著者
深井 喜代子 小野 和美 田中 美穂 關戸 啓子 新見 明子
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.125-135, 1997
被引用文献数
1

人間関係が異なる複数の被験者群において, 痛みの感受性と痛み反応, 看護ケアの鎮痛効果がどのように相違するか, またそれらに性差はあるかを検討した.被験者は健康な大学生30名で, 実験者と既知の女子7名(A群), 初対面の女子12名(B群), 初対面の男子11名(C群)の3群に分けられた.ベッド臥床した被験者の心電図, 局所発汗量, 皮膚温を測定した.看護ケアとして温罨法, 冷罨法, マッサージ, 音楽療法, 会話に代わるものとしての連想ゲームの5種類を用いた.VisualAnalogueScale(VAS)で70〜80の強さに電圧を固定して電気刺激を行い, 実験中痛みをVASで表現させた.その結果, 耐痛閾値は男性が高いこと, 痛みの評価と痛み反応は男性においてのみ皮下脂肪率と関係すること, さらに, ケア毎の鎮痛効果は対人関係の程度に関係することが明らかになった.
著者
野口 晴子 田中 隆一 川村 顕 牛島 光一 別所 俊一郎
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究の目的は,2015年を「子どもの貧困対策元年」として,現場でのさまざまな取り組みが行われている足立区との協働の下,(1)足立区教育委員会・学力定着対策室・学力定着推進課によって,平成21~29年度に足立区の公立小・中学校に通学していた児童生徒全員を対象とした学力・体力・就学支援等に関する情報をパネルデータ化すること;(2)当該データに基づき,足立区における学力向上を目的とする多様な支援策の効果,並びに,教員の固定効果に対する実証分析を行うこと;(3)就学支援の状況から,子どもの人的資本の蓄積過程に対する,家計の経済状況の影響を定量的に詳らかにする.当該自治体において,首長や行政担当者,子どもの人的資本の蓄積の場である家庭や学校等とのネットワークを構築し,本研究が得た実証的知見の実行可能性について現場での検証を行うことであった.本研究により,足立区教育委員会が保有する子どもに関する様々な情報を統合し,異時点間での推移を観察・追跡することが可能な,2009-2018年における延べ約50万人のlongitudinal/panel dataを構築した.結果,就学援助状況と学力や肥満,及び,学力と体力や生活習慣との間には相関があること,学校や教師の学力に対する寄与度にはばらつきがあること,小学生基礎学習教室などによる早期の介入が学力向上につながること,さらには,小学校から中学校への進級に際し成績上位20%の児童の約30%強が区外の私立中学校へ進学すること,などが明らかにされた.こうした成果は,2018年9月学習院大学で開催された日本経済学会2018年度秋季大学特別セッション「東京都足立区公立小中学校全児童のパネルデータを用いた分析」をはじめとする国内外のセミナーやワークショップにおいて報告された.また,本成果は,政策に資するエビデンスとして議会等の政策決定の場でも議論された.
著者
澤田 昭三 中村 典 田中 公夫 李 俊益 美甘 和哉 佐藤 幸男
出版者
広島大学
雑誌
核融合特別研究
巻号頁・発行日
1988

