著者
福島 あゆみ 岡田 洋右 谷川 隆久 河原 智恵 三澤 晴雄 中井 美穂 廣瀬 暁子 神田 加壽子 森田 恵美子 田中 良哉
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.311-316, 2003-04-30 (Released:2011-03-02)
参考文献数
16

症例は52歳女性. 1996年 (平成8年) に低血糖昏睡 (血糖12mg/dl) で近医に緊急入院したが, 低血糖発作が頻発するため1997年 (平成9年) 当科入院.考えられる低血糖発作の原因を除外した後に, インスリン (IRI) 血糖 (PG) は0.44~1.07, 血管造影で膵尾部に径1.5cm大の濃染像が疑われることより, インスリノーマの診断で膵体尾部脾合併切除 (90%) を施行したが, 術中所見, 切除膵の組織学的検討で異常所見を認めなかった. しかし, その後も夜間空腹時低血糖発作を反復するも, 発作時のIRI PGが0.07と過剰インスリン分泌は消失していたことから, 術後低血糖の主因としては反応性低血糖を考え, ボグリボース内服と夜間補食 (2単位) を開始. 以後, 日常生活には支障ないものの, 依然として早朝空腹時血糖は50mg/dl前後であり, 2001年 (平成13年) 9月病状再評価のため施行した選択的動脈内カルシウム注入検査 (ASVS) にて, 30秒後にIRIが2.5倍以上に上昇し陽性. また, ボグリボースと夜間補食中止下でのdaily profiieでは食後高血糖がみられ, 著明なインスリン抵抗性と低血糖時のインスリン分泌抑制を認めた.本例の低血糖の病態としては, ASVSの結果および術後経過より, 術前の病態としては膵β細胞のび漫性機能亢進があったのではないかと考えられ, 広汎な膵切除によるインスリン総分泌量の減少に加え, ボグリボースにより反応性のインスリン過剰分泌を減少させることで重篤な低血糖発作を改善することができたと推測される.
著者
中山 智晴 山﨑 裕司 森田 ゆかり 大﨑 康史 古谷 博和
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.9-13, 2022 (Released:2022-02-20)
参考文献数
9

〔目的〕パーキンソン病(PD)患者に対する段階的難易度設定による起居動作練習が,動作時間に及ぼす即時的効果について検討した.〔対象と方法〕PD患者13名を対象として,段階的難易度設定の技法を用いた起き上がり動作練習と寝返り動作練習を,計10~15分間実施した.〔結果〕介入前の起居動作時間の中央値は7.5秒,介入後の起居動作時間の中央値は4.4秒であり,動作時間は有意に短縮した.動作時間の改善度は,起居動作に時間を要していた重症度の高い症例ほど大きかった(rs:0.95).〔結語〕段階的難易度設定による起居動作練習は,PD患者の起居動作時間を短縮させる即時的効果を持つ,有効な動作練習と考えられた.
著者
森本 英樹 柴田 喜幸 森田 康太郎 茅嶋 康太郎 森 晃爾
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.13-24, 2020

