著者
若林 隆 仁木 一郎 吉田 松年 早川 哲夫 JERZY Krechn ZDZISLAW Wai MICHAL Wozni
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

1.培養細胞系によるミトコンドリア(ミト)巨大化実験モデルの確立:従来の動物(マウス、ラット)に代わって培養細胞系による実験モデルを確立し、ミト巨大化の機序解明を可能にした。2.ミト巨大化機序の解明:様々な病的条件下でのミト巨大化の普遍的機序に、フリーラジカルが直接関与することをin vivo,in vitroの実験系で証明した。3.ミト巨大化の細胞病理学的意義の解明:巨大ミト存在下の細胞がやがてアポトーシスに陥る事を培養細胞系で見いだした。フリーラジカルに晒された細胞内ミトは、巨大化により自らの酸素消費量を減少することによって酸素ラジカル産生を減少させ細胞内フリーラジカル量の増加を緩和しようとするのであり、ミト巨大化はオルガネラ・レベルでの適応と考えられる。4.フリーラジカルスカベンジャーによるミト巨大化阻止の成功:coenzyme Q_<10>,α-tocopherol,4-OH-TEMPOにより、in vivo,in vitroでの種々病的条件下でのミト巨大化の阻止に成功した。6.臨床応用を目的としたフリーラジカルスカベンジャーの開発:in vivoの実験系で4-OH-TEMPOの副作用がみられたので、新たに6種の誘導体を合成しスカベンジャー効果を培養細胞系で検討した結果、4-octanoyl-,4-lauroyl-TEMPOに4-OH-TEMPOよりはるかに優れたスカベンジャー効果が見られ、in vivoの系で検討中。
著者
栗林 香織
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的は、膜タンパク質の機能解析のためにマイクロ・ナノ加工技術を用いることによりこれまで実現の不可能であった直径の揃ったジャイアントリポソームを効率的に作製し、操作するマイクロ流体デバイスを実現することである。そこで、本年度は,主に下記の項目について研究を行ってきた。パリレンシートの穴あきシートに金を蒸着し電極基板を作製し、基板上に脂質膜のパターンニングを行いそれぞれのパターンからからジャイアントリポソームを作成する方法を検討した。これまで作成されてきたジャイアントリポソームでは、リポソームは閉じた系であるため作成後にリポソーム内の溶液を変えることはできなかった。本方法では、作成されたリポソーム内の溶液を小穴を通して変換することが可能である。脂質のパターンニングは、パリレンリフト法を用いて行い、エレクトフォローメーション法により作成された脂質パターンから均一径のリポソームを作ることが可能になった。さらに、作成されたリポソーム内に直径が200nm-1μmのビーズを注入することができた。ビーズをDNAや試薬等に変えることでドラックデリパリーシステムや生物系の観察などの分野での応用が可能である。一般的にエレクトロフォーメーション法で作製されたリポソームは基板上に固定されており、リポソームを単独で使用することはできなかったが、本デバイスでは、基板の小穴から溶液を流すことにより、リポソームを切り離すことができた。
著者
林 泰秀 外松 学 朴 明子 大木 健太郎 佐野 弘純 小川 誠司
出版者
群馬県衛生環境研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

ALK遺伝子の解析で神経芽腫(NB)では、部分欠損型ALKも腫瘍化に関与することが示され、ユーイング肉腫では新規のミスセンス変異の4例は活性化変異であることが判明した。横紋筋肉腫50検体の解析では高頻度にALKの高発現を確認した。IDH1/2遺伝子の解析ではNBを含め4種の腫瘍で変異が同定された。さらに次世代シーケンサーのエクソーム解析とALK経路に関連する遺伝子群の解析で新規異常を複数検出し、ALK経路はNBの発症と進展に重要な役割を果しており、治療標的になりうることが示唆された。
著者
山本 智子 廣井 敦子 柴田 亮行 大澤 真木子 小林 槇雄
出版者
東京女子医科大学
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.81, no.1, pp.E25-E36, 2011-03-31

