著者
奈良岡 聰智 小川原 正道 川田 敬一 土田 宏成 梶原 克彦 水野 京子
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住総研研究論文集 (ISSN:21878188)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.189-200, 2013 (Released:2017-08-10)

本研究は,各国の駐日大使館の立地,建築様式,およびその機能について解明することを目的としたものである,駐日大使館については研究の蓄積が浅いため,まずは建築史料,外交文書など,一次的史料やデータを収集することを通して,今後の大使館研究の基盤を構築することを目指した。また,それらの史料情報を得るにあたって,旧華族への聞き取り調査を行った。特に研究対象としたのは,重要な外交上のパートナーであったアメリカ,フランス,およびベルギーの3国である。本研究を通じて,大使館が両国の外交関係を「象徴」する存在として,重要な機能と特徴的な建築を有していたことが確認された。
著者
梶田 正巳 中野 靖彦
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.160-170, 1973

1. TABLE1のごとく, 独立した2種類の対連合学習を5才から13才の5つの年齢水準の児童に実施した。刺激は, 線画で全体として関連のないようなものを選んだ。反応はカラーラベルである。実験は, パスの表裏に刺激と反応を入れ, 色のボールを当てる遊びとして実施した。学習完了後, 実験者は, 提示刺激を20秒間自由再生させ, その後でどのようにして速くボール当てをできるようにしたか, 質問した。そして, 実験者は, この応答と実験中に与えられる手掛りを基礎にして, 被験者がどのような学習型を採ったか判断した。カテゴリーは,(1) 刺激と反応を直接連合するS-R型,(2) 個別反応刺激のみS-R 結合し, それに属さぬ刺激には, 総て共通反応をするE R型,(3) 学習型を決定できないUD, とした。<BR>まず, 2種類の学習課題が, 発達的にどのようなパフォーマンスを生むか分析した。その結果, 次の事が明らかとなった。<BR>(1) 打切り基準内で, 学習基準を達成しえなかった被験者は, 5才児で最も多く, 7才児, 9才児と少なくなった。未到達者は, 第2学習課題で多かった。<BR>(2) 第2学習課題が, 第1学習課題より多くの試行数を要した。また, 年少児が, 年長児より多くの試行を必要とした。年齢水準と課題に相互作用はみられなかった。<BR>(3) どの年齢をとっても, 第2学習課題で提示刺激の再生される数は多かった。しかし, 刺激の何割が正しく再生されたかを示す正再生率をみると, 2種の学習課題に相違はみられなかった。また, 一貫して, 個別反応刺激の正再生されやすい傾向がみられた。<BR>(4) 年長児が年少児より, 個別反応刺激をはじめに続けて反応しやすい傾向がみられた。また, 個別反応刺激から反応する被験者は, ほとんど総てER型学習者と判定されていた。<BR>次に, 分類された学習型に分析の視点を移して, 整理してみると,<BR>(1) 特に, 5才児には, S-R型学習者が多く, 第1 学習課題では, 7才児でER型学習者がドミナントになった。第2学習課題) においても, 5才児でS-R型学習者が多くみられ, 7才児で両学習型は均衡し, 9才児では, ER型学習者が大多数を占めた。7才から8才の間に, 移行期のみられることが示唆された。<BR>(2) 第1学習課題では, S-R型とER型学習者の間に, 学習基準までの試行数の相違はみられなかった。しかし, 第2学習課題ではER型学習者がS-R型学習者より速く学習を完了しており, ここではうER型学習者の発達的増加が試行数の発達的減少に貢献していた。両学習課題のこのような相違は, 課題を構成する刺激の数によって考察された。<BR>2. 研究方法について対連合学習の実験では, 研究者の操作する実験条件にデータを整理する視座を定め, パフォーマンスの種々の側面について関係を調べるのが普通である。この研究でも, 始めに, そのような点から, 2種類の異なった学習課題が発達的にどのようなパフォーマンスを生じさせたか検討してきた。一般的に言って, このようなアプローチは, 研究者が誰でも一致しうるような, また, それゆえに, 再構成可能な独立変数に依存しているので, 資料を分析整理するには, 比較的危険度の少ない方法であろう。しかし, 一定の外部条件を操作したとしても, 被験者の中には実にさまざまな内的過程の生起していることは, あまりにも明らかなことである。ある操作が, ある内的過程に, 一義的に対応しているようなことは, きわめて稀なことではないであろうか。特に, 人間の学習のごとき, 複雑な対象を扱う場合には, その感をまぬがれえない。このように厳密にできる限り外部条件を整えたとしても, 多様な内的過程の干渉によって, パフォーマンスの高い予測性を十分に獲得できないでいるのである。たとえば, 著者らの弁別移行学習の研究においても, 移行条件は確かにパフォーマンスに有意差をもたらしはしたが, 条件とパフォーマンスの関連度は, せいぜいω2 =. 16にとどまっていた (梶田1972)。<BR>それでは, このような欠陥を補なう他の分析方法をとるとしたら, どのような方法が考えられるであろうか。直ちに可能な方法は, 所与の条件下で, 実際, 被験者がどのような内的過程を経ているかを質問し, 接近し, 記述, 分類することであろう。
著者
日指 志乃布 福光 涼子 石田 光代 野寺 敦子 大谷 尭広 丸岡 貴弘 中村 和己 和泉 唯信 梶 龍兒 西田 善彦
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.8, pp.550-554, 2016 (Released:2016-08-31)
参考文献数
19
被引用文献数
2

