著者
田中 尚人 川崎 雅史
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.331-338, 2002-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
29

水辺は都市と水域の双方を包含する境界領域であり, 舟運や陸運など様々な都市基盤が接続する結節点である. 本研究では, 京都伏見を対象地として歴史的な文献・資料等を用い, インフラストラクチャーとしての水辺の近代化プロセス, 都市空間への影響を分析した. 近世の水辺は物流・旅客のターミナルとして機能し, 都市施設を集積させ都市的な賑わいの基盤となった. 近代においては, 近世以来舟運により保持されてきた都市機能やアメニティは鉄道駅周辺へと移行し, 水辺の工業基盤機能が卓越するようになった結果, 都市アメニティを享受する場としての水辺が散漫になった. このような都市形成のメカニズム, 及びそこで水辺が果たした役割が本論文にて明らかになった.
著者
二瓶 正登 田中 恒彦 澤 幸祐
出版者
日本不安症学会
雑誌
不安症研究 (ISSN:21887578)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.13-23, 2019-11-30 (Released:2020-01-04)
参考文献数
38

古典的条件づけは不安と関連する障害の形成と維持に重要な役割を担っている。しかし学習心理学的知見と臨床心理実践との乖離は未だ大きい。そこで本論文ではヒトおよび動物を対象に行われた古典的条件づけおよび連合学習理論に関する実験の諸知見を臨床心理実践へ応用する方法について検討することを目的とした。初めに古典的条件づけ手続きに関する諸現象を「条件反応(conditioned response; CR)に影響を及ぼす条件づけ試行以外の要因」と「消去後に生じるCRの再発をもたらす要因」の2つの観点から述べ,それらの現象が臨床場面で生じる可能性を概説した。次にRescorla–WagnerモデルおよびBoutonのモデルという2つの連合学習理論の概説を行い,それらの理論が臨床心理実践へどのように活用できるかを論じた。最後に学習心理学で得られた知見を認知行動療法に活用する意義について論じた。
著者
恩田 光子 今井 博久 春日 美香 安田 実央 下村 真美子 岡本 夏実 高田 百合菜 七海 陽子 田中 有香 荒川 行生
出版者
Japanese Society of Drug Informatics
雑誌
医薬品情報学 (ISSN:13451464)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.21-33, 2015 (Released:2015-06-28)
参考文献数
37

Objective: To examine the effect of pharmacists’ visits to homebound patients on the elimination of unused drugs.Method: We conducted a survey with pharmacies throughout Japan that provided home-visit service, asking them questions regarding their work with up to five patients (the survey period was from January 15 through the end of February, 2013).  Main survey questions were: (1) whether they managed unused drugs since the start of their home-visit, and (2) how they managed the unused drugs.  For (2), we conducted case studies by asking the pharmacists to choose the case that impressed them most and describe the unused drugs involved, actions taken, and the results.Results: Data on 5,447 patients were collected from 1,890 pharmacies throughout Japan (collection rate: 56.9%).  Pharmacists managed unused drugs from 2,484 patients (45.6%). 1,746 patients (3,590 cases) were qualified for analysis.  In 2,332 cases (65.0%), pharmacist intervention eliminated the incidences of unused drugs.  In 782 cases (21.8%), unused drugs were discarded, while the number of drug administration days was adjusted in 2,623 cases (73.1%).  In 21 cases (0.6%), drugs were both discarded and had the number of days adjusted.  There were others for 164 cases (4.5%).  The total price of the eliminated unused drugs was approximately 6,920,000 yen (4,000 yen/person).  Illnesses that benefited most from the elimination of unused drugs were chronic respiratory failure (16,306 yen/person), and Parkinson’s disease (4,803 yen/person).Conclusion: We confirmed the economic effect of eliminating unused drugs by pharmacists’ home visits.
著者
田中 宏和
出版者
物性研究刊行会
雑誌
物性研究 (ISSN:05252997)
巻号頁・発行日
vol.93, no.2, pp.143-229, 2009-11-05

