著者
田中 直美 牛膓 昌利 牛膓 真美 坂本 あづさ 稲田 美帆 河原 俊 長谷川 拓馬 持田 美香
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2015, 2016

【はじめに,目的】車いす座位姿勢の評価・シーティングを行う際,骨盤を起こし,水平,前後傾中間位とし,その上に胸郭・頸部・頭部が位置すると考えられている。しかし超高齢者は座位保持能力の低下により,骨盤を起こした姿勢では重力に抗することができず,頭部にかかる重力ストレスにより頭部が前下方へ落ちこみ,臀部が前方へ滑りだす姿勢を取ることが多い。骨盤を起こした姿勢が本当に安定した座位姿勢となっているのか疑問に感じる。そこで,シーティングの新しい考え方である,骨盤の後傾をゆるしもたれることで身体の物体的な安定を図る,脳性麻痺児・者を中心とした理論及び技法のキャスパー・アプローチ(以下,CASPER)に基づき,車いすシーティングを実施し,超高齢者への有効性を検討した一症例について報告する。【方法】普通型車いすでの一般的な座位姿勢(以下,非介入)と三角クッションを使用しCASPERを実施した座位姿勢(以下,介入)の二者間で開始座位姿勢,座位保持可能時間(バイタル変動をアンダーソンの基準に基づき終了),姿勢変化の3項目を比較した。対象は98歳認知症女性。コミュニケーション困難。介入当初BIは0点。【結果】開始座位姿勢:非介入;胸郭と仙骨が背もたれと接触し,頭頸部は右前下方へ傾く。介入;胸郭下部,坐骨がクッションと接し胸郭,頭部は一直線上に位置する。座位保持可能時間:非介入;平均3分53秒。介入;平均13分41秒。姿勢変化:非介入;頭頸部は右前下方へ倒れるまたは左情報へ伸展。右回旋は可能だが,左回旋は正中を超えなかった。約3分経過後から頭頸部の右屈曲が強まる。声かけに対して発声により反応するが,検者と視線を合わすことはなかった。介入;頭頸部が自由に全方向へ可動し,正中に戻ることも可能。全方向からの声かけに対して検者と視線を合わせ,言葉で返答することが可能。【結論】非介入で垂直に設定された骨盤は後方へ倒れようと不安定で,背もたれが上部胸郭と仙骨の倒れを固定する。上方の頭頸部は重力により前下方へ落ち込む。そのため臀部を前方へずらすことで頭頸部の落ち込みを回避していると考えられる。この座位姿勢では頭頸部の落ち込み回避のために筋力が必要であり,頸部回旋の自由度を減少させると考える。介入では,骨盤を後傾位に設定するが,坐骨を座面に設置した三角クッションに乗せることで臀部の前方への滑りを固定した。また,後方へ倒れる胸郭の重みを背もたれに設置した三角クッションで受けることで胸郭から下方が安定し,上方の頭頸部の支持性が向上したと考えられる。そのため,座位保持に必要な筋力が減少し,楽に座ることができた。また,声かけなどの刺激に対して,多様な反応を示すことができたと考える。今後,対象者数を増大,評価項目を検討し,高齢者に対する座位保持理論を系統化していきたい。
著者
多田隈 建二郎 多田隈 理一郎 勅使河原 誠一 溝口 善智 長谷川 浩章 寺田 一貴 高山 俊男 小俣 透 明 愛国 下条 誠
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
ロボティクス・メカトロニクス講演会講演概要集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp."2A2-B02(1)"-"2A2-B02(2)", 2009-05-25

This paper describes the morphing omnidirectional gripper which is able to grasp various objects with low melting point alloy. The deformable part of the gripper changes its shape by covering all directionof objects and makes the contacting area higher. In order to keep the high grasping force, proposed gripper does not need any additional energy thanks to the solid state of the deformable part including low melting point alloy. The design of the actual prototype model with cooling mechanism is shown and built. In addition, the usage of functional fluids for the morphing part is proposed. The basic performance of the blended material of low melting point alloy and magnetic fluid has been observed.
著者
内藤 郁夫 長谷川 由美子 芝木 儀夫
出版者
社団法人 日本印刷学会
雑誌
日本印刷学会誌 (ISSN:09143319)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.183-192, 2017 (Released:2017-07-15)
参考文献数
21

