著者
加藤 尚吾 加藤 由樹 小林 まゆ 柳沢 昌義
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.31-39, 2006

本研究では,電子メールにおける顔文字の機能である,感情を相手に伝える役割に注目した調査を行った.具体的には,女子大学生24名に,163種類の顔文字を提示して,それぞれの顔文字から解釈される感情を尋ねた.この調査で得られたデータを用いて,それぞれの顔文字から解釈される感情の種類の数をカウントし,感情解釈の種類の多い顔文字と,感情解釈の種類の少ない顔文字の差異について,検討を行った.主な結果として,ポジティブ感情を表す顔文字の方が,ネガティブ感情を表す知見から,ポジティブ感情を表す顔文字の方が,感情的な誤解やすれ違いを生じにくい可能性のあることが示唆された.しかし,書き手の感情状態を表す役割として顔文字を捉えると,顔文字には,感情解釈の幅の広いものと限定的なものがあり,注意を要することも分かった.
著者
魚崎 浩平 SHEN Y.R. OCKO Benjami DAVIS Jason DOBSON P. HILL H.A.O. 佐藤 縁 水谷 文雄 叶 深 近藤 敏啓 中林 誠一郎 YE Shen DAVIS Jason.
出版者
北海道大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

まず研究開始時に2年間の研究を効率的に実施するために、国内側のメンバーの間で研究方針を十分検討し確認した。ついで、研究代表者がオックスフォード大学を訪問し、研究方針の確認を行った。以後、これらの打ち合わせで決定した内容に基づき、以下の通り研究を実施した。なお、2年目には新規メンバー(オックスフォード大Jason J.Davis、ブルックヘブン国立研究所Benjamin Ocko、カリフォルニア大Y.R.Shen)を加え研究をより効率的に実施した。初年度1.オックスフォード大における生物電気化学研究のレベルを十分に理解するために、北大において、オックスフォード大研究者による情報交換セミナーを実施した。2.本研究では自己組織化法のセンサーへの応用を念頭に置いており、そのために最適な構造をもったマイクロ電極の設計とその形成法の検討を行った(オックスフォード大)。さらに、このようにして形成したマイクロ電極の電子間力顕微鏡(Atomic Force Microscopy:AFM)による評価を行った。さらに、より高度な評価をめざして、新しい走査プローブ顕微鏡を考案、設計、製作を行い、性能確認を行った(北大)。3.また、本研究では生体機能を念頭においており、チトクロームcと電極との間の電子移動を促進するための界面構造の設計を目標に、種々の混合自己組織化膜表面での電気化学特性を調べた(生命研)。4.界面機能の動的評価を目的に、自己組織化分子層の電気化学反応に伴う構造変化をその場追跡可能な反射赤外分光システムを構築し、生体機能との関連でも重要なキノン/ヒドロキノン部位を持つ自己組織化単分子層に適用した。酸化還元に伴う構造変化を明確に検出できた(北大)。2年度1.新しい界面敏感な手法である和周波発生分光法(Sum Frequency Generation:SFG)および表面X線回折法(Surface X-Ray Diffraction:SXRD)の本研究への導入の可能性を各々Shen教授、Ocko教授の研究室への訪問と討論を通して検討し、その有用正を確認した(カリフォルニア大、ブルックヘブン研究所)。2.水晶振動子マイクロバランス法(Quarts Crystal Microbalance:QCM)および走査型トンネル顕微鏡(Scanning Tunneling Microscopy:STM)によるアルカンチオールの自己組織化過程の追跡を行った(北大)。3.STMによるプロモータ分子の自己組織化過程の追跡をオックスフォード大Jason J.Davis氏が北大の装置を用いて行い、世界で初めて当該分子層の分子配列をとらえた(北大、オックスフォード大)。4.昨年度に引き続き、生体機能を念頭において、チトクロームcと電極との間の電子移動を促進するための界面構造の設計を目標に、種々の混合自己組織化膜表面での電気化学特性を調べた。また、この時の界面構造を詳細に調べるために、アルカリ溶液中での還元脱離およびSTMによる表面構造観察を行った(北大、生命研)。5.以上の成果を国際学術誌をはじめ、国内外の学会で発表した。
著者
藤江 真也 江尻 康 菊池 英明 小林 哲則
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.88, no.3, pp.489-498, 2005-03-01
参考文献数
20
被引用文献数
14

