著者
西井 和晃 田口 文明 中村 尚
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.98, no.4, pp.801-820, 2020 (Released:2020-08-26)
参考文献数
32
被引用文献数
8

2018年7月に日本において2つの極端現象が発生した。本研究では大気大循環モデル(AGCM)のアンサンブル実験にもとづき、これらをもたらした大気大循環偏差に対する海面水温偏差の潜在的影響を評価した。一つ目の極端現象は、7月上旬での西日本を中心とする豪雨であり、日本の南西にあった低気圧性偏差と日本の東にあった高気圧性偏差による顕著な水蒸気輸送がこの主要因である。全球で観測された海面水温を与えたAGCM実験は日本の東の高気圧性偏差を再現できず、このため水蒸気輸送と豪雨を再現できなかった。もう一つの極端現象は7月中下旬に日本で全国的に観測された猛暑であり、これは日本を覆う顕著な高気圧性偏差によるものである。この高気圧性偏差はAGCM実験によって高温偏差とともによく再現された。さらなる実験により、熱帯と中緯度北太平洋のそれぞれの海面水温偏差が、猛暑をもたらした北西太平洋上の大気循環の主要モードを強制していた可能性が示された。また、6月から7月にかけて持続した北西太平洋での亜熱帯ジェットの北偏傾向、及び、北半球中緯度対流圏での高温偏差傾向も、これらの海面水温偏差がそれぞれ強制していた可能性を示した。
著者
田辺 陽 御前 智則 飯田 聖 西井 良典
出版者
The Society of Synthetic Organic Chemistry, Japan
雑誌
有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
巻号頁・発行日
vol.62, no.12, pp.1249-1259, 2004-12-01 (Released:2009-11-13)
参考文献数
46
被引用文献数
5 7

Esterification, sulfonylation, amide formation, and silylations are well recognized as frequently used reactions for organic syntheses. Recent syntheses of fine chemicals and complex natural products, however, require further rationalization of these reactions. We describe herein our recent studies in this area including related representative known methods.(i) Recent progresses of catalytic esterifications are surveyed and we introduce two efficient ammonium triflate catalysts (DPAT and PFPAT) for esterification between 1 : 1 mixture of carboxylic acids and alcohols. (ii) Conventional condensation reagents for esterifications, thioesterifications, and amide formation, are listed and we introduce efficient methods using Me2NSO2Cl/ Me2NR and p-TsCl/N-methylimidazole. (iii) As a promising method for the replacement of conventional pyridine-method, we introduce efficient pyridine-free improved methods, which utilize sterically uncrowded tertiary amines such as Me3N·HCl/Et3N and Me2N (CH2) nNMe2 as a key protocol. (iv) We introduce highly powerful, neutral, and catalytic methods for silylations of alcohols (giving enol ethers) and ketones (giving enol silyl ethers) using hydrosilanes, disilanes, and silazanes.
著者
西井 弥生子
出版者
将棋と文学研究会
巻号頁・発行日
pp.86-97, 2019-01-05
著者
西井 伸洋
出版者
岡山医学会
雑誌
岡山医学会雑誌 (ISSN:00301558)
巻号頁・発行日
vol.124, no.2, pp.161-163, 2012-08-01 (Released:2012-09-03)
参考文献数
10
著者
浅川 純 小泉 宏之 西井 啓太 服部 旭大
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会誌 (ISSN:00214663)
巻号頁・発行日
vol.66, no.10, pp.296-301, 2018-10-05 (Released:2018-10-05)
参考文献数
21

超小型深宇宙探査機EQUULEUSは,2020年にNASAのSLSによって,メインペイロードである無人宇宙船Orionの副ペイロードとして打ち上げ予定のキューブサットである.EQUULEUSのミッションの一つが太陽-地球-月系における軌道操作技術の実証である.その核となる技術が小型水レジストジェットスラスタAQUARIUSである.AQUARIUSには,軌道遷移と姿勢制御の2種類の推進性能が要求される.水を推進剤として共有利用することで,2種類の推進性能を確保しつつ,高圧ガスシステムから脱却した小型推進系が実現される.また,安全無毒で取扱い性が良い水は,相乗り打ち上げされることが多い小型宇宙機との親和性が高い.AQUARIUSのエンジニアリングモデルを開発し,探査機構体に組み込んだ状態で性能評価試験及び環境試験を実施した.小型宇宙機という特徴を生かし,探査機を丸ごと用いて推進系の作動試験を実施することで,電源系や熱系等も考慮しつつ,推進性能を統合的に評価した.本稿では,AQUARIUSエンジニアリングモデルの開発状況について概観する.
著者
西井 貴美子 須貝 哲郎 赤井 育子 田水 智子 吉田 慶子
出版者
Meeting of Osaka Dermatological Association
雑誌
皮膚 (ISSN:00181390)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.143-147, 2000 (Released:2010-08-25)
参考文献数
4

