著者
鈴木 幸彦 鈴木 香 安達 功武 工藤 孝志 目時 友美 中澤 満
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.101-107, 2018-01-15

要約 目的:眼球破裂症例の手術予後を報告する。 対象:過去10年間の眼球破裂28例29眼を,創の位置から角膜群(7眼),強角膜群(15眼),強膜群(7眼)に分類した。 方法:初回手術は創縫合のうえ,術者の判断で前房洗浄や硝子体手術を行う場合も,初回から眼球内容除去術を行う場合もあった。 結果:術後矯正視力が0.1以上/0.01〜0.09/指数弁以下はそれぞれ角膜群で14%/43%/43%,強角膜群で33%/20%/47%,強膜群で0%/0%/100%であり,いずれも不良であった。 結論:現在も眼球破裂症例の視力予後は不良であり,特に創が強膜後方に及ぶ場合は視力維持が困難で,今後の課題と考えられた。
著者
美馬 正和 堀 允千 鈴木 幸雄
出版者
北海道文教大学
雑誌
北海道文教大学論集 = Journal of Hokkaido Bunkyo University (ISSN:13454242)
巻号頁・発行日
no.22, pp.135-146, 2021-03-15

本稿では日本の社会的養護の改善を促し,家庭養護や施設養護の重要性を確認する契機となったホスピタリズム論争に焦点を当て,先行研究では深く論究されていないホスピタリズム論争の整理を行い,その成果と問題点及び課題を明らかにした.その結果,ホスピタリズム論争の成果は,日本で初めて本格的な施設養護の養護論が議論され,3 つの養護理論が誕生したことである.だが,深い議論が伴わないままで終結していた.そのことによって,職員を含めた全体的な議論になっていなかったのであった.今後の課題としては,永続的な親機能に対する科学的知見を蓄積することであった.
著者
石井 則久 鵜殿 俊史 藤澤 道子 伊谷 原一 谷川 和也 宮村 達男 鈴木 幸一
出版者
日本ハンセン病学会
雑誌
日本ハンセン病学会雑誌 = Japanese journal of leprosy (ISSN:13423681)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.29-36, 2011-02-01
参考文献数
25
被引用文献数
1

&nbsp;&nbsp;Leprosy is suspected to develop after a long period of latency following infection with <i>Mycobacterium leprae</i> (<i>M. leprae</i>) during infancy, but definitive proof has been lacking. We found a rare case of leprosy in a chimpanzee (<i>Pan troglodytes</i>) born in West Africa (Sierra Leone) and brought to Japan around 2 years of age. At 31, the ape started exhibiting pathognomic signs of leprosy. Pathological diagnosis, skin smear, serum anti-phenolic glycolipid-I (PGL-I) antibody, and by PCR analysis demonstrated lepromatous leprosy. Single-nucleotide polymorphism (SNP) analysis verified the West African origin of the bacilli. This occurrence suggests the possibility of leprosy being endemic among wild chimpanzees in West Africa, potentially posing a zoonotic risk.
著者
與儀 ヤス子 藤村 響男 鈴木 幸一
出版者
日本ハンセン病学会
雑誌
日本ハンセン病学会雑誌 = Japanese journal of leprosy (ISSN:13423681)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.197-204, 2008-09-01
参考文献数
24
被引用文献数
1

1873年のらい菌発見から長い年月に渡って多くの研究者がらい菌の動物移植実験に尽力してきたが、1960年の Shepard による foot-pad 法の開発後はめざましい成果が残された。T-Rマウス、無胸腺 (ヌード) マウスのらい菌動物移植への導入、また、アルマジロ、チンパンジーやマンガベイサルの自然発症例が報告され、ハンセン病が人畜共通伝染病であることがその後のわずか十数年で確認された。増菌されたらい菌は大量菌を必要とする分野への供給に役立ち、らい菌の動物移植研究の成果はハンセン病医学に大きく貢献した。われわれがらい菌増殖用の tool として開発したコンジェニック高血圧ヌードラット (SHR. F344-Foxn1<sup><i>rnu</i></sup>) はIL-10産生能が高く、らい菌に対する感受性能が優れていた。本ヌードラット (<i>rnu/rnu</i>) に接種されたらい菌は接種部および非接種部位に肉眼的らい性腫瘤を作りながら増殖、全身化していく独特のらい菌感染像を呈すことから、ヒトL型ハンセン病患者の実験モデル動物として有用であり、同腹仔有胸腺ラット (<i>rnu/+</i>) では、らい菌感染後24時間目頃から、らい菌特異的免疫機構の成立を示唆する像が観察され、6ヶ月後には、リンパ球に幾重にも取り囲まれて、らい菌が殺菌され排除される像が観察されたことから、らい菌の宿主からの防御機構を研究する動物モデルとしてヌードラットとともに有用である。
著者
鈴木 幸司 野崎 晃 今野 紀雄 前田 純治
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.49, pp.51-52, 1994-09-20

