著者
西川 邦夫
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

2013年度は、以下の点に注目して研究を進めた。第1に、家計・消費構造の歴史的検討である。本年度は戦間期の煙草消費に絞り、内閣統計局『家計調査』や、『東京市勤労家計調査』『細民調査』等の統計を利用して分析を行った。そこでは、低所得層ほど煙草消費が大きく家計を圧迫していることを析出した。第2に、茨城県筑西市を中心とした農地流動化の展開、大規模担い手経営の形成についての研究である。本年度は特に、政権交代に伴う変化に注目した。農業保護政策(直接支払政策)の損失補償水準の高まり、規模要件の除外の結果、水稲管理作業が採算化されることでこれまで農地の出し手だった農の営農意欲が刺激され、農地流動化が停滞したことを実態調査によって収集した資料から明らかにした。第3に、広島県世羅町における集落営農組織の展開についてである。世羅町における集落営農組織の経営目標は、労働力の削減につながる生産過程の効率化による収益性改善ではなく、経営多角化による収益性改善と雇用吸収力の増大の両立である。そして、それを支えているのが増大した直接支払であることを実態調査から明らかにした。第4に、山形県鶴岡市における農業構造変動の検討と、直売所展開との関連についてである。鶴岡市は小規模農家の離農と大規摸担い手経営への農地集積が遅れている地域である。残存する小規模農家の営農継続を支援しているのが市内各地に設立された農産物直売所である。農産物直売所では他業態と比べて低い手数料率、高齢者でも対応可能な少量多品目販売という直売所の展開は、停滞的な農業構造と極めて適合的であることを実態調査から明らかにした。
著者
西川 浩平
出版者
摂南大学
雑誌
摂南経済研究 (ISSN:21857423)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.21-36, 2012-03

本稿では,ニューヨーク州のメディケイド市場を対象とし,HMOの普及がFFSの支出額を低下させるという,スピルオーバー効果について実証的に分析した。分析結果より,ニューヨーク州のメディケイド市場では,HMOが低価格で販売されているカウンティほど,FFSへの支出額も低下していることが明らかになった。したがって,Baker and Corts(1996)が提唱している,HMOの活動水準が高まることでFFSの価格も低下するという,スピルオーバー仮説は支持されたといえ,HMO の普及が医療費支出の適正化効果を促す効果が確認された。
著者
平岡 敏洋 増井 惇也 西川 聖明
出版者
公益社団法人 計測自動制御学会
雑誌
計測自動制御学会論文集 (ISSN:04534654)
巻号頁・発行日
vol.46, no.11, pp.692-699, 2010 (Released:2011-12-01)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

Advanced driver assistance systems (ADAS) such as a forward obstacle collision warning system (FOCWS) and a night vision enhancement system (NVES) aim to decrease driver's mental workload and enhance vehicle safety by provision of useful information to support driver's perception process and judgment process. On the other hand, the risk homeostasis theory (RHT) cautions that an enhanced safety and a reduced risk would cause a risk compensation behavior such as increasing the vehicle velocity. Therefore, the present paper performed the driving simulator experiments to discuss dependence on the NVES and emergence of the risk compensation behavior. Moreover, we verified the side-effects of spontaneous behavioral adaptation derived from the presentation of the fuel-consumption meter on the risk compensation behavior.
著者
中屋 晴恵(益田晴恵) 三田村 宗樹 奥平 敬元 篠田 圭司 西川 禎一 隅田 祥光
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

アジア諸国で拡大しつつあるヒ素汚染地下水の形成機構を研究した。バングラデシュの調査では,ヒ素を含む緑泥石が完新世の帯水層上部で化学的風化作用により溶解してヒ素を地下水中に溶出させていることを明らかにした。パキスタンやベトナムの調査でも整合的な結果が得られた。ヒ素を含む酸水酸化鉄が還元により分解されるとした定説を翻し,この観察事実はヒ素汚染地下水形成の最初期の過程として一般化できる。
著者
西川 洋子 福本 紘一 鐵見 雅弘 形井 雅昭 廻 治雄
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
藥學雜誌 (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.109, no.5, pp.340-343, 1989-05-25