福山型先天性筋ジストロフィー (FCMD) は、筋肉の他、中枢神経系や眼の形成異常を伴う筋ジストロフィーで、常染色体劣性遺伝を示す。原因遺伝子fukutinの遺伝子産物は、基底膜形成に関与するα-dystroglycan (α-DG) の糖鎖修飾に関与する。α-DGは豊富な糖鎖を有する糖蛋白で、基底膜/細胞膜部分において細胞内外の蛋白をlinkする複合体、dystrophin-glycoprotein complex (DGC)、の構成成分のひとつである。糖鎖部分が種々の基底膜構成蛋白の受容体となっている。FCMDの中枢神経病変は、小多脳回に代表され、グリア境界膜でのα-DGの糖鎖修飾低下を伴う。グリア境界膜は、astrocyteの足突起により形成されるため、FCMDの中枢神経病変形成には、astrocyteが大きく関与していると考えられる。Fukutinは、さらに、未熟な神経細胞の遊走を促進している可能性があり、また、成熟神経細胞においては、シナプス機能と関連している可能性も考えられる。Fukutinは、ほとんど全ての組織に発現しているが、astrocyte, 神経細胞以外の中枢神経構成成分や、他の諸臓器における役割は、ほとんど解明されていない。また、ゴルジ装置や小胞体以外に、核への局在も示唆され、α-DGの糖鎖修飾以外の機能を有している可能性もある。今後、遺伝子治療等の先端医療が開発されていくと思われるが、より副作用の少ない、効果的な治療のためには、FCMDの病態やfukutinの機能に関する基礎的な検討が不可欠と考えられる。
著者
藤居 宏平 柴田 智広 小林 亮太 北野 勝則 西川 郁子 池田 和司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.295, pp.31-36, 2010-11-11
参考文献数
13

本研究の目的は,四肢を用いたドラム演奏時における熟達者-非熟達者間の脳活動を比較することである.このように全身を用いた運動時の脳活動を非侵襲に計測するため,近赤外分光法(Near-infrared spectroscopy; MRS)を用いた.演奏課題としては,非熟達者にとっては演奏が容易でないが,熟達者にとっては容易である一小節のドラムパターンを用いた難課題と,いずれの被験者にとっても演奏が容易な一小節のドラムパターンを用いた易課題の2種類を用意した.解析の結果,熟達者では主に難易度が高いと前頭葉付近の活動が低下するのに対し,非熟達者では前頭葉付近や頭頂葉付近で活動が増加することが観測された.
著者
上田 晴彦 林 信太郎 林 良雄 林信 太郎 林良 雄
出版者
秋田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

秋田大学教育文化学部内にウェブサーバーを設置し, バーチャル天文館を開設した。そしてその教育効果を調べるために, バーチャル天文館内のデジタルコンテンツを利用した教育実践を県内の小・中学校の教育現場でおこなった。その結果, バーチャル天文館内のデジタルコンテンツは教育的有効性があることが分かった。また特別な知識を持たなくても作成可能な本格的なデジタルコンテンツについての研究も, あわせておこなった。
著者
小林 研二 青木 太郎 西岡 清訓 高地 耕 小森 孝通 畠野 尚典 吉田 恭太郎 林 英二朗
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 = Gastroenterological endoscopy (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.28-34, 2011-01-20
参考文献数
20
被引用文献数
2

61歳男性.主訴は嚥下時心窩部痛,胸部中部食道(Mt)の長径3cm,IIc,食道扁平上皮癌で,ESDを施行.切除標本では低分化型扁平上皮癌,sm1,ly1,v1であり,追加治療として化学療法を施行.14カ月後に胸部大動脈周囲リンパ節転移再発にて,手術を行い,組織学的にはリンパ節再発,内分泌細胞癌であった.集学的治療をするも,初回治療から2年1カ月,食道切除から10カ月で原病死した.術前診断困難な悪性度の高い食道癌におけるESD後のリンパ節再発死亡例を報告した.
著者
岡林 秀樹 大井 直子 原 一雄
出版者
The Japanese Psychological Association
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.127-133, 1995
被引用文献数
1

