著者
田中 智彦 小嶋 博巳
出版者
聖徳学園岐阜教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

本研究は、六十六部廻国行者の実態を解明するため、六十六部廻国供養塔資料を収集し、そのデータベースを作成するための基礎研究である。調査対象地域として兵庫県・岡山県を選択し、収集した資料の総数は合計539例に及んだ。これらの資料は様々な情報を含み、そのうち建立年・所在地・立地・像容・銘文などがデータベースに盛り込む情報として必要だと考えた。廻国供養塔のデータベース作成に関しては、当初市販のデータベースソフトの利用を想定し、この方針に沿ってデータベースを試作した。しかし、データベースソフトなど同一の環境がない場合、田中・小嶋両者の間でもデータ交換に支障が生じる結果となった。そのため急遽、市販のソフトの利用を放棄し、作成およびその利用が容易であるとの見地から、CSV形式のテキストファイルでのデータベース作成を目指した。完成したデータベースを試験的に利用した結果、廻国供養塔造立年代・造立目的・種子の種類とその出現件数などを統計的に分析することが可能となった。さらに資料の銘文のうち、願主と助力者に関しては、特定の人物が複数の廻国供養塔造立に関与している事例が14例みられ、しかも彼らの中には遠方の者も含むことから、廻国供養を補佐する情報ネットワーク、さらには組織さえあったのではないかと推測できた。このようにして全国的に廻国供養塔資料のデータベース化ができれば、六部の活動もかなりの範囲で解明できるものと思われた。
著者
田中 晃代
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.482-489, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
10

兵庫県の特別指定区域制度を活用している13自治体の区域指定の状況と開発許可や建築許可の実態から,市街化調整区域における土地利用規制緩和にともなう区域指定制度の評価について明らかにした。その結果,1)特別指定区域制度ができる以前は,市街化調整区域内の土地の所有者のみ住宅を建築できるとされていたが,制度ができてから,区域内への転入者が増加した,2)特別指定区域制度は,地縁者の住宅区域や新規居住者の住宅区域などUターンのみならず,IJターンも視野に入れた幅広いメニューの制度であるといえるが,実際の建築許可の件数は,圧倒的に「地縁者の住宅区域」が多く,「新規居住者の住宅区域」の建築許可件数はきわめて少ない,3)立地適正化計画を策定することによって,市街化調整区域に居住するための環境改善の必要性が再認識されたといえる,4)地縁者の住宅区域の建築許可件数は増加したといえるが,「区画形質の変更」や「田畑の宅地化」など開発許可の件数は限られており,大きな農村集落景観の変化には至っていない,などがわかった。
著者
田中 智朗 阿部 大輔
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
日本都市計画学会関西支部研究発表会講演概要集 (ISSN:1348592X)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.29-32, 2021 (Released:2021-07-24)
参考文献数
8

本研究では、コミュニティ型暫定利用を対象に、空地活用の実態を把握した。 以上から、①事業の目的、用途、面積、期間は、運営形態によって傾向が異なること、②暫定利用終了後は対象地 や運営主体の変更が生じるなど新たな展開の契機となる可能性があること③暫定利用を通して場を共有することに よって形成されたコミュニティが、利用終了後も継続的なまちづくり活動として展開されている可能性があること、 が明らかとなった。コミュニティ型暫定利用は終了を前提とした事業であり、いずれ人々の拠点としての場は消滅するが、地域のコ ミュニティ形成に及ぼした影響には持続性を持つ可能性があると考えられる。
著者
田中 昭二 JefferyChiYinNg 中尾 恵子 岩舘 祐一
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.41-45, 2000
参考文献数
6

本稿では, 著者等が開発した写真を名画の構図を利用して自動撮影するロボット, Cyber Photographerに関して述べる.Cyber Photographerは, 装備したビデオカメラを360°回転させ, 回転中のビデオ映像から周囲画像を作成し, 作成した周囲画像から人間が注目しそうな領域を抽出する.そして, 抽出された領域をバランス良く画かくに納めるための最適な構図をDBから取得し, 抽出領域を周囲画像から切り取ることにより写真を作成する.Cyber Photographerには, 名画約200点以上の構図情報を格納したDBが備えられており, 上記抽出領域の形と名画の被写体の形とのマッチングを行い, 最も類似したものを上記最適な構図情報を持つ名画とする.本ロボットの有効性を評価するために行った実験では, ロボットは一般の素人よりもバランスの良い写真を撮影することができた.
著者
丹野 一輝 田中 健一
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.467-474, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
19

