著者
高島 郁夫 苅和 宏明 森田 公一 只野 昌之 竹上 勉 江下 優樹 水谷 哲也
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

本研究において、日本に存在しているかまたは侵入の可能性のあるフラビウイルス感染症の流行予防のための診断法の開発、病原性の解明および蚊の調査に関する研究を実施して以下の成果を得た。1.診断法の開発1)ウエストナイル熱について、RT-PCR RFLP法、リアルタイムPCR法およびRT-LAMP法による遣伝子診断法を開発した。この方法によると簡便な設備により、ウエストナイルウイルスと日本脳炎ウイルスおよびウエストナイルウイルス株間の簡別診断が可能となった。2)ダニ媒介性脳炎の迅速な血清診断法として、ウイルス株粒子を用いたヒト用のIgGおよびIgM-ELISA法を開発した。2.病原性の解明1)ウエストナイルウイルスの神経侵襲性毒力がウイルスエンベロープ蛋白への糖鎖付加により決定されることを明らかにした。2)ダニ媒介性脳炎ウイルスの神経侵襲性毒力は、ウイルスエンベロープ蛋白の1個のアミノ酸の置換により電荷が陽性に変化することにより低下することが示された。3)ダニ媒介性脳炎ウイルスの感染性cDNAクローンを用いた解析により、NS5とエンベロープ蛋白における各々一ヶ所のアミノ酸変異が神経毒力の低下に相乗的に作用していることが示唆された。3.蚊の調査1)ウエストナイルウイルスに対する、日本産蚊4種アカイエカ、イナトミシオカ、ヒトスジシマカの感受性、およびアカイエカの媒介能を証明した。2)ウエストナイルウイルス・デングウイルス媒介蚊ヒトスジシマカのJNKタンパクの機能を解析した。
著者
佐々木 大祐 関 二郎 宮前 陽一 黄 基旭 永沼 章 神吉 将之 西原 久美子 平本 昌志 由利 正利 梅野 仁美 森口 聡 見鳥 光 廣田 里香
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.39, pp.P-17, 2012

腎乳頭部壊死(RPN; Renal Papillary Necrosis)は糖尿病や,鎮痛剤・抗癌剤等の服用等によって生じる腎障害の一つであり,薬剤の開発や臨床的使用に支障を来すことがある。しかしこれまでヒトにおいてRPNの発生初期から鋭敏に変動するバイオマーカー(BM)は知られていない。そこで我々は,トキシコプロテオミクス(TPx)及びトキシコゲノミクス(TGx)の技術を利用してRPNを検出するための新規BMを探索した。<br> 2-bromoethylamine hydrobromideによるRPNモデルラットを作製し,その尿をTPx解析に,剖検後摘出した片腎の乳頭部をTGx解析に用いた。もう一方の片腎では病理組織学的検査を実施し,各BM候補と比較検証した。更に腎臓内障害特異性確認のため,puromycinやcisplatin等で糸球体或いは近位尿細管を障害させたモデルラットでの結果と比較した。<br> RPNモデルラットのTPx解析の結果,急性期炎症性蛋白質を複数含む計94種の蛋白BM候補が得られた。TGx解析の結果,アポトーシスシグナルやIL-1シグナルの活性化,酸化ストレスの亢進等をうかがわせる遺伝子群の変化が認められた。特にfibrinogenとC3はTPx解析及びTGx解析から共に検出されたため,これらはRPNと関連した着目すべきBMと考えられた。しかし障害部位特異性検討の結果,尿中のfibrinogenとC3は近位尿細管障害でも増加することが判明した。よって,fibrinogen及びC3はRPNを検出することは可能であるもののRPN特異的ではなく,近位尿細管の障害をも検出するBMであり,これら急性期炎症性蛋白質の増加は腎臓内障害部位における炎症関連シグナルの活性化に起因するものと考えられた。<br> 現在,RPNを特異的かつ鋭敏に検出するBMを残りの92候補から見出すべく,各候補に対する検討を実施中である。
著者
佐々木 大祐 宇波 明 関 二郎 宮前 陽一 黄 基旭 永沼 章 神吉 将之 西原 久美子 平本 昌志 由利 正利 梅野 仁美 森口 聡 見鳥 光 廣田 里香
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.40, 2013