音声による人間同士の対話は, 発話に含まれる言語情報に加え, 発話者の心的状態や対話調整的情報が韻律や顔表情, 頭部動作によって付加的に表現されることで円滑に進む.これら, 発話に付随して生起し, 言語情報の円滑な伝達を補助する情報をパラ言語情報と呼ぶ.本論文では, パラ言語情報として, 韻律と頭部ジェスチャに現れる発話者の発話態度を取り上げ, それぞれの認識手法を提案するとともにそれらを活用した対話ロボットを実現する.韻律による発話態度の認識は, 態度が肯定的か否定的かを, F_0パターンと音素の継続長を用いて識別する.頭部ジェスチャによる認識は, 肯定的動作をうなずき, 否定的動作をかしげと首振りとして定め, これら三つの動作をオプティカルフローを特徴量としHMMを確率モデルとして用いることによって認識する.実験により, これらの手法が人と同等の認識能力をもつことを示すとともに, これらを組み込んだ対話ロボットが従来にないリズムある効率的な対話を実現することを示す.
著者
小林 薫
出版者
日本西洋古典学会
雑誌
西洋古典學研究 (ISSN:04479114)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.62-73, 2001-03-05

It is generally agreed that the agon scene between Teucer and the Atreidai over the burial of Ajax in the latter half of Sophocles' Ajax ruins the tragic pathos which is subtly developed in the course of the dramatic action up to the point of the suicide scene Among three topics disputed in the debate-evaluation of Ajax' conduct, legitimacy of the Atreidai's generalship, and Teucer's birth (status)-the last is most frequently alleged to be responsible for the drama's incongruity as having no relevance at all to the question of burial Reexammation of this controversy, however, reveals that it not only holds an appropriate place in the debate but also relates the agon scene to the earlier part of the drama First, the issue of birth is effectively introduced in the agon to highlight the fundamental difference of the opponents of the debate in the moral principles, thus aptly pertaining to the dramatic context The dispute over evaluation of Teucer's birth makes strikingly clear the contrast between the two sides, the Atreidai demanding that all Greeks should be under their supreme authority and no hubris should ever be tolerated, and Teucer, on the other hand, claiming that every warrior is equal and is subject to none but himself Secondly, the dispute over Teucer's birth relates the latter half of the drama to the first by calling into question the objective clarity of 'nobility of birth' To the scornful reproach of his antagonists that he is a barbaros, a slave born of a captive, a non-hoplite, thus having no claim to privileges of free men, Teucer makes strong objections insisting that he prides himself upon his nobility originating from royal-both Greek and Trojan-parents as well as in outstanding performance as an archer, and that the Atreidai too have barbaric elements in their allegedly noble birth This argument of Teucer seriously undermines the Atreidai's assumptions concerning nobility of birth by posing two questions first, by what standard is nobility evaluated, and second, to what extent is nobility of character determined by nobility of birth ? Furthermore, Teucer's protest against the Atreidai's abusive attack on his birth reveals, in spite of himself, the problematic nature of his brother's belief in nobility, which is thoroughly presented in his discourses in the earlier part of the drama Ajax's obsessive preoccupation with his noble birth, inherited from Telamon and to be inherited by Eurysakes, as well as self-chosen death as its proof is put into question ironically in attempt to redeem the honor of his brother Understanding the agon scene in this manner allows us to interpret the scenes to follow as well Odysseus' intervention as an arbiter can be seen as an enactment of possible alternative to nobility by which Ajax abides determinedly to the death, Eurysakes' participation in the rite of burial as problematic presentation of consanguinity of the father and the son It is incontestable, therefore, that the issue of Teucer's birth plays an indispensable role to grant coherent unity to the drama
著者
五十殿 利治 井上 理恵 渡辺 裕 上村 清雄 木下 直之 古川 隆久 京谷 啓徳 大林 のり子 阿部 由香子 日比 嘉高 寺門 臨太郎 川崎 賢子 菊池 裕子 江 みなみ
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