Thls study examined the changes in college students' view of life through three periods: the 1960s, 80s, and 90s. Approximately 3000 students at a liberal arts college responded at least once during the periods to a questionnaire with 13 descriptions (13 Ways to Live; Morris, 1956). Factor analyses, with principal component analysis and varimax rotation, found four factors that were common to the three subject groups. An examination of factor scores revealed that the first factor, "Sympathy and Service, " decreased while the fourth, "Comfort and Variety, " increased in the 80s and 90s, suggesting that an individualistic yet conforming tendency became more prominent in the latter periods than the 60s. While the third factor, "Active Action, " increased during the four college years in the 60s, it decreased in the 80s. These changes may have reflected the campus unrest in the 60s and the subsequent student apathy in the 80s. A recent increase in the fourth factor, especially among sophomores, seems to reflect the current characteristics in college students' view of life, namely a "moratorium" tendency.
著者
大豆生田 啓友 佐伯 胖 小林 紀子 高嶋 景子
出版者
関東学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究は「保育の場における子育て支援の質に関する研究」として、幼稚園や保育所、子育て支援施設における子育て支援の実践的な視点に立った質的な研究を行ってきた。本研究の中心となったのは、3年間継続して行ってきた幼稚園でのフィールド研究である。このフィールド研究では、幼児の園での姿を追うことと平行して、その保護者のインタビュー調査を行ってきた。1そこから、子どもの変化と、保護者の変化、保育者の変化が関連するものであることを明らかにしてきた。そして、園が保護者に開かれ、保育者が日常的に子どもの姿を保護者に伝えていくことが、保護者の変容に大きく結びついていくことが浮き彫りとなった。また、子どもの姿を意味の脈絡としてのエピソードとして伝えることを通して、保育者自身の変化にも関連があることを明らかにしてきた。第二には、公私立の幼稚園、保育所の保育者の子育て支援に関する意識調査としてアンケート調査を実施した。このアンケート調査では、「子育て支援」という概念自体が自明ではないのではないかという問題意識に立ち、子育て支援意識の多様な実態を明らかにし、そこから子育て支援を再構築するための手がかりを得ることを目的に実施したものである。具体的には、子育て支援が本研究で行ってきた「参加」型としての支援ではなく、「サービス提供」型の支援として捉えられていることを明らかにした。さらに、保育所および幼稚園での子育て支援の捉え方、公立と私立での捉え方、あるいは経験年数での捉え方、等々の相違点についても明らかにした。
著者
小野 晴子 林 康弘 小松 川浩
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.15, pp.1-8, 2010-03-11

本稿においては,地域の市民活動における情報共有を図るためのネットワークコミュニティの実現を目的に,地域コミュニティでの利用を想定したメーリングリストシステムの実証開発について述べる.本メーリングリストシステムは,携帯電話の電子メールのみを用いてメーリングリストの管理を行い,また,電子メールによるメンバー間のコミュニケーションを可能とする.これにより,市民間のコミュニケーションを図るための電子メールを基盤としたネットワークコミュニティを構築する.本システムの有効性を検証するために,北海道・千歳市において実証実験を行った.具体的には,実際に活動している地域のボランティア団体と千歳科学技術大学の学生らに,開発したシステムを利用してもらい,アンケートによるシステムの評価を行った.本稿においてはその結果について示す.In this paper, we present experimental development of a mailing list system assuming usage in regional communities to promote information-sharing among local residents. This mailing list system manages the lists for sending e-mail to local by only using e-mail on mobile phones, and also achieves communication among members by using the e-mail. The constructed mailing lists by this system are corresponding to network communities. This paper shows experimental results to clarify the feasibility and effectiveness of our system by local residents and academic students in a regional community, which is Chitose-city, JAPAN.
著者
冨永 達 小林 央往 植木 邦和
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.204-209, 1989-10-30
被引用文献数
2