ヒトのリンパ球は末梢血中では分裂しないので放射線の線量率依存性を調べるのには最適である。そこで細胞死を指標としてトリチウム水とガンマ線を同じ線量率、2Gy/hrと2Gy/day、つまり線量率を24分の11に下げた時の細胞生存率を調べたが、トリチウム水でもガンマ線と同程度の細胞生存率の上昇がみられた(中村)。同じくヒトのリンパ球染色体に及ぼすトリチウム水の影響を調べ、ガンマ線に対するRBEを求めた。今回は特に観察誤差の少ない=動原体染色体のみを指標として10〜50cGyの低線量域のRBEを正確に求め2.6(含水率70%)を得た(田中)。ヒト精子染色体に及ぼすトリチウム水の影響について前年度に引きつづいて調べた。線量も25〜17.3cGyの低線量域に主力をおき、2年間で合計3132精子の染色体分析を行った。染色体異常頻度は線量の増加とともに193cGyまでは直線的に増加したが、それ以上の線量では飽和に近ずき、直線にのらなくなった。これらの結果と今までに得ているX線のデータと比較してRBEを求めた。出現する種々の染色体異常を指標としたRBEは吸収線量を最低に見積った時は1.9〜3.0、最大の場合は1.04〜1.65となった(美甘)。マウス胎仔脳の発育に対するトリウチム水の影響を調べるための予備実験がガンマ線を使ってつづけられているが、脳細胞の致死を指標とする場合は、トリチウム水のような低線量率被爆の影響を正確に把握することは困難なことがわかった(佐藤)。マウスの妊性低下に及ぼすトリチウムの影響を調べたが、線量・効果が明確でないこと及びデータにばらつきがあって今後の研究が必要と思われた(李)。有機結合型トリチウムのマウス初期胚に与える影響を調べ、吸収線量を基礎としたLD_<50>は核酸結合型で約1/20、アミノ酸結合型では1/5ほどトリチウム水に比べて低かった(山田)。体内トリチウム水の排泄促進剤として二種類の利尿剤の併用効果をねらったが十分な結果はえられなかった(澤田)。
著者
黄 泰平 藤川 正博 安政 啓吾 田中 恒行 広田 将司 西田 幸弘
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.70, no.12, pp.3512-3516, 2009 (Released:2010-05-20)
参考文献数
11

筆者はラテックスおよび手袋,薬品アレルギー患者となった.手袋のパウダーフリー化およびアレルギープロテクトグローブとしてのポリウレタン手袋内履きの試みを報告する.症例(筆者):1985年外科医として勤務.手の皮膚炎から,ラテックスフルーツ症候群,喘息,全身の小痒疹出現.I型およびIV型アレルギーが重症化し,2004年に離職.パウダーがラテックス抗原暴露の原因となるため院内のラテックス手袋はパウダーフリーとし,合成ゴム手袋で2005年に復職.しかし,IV型アレルギーが再燃したため2008年より添加化学物質のない未滅菌ポリウレタン手袋(デュラクリーン®ライクラ®)を内覆きし,速乾式アルコールを塗り合成ゴム手袋をはめる方法で手術を施行し,アレルギー反応は改善した.結語:1,ラテックス手袋はすべてパウダーフリーにすべきである.2,ポリウレタン手袋を内履きすることはアレルギー対策に有効である.
著者
林 松彦 高松 一郎 吉田 理 菅野 義彦 佐藤 裕史 阿部 貴之 橋口 明典 細谷 龍男 秋葉 隆 中元 秀友 梅澤 明弘 重松 隆 深川 雅史 川村 哲也 田中 勝 杉野 吉則
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.45, no.7, pp.551-557, 2012-07-28 (Released:2012-08-07)
参考文献数
24
被引用文献数
2 5

カルシフィラキシスは,末期腎不全により透析療法を受けている患者を中心に発症する,非常に疼痛の強い難治性皮膚潰瘍を主症状とする,時に致死的な疾患である.病理学的所見としては,小動脈の中膜石灰化,内膜の浮腫状増殖を特徴的所見としている.これまで本邦における発症状況などは不明であったが,平成21年度厚生労働省難治性疾患克服事業として,われわれ研究班により初めて全国調査がなされた.その結果,発症率は欧米に比べて極めて低いと推定され,その要因の一つとして,疾患に対する認知度が極めて低いことが考えられた.そこで,疾患概念を明らかとして,その認知度を高めるとともに,診断を容易にするために,全国調査を基として診断基準の作成を行った.この診断基準は,今後の症例の集積に基づく見直しが必要と考えられるが,カルシフィラキシスに対する認知度を高める上では重要な試みと考えている.
著者
柴田 長吉郎 玉井 秀昭 田中 勤 若松 求
出版者
The Institute of Electrical Engineers of Japan
雑誌
電気学会論文誌C(電子・情報・システム部門誌) (ISSN:03854221)
巻号頁・発行日
vol.110, no.6, pp.370-375, 1990-06-20 (Released:2008-12-19)
参考文献数
3

