著者
岩田 一明 森脇 俊道 川野 常夫
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.17, no.5, pp.239-247, 1981
被引用文献数
1 1

椅子から起立し再び着席する動作について動力学的観点から解析を行い, 動作に及ぼす加齢の影響について検討を加えた. 動作の撮影には16ミリシネカメラを用い, グラフィック・タブレットにより運動情報をミニコンピュータ内に取り込み, 人体の2次元数学モデルに基づいて身体各関節に作用する力やトルクを計算した.<br>実験は22歳から80歳までの男性被験者19名について行い, 解析の結果, 加齢と共に身体各関節運動における協調性の欠如から動作に滑らかさがなくなることが定量的に求められた. 動作中腰に作用するトルクの最大値は加齢と共に若干減少するが, 特に目前のテーブルに手をつくことにより平均20%低下することなどが得られた.
著者
森下 孟 東原 義訓
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.73-78, 2014-12-01 (Released:2015-06-01)
被引用文献数
1

タブレット端末を活用した協働学習を初めて受けた学習者は,どのような点で学習活動を「楽しい」と感じるかを明らかにするため,量的・質的研究法を統合し,1つの研究のなかで同時かつ補完的に扱うことを目的としたトライアンギュレーション混合研究法を試みた。その結果,学習者らは「それぞれの学習者の考えを電子黒板上に提示することで自他の考えを可視化し,友達の考えを共有・比較できたこと」「普段使用していないタブレット端末を使用することができたこと」によって「楽しい」と感じていたことが明らかになった。加えて,タブレット端末が持つ様々な機能は,学習者の潜在的な興味・関心を引き付ける可能性を示唆した。
著者
森久 聡
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.392-410, 2011-12-31

伝統的な地域社会において, 地域社会の基層はそこで生じた地域問題の様相をどう規定するのだろうか. 福山市鞆の浦では, 鞆港の埋め立て架橋・道路建設計画をめぐる地域論争が続いている. そこで本稿ではこの地域論争を手がかりに鞆の浦の社会結合の編成原理を解明するために, 村落構造分析の年齢階梯制の視点を導入し, 鞆の浦の地域社会構造と鞆港保存問題の特徴である合意形成の長期化と世代別の意見形成の要因を分析した. まず鞆の浦における若者組等の存在を史料的に確認し, 口述記録では祭礼行事の役割分担や若衆宿のような習慣など, 年齢階梯制の名残りと思われる観察データを検討した. その結果, 厳密に論証することは難しいが, 鞆の浦に年齢階梯制が存在した可能性は高いと思われる. さらに年齢階梯制の知見を補助線に引くことで, 世代によって計画への賛否が異なること, 年長者に対する尊重の意識, 「生徒会長」「PTA会長」の役職が世代別の指導者層のステータス・シンボルであること, 話し合いを重視する住民意識などの観察データは, 年齢階梯制の社会意識の断片として解釈できる. 現代の日本では, 年齢階梯制社会とすでに認められた地域以外で年齢階梯制を論証できる分厚いデータを入手することは難しいが, 地域問題の分析で年齢階梯制の視点を用いることは, この制約を乗り越え, 年齢階梯制研究の蓄積を現代に活かすという意味で, 一定の現代的意義があると思われる.
著者
安本 亮二 田中 重入 浅川 正純 柿木 宏介 田部 茂 西阪 誠泰 森 勝志 井関 達男 和田 誠次 前川 正信
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.571-575, 1989-04

通常行われている尿路造影法に非イオン性造影剤(iohexol)を用い, 検査前後で尿中逸脱酵素・蛋白がどのような変化を示すかにつき検討した.正常な腎機能を有する9例を対象とし, DIPにて注入スピード10 ml/min, 総投与量100 ml (2.5 ml以下/kg)で静注した.投与前後の尿を採取し, 糸球体濾過能の指標としてアルブミンを, brush-border酵素としてγ-GTPを, lysosomal酵素としてNAGを, 尿細管性蛋白尿の指標としてα1MGおよびβ2MGを測定し, 各酵素と蛋白の尿中排泄量を尿中クレアチニン量と比較検定した.DIP後γ-GTPとNAGの尿中排泄量は有意(p<0.001, 0.02)に増加した.α1MGおよびβ2MGは有意に変化せず, アルブミンの変化は少量であった.今回の検討から, 非イオン性, 低浸透圧性造影剤であるiohexolは尿細管障害が少なく, brush-border酵素であるγ-GTPとlysosomal酵素のNAGは尿細管障害の良い指標となると考えられた
著者
田中 公二 柴田 護 野沢 悠子 駒ヶ嶺 朋子 森田 陽子 五味 愼太郎
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.130-134, 2008 (Released:2008-02-22)
参考文献数
13