芸術の受容者の鑑賞行動に関する史的な研究については、たとえば近代文学史におけるアンケートに基づく読者調査のような基礎的な資料を欠くところから、研究対象にどのようにアプローチするのか、学術的な方法論が問題である。これに関連して研究対象である受容者の様態を検証することも重要である。本研究においては、共同研究により、従来に顧みられなかったカメラ雑誌の月評など、資料の発掘を含めてその方法論が多様であることが明らかとなり、むしろ研究として今後十分な展開の可能性があることが明らかになった。
著者
星川 竜彦 小林 健二 鹿股 宏之 篠崎 浩治 加瀬 建一 尾形 佳郎
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.70, no.7, pp.2135-2140, 2009 (Released:2010-01-05)
参考文献数
10

症例は42歳,男性.検診で肝機能障害を指摘され,当院を紹介受診し,腹部CT検査と腹部超音波検査で肝内側区域に腫瘤性病変を認め,精査加療目的で入院とした.腹部MRI検査で左肝内胆管の閉塞と右前後区域の分岐部にも胆管壁の不整像があり,腹部血管造影検査では左門脈枝の完全閉塞と門脈本管の左右分岐部付近での狭窄を認めた.以上より切除不能胆管癌と診断し,減黄後にGemcitabine 400mg/body/week投与と放射線照射(50.4Gy)を施行した.3カ月後の腹部MRI検査で腫瘤は縮小し,6カ月後には腫瘤を指摘できなかった.その後,治療開始から9カ月目に溶血性尿毒症症候群(以下HUS)を発症し,血漿交換などを施行したが2カ月後に死亡した.切除不能胆管癌は予後不良であり,今回われわれは化学放射線が奏効した後にGemcitabineによると思われる溶血性尿毒症症候群をきたした1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
著者
穂坂 衛 斉藤 剛 小林 弘忠
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.45, pp.263-264, 1992-09-28

IATEXによる印刷原稿をその出力とする知的デスクワーク支援システムの機能と支援方式について述べる.本システムの原型は,IATEX利用援助システムであるが,その後の進展はその枠を越えたものになった.本システムは,原稿清書印刷のためにだけにIATEXを利用するのではなく,思考援助と整理,論理的な文書作成,さらに高品質な図や表の作成,ファイリング,手紙書式整え等,われわれが日常行なっているデスクワーク全般に利用できるように作られている.始めのシステムでは原稿をIATEX出力にすることに主眼を置き,図の取扱いは基本的な機能のみであった.高品質な説明図は高品質な文書に必然的に伴うべきものであるが,IATEXのこの部分の取扱いは極めて初等的で実用になり得なかった.IATEXの優れたところはテキストにおける文字の多様性と美しさ,バランスのとれた配置であるから,図の中においてもこれを利用することを考えた.著者らはそのため,既に軽験上得られた種々のアイディアを試みると共に,その後入手して使用可能になった公開ソフトウエアうち,われわれの目的に有効に利用できるものを積極的に取込んだ.本稿では始めに本システムの機能を簡略に示し,後半では説明図作成のための機能を取扱う.
著者
沢田 篤史 小林 隆志 金子 伸幸 中道 上 大久保弘崇 山本 晋一郎
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.50, no.11, pp.2677-2689, 2009-11-15
被引用文献数
7