In accordance with rapid increase of industrial microwave application on heating, more and more high power microwave sources are required. Among many microwave devices, magnetron is most advantageous in economical point of view. Responding to these requirements, a super high power magnetron with output power of 420kW in CW which will be the largest in the world at this time, objective power being 500kW, was developed. In this paper, the design principle, the construction and the scale of each parts are described. The measured characteristics of the developed device reveal satisfactory.
著者
田中 深貴男 梅沢 一弘
出版者
埼玉県農林総合研究センター
雑誌
埼玉県農林総合研究センター研究報告 = Bulletin of the Saitama Prefectural Agriculture and Forestry Research Center (ISSN:13467778)
巻号頁・発行日
no.2, pp.103-106, 2002-10 (Released:2011-03-05)

1999年4月に県内で初めて発生したキンギョのヘルペスウイルス性造血器壊死症(GFHN)について、その発生及び養魚場の汚染状況を調査するとともに、養魚場の防疫措置の効果を追跡した。また、防疫に関する試験を実施した。この結果、県内の生産者の2/3の養魚場でによる汚染が確認された。また、生産池の消毒、受精卵の消毒及び隔離飼育は、本病の予防に有効であるが、親魚池等の汚染エリアと生産池の隔離が困難な構造、配置の養魚場では、完全に発病を抑えることが困難であることが分かった。さらに、ニシキゴイやタイリクバラタナゴ、ホンモロコ、ナマズなど県内で生産、流通しキンギョと接触する可能性が高い他の魚種については、GFHNVに対する感受性がないことが判明した。
著者
大島 裕明 小山 聡 田中 克己
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌データベース(TOD) (ISSN:18827799)
巻号頁・発行日
vol.47, no.19, pp.98-112, 2006-12-15
被引用文献数
15

本研究では,ユーザが与えた1語のクエリに対して,Web検索エンジンが持つ情報のみから同位語とそのコンテキストを発見する手法について提案する.同位語とは,共通の上位語を持つような語のことである.従来研究として,同位語や,上位語,下位語などを求めるような研究は数多くあるが,それらはWeb上の文書を利用するものも含めて,巨大なコーパスを解析して大量の結果を求めるというものであった.我々の提案する手法では,Web文書のタイトルやスニペットといったWeb検索エンジンが持つ情報のみを,少ない回数のWeb検索によって取得し,それらを解析して同位語を発見する.提案手法では,ある語に対する同位語は並列助詞「や」で接続されることを利用してWeb検索エンジンに対するクエリを作成して,その検索結果のみから同位語を得る.そこでは何の事前準備も必要なく,また,あらゆる分野の語に対して同位語を発見することができる.さらに,発見された同位語とクエリの語の背後にあるコンテキストも同時に取得する.このような同位語発見は,Web検索におけるクエリ拡張や想起支援や,何かを調べるにあたって他のものと比較したいときの比較対象の発見など,幅広い分野で利用することができると考えられる.We propose a method of using only a Web search engine index to discover coordinate terms, i.e., terms that have the same hypernym. Several research methods acquire coordinate terms, but they require huge corpora or many Web pages. Our proposed method uses only the information in a Web search engine index such as titles and snippets of Web pages. These are obtained by a few Web searches, and then they are parsed to discover coordinate terms. We focus attention on coordinate terms that are connected by the coordinating particle "ya," and use those to make queries for a Web search engine. Our method does not require any preprocessing, and can find coordinate terms for terms in any field. At the same time, we find the background context between a query term and each discovered coordinate term. Such a service for discovering coordinate terms can be used in any field for such purposes as query expansion, word remembrance support system, or finding comparable objects.
著者
矢倉 道泰 田中 晃久 時田 元 上司 裕史 原田 英治
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 = ACTA HEPATOLOGICA JAPONICA (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.19-25, 2005-01-25
被引用文献数
3 5