脳の働きや人の心を理解したい、というのはすべての人に共通の好奇心であろう。この解説論文では、脳研究における新しいアプローチである「計算論的神経科学」という分野を物理のバックグラウンドがある人向けに紹介する。脳は、生物が数十億年にわたる生存競争の末に生み出した情報処理システムである。ゆえに脳の持ち主である生物もしくはその遺伝子が生き残る確率を最大にするようにデザインされてきたと想像されよう。まず、脳を理解する指導原理のひとつとして、与えられた拘束条件のもとでの最適化の原理、そしてその最適化問題を解くために変分原理が使えることを議論する。そして、脳のモデル化のケーススタディとして、身体運動の計算論について筆者の研究を交えて解説する。
著者
田中 政司
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.172-180, 2016-06-01 (Released:2016-06-01)
被引用文献数
1

ジャパンナレッジは事典・辞書を中心に日本語コンテンツを検索・閲覧できるデータベースサービスである。サービス開始から15年が経過し,大学や公共図書館を中心に世界約800の機関で利用されるサービスに成長した。本稿では,ビジネス的な側面からみたサービスの取り組みと経緯を紹介しつつ,今後,サービスが目指す方向性について紹介する。
著者
安藤 彰男 今井 亨 小林 彰夫 本間 真一 後藤 淳 清山 信正 三島 剛 小早川 健 佐藤 庄衛 尾上 和穂 世木 寛之 今井 篤 松井 淳 中村 章 田中 英輝 都木 徹 宮坂 栄一 磯野 春雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.84, no.6, pp.877-887, 2001-06-01
被引用文献数
57

テレビニュース番組に対する字幕放送を実現するためには, リアルタイムで字幕原稿を作成する必要がある.欧米では特殊なキーボード入力により, ニュースの字幕原稿が作成されているが, 日本語の場合には, 仮名漢字変換などに時間がかかるため, アナウンサーの声に追従して字幕原稿を入力することは難しい.そこで, 音声認識を利用した, 放送ニュース番組用の字幕制作システムを開発した.このシステムは, アナウンサーの音声をリアルタイムで認識し, 認識結果中の認識誤りを即座に人手で修正して, 字幕原稿を作成するシステムである.NHKでは, 本システムを利用して, 平成12年3月27日から, ニュース番組「ニュース7」の字幕放送を開始した.
著者
相川 充 藤田 正美 田中 健吾
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.95-103, 2007

The present study investigated the validity for Japanese students of a vulnerability model of social skills deficits proposed by Segrin (1996). According to the model, it was assumed that social skills deficits were not causes or consequences of depression, loneliness, and social anxiety. Rather, they constituted vulnerability factors, and it was the interaction of social skills deficits and negative life events that predicted the development of depression, loneliness, and social anxiety. Two hundred and fifty-three students recorded scales of social skills, depression, loneliness, and social anxiety three times at intervals of three months. Results indicated that the interaction of social skills deficits and negative life events predicted the development of depression, loneliness, and social anxiety significantly in some cases, but social skills deficits alone were also significant in their prediction. It was considered that the method of using a multiple regression analysis following Segrin (1996, 1999) would not be appropriate for proving the model. The validity of lumping depression, loneliness, and social anxiety together and applying them to the same model was discussed.
著者
葛西 豊高 川辺 晃一 村松 誠司 宮原 庸介 福田 裕昭 江藤 宏幸 中原 守康 今井 崇紀 田中 健丈 新井 基展
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.1554-1560, 2019 (Released:2019-08-20)
参考文献数
16