腎乳頭部壊死(RPN; Renal Papillary Necrosis)は,糖尿病患者や鎮痛剤・抗がん剤等の服用等によって生じる腎障害の一つであるが,発症初期からヒトのRPNを鋭敏に検出するバイオマーカー(BM)の報告はなく,薬剤の開発や臨床的使用を困難にしている。そこで我々は,トキシコプロテオミクスの技術を利用してRPNを早期検出するための新規BMを探索した。<br>2-bromoethylamine hydrobromide(BEA)を雄ラット各5例に単回腹腔内投与(0,3,10,30,100mg/kg)し,投与直後から24時間蓄尿後剖検した。血液化学的検査及び腎臓の病理組織学的検査の結果,30mg/kg以上の投与群でBUNの増加やRPNが認められた。これらの結果を基に尿検体を4グループ(対照群,10mg/kg・RPNなし,30mg/kg・RPN有・BUN正常値,30mg/kg・RPN有・BUN増加)に分けプール尿を調製した。それらを脱塩濃縮後,トリプシン消化及びiTRAQラベル化し,2次元LC-MS/MSによるグループ間比較定量分析を実施した結果,RPNの認められた動物の尿中で増加していた94種の蛋白質BM候補を見出した。<br>次に,これらのBM候補のうち変動の程度が大きかった25候補について,まずは早期診断BMとしての可能性を検討した。BEAを雄ラット各8例(対照群は各6例)に単回腹腔内投与(0,30,100mg/kg)し,投与直後~6時間(0-6h)蓄尿後に剖検する群,0-6h及び投与後6時間~24時間(6-24h)蓄尿後に剖検する群をそれぞれ設けた。投与後6時間の剖検群ではRPNは認められなかったが,投与24時間ではいずれの投与群でもRPNが観察された。6-24h蓄尿について各BM候補をMultiple reaction monitoring法にて定量した結果,いずれのBM候補もRPNの認められた動物の尿中で増加していた。そのうちの4種のBM候補は,24時間後にRPNの認められた動物の0-6h蓄尿中でも増加傾向が見られたため,RPNが発症する前に変動するBM候補である可能性が考えられた。
著者
森石 みどり
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.103, pp.50-61, 2016

<p>大学図書館では,十分ではない資料保存スペースを学修スペースに変換することが求められ,自動書庫や遠隔地保存書庫,シェアードプリントの導入が提案されている。北米で取り組みが進んでいるシェアードプリントの中から,雑誌バックナンバーを共同保存するWEST(Western Regional Storage Trust)について調査する機会を得た。あわせてWEST参加館の中から,自動書庫・保存書庫を持つ機関を訪問したので報告する。日本でのシェアードプリント導入に関しても考察する。</p>
著者
大森 桂 古泉 佳代 鈴木 智恵美 金子 佳代子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.221-229, 2008 (Released:2010-07-29)
参考文献数
26
被引用文献数
1

Enhancing the physical activity level has become a significant issue for the Japanese to prevent lifestyle-related diseases. For developing a simple and valid method to assess daily energy expenditure, we measured the energy expended by several physical activities in 13 young Japanese adults using the portable expiration gas metabolic monitor. Each subject wore a heart rate monitor on the chest and three-dimensional accelerometers on the wrist, waist and ankle. The energy expenditure was correlated with the heart rate and with the acceleration at the wrist, waist and ankle. Energy expenditure showed higher correlation coefficients with the acceleration at the waist and ankle than at the wrist. A multiple regression analysis showed that the energy expenditure could be estimated from the accelerations at the wrist and waist, the heart rate, gender, height and weight. The results indicate that measuring both the body acceleration and heart rate was important for developing a simple and valid method to assess daily energy expenditure.
著者
横井 徹 和田 淳 森信 暁雄 全 勝弘 関川 孝司 川野 示真子 永山 恵子 池田 弘 浅野 健一郎 福島 正樹 山本 博 土居 偉瑳雄 日下 昌平
出版者
社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析療法学会雑誌 (ISSN:09115889)
巻号頁・発行日
vol.24, no.11, pp.1463-1469, 1991-11-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
25

