著者
山口 訓史 後藤 丹十郎 大谷 翔子 安場 健一郎 田中 義行 吉田 裕一
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.261-266, 2015

生育段階の異なるシュートに対する温度条件がシュッコンカスミソウ'アルタイル'の形態異常花序発生に及ぼす影響を検討した.シュート長20 cmから2週間15°Cに加温することで,8週間15°Cに加温した場合と同様に,形態異常花序発生が軽減された.2週間加温した個体の切り花長と切り花重は,8週間加温した個体よりも大きくなった.形態異常花序が発生するシュート長と頂芽における花芽分化段階との関係を調べたところ,頂芽のステージが栄養成長からがく片形成期に当たるシュート長が約1~20 cmから15日間の15°C加温で最も形態異常花序が抑制できた.形態異常花序に及ぼす低温の影響を明確にするため,異なる生育段階に対する低温遭遇(7°C)が形態異常花序発生に及ぼす影響を調査した.異なる生育段階に高温(15°C)に遭遇させた実験と同様に,頂芽のステージが栄養成長からがく片形成期までの低温遭遇が形態異常花序発生に大きく関与していた.以上のことから,摘心直後からがく片形成期の期間,株を低温に遭遇させないように温度管理することで,形態異常花序の発生を抑制でき,切り花形質も改善できると考えられた.
著者
富岳 亮 田中 惠子
出版者
医学書院
雑誌
BRAIN and NERVE-神経研究の進歩 (ISSN:18816096)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.395-400, 2013-04-01

はじめに Stiff-man/person症候群(SPS)は,1956年にMoerschとWoltmanが筋硬直と歩行障害を呈する13例に対してstiff-man症候群と命名した疾患である1)。1963年にはHoward2)が本症でジアゼパムが有効であることを初めて報告し,1971年には,病理学的に脳幹と脊髄に炎症所見を呈する例が報告された3)。 1999年,BrownとMarsdenはstiff-man症候群に加え,経過や主たる症候が異なるSPSを3群に分けてstiff-man plus症候群という名称を提唱した4)。すなわち,①亜急性の経過で生じる筋硬直・脳幹症状と進行性脳脊髄炎を呈するprogressive encephalomyelitis with rigidity and myoclonus(PERM),他の2群は比較的慢性の経過で,②脳幹由来のミオクローヌスを主とし四肢にも波及していくjerking stiff-man症候群と,③四肢末梢優位に有痛性痙攣と硬直を認め,特に下肢に優位で体幹の症状が少ないstiff-limb症候群を区別して示した。硬直が一側下肢から始まった場合stiff-limb症候群と診断される。多くの症例では経過とともに硬直は全身に広がっていくが,一部に下肢の硬直が際立っている症例が存在する。 SPSでは,経過中に種々の神経症候を呈する症例が存在しSPS-plusとされるが,Dalakas5,6)の経験では10%に小脳症状を伴い,5~10%にてんかん,眼球運動障害を伴う。SPSに小脳症状を伴う症例では,強い硬直と痙縮を呈し,小脳症状は体幹失調と構音障害,歩行は下肢と体幹に強い硬直を伴う運動失調性歩行を呈し,急速眼球運動の障害と追跡眼球運動障害,さらには水平注視時の眼振を認めた。以上のように,SPSは古典的なstiff-man症候群に加え,stiff-man plus症候群,さらに傍腫瘍症候群としてのSPSが加わり徐々に本症候群の概念が確立されていった。 本症では神経組織に炎症所見を生じる例があることから,ステロイドホルモン投与7),血漿交換療法が試行され8),奏効する例が報告されたことより,自己免疫学的機序の可能性について検討が加えられた。Solimena, De Camilliら9,10)はSPSの約60%にグルタミン酸脱炭酸酵素(glutamate decarboxylase:GAD)に対する自己抗体の存在を見出した。また,悪性腫瘍を背景とし,SPSを呈する傍腫瘍性神経症候群で抗アンフィフィシン(amphiphysin)I抗体が検出された例が報告され11),縦隔腫瘍にSPSを合併した1例でゲフィリン(gephyrin)抗体が見出されたとの報告もある12)。
著者
鈴木 浩明 田中 綾乃 小美濃 幸司 白戸 宏明
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.323-332, 1999-10-15
参考文献数
16
被引用文献数
2 3