本稿では,ネットワーク上の移動者が経路途中で施設に立ち寄る行動に着目し,集客数が最大になるように施設を配置する問題を提案する.施設における利用者数が増加することによる混雑コストを考慮する点がモデルの大きな特徴である.提案モデルでは,移動者が (1)施設までの移動時間と施設の利用時間の和が最小となる施設を利用する,(2)総所要時間がすべての施設において一定以上となる場合にはどの施設も利用しない,と仮定する.提案モデルは,ある所与の施設配置における施設の総利用者数の算出に最適化問題を解く必要が生じるため,最適化問題を内包した最適化問題 (二段階最適化問題) として定式化される.そのため,局所最適解を求めるヒューリスティックな解法も併せて提案する.提案モデルを実際の道路網に適用したところ,施設で発生する混雑の度合いにより施設配置が大きく変化する様子が確認できた.
著者
田中 良太 吉田 治 松田 実 福島 久喜 花岡 建夫 呉屋 朝幸 関 恒明
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.1222-1225, 1997-06-25 (Released:2009-02-10)
参考文献数
15

注入法による豊胸術後乳癌の1例を経験したので報告する.症例は52歳女性, 23年前に注入法による両側豊胸術を受けた.左乳房および左腋窩部腫瘤を触知し増大してきたため当院外来を受診した.造影MRIにて左乳房に腫瘤像が描出され,腫瘤辺縁に輪状濃染像が認められたため乳癌を疑った.腫瘤摘出生検を施行し病理学的に浸潤癌との診断が得られたので定型的乳房切除術を施行した.組織学的には充実腺管癌,鎖骨下リンパ節転移陽性と診断された. 造影MRIが注入異物と乳癌との識別に有用であった.
著者
鄂 剛 吉川 信一 金丸 文一 田中 功
出版者
一般社団法人 粉体粉末冶金協会
雑誌
粉体および粉末冶金 (ISSN:05328799)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.215-218, 1991

High pressure synthesis was performed on 123 and 124 phases in Y-Ba-Cu-O system under a pressure of 3GPa at 950°C. Lattice parameters and superconducting properties changed with an annealing duration under pressure in 123 phase with oxygen content X=7. The 123 product obtained from raw materials with X=8.5 had a tetragonal lattice with a=c/3=3.87A. Its real oxygen content could be estimated to be 7.3 from the lattice parameter, Raman spectroscopy, and also Rietveld analysis. The product seemed to be semiconductor containing a small amount of superconductor. 124 phase was obtained by a reaction at 950°C with its successive annealing at 700°C under 3GPa adjusting oxygen content of raw material to the exact composition of the product.
著者
岩谷松平, 田中嘉藤治 編
出版者
岩谷松平[ほか]
巻号頁・発行日
vol.第7師団之部, 1906
著者
松島 健一 田中 忠次 毛利 栄征
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.254, pp.151-160,a2, 2008

地盤内に設置された矢板を引抜く際, 地盤に生じた空隙が応力の再配分を引き起こし, 地中構造物に大きな影響を及ぼす. 本研究では, 矢板引抜きに伴う地盤と地中構造物の相互作用メカニズムを解明するため, 矢板引抜き現象を考慮した数値解析モデルを開発した. 地盤中の応力解放は要素掘削手法を適用し, 空隙両側の不連続な地盤面の接触は, Belytshko et al.(1991) が提案したピンボールアルゴリズムを採用した. 本手法は, パイプラインを対象とした矢板引抜き模型実験における埋設管のたわみや地表面沈下などの挙動を定性的に予測できることが分かった. また, 地盤中のひずみや土圧分布の変化などから埋設管のたわみの発生メカニズムを明らかにすることができた.
著者
森 麟 杉本 隆男 田代 郁夫 田中 禎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1992, no.454, pp.113-122, 1992

矢板壁の引き抜きに伴う地表面沈下の発生機構を確かめ, 最大沈下量と沈下範囲の推定法を提案する目的で, 軟らかい粘性土地盤を想定した模型実験を行った. 矢板壁の長さ, 厚さ, 設置位置, 枚数を変えて引き抜き試験を行い, ゼロ伸びひずみ曲線によるすべり面の検討から, 空隙の閉塞機構を検討した. そして, 問題の多い沖積粘性土地盤での小規模掘削の場合, 地表面の最大沈下量と沈下範囲は, 空隙の閉塞率, 初期空隙厚さ, 安定数から推定できることを示した.
著者
吉永 直胤 磧本 力 園田 健乙 田中 二秀 橋口 泰豊 斎藤 重明 大石 功
出版者
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
雑誌
日本輸血学会雑誌 (ISSN:05461448)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.156-160, 1958 (Released:2010-03-12)
参考文献数
18