本論文では,我々が先導的ITスペシャリスト育成推進プログラムの一環として実施中のプロジェクト型ソフトウェア開発実習の教育プログラムと教材開発について説明する.本実習では,軟式飛行船制御の組み込みソフトウェア開発を題材に,大学院修士課程1年生がチーム開発を行う.本実習の主目標は,管理されたプロジェクト開発を経験することとソフトウェア品質向上における検証技術の重要性を理解することである.本論文では,この狙いを持って設計した実習プログラムと,開発した教材について紹介し,半年間の実習を実施した結果得られた学習成果と課題について説明する.This article presents how we have designed a project based learning (PBL) class for graduated students in the Leading IT Specialist Education Program of MEXT. Master course students form several development teams to struggle with the development of embedded software for airship control in our class. The students of this class are expected to touch with the real experience of team development in a disciplined project and to have deep understanding on the importance of verification and validation technology throughout the development of quality software. This article overviews the design of and teaching materials for our PBL class. Discussions on the results and lessons learned from the half-year operation of this class are also presented.
著者
小林 優 間藤 徹
出版者
京都大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

ペクチンは植物細胞壁を構成する主要成分のひとつであり,荷電した親水性ゲルとしてプロトプラストを取り巻く微小環境の維持,外部環境からの養分吸収等に重要な役割を果たすと考えられている.本研究ではペクチンの生理機能をより詳しく理解するため,ペクチンの部分領域であるラムノガラクツロナンII(RG-II)に構造変異を導入しその表現型を解析することを試みた.変異導入部位としてRG-IIの特異的構成糖KDOに着目し,その生合成に必要な酵素CTP:KDOシチジル酸転移酵素(CKS)のT-DNA挿入変異株を探索したが,ホモ変異株は得られなかった.今年度はこの原因について解析を進めた結果,cks変異は花粉の形成・発芽には影響しない一方,花粉管伸長を著しく阻害することを明らかにした.In vitro発芽させた変異型花粉は花粉管が短く径方向に膨れていた.この結果は,通常の細胞分裂・伸長過程では変異型RG-IIでも致命的な機能欠損が起こらないが,花粉管のように急速に伸長する組織ではKDOを含む完全なRG-IIが必須であることを示唆し,生殖成長過程におけるペクチンの重要性が示された.ペクチンと結合する受容体型キナーゼの一種,細胞壁結合型キナーゼ(WAK)の機能研究を行った.タバコのWAKホモログNtWAKL1にアフィニティ精製タグを付した融合タンパク質をタバコ培養細胞で発現させ,界面活性剤で可溶化・アフィニティ精製した標品をblue native PAGEに供した.NtWAKL1の見掛けの分子量は500kD程度となり,複合体として可溶化されていることが示唆された.この標品を二次元電気泳動に供し検出されたスポット1種類の質量分析を行った結果,機能未知のタンパク質が検出された.今後より多くのスポットを分析することでWAKの相互作用分子が明らかとなり,機能に関する手がかりが得られると期待される.
著者
内藤 林 森 淳彦 箕浦 旨彦 高木 健 別所 正利 一色 浩
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2000

次の研究成果を得た。1)船首可動翼の制御について考察を深め、可動翼を制御するための入力信号を明確にすることが必要であることから、船首船底圧力を制御信号に選定することにし、その可能性を調べる実験を行った結果、船首船底圧力と、翼への流入迎角の間には明確な相関関係があることが実験的にも明らかになった。船首船底圧力の計測は容易であり、圧力計測装置は安価なことから、良い制御信号であるとの結論を得た。2)船首船底圧力と、翼への流入迎角の間の周波数応答関数(A)を求めた。更に、その結果を使い時間領域のインパルス応答関数(A)を求めた。それを使い、規則波中で予測した流入迎角と、その実測値を比較し、船首船底圧力を使って船首翼への流入迎角を十分な精度で予測できることを示した。3)船首船底圧力を使って不規則波中における船首翼制御の初歩的な検討を、下記の手順で計算機シュミレーションを行い、検討した。(1)船首翼が最も推力を出す場合の、船首船底圧力と翼への流入迎角の間の周波数応答関数(B)を求める。(2)それの時間領域の表現である、インパルス応答関数(B)を求める。(3)船首船底圧力の実測値とインパルス応答関数(B)から求められた信号をリファレンス信号とし、船首船底圧力の実測値とインパルス応答関数(A)から求められた信号の差を補償する制御回路を設計した。(4)船首固定翼の場合と可動翼の場合について推力を計算比較した所、可動翼にすることで固定翼が発生する推力の1.5倍以上の効果があることがシミュレーション上で確認できた。(5)翼への流入迎角が15度以上になった時、翼は失速するが、その影響は統計的等価線形化手法を使って考慮した。本来、失速しないように制御することが可能であり、今後その制御法を考察する。4)船首翼を制御することで、推力発生だけでなく大幅な横揺れを軽減できることを昨年の研究で示した。更に、コンテナー船等の場合、ラッシングレスコンテナーにすることの可能性について検討を行い、その可能性が大きいことを示した。これはアンチローリングフィンは船体中央に設置することよりは、改良を加えて船首に設置する方が、よりフィンの有効性を拡大することになり、効果的であることを示すものである。5)波エネルギーの有効利用の可能性をより一層広げるために、船首にムーンプールを作り、そこに設置したウェールズタービンでエネルギーを吸収し、それを船内電源に利用する方法に関する基礎的検討を行った。ムーンプールを作るために船内空間を一部使用することになる経済的損失との兼ね合いがあるが、一つの大きな可能性を示すものである。
著者
佐藤 篤司 和泉 薫 力石 國男 高橋 徹 林 春男 沼野 夏生
出版者
独立行政法人防災科学技術研究所
雑誌
特別研究促進費
巻号頁・発行日
2005

