著者
喜多崎 親 山口 惠里子 尾関 幸 松原 知生 佐藤 直樹 堀川 麗子
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

19世紀の前半にドイツのナザレ派、フランスの宗教画刷新運動、イギリスのラファエル前派など、絵画に於いてラファエッロ以前を強く意識した運動が各国で起こった。これらは相互に関係を持ち、ラファエッロ以前、すなわち盛期ルネサンスよりも前の絵画様式への回帰を謳ってはいたが、一律に同じ様式を採用するという結果にはならなかった。それは各国の民族的文化への意識や、近代への意識が微妙に関係していたためである。
著者
上野 道雄 宮崎 英樹 塚田 吉昭 沢田 博史
出版者
独立行政法人海上技術安全研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

1軸船型と2軸船型およびポッド推進器装備船型(バトックフロー船型)を取り上げて、これら主船体の斜航・旋回中の左右力と回頭モーメントに関する基本的な操縦流体力特性を実験的に系統立てて明らかにした。高次の細長体理論と翼理論ならびにCFD(数値流体力学)によって、ポッド推進器装備船型に取り付けた各種スケグの効果も含めたこれらの流体力特性を精度良く推定することができることを示すとともに、これらの手法を用いて操縦運動中の船体周りの流場構造を明らかにした。
著者
大塚 正久 藤原 雅美
出版者
芝浦工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

【目的】鉛フリーはんだ合金候補としてSn-3.5Ag-X系が有力視されている.しかしその実用化に際しては,動的負荷のみならず静的負荷に対する信頼性を確保する必要がある.静的変形の代表がクリープであるが,鉛フリーはんだのクリープ特性に関する既往の研究は多くない.そこで本研究ではSn-3.5Ag-X系合金バルク体のクリープ挙動を,クリープ速度,延性および破断寿命の観点から検討した.【方法】供試材は以下の合金である:(1)Sn-3.5mass%Ag,(2)Sn-3.5mass%Ag-xBi(x=2,5,10mass%),(3)Sn-3.5mass%Ag-xCu(x=1,2mass%).金型大気鋳造により得たインゴットからゲージ部φ4.5×15mmの丸棒試験片を切出した後,373Kで1hrのひずみ取り焼鈍を施し,温度298K,348Kおよび398Kにおいて肩掛けチャック方式の定荷重引張クリープ試験に供した.組織観察にはSEMを用いた.【結果】(1)Sn-3.5Ag合金では,微細に分散したAg_3Sn粒子の強化作用により,すべての温度と応力域でクリープ速度は強い応力依存性(n≒10)を示す.(2)Sn-3.5Ag合金にCuを添加するとクリープ速度は微減するにとどまる.またクリープ速度の応力および温度依存性はSn-3.5Ag合金のそれと同じである.(3)Sn-3.5Ag-xBi合金の場合,x≦2mass%ならば主としてBiの固溶体強化作用によってSn-3.5Ag合金よりも高応力域でのクリープ強度が上昇する.しかしx≧5mass%の高濃度合金では様相が大きく変り,高温では広い応力域で,また室温では低応力域でクリープ強度がSn-3.5Ag合金よりもかえって低くなる.これは,クリープ変形中のBi粒子の粗大化が低応力ほど顕著となることと,変形温度が高いほどBi固溶量が増し逆にBi粒子体積率が減ることによる.【総括】Sn-3.5mass%Ag系にCuを微量添加するのはクリープ信頼性の面でも得策だが,Bi添加は信頼性を大きく損なうので推奨できない.この結果は別途得ている疲労試験結果とも対応する.
著者
福岡 安則
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

ハンセン病療養所「入所者」「退所者」「家族」,その他(弁護士,医師,元職員など)からのライフストーリーの聞き取りも,280人に達した。すでに2009年には『栗生楽泉園入所者証言集』(全3巻)を刊行,今回の研究期間内でも,『生き抜いてサイパン玉砕戦とハンセン病』(創土社,2011年)をはじめとして,紀要などに13編の聞き取り事例を公表したほか,2012年夏に実施した韓国のソロクト病院および定着村への訪問記を,韓国の当事者団体の機関誌『ハンピッ』に連載のかたちで報告している。
著者
浅岡 定幸
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

