範大学で共催。研究発表者日本側20名、中国側28名。参加者約200名。この成果の一部が2003年2月の『日本学論壇』に反映された。2002年11月、二日にわけて王宝平氏(浙江大学)・高文漢氏(山東大学)・孟慶枢氏(東北師範大学)・林嵐氏(東北師範大学)を招聘して、田中所長と石見清裕氏(教育学部)が加わり講演会。参加者約80名。こうした海外との学術交流と平行して、毎月一回『日蔵夢記』講読会を開催。本文整理・訓読・語釈・現代語訳を確定。この成果に関連する学術研究論文を加えて、近刊の『日蔵夢記大成』(勉誠出版)に反映される。また一方では日中比較文献目録の作成も進めているが、まもなく一定の成果を公表することが可能である。
著者
小林 圭 山田 啓文 桑島 修一郎
出版者
京都大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

本年度は、カンチレバーを用いた周波数検出型バイオセンサーにおいて、その最小検出質量を決定する周波数ノイズを定量的に予測するモデルを考案し、また実際にノイズ評価を行うことで、その妥当性を評価した。従来、カンチレバーの共振周波数を検出する周波数検出型のバイオセンサーでは、その変位を検出する変位検出系のノイズによって周波数ノイズが決定されると考えられてきた。つまり、周波数変調(FM)通信と同様に取り扱われてきたのである。しかしながら、実際にバイオセンサーで用いられるカンチレバーの機械的Q値は非常に低く、しばしば10以下となるため、そうした取り扱いが妥当であるかについては疑問視されてきた。我々は、変位検出系のノイズが自励発振ループ内で発生することを考慮に入れた、カンチレバーの周波数ノイズを定量的に予測するモデルを考案した。これにより、低Q値のカンチレバーの周波数ノイズも正確に予測することができるようになった。また、この妥当性を実際に液中で自励発振させたカンチレバーの周波数ノイズを計測することにより確認した。一方、カンチレバーの変位検出系の低ノイズ化対策をさらに進め、10fm/√Hz以下を達成した。また、このように十分に変位検出系を用いた場合、カンチレバーの変位をセンサー出力とする変位検出型のバイオセンサーにおいて、本研究課題で提案した多重反射方式のカンチレバーセンサーは平行レーザ光を用いれば、感度の向上に大きく寄与できることを示すことができた。
著者
丸井 英幹 山崎 俊哉 梅原 徹 黒崎 史平 小林 禧樹
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.173-182, 2004-12-25
参考文献数
12
被引用文献数
2

兵庫県神戸市に計画された高速道路の予定地で,着工直前になって絶滅危惧種のハリママムシグサが発見された.路線の変更による影響の「回避」は困難で,道路建設の影響圈に自生するすべての個体の移植によって個体数の維特をはかる保全対策をとった.移植に先だって自生地で分布,個体形状,性表現,光環境,土壌条件,植生を,移植先の候補地で光環境,土壌条件と植生を調査した.調査の結果,ハリママムシグサは林冠がうっ閉するまでの早春の光環壌にめぐまれる谷沿いの落葉広葉樹林の林床で,乾きにくい砂質土壌の場所に自生することがわかった.種子繁殖にかかわる性表現は個体サイズに依存しており,雌個体はもっとも明るい場所に自生することから,雌への成長には一定の年限,光環境にめぐまれる必要があると考えられた.調査結果をもとに移植先の候補地から適地をえらび,個体形状を測定して可能なかぎり適期に移植した.
著者
押川 文子 村上 勇介 山本 博之 帯谷 知可 小森 宏美 田中 耕司 林 行夫 柳澤 雅之 篠原 拓嗣 臼杵 陽 大津留 智恵子 石井 正子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

本科研は、複数地域を研究対象とする研究者による地域間比較や相互関連を重視したアプローチを用いることによって、グローバル化を経た世界各地の地域社会や政治の変容を実証的に検証し、それらが国内外を結ぶ格差の重層的構造によって結合されていること、その結果として加速するモビリティの拡大のなかで、人々が孤立する社会の「脆弱化」だけでなく、あらたなアイデンティティ形成や政治的結集を求める動きが各地で活性化していることを明らかにした。
著者
林 雅弘 松本 竜一 吉松 隆夫 田中 悟広 清水 昌
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.674-678, 2002-09-15
参考文献数
21
被引用文献数
10 9

フィルター法によって全国各地の海水等からドコサヘキサエン酸(DHA)高蓄積性ラビリンチュラ類の分離を試み,12株の分離株を得た。各分離株の脂質含量,脂肪酸組成を分析したところ,脂質含量は乾燥細胞中13.7-23.0%,総脂肪酸中のDHA含量は21.5-55.4%であった。これら分離株を生物餌料用栄養強化飼料として利用するため,水中分散性と生物餌料への給餌試験を行ったところ,多くの株が水中で凝集性を示し,ワムシやアルテミアの斃死が認められた。しかし,分離株のうちKY-1株については高いDHA蓄積性を示し,水中分散性も良好であった。さらにKY-1細胞中のDHAはワムシ・アルテミアに短時間で移行することが確認され,生物餌料用栄養強化飼料として好適な性質を備えていることが示された。
著者
夏目 敦至 若林 俊彦 鈴木 正昭 古山 浩子 近藤 豊 竹内 一郎
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

我々はDNAのメチル化などのエピジェネティクスが癌精巣抗原(Cancer-testis antigens, CTAs)の発現調節にも関与していることを見出し、5-aza-deoxycytidineをグリオーマに作用させるとCTAsの発現が活性化することを認めた。そしてCTA特異的細胞傷害性T細胞によってHLA拘束性に傷害される。以上にDNAメチル化阻害剤と癌ワクチン療法の組み合わせで強力な免疫療法の開発の展望を示した。一方、HDAC阻害剤のうち、SAHA, MS-275, FK-288は米国において白血病における臨床試験が行われている。また、脳神経外科領域でなじみのある抗てんかん薬のバルプロ酸がHDAC阻害活性を有しているのも興味深い。DNAメチル化酵素やHDACとともにEZH2も分子標的となりうる。現在、エピジェネティクス異常を標的とする治療薬の開発が急速に進んできており、グリオーマにおいて適応になるのも近い将来可能になると期待される。