In music printing, some steps of engraving, such as layout, marking, etc., were believed to have succeeded from initial lithography processes. Music printing by engraving in the beginning of the 19th century was studied to clarify the backdrop technique of lithography, by using a music score from the Ludwig van Beethoven's piano sonata no. 21 opus 53, which was printed by the Bureau des arts et d'industri in Vienna in 1805. By analyzing the score, some engraving techniques in music printing could be clearly understood, i.e., punch patterns of music note, order of patterning, rough positioning of notes, re-cutting of lines, corrections of note, etc. Ledger lines were undetectable in the plate-making technique.
著者
佐藤 珠江 吉田 茜 長谷川 菜生 浦野 明日香 殿村 由樹 椛澤 里沙 小野田 公
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.801-805, 2018 (Released:2018-10-26)
参考文献数
23

〔目的〕本学理学療法学科に在籍する女子学生の月経症状の程度と生活スタイルを明らかにすること,月経困難症,月経前症候群(PMS),月経前不快気分障害(PMDD)の実態とそれぞれの認知度を明らかにすること.〔対象と方法〕本学女子大学生115名(年齢:20.7 ± 1.31歳)を対象とし,PMDD評価尺度と独自に作成した質問紙にて月経症状と生活スタイルを調査した.〔結果〕84%の人が月経前症状を有しており,22.5%が月経周期異常をきたしており,53.2%が月経中に鎮痛薬を服薬することが明らかとなった.月経困難症,PMSおよびPMDDについて,6割以上の学生が「知らない」と回答していた.〔結語〕早期から病態について理解し対処する必要がある.
著者
藤谷 亮 篠山 大輝 杉本 優海 長谷川 七海 林 穂乃花 小嶋 高広 和智 道生 治郎丸 卓三
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0589, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】腰痛をもつ患者の多くは,特有の不良姿勢を有することが指摘されている。腰痛と姿勢は関連すると考えられ,古くから腰痛治療には姿勢再教育訓練が行われてきた。腰痛患者における特有の立位姿勢として,Sway-Back(以下SW)や,過度な腰椎前弯を示したLordosis(以下LO)などが多い。先行研究から,上記の不良姿勢では体幹深層筋の活動低下,体幹表層筋の過活動が生じることが報告されている。骨盤-脊柱の変化は姿勢制御に影響を及ぼすことは明らかである。しかし,股関節周囲筋の活動の検討なしでは,姿勢と腰痛との関連を明らしたとはいえない。そこで本研究は,基本的立位姿勢をNeutral(以下NU)とし,不良姿勢(SW,LO)の体幹・股関節の筋活動を明らかにすることを目的とした。【方法】対象は,健常男性17名(21.2±3.6歳,174±5.5cm,67.6±8.8kg)とした。計測する姿勢は先行研究を参考にNU,SW,LOの3条件とした。姿勢計測のためC7,Th7,Th12,S2,上前腸骨棘(ASIS),上後腸骨棘(PSIS),肩峰,大転子に反射マーカーを貼付し,矢状面画像を取得した。取得した画像から画像処理ソフト(ImageJ Version 1.48,NIH)を用い,先行研究を参考に,胸椎後弯角(C7-Th7-Th12),腰椎前弯角(Th12-L3-S2),骨盤傾斜角(ASIS-PSIS),体幹傾斜角(肩峰-大転子)を算出した。筋活動の計測には表面筋電計(Kissei Comtec社製MQ16)を用いた。対象筋は腹直筋,外腹斜筋,内腹斜筋,腰部腸肋筋,胸部腸肋筋,多裂筋,大殿筋上部,大殿筋下部,大腿筋膜張筋,大腿筋膜張筋,縫工筋,大腿直筋の12筋とし,いずれも測定は右側とした。得られた筋電図データは,筋電図解析ソフト(Kissei Comtec社製KineAnalyzer)を用いて,全波整流処理を行い,MVCを基に各姿勢に合わせ正規化した。統計処理は,各姿勢の角度および筋活動に対して一元配置分散分析を行い,有意差のあった項目に関して,Bonferoni法による多重比較検定を行った。統計処理には解析ソフト(SPSS Statistics Ver21 for Windows)を用い,いずれも有意水準は5%未満とした。【結果】筋活動においてSWではNUに対し,内腹斜筋(p<0.05)・大殿筋上部(p<0.05)・大殿筋下部(p<0.05)・腸腰筋(p<0.05)で有意に低値を示し,腹直筋(p<0.05)では有意に高値を示した。LOはNUに対して,大殿筋下部(p<0.05)で有意に低値を示し,腰腸肋筋(p<0.05)・胸腸肋筋(p<0.05)・多裂筋(p<0.05)では有意に高値を示した。【結論】今回の結果から姿勢変化が,股関節の姿勢保持筋の筋活動に大きく影響を与えることが明らかになった。これは骨盤-脊柱肢位が,股関節の姿勢制御に強く影響を与えることを示唆するものである。またこれらは姿勢制御の変化は,不良姿勢が腰部に異なるストレスを発生させることを示唆するものである。
著者
髙木 亜蘭 小林 龍成 長谷川 稜馬 谷口 航平 濱川 礼
雑誌
エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2019論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, pp.40-45, 2019-09-13

