著者
川崎 幸彦 細矢 光亮 片寄 雅彦 鈴木 仁
出版者
社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.104-109, 1999-02-20 (Released:2011-02-07)
参考文献数
19
被引用文献数
4 12

近年, 麻疹やRSウイルス (RSV) 感染症に対するビタミンA補充療法 (本療法) の有効性が報告されているが, 本邦のようにビタミンA欠乏が問題にならない国における本療法の治療効果に関する報告は少ない.今回, 私達は, 基礎疾患を有さず栄養状態の良好な麻疹患児108例とRSV感染症患児95例を臨床症状の重症度により中等症と重症の2群に分類し, 各群についてビタミンA投与群と非投与群で, その主要臨床症状の持続期間, 入院期間, 合併症の有無を比較検討した.ビタミンAは入院第1, 第2の両病日に各々10万単位を経口投与した.麻疹患児群ではビタミンA投与群において重症度にかかわらず咳噺の持続期間が有意に短縮したが, 発熱期問や入院期問および合併症の出現率に有意差はみられなかった.RSV患児では重症度においてビタミンA投与により陥没呼吸や瑞鳴の出現期間が短縮した.すなわち, ビタミンA補充療法は本邦における麻疹やRSV感染症において, 特に重症例ではその臨床症状を改善するものと考えられた.
著者
竹渕瑛一 山田泰宏 猪狩知也 鈴木浩 服部哲 速水治夫
雑誌
マルチメディア、分散協調とモバイルシンポジウム2013論文集
巻号頁・発行日
vol.2013, pp.84-88, 2013-07-03

イラスト投稿型SNS の一つであるPixiv では,多くの二次創作イラストが投稿されている.Pixivでは,ユーザがイラストに対し自由にタグ付けできる.また,二次創作イラストが多いため,タグの特徴として作品タイトルを表すジャンルタグと,そのキャラクターを表すキャラクタータグがよく付けられる.一方で,Pixiv ではこの2 種類のタグについて区別を行なっていない.本研究では,与えられたイラストのタグ群からキャラクタータグを検出する手法(キャラクタータグ分類法)について検討を行った.提案手法は与えられたタグ群のジャンルタグに対して,よく付けられやすいタグをキャラクタータグとする.実験では提案手法の適合率と再現率,F 尺度について求め,評価を行った.
著者
鈴木 武幸
出版者
東海学院大学・東海女子短期大学
雑誌
東海女子大学紀要 (ISSN:02870525)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.39-53, 2006-03-31

日本の社会は二十世紀後半から二十一世紀にかけて、本格的な少子高齢化社会に突入したといえる。バブル経済によってそれまで安定していたかに見えた経済及び行政に陰りが見え、改革による建て直しが必至となってきた。そうした行政改革が行われていく中で社会福祉領域においても構造改革が進められ、今までの措置制度から契約制度へとその構造を大きく転換した。介護保険の導入、障害者への支援費制度の導入、そして今回の障害者自立支援法へと矢継ぎ早に各施策が行われつつある。中味としては、行政改革からくる三位一体の改革によって市町村へさまざまな権限の委譲がおこなわれ、国の責任が後退する中、代わって福祉分野においても民間活力による競争原理が導入された。こうした一連の改革の一つとして位置付けられた障害者自立支援法は弱者への新たな経済的負担や就労による自立強制を求めるものとして、改めて障害者の間にさまざまな波紋を投げかけている。法(案)の概要は障害者の地域生活と就労を後押しするための支援を行い、障害者基本法の基本理念を尊重しながら、今までの障害種別(身体障害者福祉法、知的障害者福祉法、および精神障害者福祉法)ごとに行われてきた福祉サービスを一元化し、サービスの提供主体を市町村で行うこととした。また、具体的な自立支援を行うため、その対象者・内容・手続き等地域生活支援事業、サービス整備のための計画書作成及び費用負担を定め、今後増えつづける福祉サービス等の費用を含めた支援を国民全員で負担しあう仕組みを作っていくこととした。こうした状況のもと、私たちが社会福祉実践として障害者自立支援に取り組む場合、まず、新たにだされた障害者自立支援法(案)の中身を検討し、今まで社会福祉実践として積み上げてきた多くの成果とのすり合わせを行うことが必要となる。特に、障害者自立支援法においては障害者の個人的な能力と自助努力の必要性を強調しており、本題とされるべき「障害者の自立とは何か」についての定義が曖昧である。いずれにしても、国際障害年以降浸透してきたノーマライゼーションの考え方は障害(者)を個人の問題として捉えるのではなく、社会との関係で捉えていく事が大事なことである。そして障害者が自立していくためには、障害者自身が社会福祉サービスを使いこなしていく主人公になることが強調されることであり、そのことが真の生存権保障につながっていくものである。
著者
家田 仁 上西 周子 猪股 隆行 鈴木 忠徳
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 = Proceedings of JSCE (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.576, pp.69-82, 1997-10-20
参考文献数
29
被引用文献数
18 17