<p><b>目的:</b>社会保険労務士(以下,社労士)は事業場のメンタルヘルス課題に関わるものの,社労士が事業場のメンタルヘルス課題に関わる際に期待されるコンピテンシーが明確ではない.よって本研究では,メンタルヘルスにおける社労士に期待されるコンピテンシーを同定することを目的とした.<b>対象と方法:</b>デルファイ法を用いた調査を行った.第1ステップとして対象となる社労士に半構造化面接を行い,面接結果と過去の予備調査をもとにコンピテンシー(案)を作成した.第2ステップとして,メンタルヘルスが関連すると考えられる事例の相談件数が10件以上の社労士にアンケート調査への協力呼びかけを行い,重要度(メンタルヘルス関連業務を行う際にどの程度重要と思うか)と達成度(自らがどの程度達成しているか)を問うた.また提示したコンピテンシー以外に必要と考えられるものを問い,コンピテンシー(案)の追加項目として加えた.第3ステップとして,第2ステップで有効回答をした者に対しステップ2の結果を提示した上で同意率(コンピテンシーに含めることを同意するか)を3件法で問い,同意率80%以上の項目をコンピテンシーとして設定した.また第2ステップで作成した追加項目について重要度と達成度を問い,この中で重要度が中央値以上にもかかわらず達成度が中央値を下回る項目を抽出した.<b>結果:</b>ステップ1では8名の社労士から協力を得,20領域68項目のコンピテンシー(案)を作成した.ステップ2では,57名の社労士が参加し45名の協力を得た(回答率78.9%).新たに追加すべきコンピテンシー(案)として7項目を追加した.ステップ3では,34名から協力を得た(応答率75.6%).同意率80%未満の2項目を除外し,その結果20領域73項目がコンピテンシーとして同定された.同意率が100%の項目として「立案は労使双方のメリットとデメリット(リスク)を踏まえた内容になっている」などがあげられた.<b>結論:</b>本研究により事業場のメンタルヘルスに社労士が関わる際に期待されるコンピテンシーを提示できた.本結果は,今後社労士を対象とした体系的な研修カリキュラムの開発の参考になることが示唆された.</p>
著者
井上 恵彰 谷津 元樹 森田 武史
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会研究会資料 言語・音声理解と対話処理研究会 (ISSN:09185682)
巻号頁・発行日
vol.94, 2022

<p>ユーモアを含む直喩表現生成における課題として直喩表現の質が挙げられる.先行研究より,ユーモアには,意外性,新規性,具体性の3つの要素が含まれると考えられる.本研究では,これら3つの要素を考慮したユーモアを含む直喩表現生成システムの実装を試みる.意外性を実現するために,京大格フレーム及びword2vecを利用し,新規性を実現するために,twitterの最新ツイートを取得し,具体性を実現するために,JUMAN7.0の形態素解析を用いて固有名詞抽出を行った.20~24歳の男女110人の被験者を対象に,直喩表現として成立しているかどうか,最もユーモアのある直喩の選択,直喩に意外性,新規性,具体性が認められるかの3つの評価を行った.結果,意外性,新規性,具体性全てを実現した直喩が最も直喩表現として成立していた.また,最もユーモアがあると評価された直喩は,意外性と具体性のみを実現した直喩であった.</p>
著者
森田 哲男 今井 正 山本 義久
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.399-402, 2016-12-20 (Released:2017-12-20)
参考文献数
24

We investigated the removal of the monogenean parasite Benedenia epinepheli and survival of commercially-reared host red-spotted grouper Epinephelus akaara under immersion at salinities (0-20 psu) at 28-29 ℃. Replicate samples of juvenile grouper did not die in salinities of 6 psu and above for 2 hours. All parasites were removed from fish at <10 psu. Immersion time required for the complete parasite removal in 6 and 8 psu waters was 30 and 120 minutes, respectively. Our results suggest immersion into 6 psu salinity water for 30 minutes is a practical and effective treatment to remove B. epinepheli without significant mortality.

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著者
山下格 森田昭之助編
出版者
金剛出版
巻号頁・発行日
1980
著者
山口 倫 森田 道 山口 美樹 大塚 弘子 赤司 桃子 田中 眞紀 矢野 博久
出版者
特定非営利活動法人 日本乳癌検診学会
雑誌
日本乳癌検診学会誌 (ISSN:09180729)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.143-147, 2017 (Released:2018-06-27)
参考文献数
16