本論文では、ユーザが選択したテキスト形式の怪談文章の盛り上がり箇所を自動判別することで、内容に関連した怪奇現象の「演出」を行い、抑揚を付加した「声」で語るVRコンテンツの自動生成を行うシステム「文章導仮想怪談」を提案する。怪談は古くから存在し、現代でも楽しまれている文化の一つである。その楽しみ方の一つとしてVR怪談が存在している。しかし、VR怪談は対応している怪談の数が少ない。そこで我々は、ユーザがインターネット上に数多く存在する怪談文章を用いることで、多くの怪談文章に対応できる応用性のあるシステムを開発した。
著者
荒木 周 中井 紀嘉 安井 敬三 長谷川 康博 祖父江 元
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.421-428, 2012 (Released:2012-11-23)
参考文献数
15

【目的】急性期の一過性脳虚血発作(TIA)の患者におけるMRI FLAIR像でのhyperintense vessel sign(HVS)の頻度とその患者群の臨床的特徴について明らかにする.【方法】神経学的局在所見が発症後24時間以内に消失した165例を対象にHVSの有無を後方視的に調査した.HVSの有無で2群に分けて臨床像・検査の諸項目を比較検討した.【結果】HVSは対象の9.7%に認めた.HVS群は50%以上の主幹動脈狭窄を合併し,TOAST分類でlarge vessel typeと推定できるものが多かった.ABCD2スコアや拡散強調像での脳梗塞の有無とは無関係であった.HVS群の94%でHVSを呈した動脈と神経症候が合致した.HVS群の80%で平均60日後にHVSの消失を確認した.【結論】急性期TIAでのHVSは虚血の存在を客観的に示す画像所見として診断の上で有用と考える.
著者
伊藤 泰雄 韮澤 融司 薩摩林 恭子 田中 裕之 長谷川 景子 関 信夫
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.631-635, 1993-03-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
9

