著者
長束 勇 小林 範之 石井 将幸 上野 和広 長谷川 雄基 佐藤 周之 佐藤 嘉展
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

初年度(2017年度)の成果を踏まえ,本年度は日本国内で実施する実験・解析の課題について取り組むこととした。一方,ブータン王国側のカウンターパートである農林省農業局(DOA)との共同研究の推進(とくにVisa取得,計測機器や資材のブータン王国内への搬入)に,日本の大学との関係の明文化が求められたことに加え,ブータン王国の国政選挙から政権交代(2018年12月)があり,現地調査等の進行を止めざるを得なかった。その中で,佐藤が2018年6月に単独で渡航し,DOAのチーフエンジニアと面談をし,現地実証実験のフィールドの確認と今後の工程を確認している。本研究課題のゴールは,開発途上国で容易に応用可能で経済性に優れ,耐震を含めた安定性を有する小規模ため池の工法開発である。本年度は,各研究分担者によって,実験室内レベルで設定した研究課題をそれぞれ進めた。根幹となるため池築造技術に関する研究としては,ベントナイトを利用する研究を進めた。ベントナイト混合土によるため池堤体内の遮水層構築は,理論的には可能である。しかし,ベントナイトの膨潤特性の管理や強度特性など,安定した貯水施設の利用には課題が残っている。本年度は,ベントナイトの種類,ベントナイト混合土を室内試験にて一定の条件で確認するための母材,ベントナイト添加率と物理的・力学的特性の評価を行った。本実験で確認した条件下でのベントナイト混合土に対して,透水性の評価までを行い,十分に実用に耐える配合条件を確保できることを確認した。今後,最終年度には,耐震性および浸透特性の解析を国内で進めながら,ブータン王国内における現地実証試験の具体化を進める予定である。具体的には,現地で確保できるベントナイトならびに母材を用いたベントナイト混合土の特性評価,ならびにため池堤体の建造技術への応用を進める予定である。
著者
外山 紀子 長谷川 真里
出版者
法と心理学会
雑誌
法と心理 (ISSN:13468669)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.131-143, 2011-03

本研究では、質問紙調査を実施することにより、様々な人権や公共の福祉が葛藤する場面における大学生(n=246)の判断と推論を検討した。調査対象者の中には法学専攻の学生は含まれていない。様々な人権の葛藤を含む4つのストーリーを提示した。道徳的判断を求める質問紙(n=141)では「どうすべきか」という判断を求め、法的判断を求める質問紙(n=105)では「もしあなたが裁判員だったとしたら、どのように考えますか?裁判員としてどうすべきかを判断してください。」と質問した。大学生の判断は、性別、現在の専攻、高校時代の社会科選択科目、法律用語に関する知識量、人権について深く考えさせられた経験の有無によって大きく異ならなかった。また、道徳的判断と法的判断との間にも明らかな相違がなかった。さらに、「適正手続きの無視」、「人柄への過度の注目」、「一方の利益のみを考慮」、「可能性の決めつけ」といったヒューリスティックスがかなりの大学生に認められた。
著者
益岡都萌 長谷川達矢# 西山めぐみ 寺澤孝文
出版者
日本教育心理学会
雑誌
日本教育心理学会第60回総会
巻号頁・発行日
2018-08-31