The grayanotoxin III (GTX III) was given intraperitoneally to rats at a dose of 0.8 or 2.8 mg/kg. To study the effects of GTX III on rats, biological tests in serum for functions of liver and kidney and their pathological observation were performed 1 h after the administration. Using analysis of variance, multiple comparison and correlation on biological parameters, activities of glutamic-pyruvic transaminase (GPT), guanase and leucine aminopeptidase and concentrations of total protein, albumin, creatinine, uric acid and K increased significantly. These parameters showed dose-effect relations with GTX III. Though GPT and free fatty acid increased significantly, dose-effect relations were not shown. The activity of choline esterase and the concentrations of bilirubin, urea-N, lipoperoxide, cholesterol, triglycerides, Na and Cl were not significantly different. Pathological changes were not observed in the liver and kidney of rats. These results show that GTX III may affect the functions of liver and kidney in rats.
著者
中村 伸也 西川 一 山田 秀夫 原 文宏 神保 正暢 平野 宜一
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
海岸工学論文集 (ISSN:09167897)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.176-180, 2008-10-10 (Released:2010-06-04)
参考文献数
2

Historically, many disasters at Shimoniikawa Coast has occurred by high waves called Yorimawarinami from east. The direction of longshore sand transport of the Shimoniikawa Coast is eastward. In Nyuuzen-machi and Asahi-machi located in the east from the Kurobe River mouth which becomes the source of supply of the sand, many houses moved because of beach erosion. In such circumstances, intense high waves by the low pressure hit these areas on February 24, 2008, so that coastal protection facilities in Kurobe-shi, Nyuuzen-machi and Asahi-cho got damaged and, furthermore houses were flooded and destroyed by overtopping waves.In this paper, various observation data in Shimoniikawa Coast of Yorimawarinami was analyzed by and the cause of the disaster was considered.
著者
西川 幸宏 太田 直秀 小升 雄一朗 高橋 雅興
出版者
The Society of Materials Science, Japan
雑誌
材料 (ISSN:05145163)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.29-34, 2011
被引用文献数
7

Three-dimensional real-space images of the carbon fiber (CF)/polymer composites were obtained by a high-contrast X-ray computerized tomography (CT). Since both CF and polymers do not include heavy atoms, CF has not been supposed to be suitable to X-ray CT observation. In this study, we used the X-ray CT apparatus which is designed to enhance the contrast of the materials consisting only of light-weight atoms. Besides the usage of the appropriate apparatus, the experimental conditions were found to be important : cutting the sample into a thin rod, and obtaining sufficient number of projections. In our case, we used 1mm × 1mm × 4mm sample, and 720 projections with 0.25 degree intervals in order to obtain the 3μm voxel resolution in the reconstructed three-dimensional images. Eventually, each CF in polystyrene was clearly visualized in three dimensions.
著者
西川 喜良 藤原 儀直 北川 重太郎 木村 吉武 友近 理郎
出版者
甲南大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

概念チャートDBと教育評価DBを統一したMY・DBのマニュアルを作成した. また, UNIXマシンのCシエルコマンドを利用した概念チャートDBを作成すると共にそのシステムの使用説明書を作成した. 概念チャートDBを教育に活用し, その結果は, 物理概念のDB, 経営情報(処理)DBとそれぞれ別々に国際学会に報告する. 教育評価DBについては, 実際に教育に活用した結果をも報告する. 上記マニュアル類, 論文などを集めて別冊の報告書を作成したので, その詳細についてはこの別冊の報告書を参照されたい.
著者
勝間 みどり 伊藤 明美 西村 理恵 柿原 繭子 西川 千歳 善家 里子 神徳 規子
出版者
神戸市看護大学短期大学部
雑誌
紀要 (ISSN:13428209)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.17-25, 1998-03-05