われわれは,小児包茎に対しできるだけ用手的に包皮翻転を行い,手術は必要最小限としている.昭和61年以降,包茎を主訴に当科を受診した527例を対象に,包茎の形態を分類し,病型別に治療成績を検討した.病型の明らかな427例の内訳はI型(短小埋没陰茎)22例, II型(トックリ型)86例, III型(ピンホール型)60例, IV型(中度狭窄型)154例, V型(軽度狭窄型) 101例, VI型(癩痕狭窄型) 4例であった.その結果,翻転不能例はI型の13例, 59.1%, II型の17例, 19.8%, VI型の2例, 50.0%のみであった.ピンホール型は一見高度の狭窄に見えるが,翻転不能例は1例もなかった.最終的に手術を行ったのは全症例中32例, 6.1%と少なかった.外来で積極的に包皮を翻転するわれわれの治療方針は,包茎手術を著しく減少させた.
著者
長谷川 達也
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.238-252, 2002 (Released:2017-05-19)
被引用文献数
1

本稿では,日本勤労者住宅協会(勤住協)と地域住宅生協の設立過程,住宅供給および住宅地開発の展開とその特徴を全国,地域レベルから明らかにした.1961年のILO勧告を受け,労働者住宅自主建設運動は協同組合によるサード・アーム方式による住宅供給主体の確立を目指したが,結局特殊法人である勤住協が公的機関として設立されるにとどまったことで,勤住協と地域住宅生協という異なった組織形態が併存したなか,住宅供給が行われることになった.動注協による住宅供給システムは,住宅金融公庫をはじめとする融資を得て地域住宅生協等に住宅地開発を委託するもので,これまで全国各地に100,000戸を超える住宅を供給した。近年,勤住協による住宅供給は減少傾向にあり,地域住宅生協等でもその経営体力の格差が拡大しつつある.大阪労働者住宅生活協同組合を事例とした,地域住宅生協による住宅地開発の特徴は,生協が独自に資金を調達した事業が少なく,ほとんどが勤住協の委託事業であり,また小規模開発で供給量も少ないことがあげられる.地域住宅生協による住宅供給システムは,一般公募が原則となる勤住協事業が大半をしめることから,協同組合としての機能が発揮できないこと,住宅購入時に加入した組合員の継続性の問題などを抱えている.1990年代以降本格化した特殊法人見直しにおいて,勤住協は住宅供給主体としての在り方について議論されてきたが,2001年12月に民営化が決定したことで,今後新たな方向性が模索されていくことになる.
著者
長谷川 孔明 林 直樹 岡田 美智男
出版者
ヒューマンインタフェース学会
雑誌
ヒューマンインタフェース学会論文誌 (ISSN:13447262)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.279-292, 2019-08-25 (Released:2019-08-25)
参考文献数
18

How do we interact with mechanical systems? Users command something, and the systems always accept and react it. In other words, it is a "Leader-follower" relationship. Thinking about a scene where you walk in a park with your friend, on the other hand, there are neither a definite leader nor a follower. They co-adjust the walking direction and the pace by considering each other from implicit body movements. We named the relationship that people co-adjust each other "Side-to-side relationship." In this research, we attempt to construct "Side-to-side relationship" between a human and a robot by utilizing a robot platform "Mako-no-te" that can walk hand in hand with its human partner. We conducted an experiment with three conditions; human leading condition, robot leading condition, and co-adjusting condition. As a result, the robot of the co-adjusting condition was evaluated more favorable, active, and lifelike than one of other conditions.
著者
下田 好行 小松 幸廣 岩田 修一 四方 義啓 吉田 俊久 榊原 保志 岩田 修一 四方 義啓 榊原 保志 山崎 良雄 長谷川 榮 吉田 武男 黒澤 浩 永房 典之 赤池 幹 青木 照明 岸 正博 中村 幸一 岡島 伸行 熊木 徹
出版者
国立教育政策研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

知識基盤社会を生きるために知識情報を熟考・評価し、表現・コミュニケーションしていく「キー・コンピテンシー」を育成する学習指導法の枠組みを開発した。また、この枠組みにそって授業実践を小学校と中学校で行った。その結果、この学習指導法の枠組みの有効性を確認することができた。
著者
新井 善人 白石 靖幸 長谷川 兼一 鍵 直樹 坂口 淳 篠原 直秀 三田村 輝章
出版者
公益社団法人 空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会大会 学術講演論文集 平成26年度大会(秋田)学術講演論文集 第7巻 空気質 編 (ISSN:18803806)
巻号頁・発行日
pp.129-132, 2014 (Released:2017-11-15)