鉄道車両がカント (横断勾配) のついた曲線区間に停止した際に生じる床の傾斜角と乗客 (乗員) の不快感との関係を検討するための基礎実験を行った. モックアップ車両の床面の傾斜角度を0~12度まで2度刻みで変化させ, 被験者に傾斜の強さや不快感の評価を求めた. 乗客 (乗員) の一般的な姿勢や行動を考慮して, 着座姿勢, 停立姿勢, 通路歩行時, 車内販売用ワゴン操作時の各条件を検討対象とした. 歩行実験では履物の違いが評価に及ぼす影響も検討した. その結果, 着座・停立条件の不快感は歩行・車内販売条件より高いこと, 靴の違いは歩きにくさの評価には影響するが, 傾斜に起因する不快感の評価には影響しないこと, 車内販売作業では傾斜角が6度を超えると急速に不快感が高まること, などが明らかになった. 最後に, 傾斜角度を独立変数, 不快感を従属変数とする回帰式の作成を試みた.
著者
田中 耕一
出版者
日経BP社
雑誌
日経バイオビジネス (ISSN:13464426)
巻号頁・発行日
no.19, pp.55-60, 2002-12

受賞が決まったという知らせを聞いた瞬間に思ったのは、「なんで私が」ということです。受賞の対象となった研究は5人のチームで行ったものです。私だけもらっていいのだろうかと、気にもなりました。 でもそれから2週間たって、少しは気持ちも変わってきました。というのは、日本や韓国のみなさんが喜んでいるという話を多く耳にしたからです。
著者
五十川 修司 鳥谷 龍三 田中 文顕 鳥谷 尚史 大礒 正剛 本田 達也 犬童 直哉 中野 幸治 神埼 祐一 江浦 正郎
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.285-291, 2012 (Released:2013-11-01)
参考文献数
15

熊本県の最近 10 年間における平均スギ花粉飛散数は約 2,000 個/cm2であるが、われわれは既に、大量飛散した 2009 年 (4,289 個/cm2) におけるロイコトリエン受容体拮抗薬 (LTRA) モンテルカストのスギ花粉症に対する初期療法の有用性について報告している。今回、例年よりスギ花粉飛散が結果的に少なかった 2010 年 (815 個/cm2) においても同じ初期療法を施行し、スギ花粉飛散量の多寡によってモンテルカストの初期療法の有効性に違いが生じるかどうかを検討した。対象は 2010 年 1 月から 3 月までに熊本県内 10 施設を受診したスギ花粉症患者 82 名であった。モンテルカスト単剤で治療開始から飛散終了までの鼻症状をコントロールできた症例は 54 例 (65.9%) で、2009 年の 40.7%と比較して高く、飛散数の少ない年ではモンテルカスト単剤でコントロールできる割合が多いことが分かった。さらに、2009 年、2010 年に 2 年連続してモンテルカストによる初期療法を受けた患者 8 名の解析では、初年に有効であった 4 例は翌年も全例有効であったのに対し、無効であった 4 例のうち 3 例は飛散の少なかった翌年も効果はみられなかった。すなわちこれらの無効症例は花粉飛散の多寡に関係なく LTRA の効果が期待できないいわゆる「LTRAに対する non-responder」と考えられた。
著者
田中 光太郎 岡田 寛也 小山 貴久 金野 満
出版者
公益社団法人 自動車技術会
雑誌
自動車技術会論文集 (ISSN:02878321)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.679-684, 2016 (Released:2018-01-29)
参考文献数
19
被引用文献数
1

急速圧縮装置(RCM)を用いて,ガソリン及びTRFの着火遅れ時間を上死点圧力(2, 3 MPa), 上死点温度(657-861 K)及び当量比(1.0, 0.5)において計測した.また,各燃料を用いた同条件下での化学反応解析を行い,解析値と実験値の着火遅れ時間の比較及びガソリンの自着火機構について検討した.
著者
田中 純一
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.83-92, 2014-02