親・疎水鎖の連結点にポルフィリンまたはレニウム錯体を導入した両親媒性液晶ブロック共重合体を用いることによって、薄膜中で生ずる完全垂直配向シリンダー型のミクロ相分離界面をテンプレートとして、これらの色素分子が環状に集積化された構造体がスメクチック層状構造に従って一定の距離をもって周期配列した構造体を形成することに成功した。これらの共重合体を混合製膜したブレンド薄膜では、同様の垂直配向シリンダー型のミクロ相分離構造が維持されており、犠牲剤を含む二酸化炭素飽和溶液中でポルフィリンからレニウム錯体への光誘起電子移動に基づく光反応が進行することが示唆された。
著者
竹本 幹夫
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

江戸初期以前に成立した非現行謡曲(番外曲)全曲245曲を翻刻・校訂し、それを踏まえ謡曲校訂の理論を確立し、モデルとなる校訂本文を作成するのが、本研究の目的である。曲ごとに複数の写本を翻刻したため、当初の245曲に67曲及ばず、ナ行までの178曲となった。未了分は今後も翻刻作業を継続する。この作業の過程で、謡曲本文の遡源的研究の可能性に想到した。これにより謡曲本文がどのように系統化したかのパターン分析の目安を得た。これは世阿弥自筆能本と現存謡本諸本との関係性の想定論に基づく理論であるが、世阿弥自筆本の存在しない非現行曲についても、ある程度の想定をすることが、曲ごとに可能となった。
著者
小松 英輔 松沢 和宏 下宮 忠雄
出版者
学習院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1994

この研究の出発点は、言語学習ソシュールの残した自筆原稿や学生の講義ノートで研究者自身がマイクロフィルム撮影し、そこから研究することであった。この段階で我々が実証したことは、マイクロフィルムは専門の技術者にその作製をまかせるより、研究者が自分で影写した方がはるかに安価で上質のものができるということであった。次の段階でこれを全国の研究者に公開した。そのためにマイクロフィルムを長巻のままとせず、帰国して紙に定着させ、整理した上で、分類目録を発行して検索しやすくした。その結果、この資料集から多くの論文や著書が生れた。この研究に対して、日本国内から幾つかの反応があった。その一つは日本人が外国の文化に対してこういうことをやるのは、研究者として謙虚さに欠けるという批判、また、純粋に、資料を提供するという目的でやればいいのに、君の書いた英語版の序文は討論家気取りである等。自分自身の著わした著書は外国でも幾つかの書許の対象になったが、日本国内では、大学院の教科書にも使われるようになった(例、名古屋大学、大学院)同書の英訳版は補遺を伴って全三巻として英国のパ-ガモン書店より発行された(二巻まで既刊)。欧文研究誌FENESTRAはこれらの研究の成果を海外に発信するために企画された。ソシュールの『一般言語学講義』は言語学の「原論」であり、また他の多くの分野の人々に刺激を与えている。この研究誌の発行を通じて、多くの全国の研究者とネットワークを作った。
著者
永井 康雄 池上 重康 月舘 敏栄 角 哲 崎山 俊雄 狩野 勝重 川向 正人 三辻 和弥 砂本 文彦 玉田 浩之 小俣 友輝
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

国・都道府県・市区町村による指定・登録文化財及び未指定・未登録の歴史的建造物39456件の基礎データを作成した。更に位置情報及び画像情報システムを構築し、東北6県における当該建物の情報を入力した。2008年7月24日の岩手県沿岸北部を震源とする地震の災害調査によって、本データベースの有用性を確認することができた。2011年3月11日に発生した東日本大震災による歴史的建造物の被害調査では、本データベースが基本台帳として活用されている。調査は、日本建築学会建築歴史・意匠委員会、文化庁、地方公共団体、建築関連諸団体が連携して進めている。
著者
山内 秀文 OLRANDO R. Pulido 馬 靈飛 佐々木 光 桜庭 弘視 楊 萍 MA Ling. Fei. PULIDO O. R. 木村 有一 土居 修一 田村 靖夫 徐 へん 馬 霊飛 菊地 與志也
出版者
秋田県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