33歳, 女性。約3週間前に化粧品を変更し, 2日目頃から顔面に療痒性皮疹を認めたため来院した。初診時, 顔面に一部落屑を伴う療痒性紅斑を認めた。パッチテストで使用していたフェイスパウダーとパフに陽性, 成分パッチテストでオクテニルコハク酸トウモロコシデンプンエステルアルミニウム, ムクロジエキスに陽性であった。ムクロジは果皮, 花に薬用部分のある植物である。近年, 無添加, 植物成分配合というキャッチフレーズの製品を多く見かけるが, 漢方薬, 食品に含まれている植物も多く注意が必要である。
著者
梅林 大督 永井 利樹 西井 翔 橋本 直哉
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1211-1223, 2021-11-10

Point・頚椎後方除圧術には複数の手術手技があり,各手術手技においても多くのバリエーションが存在する.また,各術式間の有効性の違いや優位性には未だ議論が残る.・実臨床においては,それぞれの術式の特性を理解して精通している手技を使い分けることが望ましい.・手術手技の詳細においても多様な考察の下にさまざまな工夫が行われているが,基本的な留意点は共通しており,これらを理解して手術を行うことが重要である.
著者
菊地 洋一 西井 栄幸 武井 隆明 村上 祐
出版者
岩手大学教育学部
雑誌
岩手大学教育学部研究年報 (ISSN:03677370)
巻号頁・発行日
vol.69, pp.45-58, 2010-02-26

物質の微視的概念である粒子概念(すなわち「物質はすべて目に見えない小さな粒(原子,分子,イオン)でできている.」という概念)は,物質を理解する上で最も根本的な要素であり,現代の自然科学および科学技術の礎となっている.物質のマクロ的な事象(物質の分類,状態,性質,反応など)を科学的に説明するには,粒子概念が不可欠となる.よって,小・中学校における物質学習のカリキュラムを考える際に,粒子概念の位置づけは大変重要な問題であるといえる.粒子概念をどの時期に導入するか,どのように取り扱うかによって,物質学習の中味が大きく変わる.例えば,小・中学校の理科教育では児童・生徒が,主体的に実験を行い,その結果を整理したり比較したりすることから新たな事実や法則性を見出すような活動が重視されている.この活動は,考える根拠になる科学的知識を持たない学習者にとっては実験事実としての知識の集積の段階である.実験事実に内在している科学のしくみ,すなわち“なぜそうなるのか?” の疑問,を対象に学習を構成するには,物質学習に関していえば粒子概念が必要となる.よって,粒子概念の導入前後では学習の質に大きな違いが生じることとなる.粒子概念の位置づけを考えた際に最も重要なことの1つは,粒子概念は物質学習における種々の場面で“活用する概念” だということである.最終的には,学習者が学校教育を終えるまでに獲得した教育内容が適切であるかが問われる.物質学習においては学習者が粒子概念を物質の種々の現象の説明に使えるものとして定着することが重要なポイントとなる.このことが,物質学習で獲得したことが最終的に単なる知識の集積に留まるか,科学的な思考と理解を伴うものとなるかの分岐点となる.粒子概念の扱いはそれだけの影響力を持っているといえる.我々は上記の視点から,中学生・高校生を対象として,小学校で学習する物質の基本的な現象(空気と水の圧縮性の違い)について粒子概念を用いて科学的に説明できるようになっているのか?を問う調査を行った1).その結果,中学生と高校生の正答率はいずれも非常に低く,粒子概念と種々のマクロな現象を繰り返し学習してきた高校生においても,粒子概念が現象の説明に使えるものとしては定着していないとの結果を得た.また,2006年1,2月に文部科学省・国立教育政策研究所が実施した理科学力テスト「特定課題調査」の結果が2007年11月に公表された2).対象は小学5年生と中学2年生である.物質学習に関わる「食塩水の質量保存に関する基本的内容の設問」についての正答率は,小学5年生で57%,中学2年生で54%と低い値であった.この結果は中学生の正答率が小学生を下回ったこともあり,マスコミ等でも注目を集めた.多くの中学生が小学校で学んだ質量保存の考えを深めることができていない理由には,中学生においても粒子概念を用いた本質的な理解が確立していないことが挙げられる.これらの調査結果は,近年の物質学習カリキュラムに対する重大な問題提起であり,カリキュラムの再構築の必要性を強く感じる.そこで我々は前報において,粒子概念を基軸にした新たな物質学習カリキュラム構想を提案した1).このカリキュラムでは,物質に関わる種々の現象の科学的な理解を深め,生徒の科学的な思考力を育成するために,粒子概念を早期に導入する考えに立っている.ここでカリキュラム案が実現可能かどうかの大きなポイントは,早期に粒子概念を導入する場面の学習が成り立つかどうかである.そこで本報では我々のカリキュラム案の粒子概念の取り扱いを小・中学校の学習指導要領における取り扱いと比較した上で,カリキュラム案のポイントとなる場面として,中学1年での原子・分子・イオンの導入場面を取り上げ,授業実践とその評価を行った.
著者
杉山 卓也 中村 武彦 西井 良 菅沼 柾希 宅野 信輔 千葉 裕花 増田 百恵 三井 玲奈
出版者
日本スポーツ産業学会
雑誌
スポーツ産業学研究 (ISSN:13430688)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.1_31-1_40, 2020 (Released:2020-01-24)
参考文献数
12