日本各地に甚大な被害をもたらした平成18年豪雪について、本研究では、大気大循環場と降雪特性、積雪特性の広域分布と雪崩災害、生活及び建築関連雪害、予測技術と軽減方策の四つの研究課題を設定し調査研究を実施した。大気大循環の調査からは、寒気の南下は38豪雪に次ぐ規模であり、特に12月は冬季モンスーン指標が過去50年で最大となったこと、それには熱帯域の影響も示唆されることなどの特徴が明らかになった。その結果、1月初旬に既に最深積雪に近い積雪を各地で記録した。この時点の広域での積雪分布を調査したところ、新潟県上中越から長野、群馬両県境にかけての山間部を始め、東北、中部、中国地方でも特に山間地域に多量の積雪が集中していたことがわかった。山間地での降積雪は必然的に雪崩を誘発し、数多くの乾雪表層雪崩の発生をみた。本研究では死者の出た秋田県乳頭温泉での雪崩を始め、多くの現地調査を行いその発生要因を調査した。また、広域の一斉断面観測により、早い時期からの積雪増加が高密度で硬い雪質をもたらしたことが観測され、それが生活関連雪害にも反映したことが推測された。生活関連雪害では、死者(交通事故を除く)の圧倒的多数(3/4)は雪処理中の事故によるものであった。その比率は56豪雪時(1/2)と比べて増加していること、多くは高齢者で全体の2/3をしめ、70歳代が群を抜き、高齢者が雪処理に従事せざるを得ない状況などが読み取れた。また、56豪雪と比べて家屋の倒壊による死者が多く、老朽家屋に高齢者が住んでいて被害に遭遇するという構造がうかがえた。さらに本研究では、積雪変質モデルを使った雪崩危険度予測を行い、実際の雪崩発生と比較検討するとともに雪崩の危険性によって長期間閉鎖された国道405号線に適用する試みや冬季のリスクマネジメントに関する調査等を実施し、雪氷災害の被害軽減に有効な手法についての研究も行った。
著者
川嶋 紘一郎 西村 尚哉 林 高弘 伊藤 智啓 古村 一朗 三留 秀人 杉田 雄二
出版者
名古屋工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

