著者
藤森 真一郎 長谷川 知子 増井 利彦 高橋 潔 シィルバ エラン ディエゴ 戴 瀚程 肱岡 靖明 甲斐沼 美紀子
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.II_217-II_228, 2015
被引用文献数
2

Special Report on Emissions Scenarios(SRES)が公表されて以降,気候変動関連研究は主としてSRESを用いて行われてきた.一方,2007年以降に新シナリオプロセスが開始され,新しい社会経済シナリオ Shared Socioeconomic Pathways(SSPs)は気候モデル,影響評価モデル,統合評価モデルで使われ,中核的なシナリオとなることが期待される.また,近年統合評価モデルが提示するシナリオはパラメータの設定等が明瞭に示されずブラックボックスとなっているという批判が存在し,統合評価モデルが抱える大きな問題の一つとなっている.このような背景を踏まえ,本論文は以下の二つの目的を有する.第一にSSPの定量化プロセスについて詳細に記述し,シナリオ定量化作業をオープンにすることである.第二にその結果を既存のシナリオであるSRESとRCP(Representative Concentration Pathways)と比較し,シナリオの特徴を明らかにすることで,今後SSPの主たるユーザーとなる気候モデルや影響評価モデルに対して有用な情報を提供することである.本研究で得た主要な結論は以下のとおりである.第一に大気汚染物質の排出量はRCPで一貫して減少していたが,SSPの一部は増加するシナリオが含まれ,気候モデルにとってエアロゾルの違いの影響を明らかにすることができる.第二に耕作地面積はいずれのシナリオでも21世紀で拡大し,水資源,森林生態系など土地利用に影響される影響評価モデルにとっては土地利用シナリオを考慮することが重要であることが示唆された.
著者
松井 寛二 森岡 弥生 竹田 謙一
出版者
信州大学農学部附属アルプス圏フィールド科学教育研究センター
巻号頁・発行日
no.3, pp.11-16, 2005 (Released:2011-03-05)

4頭の木曽馬の馬房内の夜間の姿勢と体温変化の特徴を明らかにし、姿勢および体温変化と睡眠の関連を考察した。姿勢と行動はビデオカメラを用いて、体温(膣温)はデータロガを用いて記録した。姿勢は、1)立位(歩行・摂食)、2)立位(休息)、3)伏臥および4)横臥の4型に区分して記録した。伏臥および横臥の出現パターンには個体差が認められた。4頭平均の伏臥持続時間は16.4分、横臥持続時間は4.2分、夜間11.5時間の横臥回数は6.1回であった。体温は17時の38.1-38.6℃から早朝の37.6℃前後まで漸減した。伏臥から横臥の姿勢変化時にノンレム睡眠からレム睡眠に移行し、横臥時にレム睡眠であることが推察された。
著者
本田 護 福岡 講平 津村 悠介 森 麻希子 入倉 朋也 渡壁 麻衣 平木 崇正 井上 恭兵 三谷 友一 大嶋 宏一 荒川 ゆうき 福地 麻貴子 本田 聡子 坂中 須美子 田波 穣 中澤 温子 栗原 淳 康 勝好
出版者
日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液・がん学会雑誌 (ISSN:2187011X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.455-458, 2021 (Released:2022-02-08)
参考文献数
20

MEK阻害剤であるtrametinibは,BRAF遺伝子異常を有する視神経膠腫に対する有効性が期待されているが,本邦において小児の視神経膠腫に対する本薬剤の使用経験は極めて乏しい.今回我々はがん遺伝子パネル検査によってKIAA1549-BRAF融合遺伝子が検出された治療抵抗性の視神経膠腫に対してtrametinibを使用した症例を経験したため報告する.症例は8歳女児で生後7か月に視神経膠腫と診断された.診断後から合計5種類の化学療法と生検を含めて4回の手術療法を受けたが腫瘍は増大傾向であった.水頭症による意識障害が進行したが,髄液蛋白濃度が高く脳室腹腔シャントは施行できなかった.がん遺伝子パネル検査でKIAA1549-BRAF融合遺伝子が検出され,trametinibを2か月間投与した.投与期間中は画像上腫瘍増大の抑制効果を認め,髄液蛋白濃度も低下した.NCI-CTCAE version 5においてGrade 3以上の有害事象を認めなかった.本邦におけるtrametinibの有効性と安全性について,今後の症例の蓄積が重要と考えられる.
著者
黒澤 耕介 小松 吾郎 薮田 ひかる 森脇 涼太 岡本 尚也 佐久間 博 松井 孝典
出版者
日本高圧力学会
雑誌
高圧力の科学と技術 (ISSN:0917639X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.140-148, 2021 (Released:2022-02-10)
参考文献数
29