チガヤ(Imperata cylindrica var. koenigii)は、防除が極めて困難な、世界の熱帯から温帯に広く分布するイネ科の多年生雑草である。チガヤが密生している草地の現存量の季節変化を調査し、あわせてチガヤの主な繁殖器官である根茎の水平および垂直分布を調査した。 1980年6月14日から1981年5月18日に和歌山県西牟婁郡串本町紀伊大島にみられるほぽ全域をチガヤに被われた放棄畑(北緯33°28'、東経135°50'、標高約50m)において(Fig.1)調査を行った。50×50cm^2のコドラート3個を調査地に設け、ほぼ1か月ごとに出現種および被度を調査した後、地上部を地上から10cmごとに層別に刈り取り、器官別に乾物重を測定した。地上部を刈り取った後、チガヤの根茎の水平および垂直分布を調査した。 調査地ではチガヤが密に分布していたが、分布様式は一様でなかった(Fig.2)。チガヤの他にススキ、スイバ、ワラビなど31種の生育が確認された。チガヤの被度は1年を通じて76%以上であったが、その他の種の被度は10%以下であり(Fig.3)、個体数も少なかった。チガヤは速やかに生長し、調査開始時には既に草丈が89.7cmに達し、草冠を被っていた(Fig.4)。チガヤ、ススキ、ヘクソカズラ、スイカズラおよびハスノハカズラ以外の種は下層に位置していた。2月にはチガヤの地上部はほとんど枯死したが、枯死葉は、脱落せず、枯死した状態で残存していた。調査地の地上部最大現存量は1月に883 g/m里を示し、チガヤはそのうちの87.4%を占めた。チガヤの主な繁殖器官である根茎は複雑に分枝していた(Fig.6)。根茎は、深さ10cmまでに全量の約80%が分布し、深いものでは30cmに達していた(Fig.4)。根茎の現存量は年間を通じ全器官の40〜50%を占め、その最大値は地上部の現存量が最大となる時期から約1か月遅れた2月に653 g/m王を示した(Fig.5)。 複雑に分枝した根茎が地中深くまで分布し、多量の同化産物を蓄積していることがチガヤの防除を困難にしている要因であると推定された。
著者
三谷 幸之介 大林 富美 岸本 充弘
出版者
埼玉医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、ウイルスベクターを利用した相同組換えにより染色体遺伝子を修復する究極の遺伝子治療法の開発を目的とする。1、アデノウイルスベクターヘルパー依存型アデノウイルスベクター(HDAdV)によるヒト細胞での相同組換え効率を検討するため、正常ヒト繊維芽細胞においてHPRT遺伝子座を標的とし、細胞あたり10^<-5>から10^<-6>の頻度で遺伝子ノックアウトを達成した。また、相同組換えによってファンコニ貧血A群(FANCA)遺伝子変異を修復する頻度を測定するために、正常FANCA遺伝子座の一部をコードするHDAdVを作製し、患者由来B細胞株(BCL)に感染させた。しかし、相同組換えによるFANCA遺伝子の修復も、染色体上のランダムな位置へのベクターの組み込みも、いずれも検出できなかった。2、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターHDAdVと同様に、HPRTノックアウトベクターとFANCA修復ベクターを構築した。宿主域の異なる各種AAVベクターを調製し、正常BCLを感染させたところ、1 x 10^<-5> - 6 x 10^<-6>の頻度で染色体に組み込まれた。そのうち、AAV2とAAV8由来のベクターで、細胞当たり1 - 2 x 10^<-6>の頻度でHPRTノックアウトを達成したFANCA患者由来細胞BCLに対しても、3 x 10^<-5>の頻度でHPRTノックアウトを得た。ヒト造血細胞における遺伝子ノックアウトは初めての例である。さらに、FANCA修復ベクターを用いて遺伝子修復を試みたが、修復細胞は検出されなかった。3、相同組換えの促進と非相同組換えの抑制の試みマウスHprt相同領域をコードするプラスミドDNAをマウスES細胞へエレクトロポレーションし、UV damage endonuqleaseの強制発現またはPARP1阻害剤での細胞処理による相同組換えの促進と、DNA-PKcs阻害剤の細胞処埋による非相同組換えの抑制を検討したが、いずれの場合も顕著な効果は認められなかった。4、今後の展望HDAdVに関しては、long PCRで相同配列をクローニングした際にエラー(変異)が入って相同組換えを阻害した可能性があるので、BACから直接クローニングする方法でベクターを再構築し、実験を行う予定である。また、FANCA陽性細胞の検出法の精度を改善して、AAVを用いて再実験を行う。
著者
平島 崇男 北村 雅夫 下林 典正 中村 大輔 大沢 信二 三宅 亮 小畑 正明 山本 順二
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