欧州原子核研究機構(CERN)においてATLAS実験とCMS実験は2012年7月4日に「ヒッグス粒子らしい新粒子を発見した」として合同セミナー及び記者会見を行った.その粒子の性質については十分理解できていないことから学術的な正確さを期すため「らしい」という言葉を補ったが,この研究に携わった多くの研究者にとって約50年にわたって探し続けてきた「ヒッグス粒子」発見の歴史的な発表であった.素粒子の標準理論には12種類のフェルミオン(クォークとレプトン),4種類のゲージボソン,そして1種類のヒッグス粒子,合計17種類の素粒子が存在する.この17個の素粒子によりこの世界の物質とその間の相互作用が非常に上手く記述できることがこれまでの数々の実験から示されてきた.しかしながら,この17個の素粒子の中でヒッグス粒子は唯一その存在が実験で確認されていなかった粒子で,他の素粒子に「質量を与える」メカニズムの証拠となる素粒子である.そもそもゲージ不変性を基本原理としている標準理論では素粒子は一般に質量を持つことができない.そのためW/Zボソンや電子等の素粒子が質量を持っているという観測事実は標準理論では説明できないように思えるが,1964年にピーター・ヒッグスらは,標準理論に自発的対称性の破れを応用することでローカルゲージ不変性を保ちつつ,素粒子に質量を与えることに成功した.これがヒッグス機構であり,その副産物としてヒッグス粒子と呼ばれるスカラー粒子が予言された.したがって,素粒子の質量の起源であるヒッグス粒子を発見することは標準理論を完成させる上で必要不可欠であり,ある意味標準理論において残された最後の,そして最重要研究テーマであった.2012年7月,標準理論のヒッグス粒子探索の研究においてATLAS実験は統計的有意度5.9σ,CMS実験は5.0σの事象超過を質量126GeV付近に発見した.先に述べたようにこの時点では「らしい」という言葉を補っていたが,2012年12月まで取得したすべてのデータを使って研究を進めた結果,2013年3月に結合定数の強さが標準理論と無矛盾であることやスピン・パリティが0^+であるという強い示唆を得たため,この新粒子は「らしい」がとれて晴れて"a Higgs boson"となった.その根拠となる様々な結果は本文に譲って,ここでは3つの結果を挙げる.標準理論のインプットパラメータの一つであるヒッグス粒子の質量はATLAS実験125.5±0.2(stat.)^<+0.5>_<-0.6>(syst.)GeV,CMS実験125.7±0.3(stat.)±0.3(syst.)GeVである.標準理論のヒッグス粒子に対する信号の強さ(標準理論であれば1となるパラメータ)はATLAS実験1.33^<+0.21>_<-0.18>(125.5GeV),CMS実験0.80±0.14(125.7GeV)で標準理論のヒッグス粒子の信号と無矛盾である.また,この粒子のスピン・パリティについては0^+に対して0^-,1^±,2^+のモデルは97.8%CL(以上)で排除した.このヒッグス粒子が標準理論のヒッグス粒子かどうかをより精度良く見極めるためには更にデータが必要である.標準理論の素晴らしさをより一層実感するか,それとも標準理論を超えた物理を垣間見るか,LHC実験の再開が非常に楽しみである.
著者
北村 征生 田中 孝一
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.1-5, 1984-04-30

暖地型マメ科4草種;Macroptilium atropurpureum cv. Siratro(サイラトロ),Glycine wightii cv. Cooper(クーパー),Stylosanthes guianensis cv. Endeavour(スタイロ)およびStizolobium hassjo(フーキマメ)を月毎に単播条件で播種し,発芽定着数と冠部被度を経時的に測定した。測定結果と南西諸島南部における気象条件を合わせ検討し,暖地型マメ科草の播種適期を以下のように推定した。草種 播種適期サイラトロ:3〜6および10月クーパー:4〜6および10月スタイロ:6月フーキマメ:2〜6月
著者
田中 信之
出版者
富山大学国際機構
雑誌
富山大学国際機構紀要 = Journal of the Organization for International Education and Exchange, University of Toyama (ISSN:2434642X)
巻号頁・発行日
no.1, pp.1-11, 2018-12