本報では、インターネットを用いたアンケート調査結果を基に、乳児・幼児・児童を対象としてダンプネスの程度やアレルギー性疾患の有無の地域差及び関係性について分析し、健康影響について検討を行なうことを目的としている。児童のアレルギー性疾患の有無を目的変数としてロジスティック回帰分析を実施した結果、個人属性による影響は大きいものの、ダンプネスの程度が児童のアレルギー性疾患の有無に影響を与えていることが示唆された。
著者
高野 敏 長谷川 章 大塚 博司
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.137-141, 1988-03-05
被引用文献数
3 1

界面活性剤定量用自動光度滴定装置を用いて,スルホン酸塩型及び硫酸塩型の界面活性剤とセッケンとの分別定量を検討した.既報の方法で分析したところ,アルカンスルホン酸塩(SAS)及びα-オレフィンスルホン酸塩(AOS)の酸性とアルカリ性条件下での分析値に有意な差が認められた.この原因は,SAS及びAOS中のポリスルホン酸塩の存在によるものと推定されたため,1-ヘキサノールによる協同効果を利用して,ポリスルホン酸塩のクロロホルム相への抽出率を向上させたところ,酸性とアルカリ性条件下での分析値が一致してセッケンの分別定量が可能となった.又,スルホン酸塩と硫酸塩の分別定量についても,加水分解条件を改良することにより定量性の向上が認められた.一方,陽イオン界面活性剤の分相指示薬として,酸性及びアルカリ性の両条件下で使用可能なジスルフィンブルーを用いて定量条件を確立し,同級アンモニウム塩との分別定量も可能となった.
著者
長谷川 博 山崎 晋 幕内 雅敏 水口 公信 平賀 一陽 横川 陽子
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.152-166, 1983

国立がんセンター肝外科グループでは, 麻酔科と協同で肝切除の術前術中後管理のほぼ一定した方式を決めることができた. この方式は, 昭和48年の肝外科独立以来の172例の肝切除の経験において, 術後直接死亡率が肝硬変合併肝癌でも非合併例でも8%前後であり, 術中出血量は最近3,000m<i>l</i>を上廻るものがなくなったという経験的事実で裏付けられている.<br>1. 基本方針: (1) dry side に維持する. (2) Naを toxic ion 的に考える. (3) 尿浸透圧, 尿中電解質濃度とその動きを, 血清電解質よりも重視する (そのためには医師が常時使用できる血液ガス分析装置, Na&bull;K&bull;Cl電極, 浸透圧計が必需品である).<br>2. 術前管理: (1) Idsep で換気訓練を行ない, (2) IVH約1週間で耐糖能を向上させ, (3) 術後の dry side の輸液に腎が耐え得るか否かを濃縮テストで調べる (800mOsm/kg以上).<br>3. 術中管理: (1) 塩酸ケタミン点滴麻酔を加湿回路をつけて行なう. (2) 術中輸液を一律に1号液のみとし, 6m<i>l</i>/kg/h滴下する. (3) 術中乏尿(0.2m<i>l</i>/kg/h程度)には積極的には対処しない. (4) 出血量に対する輸血は, 80%をなま全血, 20%以上を血漿で補う. (5) 肝硬変例では術中から Trasylol 1日10,000単位/kgを点滴し術後5, 6日続行する. (6) 術中高血糖(250mg以上) には Insulin で対処する.<br>4. 術後管理: (1) なま血漿700~1000m<i>l</i>連日点滴をPT値60%まで続行, (2) Ht値を35&plusmn;3%に維持 (45%以上では瀉血), (3) KClを術終了直後から30~40mM/<i>l</i>以上の濃度で補給, (4) ClをモリアミンSで補給 (transfusion alkalosis 予防, O<sub>2</sub>解離曲線考慮), (5) Na<sup>+</sup>はACD液から入るので輸液中には一切加えない, (6) 総輸液量を, 血漿を含めて40m<i>l</i>/kg/dayに統一する(IVHから1m<i>l</i>/kg/h, 血漿&bull;抗生物質の合計0.6~0.9m<i>l</i>/kg/h). (7) ブドー糖0.1&rarr;0.25g/kg/h点滴(1POD以降 dose up), (8) 低Na血症を原則的に補正せず, 120mEq/<i>l</i>までは尿浸透圧>300mOsm/kgである限り輸液の速度を下げるのみ. 3POD以降で尿中Na100~150mEq/<i>l</i>ならば10%NaClを20m<i>l</i>静注, 著効ある時のみ反復. (9) 乏尿には武見処方を静注し, furosemide を原則的に使用せず(Cl利尿~ACD液による相対的Cl不足や予防のために), (10) Heparin 3~4000u/day IVHに混合(細網内皮系賦活, stress ulcer や血栓の予防).<br>かくて肝外科は, 肝実質の「とり過ぎ」をしない限り安全な手術となりつつある.
著者
長谷川 明紀
出版者
皇學館大学文学部 ; 2009-
雑誌
皇學館大学紀要 = Bulletin of Kogakkan University (ISSN:18836984)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.186-158, 2017-03