結婚後50年経ってHCVの夫婦間感染が成立した1例を報告した. 妻は72歳. 1955年出産時に輸血. 1989年に初めて肝機能異常を指摘され, 1992年より当院へ通院. 1992年4月, 肝生検はF1/A1, HCV-RNA8.7Meq/m<i>l</i>. 1992年9月よりIFN-α6MUを2週連投後, 週3回22週投与するも無効. 1994年6月, 肝生検はF1/A1. 同年8月よりIFN-α2b10MUを2週連投後, 週3回22週投与するも無効. 一方, 夫は77歳. 1981年より糖尿病で近医に通院. 1975年より毎年検診を受け, 飲酒による肝障害を指摘されていた. 2000年3月, HCV Ab(-). 2002年9月の検診でGOT358IU/<i>l</i>, GPT700IU/<i>l</i>と異常を指摘され当科受診. HBsAg(-), HCV Ab(+), HCV-RNA31.5KIU/m<i>l</i>. 2003年1月29日の肝生検は軽度の脂肪沈着を認めるalcoholic fibrosis with hemosiderosisの所見であった. 2003年2月より, 高齢で糖尿病があるためIFN-α3MUを週2回投与し9月にHCV-RNA陰性となる. 夫婦のHCV NS5B領域339塩基を増幅し, PCR産物をダイレクトシークエンスにより塩基配列を決定した結果, 夫婦間の配列はともにHCV genotype 1bで99.1%の高い相同性が得られた. 系統樹解析でも有意なクラスター (100%) を形成しており夫婦間の感染が強く示唆された. その後, 夫のHCV抗体価も上昇したことから妻から夫への初感染と診断した. 感染経路は性交渉によるものと推測した.
著者
田中 成典 中村 健二 寺口 敏生 中本 聖也 加藤 諒
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌データベース(TOD) (ISSN:18827799)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.73-89, 2013-06-28

携帯端末の普及にともない,ユーザの状況に応じて様々な情報をリアルタイムに提供するサービスに注目が集まっている.そのため,GPSから取得した位置情報や,マイクロブログの投稿内容からユーザの行動を推定する研究が行われている.著者らは,これらに加えて,新たにユーザの習慣的な行動に着目した推定手法について検討を行った.本研究では,マイクロブログにおけるユーザの投稿内容と投稿数の変化から行動のパターンを抽出し,指定した時間帯における習慣的な行動を推定する手法を提案する.この手法により,マイクロブログの投稿内容には行動に関する記述がない場合でも,指定した時間帯におけるユーザの行動を推定できる.実証実験では,投稿内容のみを用いた手法と習慣行動もあわせて考慮する本手法とを比較し,提案手法の有用性について検証した.Services to provide variety of information in real time with reference to users' situations are receiving attention, as portable terminals have become widespread. Accordingly, some studies are being made to estimate the users' activities from their location information obtained by GPS or from the contents of their microblog posts. In addition to these, the author and his colleagues examined a new estimation approach focused on the habitual behavior of users. The present study proposes an estimation method of users' habitual behavior within designated periods of time by extracting behavioral patterns from the changes in contents and numbers of their posts in microblogs. This method enables estimation of users' behavior within designated time periods without any behavioral description provided in their microblog posts. Our demonstration experiments compare a method of merely using posted contents with this method that also considers habitual behavior as well, and verify its usability.
著者
田中 雄一郎
出版者
学校法人 聖マリアンナ医科大学医学会
雑誌
聖マリアンナ医科大学雑誌 (ISSN:03872289)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.195-203, 2023 (Released:2023-05-16)
参考文献数
37