スギ丸太の歩留まり向上と廃棄物低減を目指し、スギ樹皮を有効利用する方法として厚物成形ボードに転換する方法を検討した。さらに、このボードの持つ断熱性、成型性、耐久性、厚物化による載荷性などの性能を生かし、付加価値の高い利用法として床暖房基材とすることを考案し、これの基礎技術を確立する実験を行った。検討結果を以下のような四章にまとめた。1)スギ樹皮ボードの諸性質:スギ樹皮ボードの基礎的な性質を明らかにするために、小試験体により力学的性質、寸法安定性、断熱性、VOC吸着性及び遮音性能を測定した。樹皮ボードは力学的性能がやや劣るものの、優れた断熱性、VOC吸着性などを持つことが明らかになった。2)床暖房基材成型用金型の設計・試作及び実験用ボードの製造:既存の蒸気噴射プレス定盤に取り付けて用いる成形金型の設計を行った。金型の成形パターンは汎用性と施工性を考え正方格子状とした。この金型を用い、イソシアネート樹脂接着剤を用いて厚さ45mm、比重0.40の実験用ボードを1枚当たり4.5分で製造できた。3)床暖房モデルを用いた配管及び床構成の検討:先に試験製造したボードを用い、約1×2mの床暖房モデルを作製し、熱源を接続して配管パターン、配管直径、熱拡散材料の有無による暖房効果への影響を検討した。配管の差異による影響はほとんど見られなかったが、熱拡散材料、特に薄様の金属板の使用は暖房速度の向上及び暖房の均一化に効果的であった。4)実大試験住宅への床暖房の施工:最終的な施工方法の開発及び施工性の評価を目的として、実大の試験住宅内の一室に暖房床を施工した。この検討から、開発した方法が良好な施工性、高い自由度をもつことが明らかになった。
著者
稲垣 恭子 竹内 洋 目黒 強 高山 育子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、戦前・戦後の「女性文化人」の特徴とその社会的形成過程について、社会的背景、活動領域、メディア等を軸にして量的・質的両面から実証的に分析し、「女性文化人」の社会的位置の変化やその社会的意味を考察した。そのなかで、「女性文化人」に共通のイメージや特徴、1950 年代以降の「女性文化人」の顕在化と多様化、現代の「メディア文化人」の社会的位置との関連を明らかにし、「女性文化人」の歴史社会学的研究の土台をつくった。
著者
越智 博美 井上 間従文 吉原 ゆかり 齋藤 一 三浦 玲一
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、近代以降の日本が海外との交渉のなかで自己形成してきた事実に着目し、おもに日本と合衆国のあいだのトランスパシフィックな文化の相互交渉が、日本の文化および英米文学研究というアカデミズムに与えた影響の分析である。具体的には英米モダニズムの(特に合衆国を介した)文化・文学の受容、および研究体制が日本の文化や日本の文学研究に与えた影響を、太平洋戦争前後の断絶と継続性を踏まえて考察し、文化や想像力の相互干渉という視点を入れつつ理論化を目指し、またアジア太平洋研究でリードするカリフォルニアの複数大学の研究者・研究所とのあいだで研究の連携体制の構築を目指すものである。
著者
荻尾 彰一 千川 道幸 福島 正己 有働 慈治 奥 大介 芝田 達伸 冨田 孝幸 松山 利夫 山崎 勝也
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