パーキンソン病(Parkinson’s disease; PD)の嚥下障害は予後に関係する重要な因子だが,進行するまで見落とされやすい傾向にある.我々は主に軽症から中等症のPD患者31例の嚥下機能を嚥下造影により検討した.嚥下障害は咽頭期28例,口腔期19例,食道期15例,準備期1例とほぼ全例にごく早期から咽頭期を中心に認められたが,質問票などのスクリーニング検査では検出が困難であった.今回の検討によりPDの早期から嚥下障害が不顕性に認められる場合があることが臨床的評価指標から示された.今後,PD発症前の嚥下機能低下を何らかの形で追跡して嚥下障害が発症前症状になり得るか検討する必要がある.
著者
宮脇 勝 梶原 千尋
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09131280)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.115-120, 2007-10-25
参考文献数
8
被引用文献数
5

本論は、景観整備の価値を経済的な側面から明らかにする目的で、地価公示及び固定資産税路線価を用いたヘドニック・アプローチによって地価関数を推計している。対象地域として、景観条例や重要伝統的建造物群保存地区に着目し、長い間景観行政が行われてきた金沢市、倉敷市、萩市を取り上げて分析する。分析の結果は次のような概要となっている。1)金沢市全域について、景観規制に係わる要素として、近代的都市景観創出区域のみが説明変数として採用された。2)地区単位で推計した結果、金沢市内の異なる景観規制がかけられた複数地区の比較で、高度地区12m は、伝建地区とともに指定された場合にのみ地価を上昇させており、伝建地区の経済的効果を明らかにした。3)一方、 用途地域などの条件の異なる他都市の伝建地区との比較の結果、倉敷市と萩市の住居系及び商業系地域でプラスの効果が明らかにされている。
著者
梶原 裕二 山川 さやか 田中 渚
出版者
京都教育大学
雑誌
京都教育大学紀要 (ISSN:03877833)
巻号頁・発行日
vol.109, pp.1-8, 2006-09
被引用文献数
1