人間の記憶はコンピュータの記憶システムのように番地指定によって情報を記憶したり取り出したりするのではなく,連想によって情報の記憶・想起が行なわれていると考えられている.したがって,記憶の一部からより関係の深い情報を想起でき,情報間の関係が記憶されている.本研究では,連想記憶を入力パターンX=(x_1,...,x_n)(1)と出力パターンY=(y1,...,yp)(2)の組が(3)のように複数存在するとしたときその入出力関係を記憶することと考える.((X^<(1)>,Y^<(1)>),...,(X^<(q)>,Y^<(q)>))入出力の関係を記憶することが記名過程であり,パターンを入力することでなんらかのパターンを出力をすることが想起過程である.このような連想記憶には,多くの研究があり相関学習と直交学習による連想記憶がその代表的なモデルである.また,ニューラルネットワークによる連想記憶も活発に研究されている.相関学習による連想記憶は,入力パターンが互いに直交しているときに入力パターン相互の干渉を排除でき正し想起が可能となる.また,直交学習による連想記憶では,n次元の入力ベクトルX_1,...,X_k(1k&pre:&pre:n)(4)が一次独立であるとき入力ベクトル相互の干渉を排除でき正しい想起ができる.しかし,連想記憶をパターン認識や画像復元に応用するとき,入力データにノイズは加わることが一般的であり,入力ベクトルの直交性や一次独立が満たされないことが多い.そこで本研究では連想行列をファジー数で表現することによってファジー連想記憶を実現し,その想起特性を評価した.
著者
倉茂 好匡 池尻 公祐 鈴木 幸恵 平川 一臣
出版者
日本地形学連合
雑誌
地形 = Transactions, Japanese Geomorphological Union (ISSN:03891755)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.131-149, 2005-04-25
参考文献数
19

当縁川流域での農業開墾は1894年に開始され, その後この流域内の農地面積は1930年ごろより激増した.一方, 当縁川下流部にある湿原内では1986年から1920年の間に蛇行流路の切断が生じ, このため開墾開始後に運搬されてきた土砂が新流路側方に堆積して自然堤防を形成した.この自然堤防堆積物の層序構造観察とその粒径組成および137Cs濃度の分析を行った結果, 砂質物質の堆積が1930年代終わりごろより開始されたのに対し, それ以前の堆積物はシルト質のものであることが判明した.この砂質堆積物に対して粒径分布トレーサー法を用いてその給源を推定したところ, 砂質堆積物は支流である忠類幌内川流域から主に流出してきていることがわかった.また, 本流のうち1980年代に直線化された区間も砂質堆積物の重要な給源となっていた.それに対し, 本流上流部からの砂質堆積物の供給量は少なかった.忠類幌内川流域の農地は, 第三紀層よりなる豊頃丘陵を刻む谷の谷底部付近にのみ存在している.それに対し, 本流上流部の農地は扇状地上に存在する.これらのことから, 特に豊頃丘陵の谷底部で行われた集中的な農地開墾が大きな砂質堆積物流出を招いたと判断した.
著者
小林 照忠 中川 国利 月館 久勝 遠藤 公人 鈴木 幸正
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.197-202, 2013-04-30
参考文献数
11