以前,乳癌検診は早期発見,早期治療を掲げていたため,病理医も早期癌あるいは将来癌になるであろう病変を見出すことに重きを置いていた。しかし昨今,過剰診断の問題が取り沙汰され,特に検診では予後改善が目的で,“命に関わらない”病変を如何に見出さないかという考えにシフトしているようだ。一方で,その対象が境界病変,低異型度(LG)―DCIS,LG 浸潤癌なのか,それら全部なのかは不確かである。 DCIS はluminal だけでなく,HER2陽性も存在するheterogenous なグループで,前者はLG,後者は高異型度の浸潤癌となる。従来の乳癌モダリティでは,triple negative DCIS はきわめて検出されづらく,残念ながら致死的癌の“芽”の早期発見は大部分ができていない。一方で,大半が予後良好と思われるLG-DCIS も一定の割合で浸潤し,低頻度ではあるが数年後死に至る例もある。 これらのことから私見であるが, ( i )今後の検診について, 1.多形線状石灰化≒コメド壊死≒HER2陽性癌の早期検出にフォーカスし,抗HER2療法の抑制に繋げる。 2.早期乳癌,境界病変の病理診断者間一致率は低いため,マンモグラフィ精査基準を上げ,LG-DCIS/LN/境界病変(luminal)の検出・採取率を減らす。結果的に取扱いに悩む機会が減る。 3.致死的TN の早期検出に関しては新しいモダリティを見出す。 (ii)病理診断(癌診断基準)について, LG 乳癌は低頻度だが死に至り,LN 転移など悪性のポテンシャルも有する。したがって,しばらくの間現状のクライテリアとし,“低リスク”病変の病態を明らかにする。 今後は,“命に関わらない”病変の臨床病理学的定義とその所見を明確にしていく必要がある。
著者
田中 公二 柴田 護 野沢 悠子 駒ヶ嶺 朋子 森田 陽子 五味 愼太郎
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.130-134, 2008 (Released:2008-02-22)
参考文献数
13

症例は23歳の女性である.4歳時からアトピー性皮膚炎,小学生時から気管支喘息に罹患していた.200X年7月に歩行障害,下肢感覚異常,膀胱直腸障害を急激に発症し入院した.神経学的所見では,下肢筋力低下,下肢の温痛覚と位置覚障害,下肢腱反射低下ないし消失,および弛緩性の膀胱直腸障害をみとめた.入院時のMRIでは,円錐上部の腫脹がみとめられ,髄液検査では細胞・蛋白・IgGは正常であったが,IgE(8IU/ml)とMBP(7.8ng/ml)は高値であった.血液検査ではダニ特異的IgEが強陽性であった.以上の所見からアトピー性脊髄炎と診断した.入院後,ステロイド・パルス療法と血漿交換療法で臨床所見は改善した.第21病日以降に施行されたMRIでT2強調画像にて高信号を示す散在性病変が腰髄∼仙髄レベルに確認された.髄液と血液のIgEおよびアルブミンの測定結果から,IgE髄内産生の可能性が示唆された.髄液IgEを経時的に測定したが,病勢との相関は明らかでなかった.本例のような病巣部位と急性の経過は従来の報告に比し,非典型的と考えられた.
著者
長田 尚子 森田 泰暢
出版者
ヒューマンインタフェース学会
雑誌
ヒューマンインタフェース学会論文誌 (ISSN:13447262)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.261-276, 2014-11-25 (Released:2019-07-01)
参考文献数
30
被引用文献数
1

This paper describes a basic activity model for a collaborative project between a company and a university. Cooperation between the industry and academia for first-year education could be one of the important career development programs in Japan. We consider the relationship between the company and the university as a social interface and believe that there is an uncertain interaction regarding the learning activities of students in that social interface. To utilize this uncertain interaction, we exploited research on distributed intelligence for the design of a community of learners. Based on the comparison of two types of activity models, we propose that the autonomous approach is appropriate for the activity design of first-year education at the university.
著者
大浦 洋一 小西 隆洋 井手 満雄 森田 正治
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
雑誌
九州理学療法士学術大会誌 九州理学療法士学術大会2021 (ISSN:24343889)
巻号頁・発行日
pp.16, 2021 (Released:2022-02-03)

