著者
横山 友里 吉﨑 貴大 小手森 綾香 野藤 悠 清野 諭 西 真理子 天野 秀紀 成田 美紀 阿部 巧 新開 省二 北村 明彦 藤原 佳典
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.69, no.9, pp.665-675, 2022-09-15 (Released:2022-09-10)
参考文献数
36

目的 食品摂取の多様性得点(DVS)は,日本人高齢者の食品摂取の多様性を評価する指標として,疫学研究や公衆衛生の現場において幅広く活用されている。一方,本指標は1990年代の開発以降,見直しが行われておらず,現在の日本人高齢者の食生活の実態を必ずしも十分に反映できていない可能性がある。本研究では,構成食品群の改訂による改訂版DVS(MDVS)の試作および妥当性の評価を行うことを目的とした。方法 鳩山コホート研究の2016年調査に参加した357人(年齢:76.2±4.6歳,男性:61.1%)を対象とした。DVSおよびMDVSは,各食品群の1週間の食品摂取頻度をもとに,ほぼ毎日食べる食品群の数を評価した。DVSの構成食品群は肉類,魚介類,卵類,牛乳,大豆製品,緑黄色野菜類,果物,海藻類,いも類,油脂類とし,MDVSの構成食品群は平成29年国民健康・栄養調査における65歳以上の食品群別摂取量のデータをもとに,主菜・副菜・汁物を構成する食品群の摂取重量および各栄養素の摂取量に対する各食品群の寄与率をもとに,その他の野菜,乳製品を追加することとした。栄養素等摂取量は,簡易型自記式食事歴法質問票を用いて調べた。「日本人の食事摂取基準(2020年版)」で推定平均必要量が定められている14の栄養素について,必要量を満たす確率およびそれらの平均を算出した。DVS,MDVSと各指標との相関分析および相関係数の差の検定を行った。結果 MDVSとたんぱく質エネルギー比率,脂質エネルギー比率,食物繊維,カリウム摂取量,改良版食事バランスガイド遵守得点との有意な正の関連がみられ(偏相関係数の範囲(r)=0.21-0.45),炭水化物エネルギー比率との有意な負の関連がみられた(r=−0.32)。また,MDVSと14の栄養素の必要量を満たす確率の平均との有意な正の関連がみられた(r=0.41)。これらの関連の程度はDVSとMDVSで同程度であり,相関係数の差は有意ではなかった。結論 栄養素摂取量や食事の質との関連からみた妥当性はDVSとMDVSで同程度であった。DVSの改訂にあたっては全国の大規模集団を対象に精度の高い食事調査を用いたさらなる研究が必要である。
著者
大八木 博貴 木下 和昭 眞田 祐太朗 阿部 渉 石田 一成 柴沼 均
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.145-149, 2021 (Released:2021-04-20)
参考文献数
25

〔目的〕本研究は人工膝関節全置換術(TKA)後の膝関節屈曲可動域(膝屈曲ROM)低下に及ぼす膝蓋骨アライメントの特徴を検討した.〔対象と方法〕対象は変形性膝関節症に対してTKAを施行された28膝とした.測定項目は年齢,Body Mass Index,膝屈曲ROM,膝蓋骨アライメント(外方傾斜角,外方偏位)とした.術後の膝屈曲ROMが術前値未満の群(ROM低下群)と術前値以上の群(ROM改善群)に分け,各測定項目を群間で比較した.〔結果〕ROM低下群はROM改善群に比べて術前後の膝蓋骨外方偏位と術後の膝蓋骨外方傾斜角が有意に高値であった.〔結語〕術後の膝屈曲ROMは,術前後の膝蓋骨外方偏位が大きく,術後に膝蓋骨外方傾斜角が増大するほど低値になる傾向が示唆された.
著者
葛西 和真 阿部 昭博 市川 尚 富澤 浩樹
雑誌
研究報告ユビキタスコンピューティングシステム(UBI) (ISSN:21888698)
巻号頁・発行日
vol.2022-UBI-75, no.14, pp.1-7, 2022-08-29

高齢者の健康維持のためには日常的に身体活動を行うことが効果的とされているが,現状においては高齢者のおよそ半数は厚生労働省の身体活動量基準を達成できていないとの指摘もある.また,高齢者に焦点を当てて身体活動促進の介入を行う研究は様々あるが,デジタル技術の介入を伴う研究はこれまであまり議論が進んでいなかった.本研究では,高齢者に対する意向調査を踏まえ,ウェアラブルデバイス及びモバイル端末を活用し,デジタル技術の介入を伴う高齢者身体活動支援システムの提案を行う.
著者
三村 祐輝 阿部 光 齊藤 直 杉本 俊之 高橋 龍尚 柳田 裕隆
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.25-31, 2022-03-10 (Released:2022-05-20)
参考文献数
30