目 的 学校現場で一般的に用いられる定期テスト等では,学校内や学級内の平均値と比較して成績が低い子どもは,自身の学力について否定的なフィードバックを得やすい。そのため,学習の成果を実感することが難しく,学習意欲も低いと考えられる。一方,マイクロステップ計測法(寺澤,2016)は,日々の学習の蓄積による微細な変化を描き出すことが可能であり,成績が低い子どもであっても,学習により成績が向上する様子を示したフィードバックを得ることができる。本研究では,特に学習意欲が低い子どもに焦点を当て,マイクロステップ計測法を用いて,学習成果が蓄積していく様子をフィードバックすることで,学習意欲の向上がみられるかについて検討することを目的とした。方 法対象者 小学5年生132名が参加した。実施期間 2017年5月~2018年3月。刺激 教材として,e-learningによる漢字の読みの学習ドリルが用いられた。寺澤(2007)の基準表を基に,小学校で学習する漢字を含む語句リストをスケジューリングし,9つの難易度で構成される学習セットを作成し,最も難易度の高い学習セット(レベル9)の語句から学習を開始した。夏休み明け頃から,子どもがレベル6~9の中から難易度を選択できるようにした。尺度 学習意欲の測定のために,学芸大式学習意欲検査(簡易版)(下山・林ら,1983)から自主的学習態度・達成志向・反持続性の3つの尺度を用いた。手続き 協力校と相談の上,上記実施期間に渡り漢字の読みの学習ドリルを実施した。実施に際しては保護者から同意を得た。学習ドリルは,呈示された語句についての理解度を4段階で自己評定する学習が4日間と,客観テストの日が1日の計5日間の学習が1つの学習単位期間としてスケジューリングされた。ドリルの最後に学習意欲についての質問項目が挿入され,3単位期間ごとに繰り返し測定された。また,実施期間中に,子どもに対して,自身の学習ドリルにおける自己評定値の推移をグラフで示した冊子を配布し,個別に学習成果のフィードバックを行った。2017年5月下旬に学習開始時の学習意欲の測定が行われた。フィードバックはおよそ1ヵ月に1回のタイミングで行われた。また,教師に対してフィードバックの内容を参考に,特に成績が低いが上昇傾向を示している子どもに対して褒める指導を行うよう依頼した。結果と考察 ここでは自主的学習態度の得点についてのみ報告する。分析には4回目のフィードバック後までのデータを用いた。学習開始時の得点が全体の平均値-1SD未満の値を示す子どもを低位群とし,それ以外の子どもを中・高位群とした。欠損値のあるデータを分析から除外し,低位群は10名,中・高位群は51名であった。各群における自主的学習態度得点のフィードバック回数ごとの平均値をFigure 1に示した。 低位群及び中・高位群と,学習開始時を含むフィードバック回数の2要因の分散分析を行ったところ,交互作用が有意であった(F(3.31, 195.23)=8.19, p<.001)。単純主効果の検定を行ったところ,低位群においてフィードバックの回数ごとの得点間に有意差が認められ(F(2.2, 19.8)=5.84, p<.01),学習開始時と4回目のフィードバック後の間及び2回目と4回目のフィードバック後の間に得点の有意な上昇が認められた。以上の結果から,学習意欲が低い子どもであっても,自身の学習が蓄積していく様子を示したフィードバックを受けることで,学習成果を実感することができ,学習意欲が向上したと考えられる。主要引用文献寺澤 孝文(2016). 教育ビッグデータから有意義な情報を見いだす方法―認知心理学の知見をベースにした行動予測 教育システム情報学会誌,33,67-83.
著者
長谷川 卓
出版者
日本古生物学会
雑誌
化石 (ISSN:00229202)
巻号頁・発行日
vol.101, pp.75-80, 2017-03-31 (Released:2019-04-03)

We often consider whether the sedimentary features observed in strata of remote areas with similar ages represent identical event or not. One of them may precede the other with a mutual or causal relationship. International correlation is prerequisite for such basic discussions. We are still waiting for definitions of GSSPs (GSSP: Global Boundary Stratotype Section and Point) for five Lower Cretaceous stages. It is partly due to the endemism of index fossil groups including ammonoids from middle-late Jurassic. There have been some important progresses; a working group of International Subcommission on Cretaceous Stratigraphy under International Commission on Stratigraphy voted and selected basal horizon of a zone of calpioneriids as a candidate of primary marker for the basal Cretaceous boundary. GSSP for the Aptian/Albian stage boundary was decided and ratified in March of 2016; planktonic foraminiferal Microhedbergella renilaevis was selected as a primary marker and a negative excursion of carbon isotope value as a crucial secondary marker. Cyclostratigraphy and astronomical tuning across Cretaceous GSSPs and chemostratigraphy of rare elements appear to be more significant for finer international correlation.
著者
落合-大平 知美 倉島 治 長谷川 寿一 平井 百樹 松沢 哲郎 吉川 泰弘
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement 第22回日本霊長類学会大会
巻号頁・発行日
pp.85, 2006 (Released:2007-02-14)