The purpose of this research was to investigate the current situation in which youth teams in Europe are producing football players in strong teams and to explore the success model of the youth teams. The youth teams of the European top four major league division teams were examined, and as a result of calculating the contribution points based on the UEFA club ranking, the first place was Real Madrid youth, the second place was Barcelona Youth. Among the top 10 teams in total points, there were teams that showed high points even if they were not such strong teams. Also, although Manchester City Youth has produced many players, it did not differ much from other teams in regard to total points. In addition, there were teams that promoted many players in their top teams, like Athletic Bilbao Youth. Based on the above surveys, it was considered that the teams that successfully trained players could be classified into the following three major categories. ① Multi-player High Level Type, including Real Madrid youth and Barcelona youth, producing many players and operating at a high level. ② Self-Team Contribution Type, including Athletic Bilbao Youth, promoting many players to their own top team. ③ Release to Other Teams Type, including Manchester City Youth, producing numerous players who join other teams
著者
長谷川 浩平 栗谷 良孝 足立 充司 新家 惠子 西井 諭司 藤田 芳一
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.8, pp.800-804, 2008 (Released:2010-02-07)
参考文献数
7
被引用文献数
8 9

In order to ensure that drug therapy is effective,it is important for patients to understand dosage regimens correctly and take drugs properly.For the purpose of enhancing compliance,we conducted a survey of the dosage forms and dosage regimens of choice for inpatients.The survey was conducted between March 1 and April 22,2005 and responses were obtained from 449 patients,aged from 3 to 92 years.Regarding number of doses,patients between 30 and 59 preferred a lower number of doses,but patients in their 70’s and older tended not to care so much about this.Patients who answered that they had missed doses accounted for 59.8 percent of the total,and missing doses tended to be more frequent after lunch when dosing regimens were three times a day,after meals.Patients desiring the Unite Dose Package (UDP) accounted for 37.9 percent,66.9 percent of whom were not receiving UDPs from the dispensing pharmacy.Informing doctors of these findings will lead to better patient compliance and raise safety for patients.
著者
西井 準治
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

大気圧コロナ放電によるリン酸塩ガラス中へのプロトンの導入に挑戦した。耐候性に優れたNa2O-Nb2O5-P2O5系ガラスを溶融法によって作製し、0.5mm厚に研磨した後に、400℃の水素雰囲気中でコロナ放電処理を行った。約50時間の処理を継続したところ、0.5mm厚全域が変質することを見出した。しかしながら、初期含有量の50%のNa+がガラス中に残留した。原因はNb5+の一部がNb4+に還元され、電子伝導が優先したためである。よって、還元されにくい元素で構成される組成の開発が必要であることが分かった。
著者
西井 賢太郎
出版者
多摩大学グローバルスタディーズ学部
雑誌
紀要 = Bulletin (ISSN:18838480)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.97-107, 2016-03-31

