著者
荒木 俊之
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.560-566, 2018 (Released:2018-12-29)
参考文献数
9
被引用文献数
2

本稿では,都市計画基本問題小委員会において審議された「都市のスポンジ化」を取り上げて,それに関する研究動向,小委員会での議論の結果として提示された中間とりまとめを概説し,「都市のスポンジ化」に対する地理学的アプローチの有効性を検討した.現在,「都市のスポンジ化」の実態は,ほとんど明らかにされていない.また,それに影響を受けるであろう立地適正化計画は,都市圏の範囲で作成することが求められる一方で,「都市のスポンジ化」は街区単位の問題としてミクロな視点から捉えることが必要であり,それぞれ扱うスケールが異なっている.そのため,筆者は,都市圏を対象に,まずはマクロな視点から都市の低密度化を捉え,そのうえでミクロな視点から「都市のスポンジ化」の実態を明らかにする地理学特有のマルチスケールによる地域特性の把握が,その手法として考えられると示した.
著者
池田 佳子 荒木 佐智子 村中 孝司 鷲谷 いづみ
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.21-31, 1999-06-25 (Released:2018-02-09)
参考文献数
18
被引用文献数
3

浚渫土中の土壌シードバンクを利用した水辺の植生復元の可能性を小規模なまきだし実験により検討した.水分条件を一定に保つことのできる実験装置「種子の箱舟」の中に霞ヶ浦の湖底から浚渫された底泥(浚渫土)約0.55m^3を1998年3月下旬にまきだし,出現する維管束植物の実生の種を,新たな実生がみられなくなる11月下旬まで定期的に調査した.その結果,合計22種708実生が得られた.また,湖に隣接し,土壌がときどき水をかぶる場所(冠水条件)と,常に水をかぶっている場所(浸水条件)を含む小規模の窪地(10m×5.5m)を造成し,1998年3月下旬に全体に厚さがほぼ30cmになるように浚渫土をまきだし,9月下旬に成立した植生を調査した.窪地の植生には22種の維管束植物が認められた.湿地に特有の植物である「湿生植物」と「抽水植物」は箱舟で5種,窪地で12種出現した.また,出現した帰化種は箱舟で9種,窪地で3種であった.浚渫土の土壌シードバンクは水辺の植生復元の材料として有効であることが示唆された.
著者
舟田 裕史 小越 康宏 藤田 智司 帆谷 竜起 齋藤 秀明 荒木 睦大
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本知能情報ファジィ学会 ファジィ システム シンポジウム 講演論文集 第27回ファジィシステムシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.239, 2011 (Released:2012-02-15)

近年、環境問題に関する問題意識が高まっている。我々のグループも大学の近くの川で清掃活動や環境問題の調査を行ってきた。川底には不法投棄されたゴミがたくさん存在し、その中でもスチール缶が意外と多いことを発見した。 そこで我々は川の清掃を目的とし、川底に沈む空き缶(スチール缶)を回収するためのロボットを開発した。開発したロボットは自動車のような形状をしており、ケーブルを介して陸上から遠隔操作により操縦する。 ロボット先端に取り付けられたカメラ映像を基に、水中の対象となる空き缶まで自動(あるいは手動)で走行し、空き缶の近くまで到達したら、先端に電磁石のついたアームを伸ばして空き缶をキャッチし、アームを戻して車体の回収BOXに収納する。
著者
八代 仁 荒木 渓 明 承澤 鈴木 映一
出版者
日本海水学会
雑誌
日本海水学会誌 (ISSN:03694550)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.97-104, 2011-04-01
参考文献数
13