The authors made statistical observations on the incidence of post-transfusion jaundice during the period from January 1, 1954 to October 30, 1957 in 365 patients answering their questionnaires.1). The frequency of post-transfusion jaundice was 4.1per cent, the incubation period being 30-120 days (mean value: 65 days) and the duration of the disease 5-60 days (mean value: 39 days).2). No relationship was found between the morbidity and blood type or sex. The highest incidence was in individuals below 20 years of age, followed by those between 30 and 50 years.3). Both fresh and preserved bloods produced the disease and the difference between the two was difficult to estimate, since the use of fresh blood was made only in a few cases.4). The incidence seemed to be higher in transfusions of more than 4, 000cc of blood than in those of lesser amounts.5). The disease occurred more frequently in patients with tuberculosis who received large quantities of blood both before and after the operation, and less in those with gastric cancer.6). The prognosis was generally good and there were no fatalities.
著者
田中 愼 福田 勝洋 後藤 信男 松沢 昭雄
出版者
Japanese Association for Laboratory Animal Science
雑誌
Experimental Animals (ISSN:00075124)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.251-255, 1993

1年齢以上のハタネズミの副腎皮質を組織学的に観察し, この種の特徴と性差を検索した。ハタネズミでは皮質全体が雌に比べて雄でより薄く, マウス・ラットと同様であるのに対して, シリアンハムスター・マストミスとは逆であった。雄では束状層が厚く, 網状層が極めて薄く, マウス・ラット・シリアンハムスター・スナネズミと類似しているがマストミスとは逆であった。雌では束状層と網状層が各々外層と内層に区分できた。雌では網状層が厚く残り, 雄と際立った差を示し, マウス・シリアンハムスター・スナネズミ・マストミスと異なっていた。光顕レベルでこの種に特異な付加層はみられなかったが, 雌の網状層内層はこれにあたる可能性が示唆された。ハタネズミの副腎皮質はその食性の特異さからも更に検索を進めるのに値する対象と考えられた。
著者
松森 邦昭 別府 俊男 中山 賢司 斉藤 元良 青木 伸夫 田中 柳水 平 孝臣
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.33-37, 1986-01-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
10

脳神経外科治療過程で合併症としての糖尿病性昏睡を経験した. 2例は高浸透圧性非ケトン性糖尿病性昏睡, 1例は高浸透圧性非ケトン性昏睡と糖尿病性ケトアシドーシスの移行形, 1例は糖尿病性ケトアシドーシスであつた. この病態の相違は主に患者側が持つ耐糖能の異常の程度により生じたと考えられた. 脳神経外科治療上の糖尿病性昏睡促進因子として, 1) 原疾患, 及び手術侵襲によるストレス, 2) ステロイド剤, 減圧剤, 3) 経管栄養などがあげられる. これらの薬剤, 治療は脳神経外科治療上不可欠のものであり, 意識障害患者に重複して行われる. このため糖尿病性昏睡の発見が遅れ, 問題となる. この対策として, 脳神経外科の治療上, 糖尿病性昏睡の発生を念頭に置き, 少しでも疑いがあれば頻回に電解質, 血糖値, 血漿浸透圧, 酸塩基平衡を測定すべきである.
著者
原田 直 今田 忍 井上 伸吾 辻野 哲弘 田中 浩二 杉山 勝 石川 武憲
出版者
広島大学歯学会
雑誌
広島大学歯学雑誌 (ISSN:00467472)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.111-114, 1998-06-01
参考文献数
13
被引用文献数
1

本論文の要旨は平成5年10月の第38回日本口腔外科学会総会において発表した。
著者
早川 裕彦 大脇 理智 石川 琢也 南澤 孝太 田中 由浩 駒﨑 掲 鎌本 優 渡邊 淳司
出版者
特定非営利活動法人 日本バーチャルリアリティ学会
雑誌
日本バーチャルリアリティ学会論文誌 (ISSN:1344011X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.412-421, 2020-12-25 (Released:2020-12-25)
参考文献数
18