目的:腹腔鏡下虫垂切除術(Laparoscopic appen-dectomy:以下,LA)の有用性について検証した.方法:当科で手術を施行したLA 154例,開腹虫垂切除術(Open appendectomy:以下,OA)86例を,病理組織学的所見による炎症程度に基づいてカタル性,蜂窩織炎性,壊疽性に分類し,臨床的事項について比較検討した.結果:LAとOAでは手術時間に差はなかったが,術後合併症,特に創感染はLAがOAに比べて有意に低率であった.特に壊疽性では,その傾向が顕著であり,術後の絶食期間や在院期間もLAで有意に短縮していた.結語:LAはOAに対して,壊疽性のような高度炎症例においても術後合併症が有意に少なく,急性虫垂炎に対するLAの有用性が示唆された.
著者
鈴木 幸子 高瀬 直彦
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.14-16, 1961
被引用文献数
1

高層アパートの階段昇降を歩行で職とする人を被検者としてエネルギー代謝を実験した。<BR>普通の階段上昇速度は毎分40m内外でエネルギー代謝率は10となりかなり高い, 下降時は毎分45m程度で3程度となる。駈け昇る即ち毎分70mとなるとそのエネルギー代謝率は26となる。下降時でも毎分70mでは6.8となる。1回の昇降時間は短いが, こうしたアパート配達を職とする人の中には1棟で4回, 30棟で120回と階段昇降するとなると生体への負担は相当大きくなるものと思わねばならない。エネルギー代謝率7程度でとどめるとすると上昇時毎分30m, 下降時70mまでである。<BR>これは年令的に若く, しかも職業人でこの値となるから一般人がこの速度ではエネルギー代謝率は更に大きくなることが予想されるのでアパート昇降時の毎分速度は, これ以上遅くする必要があろう。
著者
吉光寺 敏泰 鈴木 幸吉
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
MEDCHEM NEWS (ISSN:24328618)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.54-58, 2017-05-01 (Released:2019-07-30)
参考文献数
5

Meiji Seikaファルマは、抗菌薬を中心とする感染症領域と中枢神経系領域をスペシャリティとした研究開発型製薬企業である。現在、創薬研究では感染症に加えて、免疫炎症・がん領域の強化に注力しており、外部連携を重視してアカデミアや企業との共同研究・技術導入などを推進している。さらなる研究能力向上を目的に、2016年4月に国内最大のバイオクラスターである神戸医療産業都市に研究拠点を開設し、複数の研究者を派遣して研究活動を進めている。創薬テーマの設定においては、対象疾患を絞って出口を見据え、臨床でのポジショニングを重視する方針としている。特に、自社単独では困難となりつつある創薬に対し、アカデミアや企業との複合的な連携を想定したネットワーク型創薬を成功の鍵として、新たな疾患領域と創薬モダリティの拡大に取り組んでいる。
著者
石黒 梓 川村 和章 石田 直子 神谷 美也子 中向井 政子 晴佐久 悟 田浦 勝彦 広川 晃司 串田 守 荒川 勇喜 田中 元女 鈴木 幸江 荒川 浩久
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.190-195, 2017 (Released:2017-08-08)
参考文献数
22

健康日本21(第2次)に歯・口腔の健康目標が示され,歯・口腔の健康が健康寿命の延伸と健康格差の縮小に寄与することが期待されている.学校保健教育は生涯を通じた口腔保健の取り組みの土台をなすものである. 本研究では,今後の子どもたちの保健教育の改善を目的に,平成28年度に使用されている小学校から高等学校の学習指導要領,学習指導要領解説および学校で使用されているすべての保健学習用教科書を資料に,口腔関連の記載内容を調査し,「歯科口腔保健の推進に関する基本的事項」の歯科疾患の予防計画の学齢期の内容と照合した. 小学校では大半が「むし歯」と「歯周病」に関する原因と予防について記載されていたが,フッ化物応用,シーラント,定期的な歯科検診の記載はほとんどなかった.中学校では「むし歯」と「歯周病」の記載はほとんどなく,「口腔がん」や「歯と栄養素」,水道法基準として「フッ素」の記載に変化していた.高等学校になると「むし歯」に関する記載はまったくなく,「歯周病」や「口腔がん」の記載が中心であったが,歯口清掃に関する記載はなかった. 現在の小・中学校および高等学校で使用されている保健学習用教科書は,「歯科口腔保健の推進に関する基本事項」の学齢期に示されている保健指導,う蝕予防,歯周病予防に関連する記載内容は不十分であり,学習指導要領を見直すとともに,子どもの発達に応じた表現で収載することを提言する.
著者
鈴木 幸子 福田 達男 荒金 眞佐子 吉澤 政夫 森本 陽治 安田 一郎 伊田 喜光
出版者
日本生薬学会
雑誌
生薬學雜誌 : shoyakugaku zasshi : the Japanese journal of pharmacognosy
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.28-31, 2006