In this article we first review the roles of hypervelocity impacts in volatile partitioning on planetary surfaces and thermodynamics of shock vaporization/devolatilization of geologic materials. Impact experiment in an open system is essential to accurately estimate the shock pressure required for incipient vaporization/devolatilization, and we introduce a newly-developed open system experimental technique applied to two-stage light gas guns. This experimental apparatus allows us to measure impact-generated gases with a mass spectrometer at the same geometry of natural impacts with a limited risk of chemical contamination from the gun operation. The threshold pressures of vaporization/devolatilization for halite and gypsum were measured to be 18-31 GPa and <11 GPa, respectively. The new open system method is expected to serve as a powerful tool to explore the nature of shock vaporization/devolatilization of geologic materials.
著者
森 仁 八島 建樹 小助川 博之 出江 紳一 高木 敏行
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム (ISSN:13487116)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.79-88, 2018 (Released:2019-09-01)
参考文献数
18
被引用文献数
2 2

現在, 多くの脳血管障害患者や高齢者が, 嚥下障害により食物の経口摂取に困難を抱えている. 著者らは, 末梢神経磁気刺激により舌骨上筋群を反復的に収縮させることが, 嚥下機能の回復につながると考えている. 現在, 市販されている磁気刺激コイルは, 刺激範囲が広範なため, 舌骨上筋群刺激時に下歯槽神経などの不要な部位まで刺激してしまう問題がある. そこで, 著者らは, 磁性体コアを用いた構造を採用することにより, 磁気刺激時に局所的な渦電流分布が得られる狭い範囲の刺激に最適化したコイルの設計・試作を行った. また, 試作されたコイルを用いた磁気刺激により, 下歯槽神経を刺激することなく大きな舌骨上筋群の収縮が得られることを確認した.
著者
星 睦水 井上 かほる 桑山 弓枝 岩森 大 山崎 貴子 伊藤 直子 村山 篤子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成21年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.2052, 2009 (Released:2009-08-28)

【目的】食肉は、たんぱく質の良い供給源である。しかし、加熱した食肉は、咀嚼能力が低下している高齢者にとっては、食しにくい食材の一つである。これまでに、我々は、マイタケのプロテアーゼと低温スチーミング調理と併用することにより効果的に肉を軟化することを報告した。しかし、マイタケ処理した肉は、軟らかいものの食感が悪く、好まれなかった。そこで、本研究では、マイタケ処理液の濃度調節を行い、調味することにより風味の改善を試みた。 【方法】マイタケの重量に対して2倍量の水を加えてホモジナイズ後濾過した液(A)、4倍量の水を加え同様に処理した液(B)、Bに1%食塩を添加した液(C)を作成した。牛もも肉は一定の大きさに切断し、ナイロンポリバッグ中に上記マイタケ抽出液とともに真空包装し、低温スチーミング装置(AIHO ATS-10A)を用いて、70℃2時間加熱した。破断応力、テクスチャーはクリープメーター(山電レオナーRE-3305S)にて測定した。プロテアーゼ活性は、カゼイン消去法を用いた。官能評価は、20歳代の男女18名(若者群)および50-70歳代の男女22名(高齢者群)をパネルとして行った。 【結果】A液と比較して、B液で処理したところ、破断応力には有意差は見られなかった。また、カゼイン分解活性は、B液とC液では変化がなかったことから食塩によるカゼイン分解活性の阻害効果はないと考えられる。官能検査ではB液、C液で処理した肉は、A液で処理した肉と比較して、苦み、口中残留感が有意によかった。特にC液で処理した肉は、軟らかさを保ちつつ、風味を改善することができた。C液で処理した肉を用いた料理を作成し、若者群および高齢者群に対して官能検査を行ったところ、通常の肉を用いた場合と比べ、どちらのパネルでもやわらかく、噛み切りやすく、飲みやすいと評価された。総合評価においては、高齢者群ではC液で処理した肉の評価が高かったが、若者群では差がなかった。
著者
森 庸太朗 塚越 秀行 北川 能
出版者
一般社団法人 日本フルードパワーシステム学会
雑誌
日本フルードパワーシステム学会論文集 (ISSN:18803121)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.98-105, 2010 (Released:2013-09-11)
参考文献数
10
被引用文献数
3 4