本研究は,構造物内部あるいは接合界面に存在する、線形超音波あるいは放射線等で検出不可能な、微細な不完全結合部(マイクロクラック、キッシングボンドなど)を非破壊的に検出するため,大振幅超音波を入射し不完全接合部の繰返し打撃・摩擦により励起される,2次高調波(入射波周波数の2倍の周波数を持つ波)振幅を計測し,入射波振幅に対する比を2次元画像表示する装置の開発を目的とした.主な研究成果は以下の通りである.1)従来の固体の非線形超音波計測法と異なり,超音波素子を試験片に貼りつけることなく,市販の大振幅超音波発生装置,超音波センサーを用いて、0.4%以上の2次高調波振幅比(感度は0.1%)を測定する方法を開発した.これにより材料・構造の任意の位置での高調波計測が可能になる。2)水浸集束センサーを用いて固体接合部に超音波エネルギーを集中させ,発生した高調波を広帯域のハイドロフォンで検出する計測システムを開発し、線形超音波法では界面反射波が検出できない程度の、ごくわずかな拡散接合界面特性の変化を検出できることを実証した。これによって,従来法では不可能であった,高信頼性が要求される航空機ロケット,自動車などの高品位接合部の構造健全性評価が可能となる.3)閉口疲労き裂面で励起される漏洩表面波の2次高調波を測定することにより,深さが1-2mmのき裂深さを定量的に計測する方法を開発した。これにより圧力容器の開放点検時に閉口しているき裂状欠陥のその場非破壊寸法測定が可能となる。4)固体材料中あるいは表面に存在するナノメートル程度の隙間を模擬する接触要素を用いて,大振幅超音波によりそれら隙間で励起される2次高調波の発生・伝播状況を可視化する動的有限要素法を開発した.5)特許【非線形超音波による接合界面健全性評価法及び装置】の出願準備中である.6)本研究を契機に非線形超音波による材料評価に関する2件の民間との共同研究を実施している。
著者
太田 安彦 清水 淳三 小田 誠 林 義信 OSARI Ayumi 梶田 剛司 渡辺 洋宇
出版者
The Journal of the Japanese Association for Chest Surgery = 日本呼吸器外科学会雑誌
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 = The journal of the Japanese Association for Chest Surgery (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.539-544, 1996-05-15
参考文献数
16
被引用文献数
5

最近われわれは, 稀な胸腺腫瘍の2例を経験した.症例1は72歳, 女性の胸腺に発生した悪性黒色腫であった.悪性黒色腫の胸腺発生例は本邦報告史上2例を認めるのみであり, 本例は第3例目に相当した.腫瘍は6.5×5.5×3.5cm大の被包化された充実性腫瘍であった.周囲組織への浸潤はなく, 周囲のリンパ節に転移はなかった.原発巣不明黒色腫の転移の可能性は否定しきれないが, 胸腺原発を最も疑った.正常胸腺を含めて腫瘍を摘出した。術後5ヵ月を経て再発なく生存中である.症例2は21歳男性に発生した胸腺脂肪腫であり, 周囲の脂肪組織を含めて腫瘍を摘出した.摘出腫瘍の重量は390gであり, 重症筋無力症の合併はなかった.
著者
MORI James Jiro 伊藤 久男 柳谷 俊 松林 修 加納 靖之 木下 正高 MA Kou-fong
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

我々は,車籠埔断層を横断する温度プロファイルを観測するために,深さ250mのボアホールを掘削した.この掘削場所は1999年集集地震による温度異常が2000年に観測された場所のごく近傍である.2008年と2010年の温度測定では,温度異常は観測されなかった.このことは,2000年に観測された温度シグナルが地震による摩擦発熱による真のシグナルであったことを示している.
著者
松山 洋一 藤江 真也 齋藤 彰宏 XU Yushi 小林 哲則
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. WIT, 福祉情報工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.221, pp.7-12, 2010-10-01

通所介護施設において,人同士の会話に介在させ,コミュニケーションを活性化するロボットについて報告する.本研究では,具体的なタスクとして高齢者通所施設で行われている難読ゲームを取り上げる.難読ゲームは,司会者の存在する複数人対話の一形態だと考えることができる.ここでロボットは,複数人会話における制約を満たしながら,会話を活性化させるための行動選択を行う必要がある.本論文では,既に人同士で行われているコミュニケーションを妨害せずに活性化を実現するため,会話における参加者の役割や,参加者間が共有する話題を推定しながら,様々な場面において適した行動を取るフレームワークを提案する.