著者
渡邊 裕子 赤星 千絵 関戸 晴子 田中 幸生 田中 和子 下条 直樹
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.98-104, 2012-04-25 (Released:2012-05-19)
参考文献数
21
被引用文献数
2 3

全卵・卵白・卵黄を用いた菓子・肉団子・パスタ・プリンモデル食品を作製し,調理による卵タンパク質の検出値の変化を,抽出液にトリス塩酸緩衝液を用いたELISAキットにより測定した.菓子,肉団子では揚調理が最も低下し,肉団子はレトルト処理によりオボアルブミン(OVA)は検出限界以下(<1 μg/g)となり,オボムコイド(OVM)も最も低下した.ゆえに,調理温度とともに均一な加熱処理が加わる調理方法が卵タンパク質の検出に影響した.また,卵黄使用の肉団子レトルト処理とパスタでは,いずれの卵タンパク質も6 μg/g以下となり,さらに患者血清中のIgE抗体によるウエスタンブロット法では,OVA,OVMは検出されなかった.一方,抽出液に可溶化剤を用いたELISAキットでは,前述のキットに比べ定量値が上がり,加熱処理したタンパク質が検出された.
著者
松本 知大 渡邊 明子 髙木 寛 長谷川 靖司 中田 悟 田中 宏幸
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.9-14, 2018-03-31 (Released:2018-04-18)
参考文献数
11

我が国の関節疾患患者数は増加の一途を辿っており,健康寿命を縮め,介護が必要となる疾患であることから,有効な予防,改善策が望まれている.本研究では,関節軟骨成分の代謝に着目して,関節疾患に有効な食品素材の探索を行った.その結果,ノブドウエキスが炎症性サイトカインによるNFκBシグナルの亢進を抑制することで,ヒアルロン酸の代謝異常を改善することを見出した.また具体的な効果として,コラーゲン誘発関節炎マウスに対する関節炎発症抑制効果も示した.ヒト有効性試験においては,ノブドウエキス含有飲料を3ヶ月間摂取することで,生活活動時の膝関節の違和感,痛み,屈曲角度の改善がみられた.以上の結果より,ノブドウエキスには関節軟骨成分の代謝異常を改善する効果があり,ノブドウエキス含有飲料の摂取により関節疾患を予防,改善する効果が期待できる.
著者
Mostafizur RAHMAN 仲座 栄三 稲垣 賢人 田中 聡 Carolyn SCHAAB
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.62-70, 2016 (Released:2016-10-20)
参考文献数
13
被引用文献数
2

宮城県の貞山運河が東日本大震災の際の巨大津波に対して幾分かの津波減勢作用を見せたことは,当時の被災時のビデオ解析や災害後の被害調査結果などから明らかにされている.いま貞山運河はその地域の復興のシンボルとして,その保全や新たな防災活用が注目されている.本研究は,水理実験により,運河の持つ津波防災効果を解明することを目的としている.運河の津波減勢作用は,直立護岸の場合と比較され,浸水深の低減,津波到達時間の遅延,流速の減勢,比エネルギーの低減に関して,護岸の持つ減勢作用と同程度かそれ以上の効果を持つことが示されている.MPS法の妥当性を実験値との比較で示し,その応用として運河の両岸に盛土部を設置した場合の効果が議論されている.
著者
春名 匡史 板野 哲也 立花 孝 田中 洋 信原 克哉
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2015, 2016