This paper proposes a novel fluid powered actuator sliding along a flexible tube. The actuator named Λ-drive is composed of a flat tube and a slider. In the slider, the tube is bent and then the buckling point occurs, which helps to cut off the fluid passage and to seal in order to provide the driving force to the slider without generating large friction. In this paper, after the conventional sliding actuators are compared, the design method of the proposed actuator for making stable drive possible, the classification of the driving mode, and the analysis of the output force are discussed. Moreover, the validity of the proposed analysis can be verified through the experiment of the linear and the spiral motion by the developed prototype. Finally, as one of the applications of the actuator, the active drive of the zipper is proposed and its feasibility is discussed.
著者
森田 敦郎 小森 大輔 川崎 昭如
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.491-496, 2013

本稿は,チャオプラヤ・デルタにおける水管理の変遷と社会の関係を描き出す試みである.20世紀前半の開発は,デルタ全体を一つの灌漑システムへと再編するものであった.このシステムは,雨季の灌漑(水の均等な配分),乾季の灌漑(選択された地域への給水),雨季の洪水防御(指定氾濫地域への導水)という三つの目的を持つ.これらの三つの機能は,それぞれ絡み合いながら歴史的に発展してきた.だが,1990年代に進行した農業変化と産業化にともなって,三者の葛藤は顕在化しつつあり,水管理に新たな課題を突き付けている.
著者
森田 明理 新谷 洋一 長谷川 正規 加藤 正也 西尾 栄一 細川 裕子 辻 卓夫
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.111, no.8, pp.1229-1236, 2001-07-20 (Released:2014-12-27)

Narrow-band UVBは,311 nmにピークを持つきわめて狭い波長(311±2 nm)の紫外線光源であり,尋常性乾癬,アトピー性皮膚炎などにヨーロッパでは一般的に用いられている.乾癬でbroad-band UVB療法より優れ,PUVA療法とはほぼ同等とされる.今回,明らかにステロイド外用,ビタミンD外用で皮疹のコントロールのできない難治な尋常性乾癬23名(平均PASI 28.6)を対象としてnarrow-band UVB療法を行った.Narrow-bandUVB療法には,TL 01ランプ10本装着したM-DMR-LH型を使用した.照射率の測定はIL 1700を用いた.照射方法は,ヨーロッパで一般的に用いられているstandard regimenを用い,入院では週に5回,外来では週に3回の照射を行った.治療終了時の皮疹評価は,寛解15例,改善4例,やや軽快1例であり,寛解導入率65.2%,改善以上は82.6%であった.また,3例では,増量に伴うケブネル現象がみられたため,増量が難しく,不変もしくは悪化し中止とした.それ以外,水疱などの高度の急性副作用を起こすことなく照射が可能であった.
著者
藤森 賢一
出版者
密教研究会
雑誌
密教文化 (ISSN:02869837)
巻号頁・発行日
vol.1978, no.121, pp.14-22, 1978
著者
石井 寛海 阿南 雅也 森 淳一 山口 豊
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.46, pp.H2-225_1-H2-225_1, 2019