【はじめに】今後さらに高齢化が進むわが国において健康寿命を延ばすことが課題となっており、その一つとして高齢者の社会参加が注目されている。社会参加には健康増進活動、ボランティア活動、地域活動など様々あるが、地域高齢住民を対象とした先行研究において、社会参加の機会を有する高齢者は、そうでない高齢者に比べ認知機能が高く、フレイル(虚弱)の割合が低いことが報告されている。しかし、生きがいとの関連については十分に明らかにされておらず、過去に科学的根拠を整理した研究はほとんどない。筆者らが行った研究では健康増進活動を主とした社会参加活動について生きがいは有益な効果があると結論付けたが、具体的な要因は何であるのか、生きがいの構成4 因子(生活充実感・存在感・自己実現意欲・生きる意欲)と社会参加活動との関連を言及するまでには至っていない。本研究では当院通所リハビリテーション利用者を対象とした質問紙調査の結果をもとに、社会参加と生きがいの主要因について関連を検討する。【方法】本研究は2020 年11 月から2021 年2 月までの当院通所リハビリテーションを利用する65 歳以上の要支援者24 名(男性10 名、女性14 名)とし、対象者に質問紙調査を実施した。生きがい評価として、生きがい感スケール(16項目4 因子(1)自己実現と意欲(2)生活充実感(3)生きる意欲(4)存在感)を使用した。満点は32 点、カットオフ値を17 点とし、統計解析はWindows 版SPSS24 を用い、Mann-WhitneyU 検定により、生きがい感との関連を確認した。また、社会参加項目(年齢、性別、配偶者、家族形態、健康状態、暮らしぶり、外出頻度、外出手段)についても比較検討を行なった。なお、有意水準は5%とした。【結果】対象は生きがい高い群(A 群)が15 名、生きがい低い群(B 群)が9 名で、参加者の多くが81 歳から90 歳の後期高齢者であった。A 群は男性3名、女性12 名であり、B 群は男性7 名、女性2 名であった。2 群間の男女割合としてA 群は女性が有意に高く、B 群は男性が有意に高かった。生きがい感は、自己実現因子にける「心のよりどころ(P=0.001)」、「向上したと思える(P=0.002)」、「他人から評価されている(P=0.014)」、「何か成し遂げた(P=0.034)」、存在感因子における「私がいなければだめだ(P=0.047)」、「世の中や家族のために役に立っている(P=0.025)」、「家族や他人から期待されている(P=0.025)」の因子において生きがい感との間に有意な関連性を認めたが、他の生活充実感と生きる意欲との間には関連を認めなかった。【考察】地域で生活している虚弱高齢者の生きがい要因を確認することは地域包括ケアシステムを機能させる上で意義があると考える。本研究の結果から、A 群では多くが女性に日常生活活動を向上・維持したいという意欲が受動的に見られ、特にその要因として自己実現因子と存在感因子を主としていた。高齢者の老年期は生きがい感を喪失しやすい危機に直面するものの、新たな生きがい感の源泉や対象を見出すことで再獲得できる力を持つと考えられている。本研究では家庭内役割の中で、生きがい感を獲得することで、自律した社会参加能力を得ることが可能であると考える。【まとめ】生きがい感が高い対象者は家庭内役割を獲得し、自律して活動する社会参加能力が高いことが認められた。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は所属施設の倫理審査委員会の承認(渡整第2020-1101 号)後、対象者に書面及び口頭にて十分な説明を行い、同意を得た上で実施した。また、本研究において開示すべき利益相反はない。
著者
森田 文子 柴田 俊子 奥住 祥恵 光永 知和子 嶋本 圭 大音 清香 井上 賢治
出版者
日本視機能看護学会
雑誌
日本視機能看護学会誌 (ISSN:24333107)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.30-32, 2020

目的:A 病院における夜間・休日の救急患者電話対応を振り返り現状と課題を明らかにする。対象と方法: 調査期間:2017 年1 月~ 12 月 対象:電話相談をした166 件方法:救急患者記載表に記載された相談内容を収集分析結果:電話総数517 件に対して救急患者記載表使用は166 件。年齢別では70 歳以上が87 件(52.4%)。時間帯では17・18 時台が各21 件ずつ(12.7%) と最も多く,17:00 ~ 23:00 では85 件(51.2%)。疾患は,緑内障が61 件(36.7%)で最多。相談内容は,目の不調について122 件(73.5%),点眼・内服について29 件(17.5%) の順。考察:電話相談は,病棟看護師の多忙な夜間帯に多い。多忙な時間帯での救急患者電話対応では,入院患者への安全な看護行為の提供は難しく,又,電話相談患者が安心できる対応も同様である。これらのことから,電話対応のマニュアルを作成する必要があると考える。
著者
柴 健次 森田 雅也 岩﨑 千晶
出版者
関西大学教育開発支援センター
雑誌
関西大学高等教育研究 (ISSN:21856389)
巻号頁・発行日
no.3, pp.31-52, 2012-03