ロボトミーはどのようなプロセスを経て世界に広まったのか。ロボトミーには当初から批判的な意見が付き纏っていた。受け入れに当たっては国によって大きな温度差があった。ロボトミー伝播の過程で勃発した第2次世界大戦という人類史上最大の戦乱が,精神疾患治療の歴史にも大きな影を落とした。モニスやフリーマンの古典的ロボトミーの術式は,世界に拡散する過程で様々な「改良」が加えられ変容を遂げる。
著者
三村 守 大坪 雄平 田中 秀磨 後藤 厚宏
雑誌
コンピュータセキュリティシンポジウム2017論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, no.2, 2017-10-16

「目grep」とは,バイナリファイルから人間の目で文字列を検索するGREPコマンドをエミュレートするスキルである.本稿では,畳み込みニューラルネットワークを用いて「目grep」を再現し,未知の悪性文書ファイルを検知するいくつかの手法を提案する.畳み込みニューラルネットワークは,画像認識の分野において革新的であり,従来のモデルよりも顕著な成果を挙げている.さらに,実際の悪性文書ファイルからデータセットを作成し,Precision,RecallおよびF値を算出して提案手法を評価した.その結果,悪性文書ファイルから「目grep」によってシェルコードを発見できる可能性があることを確認した.
著者
植田 広樹 田中 秀治 田中 翔大 匂坂 量 田久 浩志
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.46-51, 2018-02-28 (Released:2018-02-28)
参考文献数
15

背景:近年,早期に投与されたアドレナリンが脳機能予後を改善することが報告されている。しかし,119番通報から傷病者への接触までの時間(以下,Response time)と,傷病者へ接触してからアドレナリンを投与するまでの時間(以下,Adrenaline time)を関連付けた報告はない。目的:本研究の目的は,病院外心停止症例において救急救命士による早期アドレナリン投与がResponse timeに関係なく,脳機能予後の改善に影響を及ぼすか検討すること。方法:全国ウツタインデータ(2011〜2014年)を用いた後ろ向きコホート研究を実施した。対象は年齢8歳から110歳までの目撃ありの心停止(心静止,VF,無脈性VT,PEA)でアドレナリンの適応であった症例のうち,119番通報から救急救命士が傷病者への接触まで16分以内,かつ傷病者へ接触してから22分以内(99%タイル以内)にアドレナリンを投与した13,326症例を抽出した。対象をResponse timeが8分以内の群(n=6,956)と8分以上16分以内の群(n=6,370)の2群に分類し,さらにそれぞれの群をAdrenaline timeが10 分以内の群と,10分以上の群の2群に階層化した。Primary outcomeを1カ月後脳機能予後良好率,Secondary outcomeを心拍再開率としてロジスティック解析を実施した。結果:Response timeの2群に対して,Adrenaline time の早さにより1カ月後脳機能予後良好率に影響を与えるかオッズ比で比較してみたところ,Response timeが8分以内の群は2.12(1.54〜2.92)であった。8分以上16分以内の群は2.66(1.97〜3.59)であった。一方,心拍再開率はResponse time が8分以内の群で2.00(1.79〜2.25),8分以上16分以内の群で2.00(1.79〜2.25)であった。Response timeが8分以内の群も8分以上16分以内の群も,Adrenaline timeが10分以内の群の方が10分以上の群と比較し1カ月後脳機能予後良好率,心拍再開率ともに有意に高かった。考察:病院外心停止症例においてアドレナリンは,Response timeが8分以上かかったとしても,16分以内であれば,救急救命士が傷病者へ接触後できる限り早期に投与すれば1カ月後脳機能予後良好率を改善し得ると考える。結語:今後,救急救命士は傷病者への接触から10分以内の早期にアドレナリンを投与するための工夫を行うとともに,地域のプロトコールを見直すなど,早期にアドレナリンを投与できるための努力が必要である。
著者
姜 静愛 田中 恒彦 八木 千裕 堀井 新
出版者
一般社団法人 日本めまい平衡医学会
雑誌
Equilibrium Research (ISSN:03855716)
巻号頁・発行日
vol.82, no.1, pp.16-25, 2023-02-28 (Released:2023-04-11)
参考文献数
17
被引用文献数
2