組織の観察実習は生物の体制を理解するのに必要な実習である。今回,新たにハツカダイコンの発芽種子を用いて,双葉の組織を観察する実習を開発した。軟らかい双葉をブロッコリーの茎に挟んで薄切した後,プロピディウム・イオディンで核を蛍光染色して観察した。発根種子はほぼ播種3 日後には子葉は本来の大きさになり,6 日後には幼軸の成長を終える。播種12 日後には,子葉が一部黄色化し始め,15 日後には本葉が出現する。組織の観察から,播種5 日後の子葉では約10% の細胞が核を含んでいなかった。核をもたない細胞の割合は増加し,播種後25 日では約50%,播種後30 日には約90% の細胞で核が確認できなかった。本研究から,植物の生活史の時間経過に伴う組織の動的な変化を,子葉の老化という視点で捉える身近な実習が開発できた。Observations of the tissues in living organisms is important to study their own structures. Using the seedings of Japanese radish, we have developed an experiment to observe the tissues of the cotyledons. Soft cotyledons are inserted into the stem of the broccoli, then the cotyledon are sliced into thin sections. The nuclei of the sections stained with propidium iodine are observed under a fluorescent microscope. Cotyledons and seeding are grown within 3 days and 6 days after sowing, respectively. Cotyledons changed their color at 12 days after sowing, a leaf appeared at 15 days after sowing. Histological observations showed that 40 % of cells without nucleus at 3 days after sowing, the rates of those were increased with days. Finally, all cells of the cotyledon had no nuclei. Thus, the present experiment was good for the histological observations of the senescence in the plants.
著者
佐藤 眞直 梶原 堅太郎 佐野 則道
出版者
一般社団法人 日本食品工学会
雑誌
日本食品工学会誌 (ISSN:13457942)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.83-88, 2016-09-05 (Released:2016-10-25)
参考文献数
6
被引用文献数
8

食品の冷凍保存技術において,氷結晶による食材組織のダメージを低減するために氷組織形態を制御する技術の開発は重要である.その氷組織形態を非破壊観察する技術としてX線CT測定の応用を検討した.従来の実験室X線CT装置では,使用されている管球X線光源で十分な輝度のX線を得るために白色X線を用いる必要があることに起因して,密度差の小さい氷と食材の識別が困難である.そこで高輝度X線光源である放射光を用いることにより得られる高輝度の単色X線を活用して,X線CT像の高コントラスト化を検討した.まずこの技術検討のために,X線CT測定装置上で測定試料を凍結保持する液体窒素吹付冷凍装置を,大型放射光施設であるSPring-8において開発した.この装置を用いることにより,放射光X線CT測定技術を冷凍したマグロおよび豆腐試験片に応用し,各試験片中の3次元的な氷結晶組織を非破壊で観察することに成功した.また単色X線を用いることにより,試験片のX線CT像の画素値を,物質の密度を反映するX線の線吸収係数の分布として解析することが可能となった.これにより,得られた結果から凍結凝縮による密度の変化などの定量的な評価が可能となることも示唆された.
著者
山内 和律 梶野 清二 岩上 弦太郎
出版者
北海道立畜産試験場
雑誌
北海道立畜産試験場研究報告 (ISSN:13459643)
巻号頁・発行日
no.26, pp.8-13, 2007-03
被引用文献数
1

大ヨークシャー供試豚1,100頭(雄349頭、去勢232頭、雌519頭)を用いて、肢蹄の得点評価を行い、それらに対する性の影響、遺伝率および産肉形質の選抜による肢蹄の影響について検討を行った。肢蹄審査形質は前肢前貌(front legs/front、FF)、前肢側貌(front legs/side、FS)、前ツナギ(front legs/pastern、FP)、後肢後貌(hind-legs/behind、RB)、後肢側貌(hind-legs/side、RS)および後ツナギ(hind-legs/pastern、RP)の6形質であり、スウェーデンにおける豚育種プログラムにおいて利用されているものである。FF、FP、RSおよびRPにおいて性間に有意な差が存在した。肢蹄審査形質の遺伝率はFP(0.45)およびRP(0.36)を除いて0.09〜0.18であった。肢蹄審査形質間の遺伝相関では、FPとRP間に強い相関関係(0.72)があった他FFとFS(0.56)、FFとFP(-0.54)、FFとRB(0.46)、FFとRS(-0.31)、FFとRP(-0.43)、そしてFSとFP(-0.30)に相関関係があった。肢蹄審査形質と産肉形質との遺伝相関では、平均日増体量(DG)とFF(0.34)、DGとFS(0.63)、DGとRS(0.53)、体長1/2部位の背脂肪厚(BF)とFF(-0.41)、BFとFS(-0.47)、BFとFP(0.41)、そしてBFとRP(0.58)に相関関係があり、DGおよびBF形質に関する選抜により肢蹄スコアが変化することを示唆していた。
著者
梶田 孝道
出版者
関西社会学会
雑誌
フォーラム現代社会学 (ISSN:13474057)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.68-77, 2003