<p>【症例紹介】変形性膝関節症(以下,膝OA)患者の人工膝関節置換術(以下,TKA)後の理学療法は,下肢筋力トレーニング,関節可動域運動,歩行練習などが一般的に行われている.大腿四頭筋の筋力は,TKA後の最初の数週間にてTKA前よりもより低下するとされており,その筋力低下はTKA後数年経っても完全には解決できていないことが報告されている.TKA後の大腿四頭筋の筋力低下の原因は,単独で生じる筋萎縮のみならず,手術侵襲,術後安静,および関節原性筋抑制(以下,AMI)も挙げられる.また,膝OA患者の神経筋系の特徴として,膝周囲筋群の共同収縮が挙げられる.膝OA患者は歩行時の膝関節周囲筋の共同収縮が増大するとの報告があり,膝関節の病態を取り除いたTKA後の歩行でも報告されている.そこで今回、膝OA後のTKAを施行した症例に対し,膝関節周囲筋の共同収縮に着目し,質的な筋機能の改善を目的として介入した症例を報告する.</p><p> 症例は80歳,女性.数年前より膝関節痛のため階段昇降や長距離歩行が困難となった.1年前に左膝TKA施行し,今回は急性期病院にて右膝TKAを施行し術後3週で当院へ入院された.主訴は,「膝が曲がるようになってほしい、バスに乗りたい.」であった.</p><p>【評価とリーズニング】当院入院1週間後に初期評価を実施した.右膝関節可動域は他動運動で膝屈曲120°/膝伸展−5°,自動運動では屈曲105°/伸展-5°.右膝関節屈曲時に術創部,大腿直筋の伸張痛あり.NRSは2/10,圧痛は無く軽度の熱感あり.膝伸展筋力はMMT4レベル.Extension lagは陰性.共同収縮の評価は座位での膝伸展運動時における共同収縮の指標であるCo-Contraction Index(以下,CCI)とした.表面筋電計NORAXON(酒井医療)を使用し,膝伸展運動時の筋電図を計測した.被検筋は外側広筋(以下,VL)・内側広筋(以下,VM)・外側ハムストリングス(以下,LH)・内側ハムストリングス(以下,MH)・腓腹筋外側頭(以下,LG)・腓腹筋内側頭(以下,MG)とした.CCIはFalconarらが推奨する算出方法にて,VMとMH,VMとMG,VLとLG,VLとLG間で算出した.CCIは値が大きい程より共同収縮が強いことを示し,膝関節伸展運動時のCCI(%)は,VM:MHは57,VM:MGは33,VL:LGは76,VL:LGは64であった.</p><p>【介入内容および結果】質的な筋機能の改善を目的に,端座位での膝伸・屈曲展運動を10回3セット実施した. 膝下垂位から3秒間で膝最大伸展位になるように膝伸展運動を行い,その後3秒間で膝下垂位となるように膝屈曲運動を意識して行うように指導した.その他,理学療法内容として関節可動域運動や歩行練習,階段昇降練習を1週間実施した.</p><p>結果,関節可動域やNRS,MMT, Extension lagに変化はなかった.膝関節伸展運動時のCCI(%)は,VM:MHは57→41,VM:MGは33→17,VL:LGは76→54,VL:LGは64→33と全てにおいて減少した.</p><p>【結論】本症例では,質的な筋機能の改善のために端座位での単関節運動による開放的運動連鎖(以下,OKC)のトレーニングを行った.特に,膝伸展筋である大腿四頭筋を求心性収縮と遠心性収縮にて選択的に促通した.その結果,初期評価時に共同収縮は高い数値を示していたが,1週間後には軽減していた.先行研究では,TKA後1ヶ月での大腿四頭筋の筋活性化は,筋力の大きさと同様に術前よりもさらに低下するとされている.介入期間を考慮すると,主動作筋である大腿四頭筋と拮抗筋であるハムストリングスの相反抑制を正しく再学習することで共同収縮の改善に至ったのではないかと考える.このことから,TKA後には筋力トレーニングによって量的な改善を促すより,質的な改善を目指すことで質的な筋機能の向上が期待できることが明らかになった.しかしながら,実際に随意的な筋活性化が改善されたかどうかは,本症例では明らかにできてはいない.今後,共同収縮と随意的な筋活性化の関係性や共同収縮を効果的に改善する運動療法を模索・検証していきたい.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に基づき当該病院の倫理審査委員会の承認(A0017)と被験者の同意を得て実施した.</p>
著者
大森 美佐
出版者
一般社団法人 日本家政学会家族関係学部会
雑誌
家族関係学 (ISSN:09154752)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.43-55, 2019 (Released:2020-03-24)
参考文献数
17