This paper presents “Public Booth for Vibrotactile Communication”, an interactive audio-visual-haptic media that allows us to feel the vibrations of the other people who share the same desk and face each other. The purpose of this research is to observe what kind of behavior people take when a higher presence is presented by tactile sensation in telecommunication. As the interface, we designed a pair of frames consisting of a curved screen to show the upper body and the hand of a life-size person, a haptic system to share tactile sensation, and a sound system. By installing the frames in multiple remote places and transmitting audio-visual-tactile sensation interactively, we observed what kind of behavior faced people do and what kind of communication was created between them. As a result, various haptic plays were created. Since the tendency in the development of haptic communication observed in the developmental phase of infants was also observed through this approach, it was clarified that the heightened presence provided by haptics for telecommunication contributes to the promotion of friendship.
著者
田中 伸子 岡村 浩
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.13-19, 1983-01-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
35

以上の実験結果より, 食事がα-アミラーゼ活性の変動因子であることは明らかである.また, その構成要因の一つである咀嚼という口腔内の直接的機械的刺激がごく短時間に終了するという事実より考えると, α-アミラーゼ活性の変動は, 食物摂取による直接的な, あるいは生体内における代謝の機序を含めた間接的刺激が作用していると推察される.唾液中α-アミラーゼ活性の変動要因につき検討を加えた結果をまとめると次のようになった.1) 唾液中α-アミラーゼ活性の変動は, 生活のパターンと密接な関連性をもっており, 食事は大きな変動因子であることが認められた.2) 咀嚼という直接的機械的刺激を口腔内に与えると, ただちに唾液量, pHおよびα-アミラーゼ活性が増加する.また, 咀嚼終了とともに, 咀嚼時間の長短に関係なく, 唾液量, pHおよびα-アミラーゼ活性は減少し, ほとんど咀嚼開始前のレベルにもどり以後大きな変動は示さない.したがって, たんなる咀嚼という機械的刺激は, α-アミラーゼ活性に一過性の変動を与える因子であることが認められた.3) 唾液中α-アミラーゼ活性は個人差が大きく, 332名の女子大生の起床時における活性は271mg/ml salivaであったと同時に行ったアンケート調査より, 食物を口に入れてから嚥下するまでの平均咀嚼回数の多い者のほうが, 少ない者よりα-アミラーゼ活性が高いこと, 澱粉性食品を好む者のほうが, 普通もしくは好まない者より高いことに有意差が認められた.この結果より, 食生活における個人の習慣が唾液中α-アミラーゼ活性と関連があるものと考えられた.
著者
三宅 捷太 田中 文雅 松井 潔 宮川 田鶴子 山下 純正 山田 美智子 岩本 弘子
出版者
THE JAPANESE SOCIETY OF CHILD NEUROLOGY
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.329-335, 1991

神奈川県立こども医療センター神経内科を受診し昭和45年5月~平成元年3月までに死亡した症例をてんかんに焦点をあてて検討した.<BR>1. 院内死亡総数2,244例中神経内科患者の死亡数は237例 (11%) で, その74%が重症心身障害児であった.<BR>2. 対象237例のうちてんかんをもつ例は128例 (54%) で, 死因は肺炎, 慢性呼吸不全, 誤嚥の三者が60%を占め, 直接死因が痙攣であったものは14%であった. また死亡場所は38%が自宅であった.<BR>3. 点頭てんかんを既往にもつ146例中16例 (11%) が死亡し周生期障害による症例が多く, その死因の約半数が呼吸障害であった.<BR>4. 乳児重症ミオクロニーてんかん8例中4例 (50%) が死亡し, 死因は3例が痙攣重積症で, 死亡場所は2例が自宅であった. 死亡例と生存例とを比較した結果, 臨床的に予後を推測させる明瞭な因子は認められなかった.<BR>5. てんかんが主たる障害で, その他の障害が軽微であった16例について分析した結果, 有熱性痙攣の既往と部分てんかんが多く認められた. 16例の死因は痙攣重積症10例, 短時間の発作 (手術後と学校の給食後) による急性死2例, 発作時の転倒による硬膜下血腫1例, 風呂における溺死1例, 病死 (肺炎) 1例, 詳細不明1例であった. 16例中7例の死亡場所が白宅であった. 自宅での死亡が多いことから, 発作への対処と呼吸管理の指導, 誤嚥などの事故防止が死亡の予防に重要と考えられた.
著者
長谷川 正哉 金井 秀作 島谷 康司 大田尾 浩 小野 武也 沖 貞明 大塚 彰 田中 聡
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48101851, 2013

