著者
酒井 健児 荒木 寿和 佐藤 和貴 黒田 重史
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C3P3398, 2009 (Released:2009-04-25)

【目的】夜間痛を有する肩関節疾患患者(以下,肩夜間痛患者)の姿勢特性として,円背を呈し,肩甲骨前傾・内旋が増大しており,小胸筋の緊張が高いことを経験する.このような姿勢を呈する患者は夜間痛出現部位として,過緊張を起こしている小胸筋よりも,上腕前面から外側面にかけて訴えることが多い.そこで今回,徒手で擬似的に小胸筋を短縮位にさせたときの三角筋前部線維の動態を,超音波診断装置を用いて調査した.そして,円背を呈した肩夜間痛患者に対する評価・治療する上で有用と思われる知見が得られたので報告する.【方法】対象は,肩関節に整形外科的問題がない健常成人10名20肩であり,ヘルシンキ宣言に基づいて十分に説明して同意を得て行った.方法は,超音波診断装置Xario(TOSHIBA製)のリニア型プローブを使用し,自然背臥位にて計測した.検者が徒手で他動的に肩甲骨を前傾・内旋方向に誘導し,擬似的に小胸筋を短縮位にさせた状態(以下,小胸筋短縮位)での三角筋前部線維筋束の動態方向を長軸像で観察した.【結果】全20肩で,小胸筋短縮位で三角筋前部線維筋束が末梢方向に移動した.その移動距離は,約5~10mmだった.【考察】我々は,先行研究として,3次元CTを用いて肩甲骨内旋増大している肩夜間痛患者の姿勢特性を調査し,肩甲骨の前傾・内旋と,鎖骨のprotractionが増大していることを報告した.つまり,小胸筋が短縮すると,烏口突起を介して,肩甲骨を前傾・内旋させる.そして肩鎖関節を介して鎖骨をprotractionさせ,三角筋前部線維の起始部である鎖骨遠位端が腹尾側方向に移動することで,三角筋前部線維の筋束が停止部である三角筋粗面に向かって,末梢方向に移動したと考えられる.したがって,肩夜間痛患者で小胸筋が短縮している場合,三角筋前部線維の末梢方向への伸張ストレスが,夜間痛発生に関与している可能性が示唆される.【まとめ】小胸筋短縮位における三角筋前部線維の動態方向を,超音波画像を用いて観察した.全例において,徒手で他動的に小胸筋を短縮位にすると,三角筋前部線維は末梢方向に移動することが観察できた.小胸筋が短縮している肩夜間痛患者に対して,小胸筋の短縮を改善させるとともに,三角筋前部線維を求心性収縮させて筋束を中枢方向へ誘導したり,ストレッチなどにより末梢方向への柔軟性を高めることが有効であると推察された.
著者
内藤 裕之 土井 光 稲水 佐江子 伊藤 聖 荒木 武尚
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.125-130, 2013-02-01 (Released:2013-03-06)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

症例は46 歳の男性である.感冒症状を契機に緊張性瞳孔,起立性低血圧,膀胱直腸障害,全身の発汗障害などの重度の自律神経障害を発症し,全身の温痛覚障害および脳神経系および四肢の運動障害を合併した.各種検査から節後性無髄線維の軸索変性が主体の急性自律性感覚性運動性ニューロパチーと診断した.免疫グロブリン療法およびステロイドパルス療法をおこなうも自律神経障害の改善は乏しく,予後不良な経過をたどった.頭部MRI 検査にて両側三叉神経の腫大および造影効果が確認され,表在覚の障害は著明であるにもかかわらず深部覚は保たれているといった,過去の報告にはない特徴的な所見をみとめた症例であった.
著者
橋本 洋一郎 大谷 智子 平野 照之 平田 奈穂美 荒木 淑郎
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.80-86, 1991-04-25 (Released:2009-09-03)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