この数十年に及ぶ日本の「外国人問題」の変容は、「国際化」から「グローバル化」への動きであり、また「国際化」についていえば、いわば友好としての「国際化I」から「内なる国際化」を意味する「国際化II」への動きであった。日本の外国人も、在日韓国・朝鮮人や在日中国人に代表される「オールドカマー」から各種の「ニューカマー」へと多様化した。そこでの第一の着眼点は、外国人というと「3K労働」も厭わない労働者というイメージが強いが、外国人労働者就労は単純労働の分野に限られず、日本企業の多国籍化や国際進出に伴う部著にも広がっている。また、卒業後に日本企業に就職する留学生も増加した。彼らのなかには新中間層に属する人も多く、従来の外国人労働者のイメージでは捉えきれない。第二に、これまでの「オールドカマー」に見られるように、日本社会への定住化がほぼ前提とされ、その上で同化や帰化の是非、あるいは民族文化を保持したままでの定性化の是非が議論されてきたが、南米社会と日本を行き来する南米日系人リピーターに代表されるようなトランスナショナルな存在が目立ってきた。こうした二つの多様化は世界各国で見られる現象であり、このような現実の変化に対応して、分析上のパラダイムの方も、当該社会への同化や統合の是非を問題とする「統合パラダイム」に加えて、国境を越えた複数の社会関係のなかで生きる人々を捉える「トランスナショナル・パラダイム」を併用することが必要となってきている。
著者
相部 久美子 梶原 瑠衣 古賀 京子 星子 奈美 山根 泰志
出版者
九州大学附属図書館
雑誌
九州大学附属図書館研究開発室年報 (ISSN:18813542)
巻号頁・発行日
vol.2016, pp.1-12, 2017-08

九州大学附属図書館では,近年の図書館員の関心の高まりにより,所蔵資料に押印された蔵書印の画像収集や印主の調査が行われてきた.それらの成果を公開するデータベースとして「蔵書印画像」ブラウズ画面を公開している.本稿は,そうした蔵書印収集と公開による様々な成果や事例を報告し,その意義を示すものである.また,特筆すべき例として,近年発見された,医学史・デザイン上極めて価値の高い「ショイベ文庫」の蔵書票について紹介する.

1 0 0 0 朝鮮史

著者
梶村秀樹著
出版者
講談社
巻号頁・発行日
1977
著者
梶島 岳夫
出版者
日本混相流学会
雑誌
混相流 (ISSN:09142843)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.135-138, 2017-06-15 (Released:2017-07-18)
参考文献数
19

The turbulence modulation, that means influences of dispersed particles to the fluid turbulence, is one of the challenging subjects in the multiphase flow research. In recent decades, experimental and numerical researches have been conducted extensively. Especially the direct numerical simulation (DNS) became a powerful means to reveal the multiphase turbulence phenomena. But DNS cannot become a practical tool for multiphase flows in industry or in nature. In this review article, an example of particle-laden flow by the immersed solid method and our recent progress for the application to the two-phase heat transfer are shown. Then, considering the current status, it is pointed out that some moderately-averaged equation, which includes momentum exchange and residual stress terms, is essential for semi-DNS including finite-sized particles (e.g., Kolmogorov scale particle) to deal with large-scale multiphase flow fields.