本研究では初級文法クラスにおける授業引継ぎの授業記録の分析により,教師が共有しようとする中身を明らかにした。テキストマイニングにより授業記録を分析した結果,「授業の様子」では日本語学習や体調や態度について,どのような学生が多かったかを記述していた。また,文型や会話の練習に関する記述があり,そこには教師の振り返りも見られた。「学生の様子」では,理解と形の頻度が高かった。理解は文法や文型と共起し,形は活用形として使用される場合や,変換や間違えるなどの語と共起していた。これには文法積み上げ型の授業の実施が背景にあると考えられる。授業記録と講師ミーティング議事録と比較した結果,語の一致率が低く,両者は異なる役割があることが確認された。その一方で,どちらにも教師の内省があまり見られなかった。今後,授業引継ぎや講師ミーティングは教師が振り返り,それを教師間で共有していく場としていく必要がある。
著者
高橋 一男 堀田 泰司 芦沢 真五 北村 友人 黒田 一雄 廣里 恭史 小幡 浩司 新田 功 太田 浩 関山 健 花田 真吾 小早川 裕子 田中 祐輔
出版者
東洋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2017-04-01

平成29年度の研究はNAFSA年次大会(アメリカ)、EAIE年次大会(スペイン)、第6回APEC高等教育協力会議(ロシア)、AIEC年次大会(オーストラリア)、CBIE(カナダ)、APAIE(シンガポール)などに出席し、UMAPを中心としたアジア太平洋地域における学生交流に関する発表を行うとともに、国際会議・大会に出席している政府関係者及び、大学関係者に対するヒアリングを行い、国の政策と大学の国際戦略の関係について分析を行った。その中でも、特に英語圏であるカナダとアメリカが、UMAPへの参加を表明するなど、学生交流に関する新たな関心と問題意識が生まれていることが確認できた。8月18、19日にはUMAP国際事務局を担当する東洋大学、留学生教育学会と連携し、カナダ、アメリカ、オーストラリアから学生交流に関する専門家を招聘し、国際フォーラムとワークショップを開催した。アジア太平洋諸国の大学がどのような大学間連携を模索しているか、というニーズ調査を推進するための意見交換をおこなった。また、オーストラリア、カナダ、米国など発足当初のUMAPには参加していた英語圏諸国から関係機関の代表に参加を得て、今後、これらの国からUMAPへの参加を得ていくための課題検証について意見交換をおこなった。本フォーラムとワークショップには国内外の大学教員、大学職員、政府関係者等の150人を超える参加を得られた。2月15日、19日、3月26日にUMAPタスクフォース会議を開催し、本科研メンバーと各国国内委員会の代表が意見交換を行った。その中で、UMAPに実際に係る専門家に対し行ったSWOT分析や、日本国内のUMAP参加大学、非参加大学に対するUMAPに関するアンケート調査の分析を行い、今後のUMAPプログラムの発展に寄与するいくつかのアクションプランが提言された。
著者
鈴木 俊幸 齋藤 真麻理 小林 一彦 田中 大士 中嶋 隆 入口 敦志 海野 圭介 栁瀬 千穂 岩橋 清美 荒木 仁朗 粂 汐里 滝澤 みか 小林 健二
出版者
人間文化研究機構国文学研究資料館
雑誌
国文研ニューズ = NIJL News (ISSN:18831931)
巻号頁・発行日
no.54, pp.1-16, 2019-01-23

●メッセージ継承と蓄積●研究ノートホノルル美術館蔵『塵滴問答』について●エッセイ一期一会●トピックス第11回日本古典文学学術賞受賞者発表第11回日本古典文学学術賞選考講評中世日本の写本文化をめぐる研究集会肥前島原松平文庫における合同古典籍研修会日本古典籍セミナーUniversity of California, Berkeley 2018公開研究会「古典籍画像に対する文字認識と内容解析への取り組み」大学共同利用機関シンポジウム2018「福島県浜通りの歴史と文化の継承―『大字誌ふるさと請戸』という方法―」平成30年度古典の日講演会第42回国際日本文学研究集会総合研究大学院大学日本文学研究専攻の近況●表紙絵資料紹介『かみよ物語絵巻貼付屏風』六曲一隻
著者
藤吉 俊尚 肱岡 範 今岡 大 原 和生 水野 伸匡 田中 努 田近 正洋 清水 泰博 丹羽 康正 山雄 健次
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
日本消化機病學會雜誌. 乙 (ISSN:13497693)
巻号頁・発行日
vol.111, no.12, pp.2346-2354, 2014