地下深部流体活動の実態解明を目指し、顕微ラマン分光分析器を導入し、流体包有物の同定システムを構築した。この機器を用いて、日本や海外の地下深部岩石中の流体包有物の研究を展開した。その結果、三波川変成岩中の石英脈から地下25km付近で岩石中にトラップされた地下深部初生流体を初めて見出すことに成功した(Nishimura et al., 2008)。また、Pseudosection法とモード測定から、塩基性変成岩において、ローソン石の出現・消滅に伴う含水量変化(Matsumoto & Hirajima, 2007)や、硅質変成岩中の含水量を明らかにした(Ubukawa et al., 2007)。
著者
大山 信義 林 美枝子 森 雅人 玉山 和夫 飯田 俊郎 西脇 裕之
出版者
札幌国際大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

1.〈持続可能な環境〉及び〈コミュニティの創発性〉の条件を探るため平成11年度に引き続き北海道釧路湿原(標茶町・鶴居村・浜中町)、山形県朝日町、宮崎県椎葉村の3地域の調査を実施し、環境保全における地域住民の活動、NPO活動、住民の自然信仰が重要な条件となっていることが明らかになった。2.アイヌ民族の居住地であった釧路湿原では、カムイ伝説や開拓農民のアニミズム信仰が自然環境を保全するうえで重要な意義をもつ。また、自然感性に基づくNPO組織と農民の自主的な活動による保護運動が湿原の生態系を保護する役割を果たしている。3.朝日町ではエコミュージアム建設運動によって地域の歴史的・文化的資源、自然資源の保護するまちづくりを行っている。この運動はナチュラリストの活動と並んでコミュニティが自己組織力を高めながらコミュニティの創発性効果を生み出している。4.椎葉村では過疎化による連帯基盤の弱体化が進んでいるが、山村社会における神木信仰、生活者の土地・環境に対する強いコミットメント(かかわり)が自然環境を守る上で重要な要素となっている。5.地域の環境負荷効果については主観的評価法が有効であり、釧路湿原塘路地区での事例では環境に対する高い価値評価をしている。地元の生活者と観光客とも自然に対する強い共感が価値評価につながっていることが分かった。6.地方のコミュニティは持続的環境を生み出すため生態系保護の要請に応えようとしており、その行動は社会学でいう〈創発的反省〉の精神に立脚しているといえる。
著者
塚田 有紀子 中村 眞 中尾 正嗣 鈴木 孝秀 松尾 七重 山本 亮 濱口 明彦 花岡 一成 若林 良則 小倉 誠 横山 啓太郎 細谷 龍男
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 = Journal of Japanese Society for Dialysis Therapy (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.40, no.10, pp.871-875, 2007-10-28
被引用文献数
2

潰瘍性大腸炎 (ulcerative colitis : UC) は若年女性に好発し, 患者の妊孕性は健常人と差がない. また, 妊娠によってUC自体が増悪しやすいこともあり, 患者の妊娠時の治療が問題になる. 症例は24歳時にUCを発症した35歳経産婦. 30歳時には治療薬を中断中に妊娠8週で流産しており, 32歳時にはステロイド療法を継続しながら第1子を得ている. 2006年7月, Prednisolone (PSL) 5mg/日とmesalazineの内服中であり, UCの活動性は臨床重症度分類で中等症であったが, 妊娠のため自己判断で内服を中止した. 同年9月妊娠8週0日で排便回数10回以上, 腹痛, 顕血便が増悪し入院となった. PSL20mg/日を使用し, 絶食と中心静脈栄養により腸管安静をはかったが症状は改善せず, 腹部の反跳痛も出現して開腹手術の適応が検討された. 10週2日からPSL50mg/日の静注を行い, 加えて11週1日から顆粒球除去療法 (granulocytapheresis : GCAP) を週2回計10回施行した. GCAP3回施行後から諸徴候は好転し, GCAP5回施行時 (14週1日) には, CRP0.5mg/dLと陰性化し, 解熱して緩解に至った. PSLは漸減し, 16週1日にPSL20mg/日で退院した. 退院時点で胎児の大横径・大腿骨長はいずれも16週相当であった. 治療に難渋したUC合併妊娠症例に対してGCAPを併用したところ, 速やかに緩解し妊娠継続が可能となった. UC合併妊娠では, 通常の薬物療法に加えて, 胎児への影響が問題とならないGCAPを積極的に活用するべきである.
著者
木村 玲欧 林 春男 立木 茂雄 浦田 康幸
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文集 (ISSN:13452088)
巻号頁・発行日
no.1, pp.93-102, 1999-11
被引用文献数
11