【はじめに,目的】転倒予防や足部障害の発生予防,パフォーマンスの維持・向上には適切な靴選びが重要である.一般的な靴選びは,まず自覚する足長や靴のサイズに基づき靴を選び,着用感により最終的な判断を行うものと考える.しかし,加齢による足部形態の変化や過去の靴着用経験などから,着用者が自身の足長を正確に把握していない可能性が推測される.また,靴の選択基準はサイズや着用感以外にも,デザイン,着脱のしやすさ,変形や疼痛の有無など様々であることから,自覚している靴サイズと実際の着用サイズが異なる可能性が考えられる.そこで,本研究では地域在住の中高齢者を対象とし,自覚する靴サイズおよび実際に着用している靴サイズ,足長や足幅の実測値から抽出したJIS規格による靴の適正サイズを調査し,比較検討することを目的とした.【方法】独歩可能な中高齢者68名(男性20名,女性48名,平均年齢64.0±6.5歳)を対象とした.調査項目は左右の足長および足幅の実測値,足幅/足長の比率,実測値を基に抽出したJIS規格による左右別の適正サイズ,2Eや3Eなどで表わされる適正ウィズ,自覚する靴サイズ(以下,自覚サイズ),および現在着用中の靴の表示サイズ(以下,着用サイズ)とした.なお,各項目間の比較にはフリードマン検定およびScheffe法による多重比較を行い,統計学的有意水準は5%とした.また,自覚サイズと着用サイズの一致率,適正サイズと着用サイズの一致率,および適正サイズおよび適正ウィズの左右の一致率を求めた.【倫理的配慮、説明と同意】実験前に書面と口頭による実験概要の説明を行い,同意と署名を得た後に実験を実施した.なお,本研究は全てヘルシンキ宣言に基づいて実施した.【結果】左右足型の実測値は右足足長22.6cm (21.8-23.85),左足足長22.7cm (21.75-23.7),右足足幅9.5cm (9.0-9.9),左足足幅9.3cm (8.9-9.9)であり,足幅/足長比率は右足41.5%(39.8 -42.5),左足41.0%(39.5-42.6)であった.また, JIS規格により抽出した右足適正サイズは22.5cm (22.0-24.0),左足適正サイズ22.5cm (21.5-23.5)であったのに対し,自覚サイズは23.5cm(22.5-24.5),着用サイズは23.5cm (23.0-25.0)となった(結果は全て中央値および四分位範囲).着用サイズおよび自覚サイズと比較し左右適正サイズ(p<0.001),左右足長実測値は(p<0.001)は有意に小さい結果となった.次に各項目の一致率について,まず自覚サイズと着用サイズの一致率は37%であり,被験者の63%は自身で認識する足サイズとは異なる靴サイズを選択し着用していた.また同様に,右足適正サイズと着用サイズの一致率は7%,左足適正サイズと着用サイズの一致率は4%と極めて低い結果となった.なお,適正サイズの左右の一致率は52%であり,これに適正ウィズの結果をふまえた場合,左右の靴の一致率は4%に低下した.【考察】中高齢者が実際に着用している靴サイズおよび自覚する足のサイズは,JIS規格に基づく適正サイズや足長の実測値より大きいことが確認された.また,自覚サイズと着用サイズ,適正サイズと着用サイズの一致率が極めて低く,中高齢者では自身の足の大きさを自覚していないだけではなく,自覚する足サイズに基づく靴選びをしていないものと考えられた.中高齢者の靴の選択基準には装着感や着脱の容易さ,デザインなど複数の要因が関与することが過去に報告されており,本研究でもこれらが影響した可能性が示唆される.次に,実測値から抽出した左右の靴適正サイズの一致率が極めて低いことが確認された.これは,左右同一サイズの靴を購入した場合,いずれか一方の靴が足と適合しないことを意味している.先行研究により靴の固定性の低下が動作時の不安定性や靴内での足のすべりを増加させ運動パフォーマンスの低下を引き起こすことが報告されており,靴の不適合が中高齢者の転倒リスクを増加させる可能性が示唆された。これらの靴の不適合に対し,靴内部での補正や靴紐などによるウィズの調整,片足づつ販売する靴を選択するなどの対応が必要になるものと考える.また,本研究の被験者の多くが自身の足サイズについて適切に認識しておらず,正しい評価や知識に基づく靴選びが重要と考える.【理学療法学研究としての意義】適切な靴の選択は転倒予防や障害発生予防,パフォーマンスの維持・向上を考える際に重要である.また,インソールの処方時や内部障害者のフットケアなどの場面では適切な靴の着用が原則となる.そのため理学療法士は対象者の足型と靴のフィッティングについて理解を深め,適切な靴の着用について啓発していく必要がある.