In order to realize the cultivation of Asiasarum sieboldii from the seed, the growth condition of the embryos and germination conditions of the seeds were studied. Although the embryos of the seeds soon after harvest were immature and undifferentiated, they grew to differentiate into cotyledons and radicles during storage in wet sand at room temperature, and germinated with rooting 120 days after harvest. The optimum temperatures for growth of the embryos and the germination of the seeds were shown to be 15-20℃, whereas more than 90% success rate was obtained in about 60 days on the germination test in petri dishes. On the other hand, the optimum temperature for seedling emergence is thought to be 8-10℃, since the germinated seeds planted in a sowing bed sprouted in the early spring after lower temperature in winter.
著者
福田(日原) 桂 伊與田 雅之 齋藤 友広 荒井(布田) 典子 和田 幸寛 鈴木 幸恵 木崎 順一郎 恩田 秀寿 高橋 春男 柴田 孝則
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.379-385, 2018 (Released:2018-06-28)
参考文献数
22

症例は30歳代の女性. 4日前から右眼球運動痛, 右歪視症, 右眼下方視野狭窄を認め, 近医を受診した. 同日夜間から右眼の急速な視力低下がみられ, 指数弁まで低下した. 血液検査では抗アクアポリン4 (aquaporin-4: AQP4) 抗体陽性, 眼窩造影MRIにて右視神経に高信号を認め, 視神経脊髄炎関連疾患, 中でも抗AQP4抗体陽性視神経炎と診断した. 近医にてステロイドパルス療法を2クール施行, 後療法としてプレドニゾロン40mg/日の内服を開始したが, 視力, 視野の改善は得られず, 血漿交換療法施行目的に当院転院となった. 計7回の二重膜濾過血漿交換 (double filtration plasmapheresis: DFPP) を施行し, 抗AQP4抗体は陰性化, 視力改善, 視野の拡大を認めた. DFPPはステロイド治療抵抗性の抗AQP4抗体陽性視神経炎に有用な治療法の一つであると考えられた.
著者
鈴木 幸人 大縄 将史
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

既に提案されている圧縮性Navier-Stokes方程式に対するGENERICによる定式化の手法を調査・検討し,今後の利用に向けて理論を整理した.またvan der Waalsの状態方程式をもつ圧縮性流れに対して,そのGENERIC定式化に離散変分導関数法とmimetic finite difference法を適用することを検討した.さらに,非圧縮流れに対する三次元渦度方程式にCahn-Hilliard方程式あるいはAllen-Cahn方程式を組み合わせたdiffuse interface modelに対しても同様にGENERIC型の定式化と構造保存型数値解法の適用性を検討した.その結果,このdiffuse interface modelに対しては歪対称のPoisson括弧と半負定値対称の散逸括弧を用いた定式化が可能であり,それにmimetic finite difference法と離散変分導関数法を適用できることが明らかになった.そこで,それらに基づき,三次元Euclid空間上のde Rham複体の構造を正しく受け継ぐとともに,運動エネルギーとヘリシティが非粘性流れにおいては正確に保存し,粘性流れに対しては適切に散逸する数値計算手法を開発した.特に,これは流れの物理的解釈において重要な意味をもつ運動エネルギー,ヘリシティ,エンストロフィーの収支をそのまま離散式で模擬できるような計算手法になっている.また実際にC++言語による計算プログラムを作成し,それを用いて周期的に配置された液滴の表面張力による振動運動の計算を行って,開発した数値解析手法の有効性を確認した.