In ultrasound systems, there is a trade-off between image quality and the number of transducers (elements) placed in the array probe, and to achieve a high resolution, the array probe must be created with additional elements. In 3D/4D echo, a significant number of elements are required compared to 2D echo, because imaging is performed using a two-dimensional array probe. As a result, 3D/4D echo inevitably has the problem of increasing equipment costs. To solve this problem, it is necessary to develop a method to reconstruct images with higher resolution using fewer elements than conventional imaging methods. The L1-norm minimization method has attracted much attention in recent years because of its ability to reconstruct high-resolution images even from incomplete data. In this study, we investigated whether high quality images can be reconstructed by minimizing the L1 norm for an object with an orientation, height, and depth of the imaging area (3D object). We also used image quality evaluation methods (MSE: Mean Squared Error, PSNR: Peak Signal to Noise Ratio, and SSIM: Structural SIMilarity) to quantitatively evaluate the obtained images. The results confirmed that L1-norm minimization is capable of reconstructing high-quality images with high evaluation values in all image quality evaluation methods compared to conventional methods.
著者
阿部 哲也 福永 幹彦
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.50, no.11, pp.1033-1037, 2010-11-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
12

慢性膵炎疑診例と胆道ジスキネジーは,ともに器質的異常を認めずに上腹部痛を主訴とする疾患であり,乳頭括約筋機能異常という疾患概念に包括する考えが広まっている.また,心身症の病態を呈する例や,他の機能性消化管障害との並存を示す例が多いことより,これらを障害部位で分類するのではなく,機能性身体症候群として考えることもできる.その際,病状評価には心電図R-R間隔変動係数が有用となる.計測条件の工夫で,多様な場面の自律神経機能状態を推測することができ,これにより患者の生活史の中で症状をとらえていく心身医療への導入がしやすくなると考える.
著者
阿部 育子 習田 明裕
出版者
日本移植・再生医療看護学会
雑誌
日本移植・再生医療看護学会誌 (ISSN:18815979)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.1-15, 2022 (Released:2022-04-16)
参考文献数
24

本研究は、 臓器移植看護の倫理的場面において、レシピエント移植コーディネーター(以下、RTC)が抱く苦悩の構造とその関連要因を明らかにすることを目的とした。全国の移植施設に勤務するRTCを対象に自記式質問紙調査を実施した。その結果、84名(回収率47.5%)から回答が得られた。臓器移植看護の倫理的場面として、「臓器移植全般」、「生体移植」、「脳死移植」の3つの領域30場面の回答を基に、探索的因子分析を行った。その結果、【移植医療の不確かさ】、【RTCとしての自信のなさ】、【倫理的責務の障壁】の3つの因子構造が示された。また、各因子の下位尺度得点を目的変数とし、[個人特性]、[RTC特性]、[環境特性]、[倫理特性]を説明変数として重回帰分析を行った結果、説明率は低かったものの関連要因として『立場』、『RTC経験歴』、『担当移植件数』があった。
著者
阿部 仁一郎
出版者
Osaka Urban Living and Health Association
雑誌
生活衛生 (ISSN:05824176)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.387-394, 2006 (Released:2006-10-19)
参考文献数
43

Pathogenic analysis of clinical samples to detect the causative agent is the most reliable method of confirming infection. Morphological examination using light microscopy is a convenient tool, but the information thus obtained is limited. In Japan, while morphological examination is still the gold standard in many parasitic infections, recent molecular studies have produced a wealth of new findings helpful in the diagnosis, treatment and prophylaxis of parasitic infections. Currently, genetic examination is applied in the diagnosis of various infectious diseases to obtain rapid and accurate results and also to understand their molecular epidemiology. It is expected that molecular methodologies will be necessary for the diagnosis of various parasitic infections. In the present paper, the author summarizes the significance and prospects of genetic examination in parasitic infections.
著者
阿部 仁一郎 八木 欣平
出版者
Osaka Urban Living and Health Association
雑誌
生活衛生 (ISSN:05824176)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.168-171, 2005 (Released:2005-06-07)
参考文献数
10
被引用文献数
2

Anisakids are parasitic nematodes infecting fish and mammals. It is well recognized that human infection with this parasite, called anisakiasis, occurs by ingestion of raw or undercooked fish. In Japan, there are estimated to be over 1,000 cases of this infection annually. In 1999, “The Food Sanitation Law Enforcement Regulation” was partly amended, and anisakiasis was newly added to the causative agents of food poisoning. Identification of anisakid larvae has been performed by light microscopy, but it is impossible to accurately identify the worms morphologically when only small portions of the worm are available. In the present study, we showed the usefulness of PCR-based methods for identification of anisakid species using several species of anisakid larvae from Pacific cod. The larvae identified morphologically as Anisakis simplex or Contracaecum osculatum were found also to be positive for PCR amplification with only species-specific primers. In addition, the larvae of Pseudoterranova decipiens, frequently found in anisakiasis in Japan, were positive for amplification with only the P. decipiens-specific primers designed for the study. PCR using species-specific primers is thus concluded to be a useful tool for identification of anisakid larvae when morphological identification is impossible.
著者
安福 健祐 榎本 拓朗 阿部 浩和
出版者
Japan Society for Graphic Science
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.19, 2019 (Released:2019-12-01)
参考文献数
9