【はじめに,目的】Wind-up期である,踏み出し脚の膝が最も高く挙がった時点(以下KHP:Knee Highest Position)における体幹アライメントや身体重心位置が,early cocking期である踏み出し脚接地時(以下FP:Foot Plant)に影響を及ぼすといった報告が散見される。しかし,この点を定量的に検討した報告はほとんど見当たらない。そこで今回,KHPにおける体幹アライメント・身体重心位置が,FPの体幹アライメントに実際に影響を与えるか否かを定量的に検討した為報告する。【方法】対象は,踏み出し脚の膝を軸脚側の上前腸骨棘より挙上して投球を行った様々な競技レベルの野球選手55名とした(年齢9-30歳)。左投手は右投手に変換して分析を行った(以下左右は右投手を想定して記載する)。KHPにおける上半身重心位置,骨盤左回旋・後傾角度,体幹伸展・右側屈角度の5つの変数群と,FPの骨盤左回旋角度,体幹伸展・右側屈角度の3つの変数群に対し,正準相関分析を行った。なお,重心位置と体幹・骨盤角度では単位が異なる為,変数は標準化を行った。上半身重心位置は合成重心法により算出した点の,水平面上における軸脚足部長軸方向の位置を,つま先方向を正として求め,軸脚足部長軸の長さで規格化した。骨盤運動はカメラ座標系に対する骨盤座標系の回転を,体幹運動は骨盤座標系に対する胸部座標系の回転をそれぞれオイラー角で表現した。有意水準は5%とした。【結果】正準相関分析の結果,第1正準変量では,正準相関係数がr=0.656(p=0.002)で,正準負荷量は,KHPの変数群では上半身重心=-0.017,骨盤左回旋=0.518,骨盤後傾=-0.915,体幹伸展=0.963,体幹右側屈=0.007であり,FPの変数群では骨盤左回旋=0.072,体幹伸展=0.914,体幹右側屈=-0.268であった。KHPの体幹屈曲伸展,骨盤前後傾,骨盤回旋,上半身重心,体幹側屈の順に,FPにおける体幹伸展への影響度が高かった。第2正準変量以下は正準相関係数が有意でなかった。【結論】本検討の結果より,KHPにおいて体幹がより伸展位,骨盤がより前傾位であると,FPの体幹伸展が大きくなると考えられた。しかし,有意な正準相関係数が認められ,正準負荷量が高値であったものは,FPの変数群では体幹伸展のみであった。FPでの不良動作として頻繁に述べられる,「体の開き」を表すと考えられるFP骨盤左回旋等は,KHPによる有意な影響はみられなかった。つまり,KHPによるFPへの影響は,定量的には限定的であった。この為,実際の臨床において,KHPの影響によりFPの不良な体幹アライメントが生じていると考える時は,慎重な検討が必要である。
著者
田中 利男
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第45回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.EL3-1, 2018 (Released:2018-08-10)

動物愛護の観点からなるべく実験動物を使用しない方法に置き換え(Replacement)、使用動物数を削減し(Reduction)、動物に与える苦痛を少なくする(Refinement)という3R の原則が求められています。動物実験代替法としてのin vitro 試験は動物愛護に寄与し、多数の被験物質をハイスループットに評価できる、感度が高い、再現性が良いといった利点が認められます。しかしながらin vitro試験法の限界について多くの研究がなされ、in vivo動物実験が不可欠な分野が多くあることが明らかとなりました。この課題に対応するモデル動物としてのゼブラフィッシュが、脊椎動物として哺乳類やヒトとのゲノム相同性が高いこと、多産性や飼育管理が容易であり、体外受精であり臓器形成が驚くべき速さで完成することなど多くの優越性が認められ、まずはじめに発生毒性試験に使用されると思われます。そこで、世界的に最も頻用されているABラインの受精後自然歴を、12,609個の受精卵で解析すると6dpf(受精後日)までに2544個の受精卵が死亡し、956個体に形態異常が認められ、このまま発生毒性試験に使用すると精度が低いことが明らかとなりました。しかしながら、3-5hpf(受精後時間)における画像診断により5-7dpfにおける、正常、異常、死亡を予測できることを見出し、化合物投与の6hpfまでに選択することが、可能となりました。これを基盤に世界に先駆けたゼブラフィッシュ受精卵品質管理プロトコルを確立しました。その後、多施設において、このゼブラフィッシュ受精卵品質管理プロトコルの有効性を検証しました。さらに、ゼブラフィッシュ受精卵のハイスループット共焦点タイムラプス法により、5-7dpfにおける形態異常の連続発生時系列解析を可能としたので、サリドマイド発生毒性研究に応用し、その成果を報告します。
著者
宮崎 康 田中 正巳 岡村 ゆか里 川越 千恵美
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.9, pp.757-761, 2003-09-30 (Released:2011-03-02)
参考文献数
39
被引用文献数
6