1995年1月の阪神大震災においては, 脆弱な建築物と貧困な街路インフラに起因して, 瓦礫や電柱の倒壊により, 数多くの場所で街路が閉塞し, 救助, 消火, 物資輸送などの救援活動など, あらゆる防災活動の局面で多大な影響を及ぼした. 本研究では, こうした街路閉塞による街路の機能的障害に着目し, 1) 既往の地震における街路閉塞の発生状況と既往の防災計画のスタンスを把握するとともに, 2) 航空写真を用いて街路閉塞現象を数値的に捉え, 3) その発生要因を考察し, さらに4) 街路閉塞が緊急活動に及ぼした影響を調査して, 今後の防災計画や都市計画のあり方を検討した.
著者
梶浦 一郎 鈴木 茂
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.p309-328, 1980-12
被引用文献数
3 3

ニホンナシ在来品種と育成品種ならびにチュウゴクナシの白梨系統,秋子梨系統,合わせて432品種の果形図を52の文献から集め,果形を表現する9形質を測定して,ニホンナシ在来品種の果形の変異の範囲,分布の様相,果形から見た在来品種の地理的分布の偏りを明らかにするとともに,品種改良に伴う果形の変遷を調べた。9形質の頻度分布図より,秋子梨系統には肩と帯端部の丸みおよび肩幅が大きく,しかも両窪が浅い品種が多かった。白梨系統は各形質とも変動が大きかったが,肩幅が狭く,肩の丸みが小さい品種が多かった。ニホンナシは各形質とも変動が大きくて,扁円形から倒卵形,卵形まで種々の果形が見られたが,円形でやや重心が低く,両窪もやや深い品種が多かった。一般に特定形質で特異な値を示した品種は地理的に局在する傾向が見られ,特に果形の細長い品種は九州および日本海岸地方に多く分布した。江戸末期から明治時代に発見された品種群中には,江戸時代の品種に比べ,円形,扁円形の品種および両窪の深い品種が多く,重心の低い品種や帯端幅の狭い品種は少なかった。これに反し,近年の育成品種には,円形または扁円形で重心が果実の中心にあり,しかも,帯端幅の広い品種が多く,一部には著しく扁円で両窪の深い品種も含まれた。9形質の主成分分析による第1一第2主成分の品種散布図から,9つの果形群に分け,品種由来地の地方別,種類別ごとに,各果形群の出現率を比較した。九州在来品種群は他の地方よりも果形が長く,重心が下がった果形群の比率が高く,その出現率は白梨系統と似ていた。また,関東在来品種群は扁円で肩幅が広く,梗塞の深い果形群の比率が高かった。第2一策3主成分の散布図から,9つの果形群に分けると,東北地方は他の地方に比べ,帯窪が浅くて重心が低く,帯端幅の狭い果形群の比率が大きく,その出現率は秋子梨と似ていた。一方,北陸地方には帯窪の浅い品種の分布が見られなかった。
著者
徳留 真一郎 八木下 剛 羽生 宏人 鈴木 直洋 大毛 康弘 嶋田 徹
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.1-15, 2008-02