1989年7月から1990年9月までの15か月間に経験したパラコート中毒例6例に対し, 胃洗浄, 血液吸着 (DNP), 強制利尿に加えて, ポリエチレングリコール含有電解質溶液Golytelyを用いた72-96時間の連続的な腸洗浄を行い5例を救命した. 救命例5例では, 治療開始後比較的短時間で尿中パラコート定性反応は陰性化し, 全例後遺症なく1か月後に退院した. 死亡例1例は大量服用例で, 尿中パラコート定性反応は陰性化せず, 多臓器不全に陥った.パラコート中毒治療の要点は本剤の体外への速やかな排泄である. 現在治療は腸管洗浄と血液浄化, 強制利尿を組み合わせて行われているが, 腸洗浄は電解質異常などをきたすため強力に行うことは難しい. Golytelyはこの欠点を補い, パラコートが腸管から体内へ吸収される前に速やかに排泄することによって本症を効果的に治療しうると考えられる. しかし本症のように腸管に広範囲の粘膜欠損を生じる場合は, 体内への多量の水分貯留をきたす場合があるので循環動態に注意が必要と考えられた.
著者
柿沼 志津子 尚 奕 森岡 孝満 臺野 和広 島田 義也 西村 まゆみ 甘崎 佳子 今岡 達彦 ブライス ベンジャミン
出版者
国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2015-04-01

福島原発事故以降、放射線への関心が高まり発がんが懸念されている。一方、小児がん患者のプロトンや重粒子線治療が始まり、中性子線や炭素線による2次発がんも心配される。こども被ばくのリスクとその低減化のため発がん機構の解明が急務である。本研究では、マウスやラットの発がん実験で得られたがんの病理解析やゲノム変異解析で、被ばく時年齢、線質、臓器依存性を示す発がんメカニズを調べた。その結果、血液がんでは子供期被ばく特異的な原因遺伝子と変異メカニズムが認められた。固形がんでは、高LET放射線で発がんの早期化や悪性化が示されたが、ゲノム変異に差はなかった。今後、エピジェネティック異常について検討が必要である。
著者
松浦 知史 森 健人 金 勇 友石 正彦
雑誌
研究報告インターネットと運用技術(IOT) (ISSN:21888787)
巻号頁・発行日
vol.2016-IOT-32, no.27, pp.1-8, 2016-02-25

大学内のログ情報を扱う組織において構築した小規模な仮想化基盤について紹介する.少額の投資から始められ,段階的に機器を導入する事が可能な構成を目指した.ベースはHP ProliantおよびHDDエンクロージャとし,その他に実験用マシン(Mac mini)を組み合わせて初期段階の構成とした.現段階ではvSphere 5.5および仮想マシンのバージョン10という組み合わせが安定運用に適していることが分かった.環境構築に当たってはソフトウェアのバージョンの組み合わせで不具合が発生することも多く,その様な失敗談も踏まえて環境構築の過程を記す.
著者
花森 功仁子 石川 智士 齋藤 寛 田中 克典 佐藤 洋一郎 岡田 喜裕
出版者
東海大学
雑誌
東海大学紀要. 海洋学部 (ISSN:13487620)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.19-25, 2012-03-20

14カ国に由来する温帯型と熱帯型を含むジャポニカ型イネ31系統と,11カ国に由来するインディカ型イネ23系統,合わせて54系統を用いて,温帯・熱帯ジャポニカ型の遺伝的相異点を調べた。その結果,第6染色体上に221塩基の欠失/挿入領域(DJ6領域)を発見した。この領域では温帯ジャポニカ型は欠失を示し,熱帯ジャポニカ型とインディカ型は非欠失を示す。このDJ6領域にPCRプライマーを10個設計し,これらを用いて,温帯・熱帯ジャポニカ型の識別手法を開発した。また,このプライマーを用いて,弥生時代後期の登呂遺跡第1期の地層から出土したイネ種子の型判別をおこなった。その結果,温帯ジャポニカ型と熱帯ジャポニカ型のDNAを持つ雑種1点と温帯ジャポニカ型2点が検出された。このことから,弥生時代後期には温帯ジャポニカ型と熱帯ジャポニカ型が栽培されており、両者のイネが自然交雑していたことが示唆された。
著者
森野 雄介 モリノ ユウスケ Morino Yusuke
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科 社会学・人間学・人類学研究室
雑誌
年報人間科学 (ISSN:02865149)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.105-122, 2016-03-31