症例は40歳代の男性.20歳から印刷業に12年間従事し,塩素系有機溶剤に曝露していた.肝機能障害で前医を受診し,肝門部胆管癌と診断され陽子線治療を施行したが,約3年後にリンパ節再発を疑われて当科紹介され,EUS-FNAで診断し化学療法を開始したが,2年でリンパ節が再増大し,外科的リンパ節摘出を施行した.その後1年8カ月再発していない.印刷業従事者が発病し,労災と認定された職業性胆管癌を報告する.
著者
石渡 俊江 植竹 勝治 江口 祐輔 田中 智夫
出版者
Japanese Soceity of Livestock Management
雑誌
日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌 (ISSN:18802133)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.179-184, 2007-12-25 (Released:2017-02-06)
参考文献数
18

本研究の目的は、肉牛の屠殺時血液性状と肉質における夏季と冬季の違いを調査することであった。夏季(18.9〜28.4℃)に15頭、冬季(4.9〜7.0℃)に20頭をトラックで近くの屠場へ輸送した。牛は屠場の待機ペンで一晩休憩した後、1頭ずつ屠殺された。血漿コルチゾール濃度と血中グルコース濃度は、冬季より夏季に有意に高くなった(ともにP<0.01)。血清pHと血清総タンパク質濃度は、冬季より夏季に有意に低くなった(ともにP<0.01)。これらの結果から、夏季は牛にとってより過酷な状況であることが示唆された。その主な原因としては、屠殺前に一晩中絶水されたことが考えられた。血清遊離脂肪酸濃度は、夏季より冬季に有意に高くなった(P<0.01)。血清ASTと血清ALTの活性は、夏季より冬季に有意に高くなった(ともにP<0.05)。冬季にみられたこれらの生理反応は、屠殺前に一晩中絶食されたことによると考えられた。しかし、これらの生理反応は肉質に影響するほどではなかった。さらに、人による牛の扱いにも季節による違いがみられなかった。本研究の結果から、屠殺前に一晩、完全に絶水することは家畜福祉的見地からも避けるべきであると考えられた。
著者
恩田 陽子 篠原 亮次 杉澤 悠圭 童 連 田中 笑子 冨崎 悦子 平野 真紀 渡辺 多恵子 望月 由妃子 川島 悠里 難波 麻由美 徳竹 健太郎 安梅 勅江
出版者
日本保健福祉学会
雑誌
日本保健福祉学会誌 (ISSN:13408194)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.23-28, 2010-11-30 (Released:2017-09-15)

目的:本研究は、子育ち・子育て支援における評価指標として活用が可能な「就学前児用社会的スキル尺度」の「かかわり指標」との基準関連妥当性について明らかにすることを目的とした.方法:対象は2〜6歳の保育士により気になる子どもとしてあげられた全国98か所の認可保育園に在籍する保育園児121名であり、担当保育士による「就学前児用社会的スキル尺度」の評価、および同一検査者による「かかわり指標」子ども側面を用いた観察を合わせて分析した.就学前児用社会的スキル尺度の各因子得点、総合得点とかかわり指標の各領域得点、子ども総合得点との相関係数を算出した。結果と考察:「協調因子」と<応答性領域><共感性領域>、「自己制御因子」と<運動制御><感情制御>、「自己表現因子」と<主体性領域>で有意な関連がみられ、基準関連妥当性が示された。「就学前児用社会的スキル尺度」及び「かかわり指標」はともに子どもの社会性を短時間の行動観察により客観的に測定できるツールであり、場面により使い分けることで、子育ち・子育て支援に携わるあらゆる分野における、今後の幅広い活用が期待される。