製塩プラントにおける構造材料の腐食を支配する重要な要因のひとつに溶存酸素が挙げられており,これを管理するため製塩プラント環境に適用可能な溶存酸素濃度分析法を提案した.プラントから採取された溶液は定量ポンプを用いて直接回転電極に送られるか,一旦サンプリングバックに採取される.サンプリングされた試料の一部は亜硫酸ナトリウムの添加等によって脱酸素され,ゼロ点校正に用いられる.<br>もうひとつの対照試料として空気飽和試料溶液を用意する.試料溶液中の溶存酸素は白金回転電極を用いるサイクリックボルタンメトリーによって,酸素還元の拡散限界電流を測定することで評価される.白金電極は周期的に酸化することで高い活性が維持される.酸素還元の拡散限界電流は溶存酸素濃度と,回転数の平方根に比例して増加する.<br>1 ppm以上のCu<sup>2+</sup>は,Pt上に還元析出することにより酸素還元電流を減少させるが,引き続きアノード分極するとアノードピークが得られたことから,Cu<sup>2+</sup>の存在を知ることが可能である.1 ppm以上のFe<sup>2+</sup>はFe(OH)<sub>2</sub>の析出によって酸素還元を著しく妨害したがNi<sup>2+</sup>はあまり影響しなかった.これらの妨害イオンが存在する場合は,カチオン交換樹脂による前処理が必要となる.試料溶液の絶対酸素濃度は,空気飽和試料の酸素濃度をWinkler 法によって別に評価することで決定できる.空気飽和試料の酸素濃度を塩類効果係数を用いて推算した結果,Winkler法によって求めた酸素濃度と比較的よく一致したことから,これを計算で行いうることが示された.
著者
大前 義次 荒木 智行 小高 泰陸 平山 勉
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1995, no.20, pp.1-6, 1995-03-02

本報告では、RSA公開暗号方式における新しいマスター鍵方式を提案し、その応用としてクライアント,サーバグループ、セキュリティ・サーバで構成されるクライアント/サーバ・システムにおいて、複数のサーバグループがあり、グループ間でのセキュリティが保たれる必要のある環境においての認証方式を提案し,有効性を示す。その有効性は,要約すると以下の3点である。()マスタ鍵方式を採用しているため、鍵の管理が容易であり,また回報通信が可能である。()サーバグループ内のサーバ数が増加しても、十分な数のサーバの個別鍵に対応したマスタ鍵の生成が容易にできる。()ケルベロス方式に比べ,認証のために必要な手順の簡略化,時間の短縮化が可能である。This paper proposes a new master-key-style method of RSA public key encryption, and as its application, describes on security in applications for group cooperation work based on Client/Server systems that are composed of clients, servers' groups and security servers. Then, it is assumed that there are some groups in the same system and secrecy must be kept each other among groups. We show that the proposed method is effective in such environment and applications. The effectiveness is summarized as follows: (1) It is easy to administrate keys because the proposed method adopts master-key-style. And multi-address communication is available. (2) We can generate easily the sufficient number of keys corresponding to the master key even if the number of member of servers' group would be increasing. (3) It is possible to shorten the time for authentication in comparison with Kerberos-style's because the proposed process is simpler than Kerberos-style's.
著者
遠藤 数江 小川 純子 村上 寛子 荒木 暁子 中村 伸枝
出版者
千葉大学看護学部
雑誌
千葉大学看護学部紀要 (ISSN:03877272)
巻号頁・発行日
no.26, pp.93-97, 2004-03
被引用文献数
1

大学生における食習慣に影響を与える要因を検討する目的で,現在の食生活,食習慣の変化,食に関する体験について,フォーカスグループによる振り返り調査を行った.対象者は18歳から21歳の文化系または,運動系のサークルに所属している大学生9人(男2人,女7人)であった.大学生の食習慣に影響を与える要因として,経済状況,調理器具などの料理をする環境,料理に費やす時間や手間,生活スタイルの変化,嗜好の変化,運動部に入ったことによる影響が抽出された.さらに,幼少時からの家庭環境も大学生の食習慣に影響を与える要因の一つであった.また,家庭や学校の授業での料理経験は,大学生になっても食の体験として記憶に残っていた.大学生の食習慣の形成には,経済状況,生活スタイルの変化,所属サークルなどの現在の生活状況からの要因と,これまでの食に関する体験が影響していることが示唆された.
著者
井内 陽三 能方 州二 藤本 和晃 木戸 直人 高倉 美樹 荒木 祐佳 加持 優一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.E0979, 2004