症例は85歳, 女性.2002年6月より口渇・嘔吐が出現, 7月に466mg/dlの高血糖が判明し入院となった.病歴と検査所見から1型糖尿病の急性発症と診断した.検索し得た限り, 本例の1型糖尿病発症年齢 (85歳) は本邦で3番目の高齢である.1997年以降の糖尿病学会誌収載地方会報告等から検索し得た後期高齢 (75歳以上) 発症1型糖尿病22例の検討から次の点が判明した.(1) 圧倒的に女性が多い.(2) 発症様式から急性発症型と緩徐発症型に分かれる.(3) 急性発症型の最高齢は88歳で本例は2番目の高齢である.緩徐発症型の最高齢は92歳である.(4) 抗GAD抗体は急性発症型では陰性ないし低抗体価, 緩徐発症型では高抗体価で, 他の自己免疫疾患併発例が多い.(5) 1型糖尿病発症と関連するとされるHLAのA24, DR4, DR9は両群に認められた.本例には, 最近小児発症1型糖尿病との関係が報告されたDPB1*0201遺伝子が認められたが, 高齢発症との関連は今後の検討課題である.
著者
長谷川 昭 海野 徳仁 高木 章雄 鈴木 貞臣 本谷 義信 亀谷 悟 田中 和夫 澤田 義博
出版者
公益社団法人 日本地震学会
雑誌
地震 第2輯 (ISSN:00371114)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.129-150, 1983-06-25 (Released:2010-03-11)
参考文献数
18
被引用文献数
13 13

Precise relocation of earthquakes occurring in Hokkaido and northern Honshu during the period from January, 1979 to October 1981 is made by using 35 stations of the microearthquake observation networks of Tohoku University, of Hokkaido University, of Hirosaki University and of Central Research Institute of Electric Power Industry. Obtained hypocenter distribution shows the double-planed structure of the deep seismic zone in the whole area of Hokkaido and northern Honshu including the junction between the northeastern Japan arc and the Kurile arc. At the junction the deep seismic zone is contorted but is still double-planed at least in the upper 150km depth range. Beneath the southern end of the Kurile arc (central and eastern Hokkaido) the upper seismic plane of the double seismic zone disappears at depths greater than about 120km, whereas the seismicity in the upper seismic plane is still active in this depth range beneath the northeastern Japan arc.Hypocenters on the deep seismic zone beneath Hokkaido, relocated in the present study, are systematically shifted to the SE or SSE direction in comparison with the locations by the Hokkaido University network. This systematic shift of hypocenters is found to be well explained by the existence of the subducted lithosphere with seismic wave velocities higher than the surrounding mantle.
著者
岩柳 智之 中村 文彦 田中 伸治 三浦 詩乃 有吉 亮
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.A_223-A_229, 2017

<p>2011 年 3 月11 日に発生した東北地方太平洋沖地震により、千葉県浦安市では液状化現象が発生し、交通障害や断水の被害が生じ、応急給水活動が行われた。本研究では浦安市での応急給水活動に着目し、最短経路探索を用いて水の運搬による身体的負担について評価し、また給水支援が不足した場合の備えを給水の待ち行列計算から推定した。その結果、前者について現況では全体として運搬時間 6 分以上の無理な負担が存在し、対策として耐震化した受水槽等の整備により運搬時間 10 分以上の過大な負担が大きく減少することが明らかになった。後者について 8000 人程度の断水人口を受け持つ応急給水拠点では給水車が不在となる時間や給水所開設時間内に水を受け取れない人が発生し、これを避けるには 1L/人・日の備蓄が必要であることが明らかになった。</p>
著者
山田 一隆 緒方 俊二 佐伯 泰愼 高野 正太 岩本 一亜 福永 光子 田中 正文 野口 忠昭 高野 正博
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.10, pp.513-520, 2016 (Released:2016-11-07)
参考文献数
20
被引用文献数
1