無毒で常温貯蔵可能な液体推進剤として亜酸化窒素(N_2O)/エタノールの組合せに着目し,それによる扱い易い液体推進系の実証研究を進めている.当面の目標として大気吸い込み式極超音速推進系の飛行試験に用いる加速用ロケットエンジンへの適用を目指しているが,その低温環境順応性を活かす衛星・探査機搭載推進系への応用も視野に入れている.これまでに,推力700N級の要素試験供試体を用いた燃焼試験を2シリーズ行って,エンジン噴射器設計のための有用なデータと運用特性を取得してきた.併せて,水冷式燃焼器による燃焼器壁面熱流束分布の測定や厚肉のシリカ繊維強化プラスチックSFRP製燃焼器を用いた燃焼試験によって燃焼器への耐熱複合材料適用の可能性も探っている.
著者
岡田 桂祐 日下部 真吾 高橋 亮輔 鈴木 憲吏
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会誌 (ISSN:13405551)
巻号頁・発行日
vol.136, no.5, pp.307-310, 2016

1.はじめに 東日本旅客鉄道株式会社 (以下JRE) では山手線向けに新型通勤電車E235系 (以下E235系) を開発した。山手線は東京都内の主要駅を結んでおり,1日あたり100万人以上が利用する日本を代表する路線の一つである。2018年には量産が開始され,東京オリンピックが開催される
著者
鈴木 宏昭 杉谷 祐美子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.154-166, 2012 (Released:2013-01-16)
参考文献数
73

本論文では大学生のレポートライティングにおける問題設定に注目して, その援助の可能性を探究した。問題設定は気づき, 洗練, 定式化の3つのプロセスからなり, この各々のプロセスで支援の可能性が存在する。気づきについては文献の批判的読みと直感的判断が重要である。これらを援助することでよりよいレポートが作成される可能性が高まる。洗練の段階では図的にあるいは言語的に自らのアイディアを外化することでレポートの質が向上することを示した。問題の定式化の段階では, 明確化, 普遍化, 相対化の3つが必要となる。協調学習環境下の長期にわたるライティング実践の結果, 明確化と相対化は普遍化に比べて学習されやすいことが明らかになった。
著者
鈴木 弘孝 中山 浩成 田代 順孝
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.158-163, 2007-08-31
被引用文献数
3 3

都市のヒートアイランド現象の対策として有力視されている屋上や壁面等建物緑化による温熱環境改善効果を定量的に把握することを目的として,実在の街区をモデルとしてCFD(計算流体力学)解析を行い,建物緑化の違いによる街区内での温度と湿度の変化について数値解析を行った。解析の結果,対象街区での緑化なしに比べて,地表面・屋上の緑化と壁面緑化を組み合わせた場合,気温では街区中心部で最大で約4℃の低減,湿度では最大16%の上昇が見られ,実在街区を対象とした建物緑化による温熱環境改善効果の定量的な評価の可能性が示唆された。
著者
鈴木 純一
出版者
北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院 = Research Faculty of Media and Communication, Hokkaido University
雑誌
メディア・コミュニケーション研究 (ISSN:18825303)
巻号頁・発行日
vol.68, pp.95-108, 2015