Tuberothalamic artery領域の右視床梗塞を来した結核性髄膜炎の32歳男性例を報告した.発熱と頭痛で発症し, 経過中に失見当識, 了解不良や傾眠状態が出現した.CTではtuberothalamic artery領域の右視床に造影効果のない梗塞巣と考えられる低吸収域を認め, これが失見当識などの原因と考えられた.脳底槽は等吸収域を呈し著明な造影効果を呈した.MRIでは脳底部の血管はflow void phenomenonのため低信号域を呈したが, 脳底槽はT1強調画像で等信号域, T2強調画像では髄液より低い高信号域を呈し, 著明な造影効果を呈し, これがgranulomatous basal arachnoiditisの部位を示していると考えられた.結核性髄膜炎で急に意識障害や精神症状を来した場合には脳梗塞の合併を考慮する必要がある.
著者
野明 俊裕 荒木 靖三 的野 敬子 牛島 正貴 小篠 洋之 入江 朋子 家守 雅大 高野 正博
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.10, pp.954-960, 2015 (Released:2015-10-31)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1

便失禁は,4歳以上の個人が便の排出を制御できない状態が3ヵ月以上にわたり繰り返すことと定義され,成人の便失禁の有病率は2.2%と報告されている.肛門括約筋は,不随意筋である内肛門括約筋と,随意筋である外肛門括約筋,骨盤底筋群で構成され,内肛門括約筋の機能不全では,安静時の肛門管の緊張低下や静止圧の低下をきたす.外肛門括約筋や骨盤底筋群の機能不全では随意収縮圧が低下するが,バイオフィードバック療法により改善するといわれている.便失禁に対するバイオフィードバック療法は有用であるとする報告は多いが,単独での効果は疑問視されている.しかし,骨盤底筋体操にバイオフィードバック療法を加えることで治療効果が高まると報告されており便失禁治療においては重要なアイテムの1つである.今回の論文ではバイオフィードバック療法の文献的考察を行い,当院で行っているバイオフィードバック療法の実際を概説する.
著者
荒木 一視
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2010年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.74, 2010 (Released:2010-06-10)

1.目的と方法 今日の食料供給体系は高度に複雑化しており,その全貌が明らかになることはない。本報告ではこうした供給体系の持つ食の安全上の問題点を,2008年秋に発生した事故米の不正転売事件(いわゆる三笠フーズ事件)を事例として検討する。具体的な手順としては,第1に農林水産省が発表した資料を手がかりとして,わが国の米及び米加工品の流通実態を明らかにする。すなわち,特定の業者から出荷された米がどのような経路をたどって,加工や小売業者に流れたのかを地図化し,事故米穀が拡散していく過程を空間的に再現する。次に,農林水産省が転売先として公表した業者を対象にしたアンケート調査から,今般の事件から教訓とすべき食の安全上の問題点について考察を加える。なお,アンケートは公表された391の業者(118の給食業者は同一経営体と見なしたため実質274業者)から所在の確認できた266業者に対して郵送し,48の業者から回答を得た(2009年11月実施)。 2. 事故米の不正規流通 三笠フーズによる不正規流通は残留農薬米(メタミドホス,中国産もち米)800トンと同(アセタミプリド,ベトナム産)598トン,カビ米(アフラトキシン,中国・ベトナム・米国産)9.5トンの3ルートがある。メタミドホスの場合はうち123トンが市場流通し近畿地方の23社,九州地方の20社を含む51社の中間流通業者を経て最終的に317社の製造・販売会社に流れ,消費者に渡った。317社のうち近畿地方が166社(118の給食業者を同一経営体と見なすと49社),九州地方が109社である。アセタミプリドは447トンが市場流通し,中間流通業者は,東京,大阪,福岡,鹿児島格1社の合計3社で,いずれも東京2社,福岡1社,熊本3社,鹿児島3社の酒造業者に出荷された。カビ米は2.8トンが市場流通し,2社の中間流通業者から鹿児島県の酒造業者3社に渡った。 3. 食の安全上の脆弱性 業者に対するアンケート結果からは,悲痛な叫びともいえる訴えが多く寄せられた。本来これらの業者は事故米と知らずに使用,販売していたにもかかわらず,農林水産省による公表によって,加害者扱いされかねない状況を被ったからでもある。回答を得られた48業者のうちわけは,菓子・和菓子の卸,製造,販売にかかわるものが34,食材・食品卸が5,米穀販売4,酒造2,食品製造1,給食1,飼料卸1であった。従業員数は1000人を越える2社(給食と酒造)を除くといずれもが100人以下であり,10人未満の零細な規模の業者が26社にのぼる。以下,10人台が8社,20人台が4社,30人台が3社,40,50,80,90人台が各1社であった(無回答1)。また,主たる販売先も29業者が自市町村やその周辺としており,販路を都道府県外としたものは5社であった。業者リスト公表以後の業績の落ち込みについては,半数の24業者が1年以上を経た今日でもなお,公表以前の水準を回復できていないとしている。 以上のようにわずか百トン余の原料米が,和菓子製造業者などの使用量の少ない小規模の業者に広範に流通したことがうかがえる。このような流通経路を持つ食品に関しては,風評被害の発生を避けるためにも,きめ細かな情報の開示と管理が必要であるとともに,損害補償ではなく開示措置に対する補償も十分に検討債いく必要がある。
著者
内田 明彦 荒木 潤
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.85-88, 2000-02-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
27
被引用文献数
3 8