Based on a random sampling survey on the "Individual Recovery Processes from the 1995 Hanshin-Awaji earthquake disaster", people in the impacted area can be divided into 4 groups depending on the severity of housing damage and their life stages. An 80% of the severely damaged victims were forced to relocate their home. For then, the need for information regarding housing damage peaked at the first one week after the earthquake, and nearly half of the victims made up their minds with regards to where they live within one month after the earthquake.
著者
久保 陽太郎 渡部 晋治 中村 篤 小林 哲則
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告音声言語情報処理(SLP) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.8, pp.1-6, 2010-02-05

識別学習は,デコーダの出力する認識仮説と比較して正解ラベルの尤度を相対的に高めることで識別に特化したモデルを得るための手法であるが,経験的に過学習しやすいことが知られている.近年,音響モデルの識別学習において過学習を軽減するため,最小相対エントロピー識別が音響モデルの識別学習に導入されてきた.この手法ではパラメタ推定の不確実性をパラメタ分布によって表現することで適切に取り扱うことを可能としており過学習に強いと考えられるが,従来の実現法では大量の認識仮説,および大量のトレーニングデータを取り扱うには膨大な量の計算を単一のコンピュータで実行しなければならなかった.そこで,本研究では,ラティス型認識仮説表現を導入することで認識仮説の数に対する計算効率を,また勾配法に基づく並列化可能な最適化法を導入することでトレーニングデータの数に対する並列計算効率を向上させた.提案法を用いることで,最小相対エントロピー識別学習に必要なステップのほぼ全てがグリッドコンピュータのような並列計算環境で実現可能になり,また,従来の N-best に基づく認識仮説表現では表現しきれないような膨大な数の認識仮説に対する最適化が行なえるようになった.In order to improve the performance of automatic speech recognition, discriminative training methods are introduced for training processes of acoustic models in speech recognizers. Recently, minimum relative entropy discrimination (MRED) training of acoustic models is introduced in order to prevent overfitting problems in discriminative training methods by representing parameters as random variables. Despite of these advantages, the conventional implementation of MRED lacks scalability to the amount of training dataset and the number of the hypothesis label sequences obtained from decoders. In this study, we attempt to improve scalability of MRED training. The lattice-based representations of the hypothesis label sequences are introduced in order to improve scalability due to the number of the hypothesis label sequences. Further, the gradient-based optimization method is introduced in order to ensure parallelism in the MRED training method. By incorpolating proposed methods, it is confirmed that the MRED training procedure can now be performed in parallel computing environments such as grid computers. Furthremore, the large number of the hypothesis label sequences can be handled in the MRED by using hypothesis lattices obtained from decoders.
著者
小林 健彦 Kobayashi Takehiko
出版者
新潟産業大学附属研究所
雑誌
新潟産業大学経済学部紀要 (ISSN:13411551)
巻号頁・発行日
no.38, pp.57-73, 2010-06

日本列島の中では、文献史資料に依って確認を取ることが可能な古代以降の時期に限定してみても、幾多の自然災害―気象災害、津波や地震災害、伝染病の蔓延等―に見舞われ、その度に住民等を苦しめて来た。現在の新潟県域に該当する地域に於いても、当該地域特有の気象条件より齎される雪害を始めとして、大風、大雨、洪水、旱魃、地震、津波、火山噴火、そして疫病の流行といった災害が発生当時の民衆に襲い懸かっていた。しかし、民衆はそれらの災害を乗り越えながら現在に続く地域社会を形成して来たのである。筆者は、従前より、当時の人々がこうした災害を如何にして乗り越えて来たのかという、「災害対処の文化史」を構築するのに際し、近年自然災害が頻発している新潟県域を具体的研究対象地域として取り上げながら、その検証作業を行なっているところである。本稿では、前稿に引き続き、室町時代の中期以降、中世後半期に至る事例の検出と、民衆に依る災害対処の手法とに就いて、更に検証作業を進めた内容を明らかにするものである。