醍醐寺蔵『諸経中陀羅尼集』の最初に掲載されている法華経陀羅尼と『法華経山家本』の法華経陀羅尼は、慈覚大師点本に由来するとされているので、両本における漢字加点が比較検討された。仮名、声点に加えて、ダッシュ(-) 印が醍醐寺本における加点に含まれる。このダッシュ印は、悉曇文字一字が漢字二文字を用いて音訳される場合、この漢字間に導入されていると結論された。 陀羅尼では、上声および去声の声点は、悉曇字に従ってそれぞれ短音および長音を識別する記号として代用されることが知られている。これら両本での声点を比較して、『法華経山家本』の声点の幾つかは時代の経過につれて変化しているものの、両本は慈覚大師を源流とする事を示す多くの共通した特徴をもつことが明らかにされた。 Since Lotus Sutra dhāran・īs in the first set of "A Collection of Dhāra n・īsin Sutras " stored in Daigo-ji Temple and contained in "The Hokekyo Sangebon " are believed to have their origins in a text of Jikaku Daishi(Ennin), the guiding notes added beside the kanji of the dhāran・īs were compared between these two texts.In addition to kana and accent marks, dash (-) marks are involved in the guiding notes in the Daigo-ji text. Each of the dash marks was concluded to be introduced between the two kanji into which a single original siddham・ script was transliterated.In dhāran・īs, the accent marks of jyosho (high pitch) and kyosho (rising pitch) are known to be substituted for the marks distinguishing between short and long sounds, respectively, according to the siddham・ scripts. The comparison of the accent marks between the two texts leads us to the conclusion that both texts have many common characteristics suggesting the origin from Jikaku Daishi, while some of the accent marks in "The Hokekyo Sangebon " were subject to alteration in the process of time.
著者
矢田部 龍一 八木 則男 佐藤 修治 長谷川 修一
出版者
The Japan Landslide Society
雑誌
地すべり (ISSN:02852926)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.42-49_1, 1997-09-15 (Released:2011-02-25)
参考文献数
10
被引用文献数
3 4

本報告は四国の中央構造線に沿った道路建設に伴い発生した地すべり地の特性について検討を行ったものである。その結果, 地すべりは大半が切土に伴う崩積土のすべりであり, 規模は比較的小規模なものが多く, また, 中央構造線の断層破砕帯の地すべり地の粘性土のせん断抵抗角は小さく, 難工事となりやすいことがわかった。