宇宙から飛来する極限的高エネルギーを持った素粒子を検出し、その到来方向・エネルギー・粒子種を求め、活動銀河、銀河の衝突など宇宙における極限的高エネルギー現象を解明するための観測装置が、日米韓露の国際共同研究として、2008年から米国ユタ州で稼働し続けている。本研究では、この観測装置のエネルギー較正のための「標準光源」として、射出方向可変で、持ち運び可能な紫外線レーザー光源を製作し、その性能を評価し、較正装置として十分な性能を有していることを確認した。本格的な較正装置としての運用は2011年度から開始される。
著者
三村 真弓 吉富 巧修 北野 幸子 水崎 誠 藤原 志帆 伊藤 真 小長野 隆太
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、主として、幼稚園児・小学校児童・中学校生徒の音楽的リテラシーの実態調査、現在及び過去に行われた音楽的能力育成を目指した音楽教育指導法の分析と音楽的能力調査方法の分析を行った。その結果、音楽的リテラシーの発達の諸相、音楽的リテラシー育成のための必要条件等が明らかとなった。それらをもとに、音楽的リテラシーの育成を目指した小中連携の音楽科カリキュラムの試案作成を行った。
著者
北島 宣 山本 雅史 清水 徳朗 山崎 安津 米森 敬三 小枝 壮太 桂 圭佑 八幡 昌紀
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、日本の本土および沖縄・南西諸島、中国の雲南省、広東省、台湾、ベトナム、フィリッピン、タイ、インドネシア、ミクロネシア等の在来カンキツ調査を行い、東シナ海および南シナ海地域をほぼカバーする地点での調査を行うことができた。その結果、これまで調査した日本、中国浙江省、江西省、広西チュワン族自治区、重慶等の在来カンキツおよび保存している世界のカンキツ種・品種と近縁属を含め、862個体のDNAを蒐集・保存し、細胞質DNAおよびゲノムDNA解析によりカンキツ種の分化が明らになった。
著者
稲本 志良 河村 能夫 小田切 徳美 佐藤 了 横溝 功 鈴木 俊 横溝 功 小田切 徳美 佐藤 了 鈴木 俊
出版者
龍谷大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究における成果は、先に、日本農業普及学会の平成20年度春季シンポジュームで報告した。その報告要旨及び最終報告は、当学会誌『農業普及研究』(平成21年6月刊行予定)に掲載される。本研究において特に重点をおいた理論的研究の内容は、農業普及をめぐる産業組織論的交際比較研究及び歴史的展開に関する研究である。また、本研究においては上記の理論的研究を基礎にした実証的研究を重視しており、その主な内容は、農業普及をめぐる多様な運営・活動主体の実現の把握・分析とその類型化に関する研究である。そこで得られた知見は多いが、その主要な知見は以下の諸点である。1) 公的部門における普及主体の多様化、民間部門における普及主体の多様化の進展。2) 普及主体が展開する普及活動の高度化と多様化の進展。3) 普及事業・普及活動の専門化と高度化と多様化、特に企業次元、地域次元、ここの活動次元における多様化の進展。4) 民営化・多様化、有料化の親展。なお、上記にした多様化の動向は、国の間で、また、特定国内における産業間、地域間において精査し、検討することが重要になってきている。
著者
山根 周 深見 奈緒子 布野 修司 鈴木 英明 武末 佐恵加
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究は、インド洋海域の港市において、イスラーム・ネットワークやインド商人のネットワークに着目し、都市、建築の空間的特質とその地域的連関等を臨地調査に基づき明らかにした。アラビア海・インド洋西海域世界においては、グジャラート地方を中心としたインド西部の商人による交易や移住が、東アフリカ沿岸の建築、都市の形成に大きな影響を与えていたことが明らかになった。一方、ベンガル湾海域世界に位置する東南アジアの港市では、タミル・ナードゥ地方を中心としたインド南東部の商人や労働者の交易、移住が建築、都市の形成に影響を与えたことが明らかになった。
著者
伊香 俊哉 永井 均 林 博史 芝 健介 内海 愛子 福永 美和子 粟屋 憲太郎 高取 由紀 宋 志勇 戸谷 由麻
出版者
都留文科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究の主な目的は、第2次大戦後の連合国による対日対独戦犯裁判を解明するための資料調査・収集である。調査・収集は日本、中国、台湾、韓国、アメリカ、イギリス、ドイツ、フィリピン各国の公文書館や図書館など約30ヵ所で実施した。また日本、中国、フィリピンではヒアリング調査も実施した。収集資料の成果は資料紹介・論文・著書として発表されている。戦犯裁判研究の国際交流のため2014年にドイツ研究者とワークショップを開催した。
著者
林 力丸 河井 昭治 佐藤 周一
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