大型類人猿情報ネットワーク(GAIN)および旧ナショナルバイオリソースプロジェクト・チンパンジーフィージビリティスタディでは、国内で飼育されている大型類人猿の基本情報を収集および公開するとともに、廃棄される遺体の有効利用など、非侵襲的な方法での研究利用の推進をおこない、飼育動物の生活の質(QOL)の向上などにつながる研究の促進と、その研究成果のフィードバックに取り組んできた。本発表では、大型類人猿を飼育する36施設を実際に訪問しておこなわれたヒアリングと、社団法人日本動物園水族館協会(2004年6月2日現在、国内の91の動物園と69の水族館が加盟)によりまとめられた血統登録書や過去の文献などから、大型類人猿の日本での飼育の歴史についてまとめたので報告する。 日本の大型類人猿の飼育の歴史は、江戸時代である1792年にオランウータン(Pongo pygmaeusもしくはPongo abelii)が長崎の出島に輸入されたのが最初である。1898年には上野動物園でオランウータンが、1927年には天王寺動物園でチンパンジー(Pan troglodytes)が展示されている。ゴリラ(Gorilla gorilla)がやってきたのは、戦後の1954年であり、移動動物園で展示された。1950年以降は日本各地に動物園が設立され、1980年に日本がCITESを批准するまで、ボノボ(Pan paniscus)を含むたくさんの大型類人猿が輸入されている。近年は、チンパンジーが56施設352個体(2005年12月31日現在)、ゴリラが11施設29個体(2005年9月30日現在)、オランウータンが24施設53個体(2004年12月31日現在)飼育されているが、亜種問題や血縁関係の偏りなどが明らかになっており、遺伝的多様性を確保したままの個体数の維持が課題となっている。
著者
木村 俊哉 高橋 政浩 若松 義男 長谷川 恵一 山西 伸宏 長田 敦
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.1-22, 2004-10

ロケットエンジン動的シミュレータ(Rocket Engine Dynamic Simulator : REDS)とは、ロケットエンジンの始動、停止、不具合発生時等のエンジンシステム全体の過渡特性を、コンピュータを使って模擬し評価する能力を持った計算ツールである。REDS では、ロケットエンジンの配管系を有限個の配管要素の連結(管路系)としてモデル化し、この管路系に対しボリューム・ジャンクション法と呼ばれる手法を用いて質量、運動量、エネルギーの保存方程式を時間発展的に解くことによって管路内(エンジン内)における、燃料、酸化剤、燃焼ガスの流動を計算する。ターボポンプ、バルブ、オリフィス等の流体機器はボリューム要素やジャンクション要素にそれらの対応する作動特性を持たせることで動作を模擬する。燃料や酸化剤の物性については、ロケットエンジンの特殊な作動範囲に適応するよう別途外部で開発された物性計算コード(GASP 等)を利用するが、そのためのインターフェースを備える。燃焼ガスの物性計算については、熱・化学平衡を仮定した物性計算を行い、未燃混合ガスから燃焼状態、燃焼状態から未燃混合状態への移行計算も行う。ターボポンプの運動は、ポンプやタービンの特性を考慮したポンプ動力項、タービン動力項を加速項とする運動方程式を流れの方程式と連立して時間発展的に解くことによって求める。未予冷区間においては、配管要素と流体との間の熱交換を、熱伝導方程式を解くことによって求め、再生冷却ジャケットにおいては、燃焼ガスから壁、壁から冷却剤への熱伝達を考慮する。燃焼室、ノズル内においては、燃焼ガス流れの分布から熱流束の分布を考慮する。今回のバージョンでは、2 段燃焼サイクルを採用した我が国の主力ロケットLE-7A 及びLE-7 の始動、停止過程時における動特性を模擬することを目的にエンジンモデルを構築し、実機エンジン燃焼試験の結果と比較することでシミュレータの検証を行った。但し、ボリューム要素の組み合わせは任意であり、エキスパンダーサイクルなどの新しいエンジンシステムに対しても適用が容易に出来る。計算の高速化のために2CPU 以上用いた並列処理への対応を行い、ネットワークで接続した複数のPC(PC クラスタ)を用いた並列計算も可能である。