64歳,男性.食欲不振・下痢により,9カ月間で23kgの体重減少を認めた.高血圧症に対して,オルメサルタン内服歴が10年間あった.上下部内視鏡検査では原因となる疾患を認めず,小腸カプセル内視鏡検査で,十二指腸・小腸の絨毛萎縮を認めた.十二指腸粘膜生検ではアミロイド沈着,異型リンパ球は認めず,便培養・便虫卵検査が陰性であることから,セリアック病を疑った.オルメサルタン内服中であることから,セリアック病と同様の臨床像を呈するオルメサルタン関連スプルー様腸疾患を疑い,オルメサルタンを中止とした.その後,食欲不振・下痢・体重減少は改善し,4カ月後の小腸カプセル内視鏡検査で,十二指腸・小腸の絨毛萎縮の改善を認めた.慢性下痢の原因として,オルメサルタン内服中の場合には,オルメサルタン関連スプルー様腸疾患を念頭におくべきである.小腸カプセル内視鏡検査は小腸絨毛の萎縮評価に有用であった.
著者
山口 陽子 田中 博之
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.21-28, 2016-02-29 (Released:2016-02-29)
参考文献数
9

目的:現場で意識レベルがJapan Coma Scale(JCS)=1と判定された症例について調査する。方法:2009年8月1日からの4年間に救急車で当院へ搬送され,現場での意識レベルが記録されていた4,626例を対象とした。現場の意識レベルがJCS=0,JCS=1,JCS≧2の3群に分け,比較した。結果:JCS=1の原因病態は失神,てんかん,過換気症候群,急性アルコール中毒,頭部外傷,脳血管障害,循環血液量減少などが多く,意識障害に近い病態分布を示した。結論:最も軽症の意識障害を示すJCS=1という病態は確かに存在し,かつJCSを用いてしか判断できない。しかし,JCS=1の頭部外傷症例はJCS=0の8倍強,脳血管障害は約3倍と頻度が高い。救急救命士らはこの事実を認識し,より慎重に意識レベルを判定するとともに,搬送先選定にも役立てるべきであると考える。JCS=1を意識障害として認識するなら,JCSという評価方法は,より軽症の意識障害を拾い上げるという観点に限れば,Glasgow Coma Scaleより優れていると考えられる。
著者
村田 健介 岡本 健 池上 さや 川崎 喬彬 唐津 進輔 近藤 豊 松田 繁 田中 裕
出版者
日本救急医学会関東地方会
雑誌
日本救急医学会関東地方会雑誌 (ISSN:0287301X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.307-309, 2020-03-31 (Released:2020-03-31)
参考文献数
5

家庭常備薬の「正露丸」を200錠内服し, 木クレオソート中毒に至った1例を経験した。症例は67歳の女性で, 原因不明の意識障害で当院に救急搬送された。意識レベルはGlasgow Coma Scale E3V1M4であり, 気管挿管し入院とした。CTや血液生化学検査で明らかな意識障害の原因は断定できなかった。第2病日に意識が改善し, 入院前日に下痢症状に対して正露丸を200錠内服したことが判明した。第5病日をピークとした軽度の肝逸脱酵素の上昇が出現したが改善し, 第6病日に精神科に転科となった。正露丸は日本において家庭常備薬の下痢止めとして長年親しまれている薬である。その主成分は木クレオソートであり, 大量内服症例では木クレオソートに含まれる少量のフェノールによる嘔吐や血圧低下, 意識障害, 遅発性肝障害等の症状が出ることがあり注意が必要である。
著者
田中 彰吾 浅井 智久 金山 範明 今泉 修 弘光 健太郎
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.90.18403, (Released:2019-09-20)
参考文献数
123

This paper reviews past research on bodily consciousness and its neural representations, as well as current research on the body, self, and brain. In the early 20th century bodily consciousness was first conceptualized as body schema and body image. Empirical findings on phenomena such as phantom limbs suggested that body consciousness could be reduced to body representations in the brain. Body schema and body image have firm foundations in related brain areas including somatosensory and motor cortices, although they cannot be completely reduced to neural processes. In addition, the body image can be better categorized into two aspects (body semantics and body topology) that correspond to different streams of neural processing. Finally, we explored the self that emerges through interactions between the sense of body ownership and the sense of agency. The subjective sense of the self could well be the result of the bottom-up integration of multiple body representations.