下部直腸・肛門管癌に対する括約筋間直腸切除術(ISR)に関しては,術後排便機能障害として便失禁が比較的高率であることが課題となっている.そこで,当施設において2001~2013年に下部直腸・肛門管癌に対してISR, partial ESRを施行した治癒切除178例を対象に,術後1年の排便機能について解析した.術後1年における排便機能に関しては,continent patients(Kirwan grade 1, 2)が64.9%であり,total ISR とpartial ESR症例では低い傾向であった.直腸肛門内圧検査と直腸肛門感覚検査を継時的(術前・術後3ヵ月・6ヵ月・1年)に施行し,肛門管最大静止圧,肛門管最大随意圧ならびに肛門管電流感覚閾値に術後3ヵ月に著明な悪化がみられ,その後の回復が比較的不良であった.これらの解析を基に,ISR術後の排便機能障害に対する対応について検討した.
著者
永田 基樹 藤原 直哉 西川 功 田中 剛平 鈴木 秀幸 合原 一幸
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.295-299, 2013-05-01 (Released:2013-09-06)
参考文献数
16

東日本大震災以降,電力の安定供給は重要な課題として注目を集めている.安定性の理解のためには数理モデルの解析が必要であるが,詳細なモデルは数理的な解析が容易ではないため,現象の本質を抽出した簡潔なモデルが必要である.本研究では,東日本の送電網の接続関係を用いて,周波数同期のダイナミクスを位相モデルによって記述した.本モデルにおいて,安定供給のためには同期した定常状態の実現が必要であるが,そのための結合強度の閾値を求めた.また,周波数同期に寄与している送電線を特定し,同期への寄与の大きさについて考察した.
著者
田中 益三
雑誌
日本文學誌要 (ISSN:02877872)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.78-89, 1987-12-25
著者
大久保 泰邦 秋田 藤夫 田中 明子
出版者
日本地熱学会
雑誌
日本地熱学会誌 (ISSN:03886735)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.15-29, 1998-01-25
参考文献数
25
被引用文献数
8
著者
谷藤 健 三好 智明 鈴木 千賀 田中 義則 加藤 淳 白井 滋久
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.74-82, 2009
被引用文献数
2

北海道内全域で栽培されたダイズのイソフラボン含量を調査したところ, 同一品種でも栽培地によって含量は変動し, 登熟期間の平均気温(以下, 登熟気温)との間に有意な負の相関が認められた. また, 同一栽培地での明らかな品種間差も確認され, 「ゆきぴりか」および「音更大袖」の含量が最も高かった. ゆきぴりかは, 各適応地帯において標準品種(トヨコマチ)比1.3~1.5倍の高含量を示す一方, 栽培地間の変動係数は年次間変動を含めても標準品種より低かった. また, ゆきぴりかの高イソフラボンは, 登熟後半におけるダイズイン類の蓄積が一般品種より顕著であることに起因しており, ダイズイン類のゲニスチン類に対する比率(D/DG率)も高まっていたが, 品種間および交雑後代系統間にイソフラボン含量とD/DG率の有意な相関は認められず, これらは, 独立した遺伝形質であると推察された. 一方, D/DG率は同一品種でも栽培地によって変動し, イソフラボン含量と同様に登熟気温と有意な負の相関が見られたことから, イソフラボン蓄積を促進する条件は, D/DG率の決定にも何らかの影響を及ぼしていると考えられた.
著者
田所 真樹 横山 博史 水野 雅隆 飯田 明由 若松 幹生 Phan Vinh Long 田中 博
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.84, no.863, pp.18-00199, 2018 (Released:2018-07-25)
参考文献数
19
被引用文献数
2

Aerodynamic noise generated around a step such as front pillars of automobiles, which is transmitted into the cabin through the window glass, can negatively affect the comfort of the passengers. For the reduction of this noise, it is necessary to clarify the acoustic source and process of the propagation of the acoustic waves from the step. To do this, direct aeroacoustic simulations were performed along with wind tunnel experiments for flows around a forward step in a turbulent boundary layer, where the freestream Mach number was 0.1 and the Reynolds number based on the incoming boundary layer thickness, δ, and the freestream velocity was 2.73×104. The computations were performed for the height of h/δ = 0.9 and 3.4, where the effects of the step height on the radiated sound were investigated. The radiated sound becomes more intense for the higher step of h/δ = 3.4 particularly in a low frequency range of St ≤ 1.5, where St is the non-dimensional frequency based on the step height and freestream velocity, due to the occurrence of the large-scale vortices in the separated flow. To elucidate the radiation of the acoustic waves, the pressure fluctuations were decomposed into non-radiating convective and radiating acoustic components by usage of two methods. One is utilizing wavenumber-frequency spectra and the other one is spatial Gaussian filtering for the fluctuations at each frequency, which is proposed in this paper. The results by the former method present that the level of convective components is larger than the acoustic components by 20 - 40 dB. Moreover, the radiating components by the proposed spatial filtering method show that the radiation occurs around the step edge and the reattachment point. It is indicated that the proposed method is effective for the investigation of the acoustic radiation for the pressure fluctuations composed of convective and acoustic components.
著者
田中 文夫
出版者
日本土壌微生物学会
雑誌
土と微生物 (ISSN:09122184)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.33-39, 1996
参考文献数
24
被引用文献数
1