2 0 0 0 OA 飛州志

著者
長谷川, 忠崇
出版者
巻号頁・発行日
vol.巻1-3,
著者
近藤 まなみ 長谷川 拓 森 直樹 松本 啓之亮
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第32回全国大会(2018)
巻号頁・発行日
pp.1N103, 2018 (Released:2018-07-30)

近年,AIの分野で人狼ゲームが注目を集めている.人狼ゲームはコミュニケーションゲームの一種であり,不完全情報ゲームに分類される.人狼ゲームには未知の情報があるため,このゲームを攻略する戦略の一つとして,未知の情報を予測に基づいて判断することが挙げられる.人狼ゲームにおいてプレイヤが知ることができる情報は限られており、その中には虚偽が存在する可能性がある.本論文では限られた情報を学習することで不確実な情報下での予測を試みるため,人狼ゲームの持つ時系列性を考慮し,LSTMを用いた.また,得られた予測モデルを用いてゲーム分析をした.
著者
界 瑛宏 山口 勉 三武 裕玄 長谷川 晶一
出版者
特定非営利活動法人 日本バーチャルリアリティ学会
雑誌
日本バーチャルリアリティ学会論文誌 (ISSN:1344011X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.83-92, 2019 (Released:2019-03-31)
参考文献数
34

In this study, we propose and evaluate a warmth display, which is designed to heat a part of user's hand when the part of the hand get warmth in virtual world displayed by Head Mounted Display. For the heat source, we use visible light LED because it is easily available and controllable. Arranging several LEDs around the hand, the display can warm some part of the hand. As it warms hands without contact, the heat from the display can be cut off immediately and interactive warmth presentation is possible. Moreover, we evaluated the safety, reaction time, sensation of warmth and temperature change caused by the display.
著者
根岸 洋・長谷川 綾子
出版者
公立大学法人 国際教養大学 アジア地域研究連携機構
雑誌
国際教養大学 アジア地域研究連携機構研究紀要 (ISSN:21895554)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.65-79, 2019 (Released:2019-06-28)

1973 年に重要無形民俗文化財に登録された「男鹿のナマハゲ」は、秋田県を代表する観光資源であり、2018 年に「来訪神:仮面・仮装の神々」の一つとしてユネスコの無形文化遺産に選ばれ世界に知られることになった。反面、若者によって担われてきた本行事は少子高齢化による後継者不足に悩まされており、観光客や外国人等の外部参加者の受け入れを始めた地区もある。本稿では、男鹿半島各地の集落に伝わる伝統行事であったナマハゲが、観光資源としての「なまはげ」に変容してきた経緯を振り返る。他方、昭和・平成に実施されたアンケート調査の比較を通じて、伝統行事としての諸要素が時代の要請に応じて変容したことを論じる。外国人留学生も受け入れている椿・双六での聞き取り調査を紹介し、無形文化遺産としての真実性を何に求めるべきか考察を行う。
著者
伊藤 良作 長谷川 真紀子 一澤 圭 古野 勝久 須摩 靖彦 田中 真悟 長谷川 元洋 新島 溪子
出版者
日本土壌動物学会
雑誌
Edaphologia (ISSN:03891445)
巻号頁・発行日
vol.91, pp.99-156, 2012-12-28 (Released:2017-07-20)
参考文献数
86

日本産ミジントビムシ亜目1科2属2種およびマルトビムシ亜目6科(2亜科を含む)19属63種1亜種について,同定に必要な形質について説明するとともに,検索図と形質識別表を示し,種類別の特徴を解説した.識別のための主な形質は体の色と模様,体形,特殊な体毛,小眼の数,触角の長さと各節の比率,触角第3,4節の分節数,雄の触角把握器,触角後毛の有無,雄の顔面毛,脛〓節の先の広がった粘毛の方向と,各肢の粘毛の数,脛〓節器官の有無とその形態,爪(外被,偽外被,側歯,内歯の有無)や保体(歯や毛の数)の形態,跳躍器茎節の毛の形質,端節の形態,雌の肛門節付属器,胴感毛の数と配置などである.