1995年 (6~8月) および1996年 (7~9月) に北西北太平洋 (北緯35~52度, 東経140~170度) で捕獲された177頭 (雌: 21頭, 雄: 156頭) のミンククジラについて外部・内部寄生虫相を調査した結果, 外部寄生虫3種;クジライカリムシPennella balaenoptera (68.4%), クジラシラミCyamus balaenoptera (5.1%), Xenobalanus globicipitis (1.1%), 内部寄生虫6種;Anisakis simplex (89.8%), クジラ大複殖門条虫.Diplogmoporus balaenoptera (13.0%), 大卵裂頭条虫Diphykkobothrium macroovatum (13.0%), Tetrabothriussp.(4.5%), クジラ肝蛭Lecithodesmus goliath (59.9%) およびクジラ鉤頭虫Bolbsoma niponicum (100.0%) が検出された.
著者
石川 智佳代 小野 昌孝 荒木 徹也 相良 泰行
出版者
The Society of Agricultural Structures, Japan
雑誌
農業施設 (ISSN:03888517)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.123-130, 2002-09-25 (Released:2011-09-05)
参考文献数
7

ドライフラワの需要拡大のためには, 耐久消費財としてのドライフラワの作成とそれを応用した製品の開発が望まれる。このようなドライフラワを作成するためには, 生花と同様の形態と色彩の長期保持が望まれている。本研究では, ドライフラワ作成時における変形と変色を抑制し, さらに乾燥時間の短縮に最適な乾燥法を選択することを目的とし, リトルマーベル (バラ科バラ属) を供試材料とし, 従来から採用されてきた空気乾燥法に加えて, シリカゲル細粒充填層内に埋没させた材料を電熱ヒータで加熱して乾燥する方法, 凍結乾燥法および減圧マイクロ波乾燥法などを選び, その適用性を比較検討した。試料を固定した乾燥法では萎縮が少なく, その形態が保持された。また, 乾燥前後の花弁の色差は含水率の低下に伴い生じる萎縮により増大するが, 乾燥過程での萎縮の防止に有効な乾燥法を選択することにより抑制可能であることが分かった。色差発現の主要因はハンタ表色系におけるL*, b*値の減少によるものであることが確認された。ドライフラワの作成には形態, 色彩, 乾燥時間の面でヒータを併用したシリカゲル埋没乾燥法が最適であることが分かった。
著者
佐藤 三矢 横井 輝夫 岡村 仁 荒木 ゆかり 緒方 紀也 山下 聡子 佐藤 恵 坂本 将德 福嶋 久美子
出版者
吉備国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