ジャガイモそうか病は北海道内全域で発生が見られるが,特に網走・釧路・根室地方の澱粉原料栽培地域での被害が顕著である。道内に分布する病原菌はStreptomyces scabies, S. scabies subsp. achromogenesと新種のS. turgidiscabiesならびに未同定のStreptomyces sp.の4種類と同定された。これら4種の病原菌の地理的分布には明かな偏りがあり,前2者は道央,道南地方に,後2者は道東地方に局在する。病原菌の識別の方法として,特異抗体の利用によるELISA法,種特異的プライマーの利用によるPCR法の利用の可能性が示された。さらに,種特異性を有する寄生性アクチノファージの利用も検討中である。今後,これらの応用による,土壌中の病原菌の定量法の開発が望まれる。土壌環境制御による本病の防除の試みの一例として,土壌水分環境の制御および土壌酸度調整の効果を検討した。土壌水分に関しては,レインガン,リールマシンなどの圃場潅水装置による防除効果が今後,期待される。土壌酸度調整による防除では,フェロサンド(硫酸第1鉄),硫酸アルミニウム,各種高蛋白質資材の効果は高いが,今後は局所施用(作条施用)による,低コストで効率的な防除方法の開発が必要である。これらの資材の第一次的な作用機作は土壌pHの降下によるものと考えられるが,その作用性ならびに実用性についてはさらに検討を要する課題である。難防除土壌病害とされる本病の防除法として,抵抗性品種の利用は不可欠である。しかし,将来的な優占菌種の変動などを考慮すると,抵抗性品種の利用と土壌環境制御および生物的防除などを組み合わせた総合的な防除体系を確立する必要がある。
著者
田中 秀幸 永井 啓之亮 水谷 孝一
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.148-155, 2000-03-01 (Released:2017-06-02)
被引用文献数
1

本研究の目的は, ピアノ1本弦の2次元的な振動を光学的に測定し, その性質を見出すことである。測定装置は単一のフォトトランジスタを用いた測定装置を2セット用意し, ピアノ弦の2次元振動の詳しい振る舞いを測定した。その結果, ハンマで垂直方向には叩かれた弦が水平方向の振動成分を持つのは, 駒からの寄与によるということが実験的に明らかにされた。また, 弦は2次元の回転運動をするが, その回転方向は周期的に入れ替わる。すなわち, 駒の与える境界条件によって, 垂直振動は水平振動よりもわずかに周波数が低くなる。更に, ピアノの1本弦から発生される音は従来言われているように2段減衰をするが, 調波成分によって, 減衰の仕方が大きく変わることが分かった。
著者
長谷川 憲孝 松井 保 田中 泰雄 高橋 嘉樹 南部 光広
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集C (ISSN:1880604X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.923-935, 2007 (Released:2007-10-19)
参考文献数
10

神戸空港は神戸港沖に埋立造成して築造されたが,海底地盤には沖積粘土層が厚く堆積している.埋立造成にあたっては,これら沖積粘土層の圧密特性を把握する必要があり,その特性を把握するために事前土質調査と各種計測器による計測を行ってきた.その結果,沖積粘土層は擬似過圧密状態であり,その程度は西~北西域で高いことが明らかとなった.施工の進行に伴って,過圧密比の高いエリアにおいて,室内土質試験結果による解析値よりも大きな沈下実測値が得られ,圧密進行後の間隙比も室内土質試験結果より小さい値を示すことが分かった.このことより,これらエリアにおいては解析を行う際に過圧密比を低減する必要が生じた.見直し後の解析値は,その後の実測値とほぼ一致しており,見直しの妥当性が確認できた.