本稿は、西田幾多郎の後期哲学における身体と自然の関係性を解明することを目的とする。後期西田の論文「人間的存在」において、身体と自然の関係性が「犬」への言及と共にクローズアップされる。その一文を手引きとして、本稿は後期の自然・身体概念と西田の前期・中期哲学とのあいだにどのような関係性が見受けられるかを考察していく。はじめに、中期西田の主要概念である「永遠の今の自己限定」が後期では「自然」として捉え直されていることに着目する。さらに、そこでは、中期の「現在が過去未来を含む」という規定が「現在に過去未来が同時存在する」という規定へと変更されていることを確認できる。本稿は、この変更の理由に、後期において主観と客観の相互対立が議論の骨子となっていることを指摘する。次に、主観と客観それぞれに対応するかたちで、西田が二種類の身体性と自然を提示していることを確認していく。まず、客観に対応するものが、「歴史的身体」と述べられる概念であり、これは静的な記号的「自然」として世界を観察可能にすることを確認する。主観に対応する身体性、自然として、西田は「生物的身体」と衝動的な「自然」を提示していることを確認する。最後に、これまでの議論を踏まえて、論文「人間的存在」内の「犬」と自然に関する言及を再吟味する。
著者
寺岡 加代 森野 智子
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.115-122, 2010 (Released:2011-05-10)
参考文献数
19
被引用文献数
1

高齢者の意欲 (Vitality Index) の1年後の変化ならびに変化に関連する背景因子の分析を目的とする縦断調査を実施した。調査対象は介護老人福祉施設在住の要介護高齢者118名 (男性25名, 女性93名, 平均年齢 : 84.2±7.7歳) である。意欲の評価指標は介護者の観察による客観的評価であるVitality Indexを使用した。また意欲の背景因子のうち口腔機能として, 現在歯数, 簡易機能歯ユニット, 改訂水飲みテスト, その他の因子として, 年齢, 性別, 要介護度, 食形態, 食事の自立度, 体格指数, 血中アルブミン値, 共存疾患数, 認知機能を評価した。分析の結果, 対象者の約6割は1年後にVitality Indexが低下すること, ならびに低下に関連する因子は食事動作の自立度であることが認められた。したがって, 要介護高齢者の意欲の低下を予防するためには, 食事動作の自立を維持することが重要であることが示唆された。
著者
菅森 義晃 石渡 明
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.121, no.11, pp.391-401, 2015-11-15 (Released:2016-02-27)
参考文献数
56
被引用文献数
4

兵庫県川西市に分布する超丹波帯猪名川コンプレックスから蛇紋岩礫を多く含む礫岩を発見した.この礫岩の礫種は珪長質火山岩類,蛇紋岩,片岩を主体とし,花崗岩,玄武岩,チャートや泥岩などの堆積岩が伴われるため,礫岩の供給源は付加複合体や堆積岩,変成岩,花崗岩などの基盤岩が露出し,その上を火山岩類が覆う島弧または陸弧であると想定される.蛇紋岩礫中のクロムスピネルの形状は,大江山オフィオライトのかんらん岩に特徴的ないわゆる「踊るスピネル」であり,クロムスピネルの化学組成(Cr#50-51およびCr#42)も大江山オフィオライトのものに類似する.そのため,これらの蛇紋岩礫は大江山オフィオライトを起源とすることが考えられる.猪名川コンプレックスの砕屑岩はペルム紀新世の“舞鶴(夜久野)島弧”前縁の海溝で形成されたとみなされ,今回の発見は古生代前期の大江山オフィオライトがペルム紀新世にこの島弧の前弧域に露出していたことを示唆する.