認知症高齢者を対象としてネイルカラーリング介入を実施し、ランダム化比較試験を通じてBPSDとQOLの変化を検討した。対象者は介護施設に入所中の認知症高齢者77名。対象者を無作為に2群へ割り付けた後、介入群に対しては1週間に2回の頻度でネイルカラーリング介入を3ヶ月間実施した。得られた数値は二元配置分散分析を用いて2群間の比較を実施した。その結果、BPSDとQOLに関する測定項目において有意な交互作用が確認された。本研究では介護老人保健施設に入所中の認知症高齢者を対象として3ヶ月間のネイルカラーリング療法を行なえば,BPSDを軽減できる可能性が示唆された。
著者
荒木 一視
出版者
広島大学現代インド研究センター
雑誌
広島大学現代インド研究 : 空間と社会 (ISSN:21858721)
巻号頁・発行日
no.1, pp.59-78, 2011-03-22

「アジアに第1次フードレジームは存在したのか」というのが研究の主題であり, 統計資料に基づいてフードレジーム論を検討する。その際, コロニアル・ディアスポリック・レジームと呼ばれる第1次フードレジームに着目し, 具体的には英領インドの農産物貿易に焦点をあてた。英領インドは第1次レジームを主導したイギリスの統治下にある一方, 巨大な人口を擁しアジアとの関係も強い。こうした点から, アジアにおける第1次レジームを検討する上では極めて興味深い対象である。また, 典拠とした資料は山口大学東亜経済研究所に所蔵されている戦前期に収集された資料である。これを用いて, 20世紀はじめの第1次レジームとその崩壊期の英領インドの貿易が, ヨーロッパとヨーロッパ人ディアスポラ国家を基軸として描き出された世界で初めての基本食料の国際市場という第1次レジームの文脈でどのように解釈できるのかに取り組んだ。
著者
稲吉 直哉 荒木 秀明 松岡 健 須﨑 裕一 小野内 雄
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1804, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】我々は,臨床においてフラットバック,スウェイバック,円背など様々な姿勢不良患者を頻繁に経験する。姿勢不良と病態に関しては頸部障害,腰部障害,肩障害,肘障害など様々な障害を生じさせる要因となることが多数報告されている。特に,円背は運動・呼吸能力など身体能力や精神機能の低下などを起たすとの報告ある。しかし,胸椎部の姿勢に関する客観的評価方法は少ない。姿勢の客観的評価方法としては,三次元的動作解析装置や立位時の全身の矢状面レントゲン撮影,Spinal Mouseを用いた脊柱姿勢評価方法が報告がされているが,いずれも高度な機器が必要であり臨床の場面において簡便に測定することが困難である。最近,簡便な胸椎部の柔軟性評価としてOtt Testが報告され,三次元動作解析器を用いてその再現性が確認されている。今回,Ott Testを用いて胸椎部柔軟性を正常群と過少群に分類して,胸椎部柔軟性と生体力学的変化を指先床間距離(以下FFD)と重心動揺を用いて検証した。【方法】対象は下肢,体幹に障害既往がない20歳代の健常男性12名である。Ott Testは1)直立姿勢で第7頸椎棘突起(以下C7)とC7から30cm下方をマーク,2)体幹最大屈曲位で2点間距離をメジャーで測定する。臨床的意義は2点間距離の延長が3cm未満では胸椎部柔軟性が低下していると定義される。