This study is based on the functional similarity of metaphor and media. On the other hand both of them connect the various meaning, and on the other hand both of them also separate the connected meaning. The first purpose of this paper is to analyze the interdependency of these two functions theoretically, and the second purpose is to make the relation between these mechanism and text interpretation clear. Several text about philosophy, thought, literature, aesthetics and criticism is analyzed here. In particular text of German sociologist LUHMANN plays the double (recursive) roles as a theory of analysis and as a target of analysis. This duality seems to be a tautology or a paradox. But it makes the function of media by metaphor and also the metaphor-like function by media possible. Though logical contradiction is included, this relation supports the paradoxical structure by metaphor and media.
著者
橋本 修二 川戸 美由紀 山田 宏哉 鈴木 茂孝 三重野 牧子 遠又 靖丈 村上 義孝
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.62, no.10, pp.617-623, 2015 (Released:2015-11-25)
参考文献数
11

目的 国民生活基礎調査の世帯数と患者調査の推計患者数について,東日本大震災によって調査対象から除外された地域の補完を行った。方法 国民生活基礎調査において,東日本大震災によって調査対象から除外された2011年の岩手県・宮城県・福島県と2012年の福島県の世帯数について,前後の大規模調査年の情報を用いて線型内挿法で補完した。2011年における宮城県と福島県の推計患者数について,同年の患者調査(宮城県の石巻・気仙沼医療圏と福島県が調査対象から除外)と2012年の福島県患者調査,2011年と2012年の医療施設調査と病院報告を用いて補完した。結果 全国の世帯数(各年 6 月時点)における補完値は2011年で48,732千世帯,2012年で48,874千世帯であった。世帯構造別の世帯数において,2011年と2012年の調査値が前後の年次よりも大きく落ち込んでいたのに対して,両年の補完値には落ち込みがなかった。2011年10月の推計患者数の補完値は,全国で入院1,365.4千人と外来7,383.9千人,施設所在地が宮城県で入院21.2千人と外来130.0千人,施設所在地が福島県で入院22.0千人と外来108.8千人であった。調査値に対する補完値の比を性・年齢階級と傷病分類ごとにみると,全国の推計患者数ではほぼ1.02倍であったが,患者住所地が宮城県と福島県の推計患者数ではきわめて大きかった。結論 国民生活基礎調査の世帯数と患者調査の推計患者数の補完値を示した。年次推移の観察にあたって,補完の仮定を十分に考慮することが重要であろう。
著者
古橋 忠晃 津田 均 小川 豊昭 鈴木 國文 清水 美佐子 北中 淳子 照山 絢子 堀口 佐知子 清水 克修 後岡 亜由子 Figueiredo Cristina Pionné-Dax Nancy Tajan Nicolas Vellut Natacha Singly François de Pierrot Alain Castel Pierre-Henri Furuhashi Tadaaki Tsuda Hitoshi Ogawa Toyoaki Suzuki Kunifumi Shimizu Misako Kitanaka Junko Teruyama Junko Horiguchi Sachiko Shimizu Katsunobu Sedooka Ayuko
出版者
名古屋大学総合保健体育科学センター
雑誌
総合保健体育科学 (ISSN:02895412)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.29-33, 2011-03-31 (Released:2014-06-11)

In recent years the hikikomori (social withdrawal) phenomenon described in Japan has also come to be seen in Europe, particularly France. Despite the high level of interest in hikikomori in France, it has not been clearly defined and there is no clear overall understanding of the phenomenon. Our Japanese-French research team, supported by a Grant-in-Aid for Scientific Research (B) (overseas surveys), compared hikikomori youths in France and Japan from the perspectives of researchers in various fields. The aim of this study was to investigate the kinds of people to whom the concept of hikikomori is applied in France and Japan. A clinical conference was held in Paris in September 2010 to discuss cases considered to be hikikomori in the two countries. This article is an interim report from research in the first year of a series of international joint studies, and describes the commonalities and differences in the state of hikikomori in Japan and France.
著者
鈴木 有美 木野 和代
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.487-497, 2008-12-30
被引用文献数
17