The purpose of this research is to study the meaning of “romantic love” and its rewriting during changes in individual circumstances among young people in Japan with a high education and permanent work through an analysis of two types of research data related to romantic love, marriage, sex/reproduction and their relationships. Data was collected through five focus-group discussions and semi-structured interviews targeting unmarried men/women who were in their 20s (born between 1987 to 1990) when the research was conducted. Results show that both men and women redefine the meaning of “romantic love” by combining and separating the norms of “love, sex and marriage” based on conditions such as the increase in age, their relationship status and their partners. More specifically the research shows that once both men and women start to become conscious of marriage, including future childbirth, their definition of “romantic love” greatly changes, with the corresponding adjustment to combine and separate love, sex and marriage. Moreover, it was also suggested that this redefinition of “romantic love” is an adaptive strategy taken by individuals during the prolonged relationship period before marriage.
著者
西谷 美乃理 森 理恵
出版者
京都府立大学
巻号頁・発行日
no.57, pp.33-41, 2005 (Released:2011-03-05)

陸軍被服本廠内の被服協会の機関誌『被服』と、上村六郎『戦時の本染』により、十五年戦争下における染色をめぐる状況を見た。その結果は次のようにまとめられる。植物染料によるほんぞめ「本染」(草木染)の振興は、第一に、化学染料の輸入の途絶と国内染料工場の化学兵器工場への転用とによる染料不足、第二に、本土空襲による迷彩色を身につける必要性の高まり、というふたつの要因から企図された。ところが一方、「本染」は、先に民芸関係者により、化学染料にはない美をもつものとして評価しようという動きが開始されていた。これが「本染」振興の第三の要因である。その普及に当たっては、染料不足の解消と迷彩色の獲得という差し迫った目的よりも、これは日本古来の美なのである、という美的精神的側面が強調される。「本染」(草木染)は戦時下の国粋意識と結びつき、戦後にはこの第三の要因によって、支持されることとなった。
著者
伴野 太平 小森 ゆみ子 鈴木 聡美 田辺 可奈 笠岡 誠一 辨野 義己
出版者
日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.229-235, 2016
被引用文献数
1

<p>さつまいもの一種である紅天使を健康な女子大学生22人に摂取させた。加熱後皮をむいた紅天使の食物繊維は2.9 g/100 gだった。摂取開始前1週間を対照期とし, その後1週間単位で紅天使を1日300 g, 0 g, 100 gとそれぞれ摂取させた。排便のたびに手元にある直方体の木片 (37 cm<sup>3</sup>) と糞便を見比べ便量を目測した。その結果, 対照期には1.8±0.2 (個分/1日平均) だった排便量が, 300 gの紅天使摂取により約1.6倍に, 100 g摂取により約1.5倍に増加した。排便回数も紅天使摂取量の増加に伴い増加した。300 g摂取でお腹の調子は良くなり便が柔らかくなったと評価されたが, 膨満感に有意な変化はなかった。各期の最終日には便の一部を採取し, 腸内常在菌構成を16S rRNA遺伝子を用いたT-RFLP法により解析した結果, 紅天使摂取により酪酸産生菌として知られる<i>Faecalibacterium</i>属を含む分類単位の占有率が有意に増加した。</p>