対象全例にOtt Testを行い,体幹最大屈曲位で3cm以上群(以下正常群)が6例,3cm未満群(以下過少群)が6例に分類した。両群に対してFFDと体幹屈曲動作遂行時の重心動揺を測定した。重心動揺は重心動揺計(アイソン株式会社製)を用いた。測定方法は重心動揺計上で開眼,裸足,踵接地の直立姿勢から指先をつま先に向け下ろすように指示し,前後方向の重心動揺を測定した。なお,聴覚や視覚刺激による偏位を生じない様な環境設定に留意した。両群間でのFFDと重心の前後動揺の比較・検討を行った。【結果】1)FFDは正常群が過少群より有意(p<0.01)に小さかった。2)前後方向の重心動揺は正常群が過少群より有意(p<0.01)に小さかった。【考察】胸椎部に対するモビライゼーションは胸椎部の痛みや機能障害に対する報告より,むしろ頚部障害,肩障害,上肢障害,下肢障害など胸椎と解剖学的に関係がない部位の障害に対して良好な結果が確認され,Regional Interdependence理論が提唱されている。今回,胸椎の柔軟性と全身的な生体力学的変化を確認するために,三次元動作解析器で胸椎可動性測定の妥当性が確認されているOtt Testで鑑別後,FFDと重心動揺から生体力学的変化を検討した。FFDは一般に下肢筋の短縮や腰部筋群の緊張を評価する方法である。しかし,体幹前屈動作には胸椎部の動きも関連している。Bruggerらは体幹屈曲の際,最初に脊柱起立筋が強く収縮し,次に臀筋群,そして最後にハムストリングスと下腿三頭筋が収縮する。脊柱は最終屈曲域には脊柱の靭帯のみで支えられ骨盤に固定される。その骨盤は前方回旋しているがハムストリングスによる固定されると報告している。また,前屈動作時の胸椎部は椎間関節の前方滑り,肋横突関節も前方滑りが起こる。胸椎部の柔軟性が低下すると上記の運動が障害されFlexion Relaxation Phenomenon(以下FRP)が起こらず,脊柱起立筋の持続的な収縮が起こる。そのため正常群は過少群と比較し有意(p<0.01)に良好な結果が得られたものと考える。重心の前後動揺方向への変化は,過少群はFRPが起きず,脊柱起立筋とハムストリングスの持続的な収縮が起こる。また正常な体幹屈曲動作よりも胸椎の屈曲機能不全が起きているため,重心の位置は支持基底面に対しより前方に逸脱する。その代償として,重心を支持基底面内に留めるためハムストリングス,下腿三頭筋が通常よりも早く収縮が起こる。よって,骨盤は前傾できず,股関節も屈曲機能不全が起こる。そのため正常群は過少群と比較し有意(p<0.01)に重心の前後動揺が少なかったのではないかと考える。今回の結果から胸椎の柔軟性は胸椎のみではなく,FFDや重心動揺などの全身的生体力学的変化が示唆された。【理学療法学研究としての意義】Ott Testを用いた胸椎部柔軟性の結果とFFDと重心動揺に関連性が示唆され,胸椎可動域制限と全身的生体力学的変化が確証された。今後,胸椎部柔軟性の向上と肩関節や頸椎可動域,下肢筋活動変化に関する検討が必要である。また今回の対象者は20代の健常な男性である。性差や年齢差,疾患の有無で同様な結果が得られるのか検討が必要である。
著者
荒木 尚 横田 裕行
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.175-180, 2009 (Released:2016-05-11)
参考文献数
22