We report two patients with Persistent Postural- Perceptual Dizziness (PPPD) who were successfully treated by Cognitive Behavioral Therapy (CBT) after initially showing limited responses to vestibular rehabilitation and pharmacotherapy. The vestibular symptoms and psychiatric status were evaluated by the Dizziness Handicap Inventory (DHI) and Hospital Anxiety and Depression Scale (HADS), respectively, before and after six sessions of biweekly CBT intervention. The difficulties and abilities in handling activities of daily living as assessed by medical interviews improved in both patients, suggesting the effectiveness of CBT for PPPD. However, the results of assessment by the DHI/HADS differed between the two patients. Patient 1 showed improvement in the score on the DHI, but not in that on the HADS, whereas Patient 2 showed improvement in the score on the HADS, but not on that in the DHI. Given that both the patients reported improvements in the difficulties and abilities in handling the activities of daily living, we consider that the different results of assessment by the DHI may suggest the need for use of more appropriate measures to evaluate the quality of life after CBT than the DHI. These results might also suggest that CBT may not always exert equal effects on the psychiatric status and vestibular symptom status.
著者
小田中 悠 吉川 侑輝
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.315-330, 2018 (Released:2019-09-28)
参考文献数
30

本稿では,日常的な相互行為における期待の暗黙の調整メカニズムを,ゲーム理論を軸とした数理モデルによって説明することを試みる.その際,Goffmanが「ゲームの面白さ」論文で提示した,「変形ルール」というアイデアを精緻化することを通して,先行研究とは異なり,次の二点を考慮した上でモデル構築を行った.すなわち,人々によるゲーム状況への意味付与のダイナミクスを捉えうること,及び,経験的な検証可能性を考慮した上で,Goffmanのアイデアをフォーマルに記述することを目指した.そして,カラオケ・ボックスにおける次回歌い手の決定場面を分析することによって,本稿の視座が上述した二点の他にも,たとえば,チキンゲームのような,調整ゲームとは異なる均衡選択場面についても見通しをよくするものであることが示唆された.最後に,本稿のモデルが,公共空間における人々の相互行為を支えるルールの探求について,人々に参照されている「望ましさ」の基準(自らの利益よりも他者や集団の利益を優先するための基準)を捉えられるという点で有用なものであることが示唆された.
著者
田中 愛子 伊藤 賀敏 鶴岡 歩 波多野 麻衣 吉永 雄一 重光 胤明 澤野 宏隆 一柳 裕司 西野 正人 林 靖之 甲斐 達朗
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.88-92, 2013-01-15 (Released:2014-09-12)
参考文献数
9

近年,心臓震盪は子どもが突然死する原因の1つとして徐々に認識されてきた.輿水らの報告では,心臓震盪は胸郭のコンプライアンスが大きい若年者に多く,Maronらの報告や国内例ともに18歳以下に多くみられる.当施設では最近3年間で3例の心臓震盪を経験した.症例1:41歳,男性.日本拳法練習中に胸部打撲を受け,心肺停止となった.初期波形は心室細動(ventricular fibrillation;VF)であり,電気的除細動を含む蘇生処置を施行された.心肺停止17分後に心拍再開し,当施設に救急搬送された.搬送後も意識障害が遷延したため,脳低温療法を施行し,社会復帰を果たした.症例2:18歳,男性.フットサルの練習中,ボールを前胸部でトラップした際に倒れ,心肺停止となった.初期波形はVFであり,電気的除細動を含む蘇生処置された.心肺停止6分後に心拍再開し,社会復帰した.症例3:27歳,男性.柔道の試合中,相手ともつれ合い倒れて,心肺停止となった.初期波形はVFであり,電気的除細動を含む蘇生処置にて,心肺停止8分後に心拍再開し,社会復帰した.院外心肺停止のうち,心室細動に対しては,早期の電気的除細動が良好な神経学的転帰と関連しているといわれている.上記3症例からも,特にスポーツを行う場には自動体外式除細動器(automated external defibrillator;AED)の普及が急務と考えられる.