【はじめに】在宅生活者へのリハビリテーションを行う中で、環境整備などを目的に経験的に「滑り止めマット」(以下、マット)を使用する機会がある。しかし、その使用に関しては経験的なものが多い状態である。今回、安価に購入できる市販のマットを使用しての動作で、その変化をみる比較検討とアンケート調査を行ったので報告する。<BR>【対象】対象は、在宅生活を送る方で、起立動作が可能で、かつ3分間以上の連続した運動が可能な方。デイサービス、もしくは訪問リハビリを利用している45名(男13人、女32人、平均年齢75.26±9.95歳)。診断名は脳血管障害18名、骨関節疾患18名、その他9名(パーキンソン病、脊髄小脳変性症、廃用性症候群)である。<BR>【方法】素足で畳面の上での起立動作を3分間施行。初回は、「滑り止めマット」(塩化ビニル・アクリルの素材)非使用で起立動作施行。1週間後、マットを使用して起立動作を施行。開始肢位は膝関節90度屈曲位となる坐位姿勢。その際、運動施行前後での脈拍の測定(30秒×2)、時間内での施行回数の測定を行う。また、マット使用と非使用時の感想の聞き取り、足趾変形もしくは爪肥厚の有無の調査を行う。<BR>【結果】脈拍の平均増加率は、マット非使用21.1±13.17回、マット使用21.5±13.83回。起立回数は、マット非使用34.4±15.98回、マット使用35.4±16.94回となり、マット使用の前後では、脈拍の増加率、起立動作の回数には有意差は見られなかった。アンケート調査に関しては、滑り止めマット使用に関して全体の68%が「足元が滑らないので安心」「立ちやすい」など肯定的な意見。また、足趾変形もしくは爪の肥厚がある群では、67%で肯定的な意見が聞かれた。特に、足趾変形もしくは爪の肥厚を有し、脳血管障害による片麻痺、骨関節疾患があるものに対しては、肯定的な反応が得られた。また、足趾変形もしくは爪の肥厚がない群でも、69%の方が肯定的な意見となった。<BR>【考察】今回の条件設定では、運動前後での身体変化に有意差は認められなかった。これは、運動負荷の時間設定が長く、疲労の蓄積が大きく影響したためと考える。しかし、アンケート結果からマット使用に関しては、約7割に肯定的な意見が聞かれる事から、動作の質的な部分に影響があったと考えられる。また、足指変形もしくは爪の肥厚がある群では、マット使用に関し肯定的な反応の割合が高いため足底把持能力となんらかの関係があると推察される。今後、質的な面にも着目し、在宅生活での起居動作能力向上に結びつくように、マット使用効果の検証、効果的な使用方法、有用な使用者の調査を進めていく。
著者
荒木 英昭 宮下 清栄 木村 卓靖
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.211-216, 1997

The objectives of this paper are to clarify the effect of land readjustment to the growth of cities, for instance, to the extension of the urban area. We analyzed 28 provincial cities. As a result, we obtained several typical project patterns of land readjustment and the relation to the extension of the urban area.
著者
中嶋 正明 秋山 純一 小幡 太志 Chikako Kawakami Poffenberger Frank R Fisher Pam Marchand 荒木 靖 石田 恵子 祢屋 俊昭
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.F0351, 2004