虐待による頭部外傷は乳幼児期の外傷死における事由の第1位であり, 外傷による後遺症発生率に比べて著しく死亡の割合が高いことが特徴である. 虐待診断は常に不確実であり, 容易ではない. また, 偽陽性, 偽陰性ともに悲劇を生じるため, 小児科医を始めとして, 脳神経外科, 整形外科, 眼科など複数の診断科による意見の集約が必要であり, 医療者は慎重に対峙しなくてはならない. 身体所見および頭部CT所見は診断上重要であり, 薄い急性硬膜下血腫と付随する片側あるいは両側のびまん性脳腫脹が特徴的である. また, 網膜出血も重要な所見である. 乳幼児硬膜下血腫の意義については, 北米と本邦との間で解釈の相違が存在し議論が多い. 受傷機転や病態生理など未解決の問題が多く存在し, 現在も多くの臨床あるいは基礎研究による病態解明のアプローチがなされている. また, 虐待への対応は, 行政や地域社会との連携が重要であり, 診断や治療方針が広く包括的に理解されるためのガイドラインの作成などが期待されている.
著者
小田 朋宏 荒木 啓二郎
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.4_129-4_143, 2017-10-25 (Released:2017-11-03)

ソフトウェアシステムの開発において仕様記述は重要な工程であり,仕様記述の曖昧さや誤りは開発全体の生産性および信頼性に重大な影響を与えることが知られている.形式仕様を記述することはモデリングの一種であり,数学的な裏付けのある道具立てによって適切な抽象度でシステムの機能を厳密に定義する工程である.厳密で適切な抽象度の仕様記述を得るために,形式仕様記述者は仕様記述の初期段階において問題領域を探索し対象ドメインの知識獲得や要求項目への理解を深めながらモデリングを進める.本論文では,探索的なモデリングを支援するためのツールに求められる性質を示した上で,形式仕様記述言語VDM-SLによる探索的モデリングを支援する統合開発環境ViennaTalkのデザイン指針,設計および実装を示す.
著者
大貫 義人 荒木 善行 佐々木 秀幸
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.21-25, 2000 (Released:2002-02-28)
参考文献数
14

ランニング成績に及ぼす準高地暴露の影響を調べるため,男子陸上競技中長距離学生選手における,海抜1,000mでの夏合宿前と中の赤血球物質の変化を計測した.血中2,3-DPG濃度は合宿前の2.31±0.36μmol/mlから.2.69±0.56μmol/mlに有意に増加した(P<0.05).ヘマトクリット値は合宿前が43.0±4.2%で合宿中は40.2±3.7%と有意に減少し(P<0.01),ヘモグロビン濃度は合宿前と中で変化しなかった.今回の研究から,1,000mの準高地ではヘマトクリット値やヘモグロビン濃度の増加には十分でないが,2,3-DPG濃度の変化に現れた.
著者
佐藤 朝美 松河 秀哉 椿本 弥生 荒木 淳子 中村 恵 松山 由美子 堀田 博史
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S43039, (Released:2019-08-13)
参考文献数
6

本研究では,保護者が子どもの成長や学びについて深く考えるために,デジタルストーリーテリングワークショップを開発し,その効果を明らかにすることを目的とする.園で撮影された写真を用いた活動をデザインし,実践した結果,子どもの成長だけでなく,保護者自身,園や先生の役割についての振り返りが促されていた.また保育者からは,本WSのDST作品や保護者の対話に対して,「子どもを共に育てる」気持ちを共有できたというポジティブな見解が示された
著者
古賀 慶次郎 川城 信子 荒木 昭夫 越永 重四郎
出版者
The Japan Broncho-esophagological Society
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.323-329, 1991-08-10 (Released:2010-10-20)
参考文献数
10
被引用文献数
1

During the period between 1971 and 1980, the postmortem examinations of 14 infants and young children, ranged from 9 months to 4 years of ages, averaged 1-year-7 month old, who died of foreign bodies in the airway were performed in the Tokyo Metropolitan Examiners Office. The clinical progress of these children was reviewed, and summarized as follows.1. The foreign bodies in these cases were several kinds of foods such as beans in 5 cases, orange or its skin in 2, other foods in 3 and a candy in one case.2. Among these, two chidren were eating foods while they were playing or running around, and 3children aspirated foreign bodies into the airway accidentally during vomiting or unknown cause and while changing their dipers.3. These accidents have tought us that it is very important to feed or give foods to children while they are quiet.4. Ten children have died at the day of accident, and 3 children have been transferred from clinic to clinic and died in several days after the accident. Every phisician who happens to see children presenting with wheezing or respiratory distress should be aware of foreign body in the airway.5. In 13 cases, foreign bodies were found in the trachea. The case of foreign body in the trachea usually shows a normal chest X-ray and this makes the precise diagnosis much more difficult than cases with a foreign body in the bronchus. The fiberscopic or bronchoscopic examinations are mandatory for making the exact diagnosis.