本研究は,建築空間の色彩と肌理をパラメータとして制御可能な没入型の仮想環境において,二つの住宅モデル(ル・コルビュジエ設計のラ・ロッシュ邸およびルイス・バラガン設計のヒラルディ邸)を再現し,被験者による空間スケールと印象評価実験から,色彩と肌理が空間認識に及ぼす影響を明らかにした.スケール評価テストおよび描画テストでは,被験者がVRヘッドセットを装着して,各住宅の実際のスケールの選択と平面図の描画を行った.その結果,ヒラルディ邸は実際のスケールと同じもしくはわずかに大きく認識されるのに対し,ラ・ロッシュ邸は小さく認識される傾向がみられた.さらに,VRヘッドセットを装着して各住宅の空間印象をSD法により評価した結果,色彩と肌理の違いによる印象の差に特徴がみられた.
著者
阿部 紀之 井手 一茂 渡邉 良太 辻 大士 斉藤 雅茂 近藤 克則
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.24-35, 2021-01-25 (Released:2021-02-25)
参考文献数
49
被引用文献数
1

目的:社会的フレイルはリスク因子として重要だが,評価法が統一されていない.本研究の目的は専門家の評価による内容的妥当性のある社会的フレイルの要素を明らかにすることである.方法:PubMedで検索し入手した社会的フレイル関連26論文から抽出した要素のうち,7名中5名以上の評価者が4条件(負のアウトカム予知因子,可逆性,加齢変化,客観性)を満たすと評価した要素を抽出し分類した.結果:4条件を満たす要素は経済的状況(①経済的困難),居住形態(②独居),社会的サポート(③生活サポート者の有無,④社会的サポート授受),社会的ネットワーク(⑤誰かと話す機会,⑥友人に会いに行く,⑦家族や近隣者との接触),社会的活動・参加(⑧外出頻度,⑨社会交流,⑩社会活動,⑪社会との接触)の5分類11要素が抽出された.結論:先行研究で用いられている社会的フレイル22要素のうち,内容的妥当性が示唆された要素は11要素であった.
著者
阿部 智和 山口 裕之 大原 亨
出版者
北海道大学大学院経済学研究院
雑誌
Discussion Paper, Series B
巻号頁・発行日
vol.179, pp.1-23, 2020-03

セイコーマートは大手コンビニエンス・チェーンの攻勢にさらされながらも、北海道において最多の店舗数を保持し続けている。コンビニエンス・ストアの合併などが進んだ現在では、地方企業がトップ・シェアを有する都道府県は北海道のみである。コンビニエンス・ストア業界内で激しい競争が展開されていくなか、セイコーマートはいかにして北海道市場における競争優位を確立し、維持できたのだろうか。本稿では、創業から2000年頃までの同社の出店戦略、物流システム、情報システム、商品力強化および販売活動に関する動向を整理することで、同社の競争優位の背景を探っていく。
著者
長松 奈美江 神崎 淳子 櫻井 純理 阿部 真大 仲 修平 筒井 美紀 嶋内 健 貴戸 理恵
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究では、生活困窮者自立支援事業に照準を合わせ、本事業が、その創設に込められた理念である「貧困と社会的排除の問題解決」や「制度の狭間の解消」に資する生活・就労支援制度となるために必要な条件を探究する。大阪府内の各自治体や委託事業者という「サービス提供側」だけでなく、相談窓口への来談者という「サービス受給者」に焦点を当てた調査研究を行い、地域レベルでのアクティベーション・サービス配給体制の実態を自治体内のガバナンス構造に注目して分析し、生活困難層の支援ニーズに合致したより実効性のある支援制度について考察する。
著者
成澤 直規 竹永 章生 鳥居 恭好 阿部 申 中村 知世 岩本 理 川崎 幸正
出版者
日本大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

これまでに市販納豆の可溶性抽出液にう蝕原性Streptococcus mutansのバイオフィルム形成抑制効果を明らかにしている。36種市販納豆を対象として評価した結果、バイオフィルム抑制効果はプロテアーゼ活性と相関性が認められた。抑制因子を精製した結果、セリン型プロテアーゼであるナットウキナーゼの特徴と良く類似した。これはS. mutansのバイオフィルム形成に必須である非水溶性グルカン合成阻害が原因であることが明らかとなった。ナットウキナーゼは歯の脱灰の臨界pHである5.0付近においても比較的活性を維持しており、応用的にも利用可能であるものと期待された。