第一主題「高大連携」は、高大の「接続のための連携」という関係において正当に位置づけられる。この関係において、学力選抜による高大接続から非学力選抜による高大接続への傾きと、入学者の数の確保のための高大連携から入学者の質の確保のための高大連携への傾きが、同時に起きているという現状と、その方向性を確認した。第二主題「経営リテラシー」については、具体的に新設ビジネス高校でその定着を試みるテキスト『ビジネス・アイ』に一定の効果を期待すると評価する一方で、中等教育に経営リテラシーの定着を図ることすなわち部分最適が、中等教育の全体最適を損なわないように注意すべきであると指摘した。我々はビジネス教育に従事する教員に上記2 主題に関連付けた調査を実施した。その結果、経営リテラシーの定着の担い手である教員自体の困惑振りが確認できた。つまりは定着の目的、その教育内容と教育方法に課題が山積していることを指摘した。最後に中等教育に限定されずに経営に関する専門職教育に範囲を拡大して課題を確認した。その結果、高等教育機関においても経営者を専門職と位置づけた教育が普及していない現状において、この国でその教育が必要とされるなら、専門職研究と専門職に対応する教育内容と教育方法の研究が必要であると主張した。
著者
森田 敦郎 小森 大輔 川崎 昭如
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.491-496, 2013

本稿は,チャオプラヤ・デルタにおける水管理の変遷と社会の関係を描き出す試みである.20世紀前半の開発は,デルタ全体を一つの灌漑システムへと再編するものであった.このシステムは,雨季の灌漑(水の均等な配分),乾季の灌漑(選択された地域への給水),雨季の洪水防御(指定氾濫地域への導水)という三つの目的を持つ.これらの三つの機能は,それぞれ絡み合いながら歴史的に発展してきた.だが,1990年代に進行した農業変化と産業化にともなって,三者の葛藤は顕在化しつつあり,水管理に新たな課題を突き付けている.
著者
森田 明理 新谷 洋一 長谷川 正規 加藤 正也 西尾 栄一 細川 裕子 辻 卓夫
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.111, no.8, pp.1229-1236, 2001-07-20 (Released:2014-12-27)

Narrow-band UVBは,311 nmにピークを持つきわめて狭い波長(311±2 nm)の紫外線光源であり,尋常性乾癬,アトピー性皮膚炎などにヨーロッパでは一般的に用いられている.乾癬でbroad-band UVB療法より優れ,PUVA療法とはほぼ同等とされる.今回,明らかにステロイド外用,ビタミンD外用で皮疹のコントロールのできない難治な尋常性乾癬23名(平均PASI 28.6)を対象としてnarrow-band UVB療法を行った.Narrow-bandUVB療法には,TL 01ランプ10本装着したM-DMR-LH型を使用した.照射率の測定はIL 1700を用いた.照射方法は,ヨーロッパで一般的に用いられているstandard regimenを用い,入院では週に5回,外来では週に3回の照射を行った.治療終了時の皮疹評価は,寛解15例,改善4例,やや軽快1例であり,寛解導入率65.2%,改善以上は82.6%であった.また,3例では,増量に伴うケブネル現象がみられたため,増量が難しく,不変もしくは悪化し中止とした.それ以外,水疱などの高度の急性副作用を起こすことなく照射が可能であった.
著者
松林 直 広山 夏生 森田 哲也 東 豊 児島 達美 玉井 一 長門 宏
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.519-524, 1996-08-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
9

原発性甲状腺機能低下症を伴ったACTH/LH欠損症の48歳の女性を経験した。患者は32歳時頃より、全身倦怠感、めまい、嘔気、不安感、悲哀感などを訴え、38歳時、当科関連N病院心療内科を受診し、不安、うつ状態を伴った自律神経失調症と診断された。夫婦関係が問題とされ、心理教育的アプローチが夫婦になされたが、症状の消失はなく、患者は頻回の入退院を繰り返した。平成5年、多彩な症状が持続していることから、内分泌疾患、特に下垂体疾患を疑い、関連検査を行ったところ、原発性甲状腺機能低下症を伴うACTH/LH欠損症が明らかとなり、副腎皮質ホルモン、甲状腺ホルモンの補償療法を行ったところ、症状の改善をみた。