本研究の目的は,共感性の多次元的アプローチに従い,他者の心理状態に対する認知と情動の反応傾向をそれぞれ他者指向性-自己指向性という視点から弁別的に測定しうる多次元共感性尺度(MES)を作成し,その信頼性と妥当性を検証することであった。先行研究における概念定義の議論および既存尺度の構成を概観し,「他者指向的反応」「自己指向的反応」「被影響性」「視点取得」「想像性」の5つの下位概念を設定した。これらを測定する項目を作成し,質問紙調査を実施した。大学生871名から得られた回答について因子分析を行った結果,5つの下位概念に対応する5因子が得られた。α係数,I-T相関係数,再検査信頼性係数などの結果から信頼性を検討した。また,既存の共感性尺度および共感性との関連が予想される概念を測定する尺度との相関から妥当性を検討した。今後,自我発達との関連など認知・情動反応傾向の指向性を規定している要因の検討を進めることが,共感性に関する応用研究において有益と考えられる。
著者
鈴木 良
出版者
一般社団法人日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.49-62, 2015-08-31

本研究は入所施設とグループホーム/ケアホーム(以下,GH/CHと略記)で生活する知的障害者を対象に,1)入所施設よりもGH/CHの生活の質が向上するかどうか,2)GH/CHでは障害程度に応じて生活の質が変わるのかを検証した.その結果,第一に,GH/CHでは入所施設よりも自己決定の機会が向上することがわかった.ただし,これは日常生活にかかわる決定や外出機会の向上を意味し,入所施設と同様に人生にとっての重大な決定への参加機会は乏しかった.一方,GH/CHでは入所施設と同様に,人間関係,自己決定,社会参加の機会が低い水準であり,物資的豊かさ,健康,権利擁護は高い水準であった.ただし物質的豊かさ・権利擁護については自立的生活に伴いニーズが変化することや,プライバシーが十分に保障されていないことを考慮に入れなければならない.第二に,GH/CHでは障害の重度化に伴い生活の質が悪化する状況が見いだされた.
著者
鈴木 彌生子 中下 留美子 赤松 史一 伊永 隆史
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.250-252, 2008-05-15 (Released:2008-06-30)
参考文献数
16
被引用文献数
10 14

コメの産地偽装問題が起きており,コメの産地を科学的根拠に基づいて判別する技術が必要とされている.本研究は,日本産,豪州産,米国産コシヒカリを用いて,炭素・窒素・酸素安定同位体比解析を行い,安定同位体比解析によるコメの産地判別の可能性を検証した.解析の結果,日本産のコメの安定同位体比は,平均値で,炭素では米国産よりも0.7‰,窒素では豪州産よりも3.8‰低く,酸素では豪州産と米国産よりもそれぞれ12.6‰,3.5‰低い値を示した.安定同位体比から,日本産のコメは,他国産のコメと識別できることが明らかになった.安定同位体比解析は,DNA判別や微量無機元素測定などの他の技術と相補的に利用すれば,強力な産地判別技術になる可能性がある.
著者
赤瀬 朋秀 秋葉 哲生 井齋 偉矢 鈴木 重紀
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.655-663, 2000-01-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
7
被引用文献数
5 6 3

1997年12月より1998年2月の3ヵ月間に, かぜ症候群にて調査対象施設を受診した患者875名に関して処方薬の調査を行った。対象患者を西洋薬治療群, 漢方薬治療群, 西洋薬漢方薬併用群に分類し, 平均年齢, 薬剤数, 処方日数を調査し1日当りの薬剤費を算定したところ, 西洋薬治療群では203.8円, 漢方薬治療群では119.6円, 西洋薬漢方薬併用群では215.9円となり, 漢方薬単独で治療した群の薬剤費は西洋薬で治療した場合と比較すると60%ほど安価であり, 経済効率がよいことが明らかとなった。また, 平成10年度の薬効別の医薬品売上のシェアから削減可能な薬剤費を予測すると, 最低でも415億円の削減が可能であることが推測された。以上より, かぜ症候群の治療に, 漢方薬を取り入れることは経済効率が極めて高いことが示唆された。