【目的】近年,我が国では食生活の欧米化とともに高齢化社会を迎へ,血管病変に基づく末梢循環障害が医学的のみならず社会的にも問題になっている。これら末梢循環障害の保存的療法として,我が国では,人工炭酸泉浴が臨床応用され多数の改善例が報告されている。この人工炭酸泉浴による治療効果は血管拡張による循環の改善によるものと考えられている。我々は,これら人工炭酸泉浴の優れた治療効果は単に血液循環の改善によるものでなく血管新生によって得られるのではないかと考えた。血管内皮細胞増殖因子(VEGF: vascular endothelial growth factor)は血管内皮細胞に対して特異的に作用し,血管新生を促進する。今回,人工炭酸泉浴の血管新生作用を検討する目的で,糖尿病性潰瘍の2症例に対して人工炭酸泉の下肢連浴を行い血清中のVEGF濃度を評価した。<BR>【方法】対象は下肢に糖尿病性潰瘍を有する63歳の男性および44歳の女性の2症例とした。患者は坐位にて35&deg;Cの不感温度の人工炭酸泉浴を15分間の下腿局所浴として毎日1回実施した。人工炭酸泉の作成には高濃度人工炭酸泉製造装置カーボセラ・ミニMRE-SPA-CTM(MITSUBISHI RAYON ENGINEERING CO. LTD)を用い,その濃度は1000ppmに調整された。6週間にわたる人工炭酸泉連浴が行われ,連浴実施直前,連浴実施1週間経過時点,連浴実施6週間経過時点において採血を行い血清中のVEGF濃度をQuantikine M (R&D systems)を用いELIZA法により定量した。評価は人工炭酸泉連浴実施前の値を基に連浴実施後の値を正規化したデータについて行われた。なお,患者には実験趣旨の十分な説明を行い同意を得た。<BR>【結果】症例1のVEGF濃度は連浴実施1週間経過時点152.2%,連浴実施6週間経過時点130.0%となった。症例2のVEGF濃度は連浴実施1週間経過時点112.5%,連浴実施6週間経過時点70.8%となった。<BR>【考察】糖尿病性潰瘍の症例に人工炭酸泉浴を実施したところ連浴実施1週間経過時点でVEGF濃度の上昇が認められた。連浴実施6週間経過時点で症例1ではVEGF濃度が上昇したが,症例2では連浴実施前よりもVEGF濃度が低下した。これは,この連浴実施6週間経過時点で下肢の潰瘍が治癒していたことから,潰瘍の治癒によりVEGF濃度が減少したものと考えられた。今回の症例から,糖尿病性潰瘍に対して人工炭酸泉浴はVEGFの発現を促進し血管新生作用を有する可能性が示唆された。今日では,末梢循環障害に対してVEGFやHGFなどの血管新生増殖因子のDNAプラスミドまたは骨髄細胞を筋注し新たに血管を再生させようとする血管新生療法が注目され,臨床応用が始まっている。人工炭酸泉浴はこういった血管新生療法を助ける保存的療法と成りうる可能性が示唆された。
著者
木村 学 木下 正高 金川 久一 金松 敏也 芦 寿一郎 斎藤 実篤 廣瀬 丈洋 山田 泰広 荒木 英一郎 江口 暢久 Sean Toczko
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.124, no.1, pp.47-65, 2018-01-15 (Released:2018-05-30)
参考文献数
98
被引用文献数
1

2007年開始の南海トラフ地震発生帯掘削計画は,プレート境界で起こる地震発生,断層メカニズムの理解を目的に実施,掘削の結果,これまで以下の主要な成果が得られた.1)南海前弧域は,~6Ma以降の沈み込み,特に2Ma以降の付加体の急成長によって形成され,プレート境界の上盤を形成することとなった.2)プレート境界と分岐断層に沿うすべりは,海底面まで高速ですべり抜けたことがある.3)粘土鉱物に富む断層ガウジは静的にも動的にも,絶対的に弱い.4)掘削によって応力測定に成功した.多くの地点で最大水平圧縮方向はプレートの収束方向とほぼ平行であり,次の南海地震に向けての応力蓄積の進行が示唆される.5)掘削孔設置の観測計が,2016年4月1日に南海プレート境界で72年ぶりに発生した地震による圧力変動を観測した.海底観測網による微小津波観測と同期しており,上盤内の地震時体積収縮を世界で初めて観測した.