症例は23歳の女性である.4歳時からアトピー性皮膚炎,小学生時から気管支喘息に罹患していた.200X年7月に歩行障害,下肢感覚異常,膀胱直腸障害を急激に発症し入院した.神経学的所見では,下肢筋力低下,下肢の温痛覚と位置覚障害,下肢腱反射低下ないし消失,および弛緩性の膀胱直腸障害をみとめた.入院時のMRIでは,円錐上部の腫脹がみとめられ,髄液検査では細胞・蛋白・IgGは正常であったが,IgE(8IU/ml)とMBP(7.8ng/ml)は高値であった.血液検査ではダニ特異的IgEが強陽性であった.以上の所見からアトピー性脊髄炎と診断した.入院後,ステロイド・パルス療法と血漿交換療法で臨床所見は改善した.第21病日以降に施行されたMRIでT2強調画像にて高信号を示す散在性病変が腰髄∼仙髄レベルに確認された.髄液と血液のIgEおよびアルブミンの測定結果から,IgE髄内産生の可能性が示唆された.髄液IgEを経時的に測定したが,病勢との相関は明らかでなかった.本例のような病巣部位と急性の経過は従来の報告に比し,非典型的と考えられた.
著者
厚東 伸佶 森島 直彦 膳昭之 助
出版者
The Society of Synthetic Organic Chemistry, Japan
雑誌
有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
巻号頁・発行日
vol.41, no.8, pp.701-717, 1983-08-01 (Released:2009-11-13)
参考文献数
168
被引用文献数
9 10

Recent progress in the methods for Ο-glycosylation are reviewed. The topics are summarized in the eleven items : (i) α-Glc type glycosylation, (ii) β -Glc type glycosylation, (iii) α-Man type glycosylation, (iv) β-Man type glycosylation, (v) α-GlcN type glycosylation, (vi) β-GlcN type glycosylation, (vii) 2-deoxy-glycosylation, (viii) ketosylation, (ix) acetal glycosylation (x) the topics relating to ο-glycosylation, and (xi) polysaccharide synthesis.
著者
長田 尚子 森田 泰暢
出版者
ヒューマンインタフェース学会
雑誌
ヒューマンインタフェース学会論文誌 (ISSN:13447262)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.261-276, 2014-11-25 (Released:2019-07-01)
参考文献数
30
被引用文献数
1

This paper describes a basic activity model for a collaborative project between a company and a university. Cooperation between the industry and academia for first-year education could be one of the important career development programs in Japan. We consider the relationship between the company and the university as a social interface and believe that there is an uncertain interaction regarding the learning activities of students in that social interface. To utilize this uncertain interaction, we exploited research on distributed intelligence for the design of a community of learners. Based on the comparison of two types of activity models, we propose that the autonomous approach is appropriate for the activity design of first-year education at the university.
著者
金森 剛
出版者
一般社団法人 経営情報学会
雑誌
経営情報学会 全国研究発表大会要旨集
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.74, 2010

電子マネーの普及要因として、利用者にとっての利便性と経済性があげられるが、発行主体である交通機関の企業ブランドも普及に影響を与えていると考えられる。 本研究では広島の交通系ICカードであるPASPY利用者を対象にアンケート調査を実施した。採用スピードを説明する要因として、利便性、コストメリット、将来の各種決済利用への期待、企業ブランド評価、地域への愛着度の5つを用意した。分析の結果、これらの要因が採用スピードに影響を与えていることが分った。特に企業ブランドについては、「想像力がある」といったブランド・パーソナリティが、初期採用者に評価されている。
著者
金森 岳広 竹下 有美枝 御簾 博文 加藤 健一郎 太田 嗣人 金子 周一 篁 俊成
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.10, pp.803-808, 2012 (Released:2012-11-16)
参考文献数
16