阪神・淡路大震災から2年が経過した時点での,学生の震災体験の状況,災害観と災害対策,災害看護の授業に関する調査を行い,平成11年度より開講される「災害看護」の教育内容を検討した。調査の結果,8割の学生が震災を経験し,心身や学習,住居などに影響を受けていた。災害観は日本人の特徴である災害を天災や運命ととらえる運命論や天譴論が多かった。しかし一方では,災害対策を講じれば被害はくいとめられるという災害意識を持っていた。また,6割の学生が災害看護の授業を希望しており,救護活動,応急処置,看護婦の役割と責任など実践的な内容に関心が高かった。以上のような学生の状況を認識したうえで,学生や講師の実体験を生かし,被災地の特性をふまえた授業内容・方法の工夫が必要である。さらに,授業を行うことが災害の啓蒙活動にもつながり,災害看護学を確立していくことになる。
著者
西川 恵 湯村 和子 早坂 勇太郎 杉野 信博
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.425-426, 1980-05-25

東京女子医科大学学会第230回例会 昭和55年2月22日 東京女子医科大学本部講堂
著者
西川 哲成 富永 和也 尹 聖澤 上村 学 好川 正孝 戸田 忠夫 田中 昭男
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.272-281, 1996-09-28
被引用文献数
7 2

共焦点レーザ走査顕微鏡(CLSM)でラット硬組織を観察する条件を得るため,硬組織の各種ラベリング剤を用いて,その染色方法を検討し,立体的に観察した。生後4週の雄性ラットの背部皮下,大腿部の筋肉,腹腔そして頸部の静脈にcalceinを投与し,その2日後灌流固定を行った。下顎骨を摘出しエポキシ樹脂に包埋して厚さ500μmの非脱灰切片とした。これらの切片を励起波長488nmで,波長535nm (CH1)と610nm (CH2)のバリアーフィルターを用いてCLSMで観察した。また,ラットにcalcein, tetracyclineおよびalizarin redの種々な濃度のラベリング剤を単独あるいは複数組合せて投与し,同様の方法にて切片を作製し,CLSMで観察した。その結果,体重100gにつきcalceinの量が1または2mgのときにCH1およびCH2を,alizarin redは4または8mgのときにCH2を,tetracyclineは4または8mgのときにCH1およびCH2をそれぞれ使用することによって最も明瞭に観察できた。Calceinを静脈に投与した場合には,皮下組織への投与と比較して,ラベリング線は細く,染色程度も強かった。さらに,筋肉あるいは腹腔に投与した場合は静脈内と皮下投与の中間の結果であった。2重ラベリングでは体重100gにつきcalcein 2mgとalizarin red 4mgの投与がCLSMの観察に適していた。この染色条件では,象牙質の基質および支持歯槽骨の外側は規則正しく,そして歯根膜に接する固有歯槽骨は不規則にそれぞれラベルされていた。また,骨小腔および骨細管が立体的に観察された。
著者
小村 和久 稲垣 美幸 西川 方敏 中西 孝 早川 和一 唐 寧 楊 小陽 飯田 孝夫 森泉 純
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.335-342, 2007-09-25
参考文献数
5
被引用文献数
1

環境放射能の観点から能登半島地震発生前後の放射能関連のデータの解析を試みた.解析したのは,輪島市西二又地区で採取した大気浮遊塵中の^<210>Pb,輪島沖50kmに位置する舳倉島のラドン濃度,地震発生後の4月21日から西二又地区で連続測定を実施した空間γ線レベルの3項目である.その結果,地震発生約3週間前から大気浮遊塵試料のラドンの娘核種^<210>Pbの濃度が増加し,地震直前にピークに達した後に低下に転じ,約2週間後にほぼ平常値に回復していたことが分かった.舳倉島のラドンには地震の影響は見られなかったが,西二又における空間γ線レベルはラドンに由来すると考えれる高い値が約6週間後も続き5月中頃に平常値に戻ったことが明らかになった.