Since the criticisms Lucas made in ‘Economic Policy Evaluation: A Critique (1976)’ became widely accepted in the 1970s and 1980s, ‘micro foundations’ have been recognised as essential for macroeconomic models, and consequently, the dynamic stochastic general equilibrium (DSGE) model developed remarkably in the 1990s. It is a common idea that research on the DSGE models was originated from the real business cycle (RBC) model created by Kydland and Prescott (1982). However, preceding the development of the RBC model, the Ramsey-Cass-Coopmans model (simply ‘the Ramsey model’ or ‘the optimal growth model’) introduced micro foundations and the optimal behaviour of households as an economic growth model, and lead to consumption theories such as the permanent income hypothesis, investment theories such as Tobin’s q, and the RBC model. This paper demonstrates the process of setting the basic Ramsey model to observe its features and, by observing empirical examples of cross-country convergence, its speed is also examined. Further, necessary conditions for generating endogenous growth are discussed along with limitations of the Ramsey models being assessed and with other endogenous growth models being introduced.
著者
佐藤 紀子 西井 美甫 渕上 季代絵
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.75-80, 2004
被引用文献数
1

描画支援ツールは, デッサン初心渚および描くことが苦手な学生を支援するために作成するものである。従来, デッサン初心渚が, 見えるものを見えた通りに二次元上に表現できるようになるまでには, 訓練の時間と技術の取得が欠かせない。しかし, 本格的にデッサンを学ぶ場を持てない学生には, 学習ソフトとして機能するツールが必要だと考えられる。そこで, 初心渚がデッサンを学ぶ上で必要な指導項目の初期調査を行った。今回の研究では, 個々のデッサン力の現状把握とデッサンの描画傾向を調査目的とした。既にデッサンに必要な要素として渕上の調査報告 (1) から, 構図, かたち, 質感, 陰影に関する問題が検討すべき点として明らかにされている。そこで, 各要因に関してデッサンの特徴をあらいだした42項目について紙コップを対象としたデッサンを調査し, パターン分類の可能な分数量化III類によって解析した。その結果から初心者がデッサンを描いた場合に完成度に差がつきやすい描画要因, そして描画傾向について3グループを提示することができた。これらを統合し, 初心渚がデッサンを描くときに必要とする要素を描画ツールにどのようにいかせるのかその可能性を提案する。
著者
早瀬 清 吉田 裕 亀井 達也 芝原 真一 西井 修 服部 俊洋 長谷川 淳 高田 雅士 入江 直彦 内山 邦男 小高 俊彦 高田 究 木村 啓二 笠原 博徳
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ICD, 集積回路 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.76, pp.31-35, 2007-05-24

低消費電力と高性能を備えた、4320MIPS4プロセッサSOCを90nmプロセスで設計した。それぞれのプロセッサには、32KBのデータキャッシュを内蔵しており、プロセッサ間のデータキャッシュのコヒーレンシを維持するためのモジュールを内蔵する。プロセッサ毎に処理量に応じた周波数制御と、プロセッサ間のデータキャッシュのコヒーレンシを維持するスリープモードの採用により、低電力を実現する。
著者
増田 善友 櫻井 良 西井 雅之
出版者
一般社団法人 表面技術協会
雑誌
表面技術 (ISSN:09151869)
巻号頁・発行日
vol.61, no.7, pp.493-493, 2010-07-01 (Released:2011-01-31)
参考文献数
4
著者
西井 和夫 小松 真二 田中 清剛 飯田 祐三
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1992, no.449, pp.175-184, 1992-07-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
13
被引用文献数
1

本研究は, 街路整備に伴う沿道市街地形成に関して, 事業認可や供用開始といった効果の発現時点に着目した形でクラスタ分析の適用による市街地形成パターンの類型化を試みている. 具体的には, 整備効果の発現時点ごとの市街化の動向とその類型化, プーリングデータの活用, そして未整備箇所のデータをも取り入れながら経年的な変化パターンの分類とその特徴を明らかにしたものである.