症例はCMT病の48歳,男性.45歳時から口渇・多飲多尿を認め,46歳時の検診でHbA1c 10.8 %(NGSP)を認めた.当科に第一回入院時,身体所見で内臓脂肪型肥満(体重84 kg, BMI 28.1 kg/m2,腹囲101 cm)と四肢遠位部の筋萎縮を認め,高インスリン正常血糖クランプ検査はMCR 4.38 ml/kg/分と末梢組織における高度のインスリン抵抗性を示した.また,肝生検にて肝線維化を伴う非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)と診断した.食事・運動療法とインスリン療法を開始し,1年半の外来経過中に19.6 kgの減量(体重64.4 kg, BMI 21.8 kg/m2,腹囲75.5 cm)に成功し,HbA1c 5 %台の良好な血糖コントロールを得た.第二回入院時にMCR 6.86 ml/kg/分とインスリン抵抗性の著明な改善を認め,肝生検ではNAFLDの所見が消失した.CMT病合併糖尿病も肥満を伴う症例では,食事・運動療法による減量がインスリン抵抗性の改善と血糖コントロールに有効と考えられた.
著者
長水 正也 岡本 有紀子 奥村 拓也 佐藤 由美子 森下 修行
出版者
一般社団法人 日本医薬品情報学会
雑誌
医薬品情報学 (ISSN:13451464)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.115-122, 2021-11-30 (Released:2021-12-14)
参考文献数
10

Objective: The use of direct oral anticoagulants (DOACs) has increased because they have some advantages over warfarin, such as fewer interactions and no requirement for coagulation monitoring in principle. DOACs have dose adjustment requirement based on renal function and other complex criteria that differ depending on specific DOAC preparations and indications. At the Nagoya City East Medical Center, DOAC dose‒related decisions previously depended on the knowledge and discretion of individual pharmacists. However, a dose checking sheet for DOACs (the Checking Sheet) was prepared and used on our electronic medical record system since September 2016 to increase the reliability of prescription checking, eliminate improper prescriptions, and ensure electronic documentation of pharmaceutical inquiries. In this study, we compared percentages of proper prescriptions before and after the introduction of the Checking Sheet to assess the effectiveness of its use, which has not been reported previously.Method: The percentage of proper DOAC prescriptions was used as a measure to assess the effectiveness of the Checking Sheet. We investigated DOAC prescriptions from March 2017, when the Checking Sheet system had been established, and compared those with prescriptions from March 2016 (before the Checking Sheet was introduced). Prescriptions of rivaroxaban, apixaban, edoxaban, and dabigatran for nonvalvular atrial fibrillation or venous thromboembolism were included; prescriptions dispensed outside the hospital were excluded.Result: DOAC prescriptions before and after the Checking Sheet introduction were similar in number. The percentage of proper prescriptions increased significantly from 82.4 to 94.3%. Among specific DOAC preparations, the number of improper prescriptions decreased significantly for apixaban and showed a tendency to decrease for rivaroxaban.Conclusion: The increases in the number of proper DOAC prescriptions observed after introducing the Checking Sheet showed that the Checking Sheet helped ensure a certain level of prescription checking, suggesting its usefulness for promoting proper DOAC use.
著者
大浦 洋一 小西 隆洋 井手 満雄 森田 正治
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
雑誌
九州理学療法士学術大会誌 九州理学療法士学術大会2021 (ISSN:24343889)
巻号頁・発行日
pp.16, 2021 (Released:2022-02-03)

【はじめに】今後さらに高齢化が進むわが国において健康寿命を延ばすことが課題となっており、その一つとして高齢者の社会参加が注目されている。社会参加には健康増進活動、ボランティア活動、地域活動など様々あるが、地域高齢住民を対象とした先行研究において、社会参加の機会を有する高齢者は、そうでない高齢者に比べ認知機能が高く、フレイル(虚弱)の割合が低いことが報告されている。しかし、生きがいとの関連については十分に明らかにされておらず、過去に科学的根拠を整理した研究はほとんどない。筆者らが行った研究では健康増進活動を主とした社会参加活動について生きがいは有益な効果があると結論付けたが、具体的な要因は何であるのか、生きがいの構成4 因子(生活充実感・存在感・自己実現意欲・生きる意欲)と社会参加活動との関連を言及するまでには至っていない。本研究では当院通所リハビリテーション利用者を対象とした質問紙調査の結果をもとに、社会参加と生きがいの主要因について関連を検討する。【方法】本研究は2020 年11 月から2021 年2 月までの当院通所リハビリテーションを利用する65 歳以上の要支援者24 名(男性10 名、女性14 名)とし、対象者に質問紙調査を実施した。生きがい評価として、生きがい感スケール(16項目4 因子(1)自己実現と意欲(2)生活充実感(3)生きる意欲(4)存在感)を使用した。満点は32 点、カットオフ値を17 点とし、統計解析はWindows 版SPSS24 を用い、Mann-WhitneyU 検定により、生きがい感との関連を確認した。また、社会参加項目(年齢、性別、配偶者、家族形態、健康状態、暮らしぶり、外出頻度、外出手段)についても比較検討を行なった。なお、有意水準は5%とした。【結果】対象は生きがい高い群(A 群)が15 名、生きがい低い群(B 群)が9 名で、参加者の多くが81 歳から90 歳の後期高齢者であった。A 群は男性3名、女性12 名であり、B 群は男性7 名、女性2 名であった。2 群間の男女割合としてA 群は女性が有意に高く、B 群は男性が有意に高かった。生きがい感は、自己実現因子にける「心のよりどころ(P=0.001)」、「向上したと思える(P=0.002)」、「他人から評価されている(P=0.014)」、「何か成し遂げた(P=0.034)」、存在感因子における「私がいなければだめだ(P=0.047)」、「世の中や家族のために役に立っている(P=0.025)」、「家族や他人から期待されている(P=0.025)」の因子において生きがい感との間に有意な関連性を認めたが、他の生活充実感と生きる意欲との間には関連を認めなかった。【考察】地域で生活している虚弱高齢者の生きがい要因を確認することは地域包括ケアシステムを機能させる上で意義があると考える。本研究の結果から、A 群では多くが女性に日常生活活動を向上・維持したいという意欲が受動的に見られ、特にその要因として自己実現因子と存在感因子を主としていた。高齢者の老年期は生きがい感を喪失しやすい危機に直面するものの、新たな生きがい感の源泉や対象を見出すことで再獲得できる力を持つと考えられている。本研究では家庭内役割の中で、生きがい感を獲得することで、自律した社会参加能力を得ることが可能であると考える。【まとめ】生きがい感が高い対象者は家庭内役割を獲得し、自律して活動する社会参加能力が高いことが認められた。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は所属施設の倫理審査委員会の承認(渡整第2020-1101 号)後、対象者に書面及び口頭にて十分な説明を行い、同意を得た上で実施した。また、本研究において開示すべき利益相反はない。
著者
木之下 道子 木下 朋美 大山 典子 山下 三香子 久留 ひろみ 進藤 智子 山﨑 歌織 新里 葉子 森中 房枝
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.32, 2021

<p>【目的】鹿児島県は、奄美群島などの島しょ部を含み南北600kmに渡る。温帯から亜熱帯気候に属し自然豊かで食材の変化に富み、南方の国々等の影響を受けながら食文化が発達してきた。昔から続く鹿児島の行事食を次世代に伝え継ぐ目的で本調査を行った。</p><p>【方法】平成24〜26年に鹿児島の行事食について聞き書き調査した内容に加え、郷土誌やふるさとの食のレシピ集等を併せて資料とした。</p><p>【結果】餅が貴重だった時代、鹿児島の正月料理には里芋を用いる風習があった。正月飾りに里芋と餅を並べたり、子孫繁栄を願った「八つ頭の雑煮」に「かしわのうま煮」「煮豆」「刺身」「なます」「干し柿」など手作りの家庭の味を楽しんだ。年始客のもてなしには「焼き海老の雑煮」「春羹」「こがやき」なども加えられた。奄美群島ではおせち料理や雑煮に代わって、「餅の吸い物」「刺身」豚または鶏の吸い物からなる「三献」が大切にされる。七草粥は7歳の子供の成長を地域ぐるみで見守る行事としての意味合いがある。桃の節句に欠かせないちらしずしは「さつますもじ」と呼ばれ、祝菓子としての「軽羹」「高麗餅」「いこ餅」「小豆羹」「木目羹」などの蒸し菓子が作られてきた。端午の節句では、もち米を木灰汁につけ、竹の皮で包んで3時間以上煮た「あく巻き」が作られる。また、サンキライの葉で包む「かからん団子」肉桂の葉で包む「けせん団子」「ふっの餅」(よもぎ餅)などもある。盆料理は「かいのこ汁」や「といもがらのなます」「糸瓜のそうめん汁」「落花生豆腐」と「鼻つまん団子」などが特徴的だ。秋の収穫を祝う行事では「煮しめ」や「山芋のおとし揚げ」などもある。以上のように鹿児島に根付く独特の行事食が多く見受けられた。</p>