高圧分光学のうち、円偏光二色性(CD)のその場観察を行うための耐高圧セルを開発するため、石英光学セル、サファイヤ光学セル、人工合成ダイヤモンド耐高圧セルによるCD測定を検討した。これを用いてポリアミノ酸、各種タンパク質・酵素の円偏光二色性(CD)測定を高圧下で行った(「その場」観察)。特にαヘリックスやβ構造と共にタンパク質立体構造の耐圧力性を比較し、タンパク質構造形成の原理を解明することを目的にし、以下の結果を得た。1)高圧下(400MPa以下)でのCD測定を行うため、光学窓に石英とサファイヤを用いるセルを組み立て、紫外領域における測定限界の改良と、人工ダイヤモンド窓による光学セルを作成し、ダイヤモンドに含まれる不純物のCD測定に与える影響を検討した。その結果、近紫外CDの測定が可能なことを明らかにした。2)高圧下(500MPa)でポリグルタミン酸とボリリジンのαへリックスとβ構造の崩壊過程を観察するため、pH条件を酸性からアルカリ性に変化させて、pHと圧力の関係を測定した結果、ダイヤモンド窓は220nmに吸収があることがわかり、α、β両構造を明確に分離できなかった。3)リボヌクレアーゼAとカルボキシペプチダーゼYおよびそれらの1残基置換変異型酵素の圧力効果を解析し、タンパク質構造の圧力安定性を測定し、リボヌクレアーゼAのPhe120とカルボキシペプチダーゼYのシステイン残基の構造への寄与を明らかにした。4)ダイヤモンド窓をもつ耐圧セルにより、タンパク質の近紫外CDを測定し、圧力の三次構造に与える影響を解析した。特にリボヌクレーーゼAの280nm付近の高圧下のCDを測定し、この圧力変性が二状態遷移であることを明らかにした。
著者
南 正康 恵 答美 李 卿 稲垣 弘文
出版者
日本医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

1.バイオロジカル・モニタリングの研究4名の患者の尿検体が被曝から約3週間に渡って採取したものが保存してあるのでそれについてサリン及びその合成時の副生成物の代謝物を測定して被曝の実態を解明した。多数の副生成物に被曝されていると思われる。さらにサリン代謝産物の一つメチルホスホン酸は、これが全てサリンに由来するとなると致死量を大幅に越えていたのであるが、我々が取り扱った患者4名の中1名は被曝後1年で死亡したが残り3名は2002年3月に至るも1名も死亡していない。その上このメチルホスホン酸値は症状が重症な程、尿中総排泄量が少なかった(Hui and Minami, Clin.Chim.Acta 2000,302:171-188.)。2.サリン被曝に依る中枢および自律神経系への影響1998年に当時、被曝者の救命救急に携わった消防士及び警察官にたいしてケース・コントロール研究を被曝者56名、対照者52名について行った。其の結果、数値の逆読みテストが被曝者群で点数が低かった。しかし、この結果は所謂PTSDの症状を持っこととは無関係であった。またBenton visual retention testも被曝者群で点数が低くかった。これらは記憶の機能の慢性的な低下を示唆するものである。(Environ.Hlth Perspect.2001;1169-1173.)3.現在進行中の研究i)サリン及び其の合成時の副生成物への被曝者の尿中8-ハイドロキシデオキシグアノシン(8-OHDG)の測定は1つの発癌のリスク評価となるが現在迅速に多数の検体を測定する方法を検討中である。ii)有機リンを代謝する酵素の一つパラオキソナーゼの従来から知られている酵素以外に至適pH6.5を持つ新しい酵素を発見した。これについても詳細を検討中である。
著者
長崎 暢子 篠田 隆 粟屋 利江 石坂 晋哉 上田 知亮 舟橋 健太
出版者
龍谷大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、ガーンディーとガーンディー主義、アンベードカルと不可蝕民の運動、インド政治史の研究者が協力して、従来対立的に捉えられてきたガーンディーとアンベードカルの思想と運動を、より広い文脈において捉える試みである。両者には、非暴力的運動という方法や、差別の解消という目的だけでなく、「真の平等」を求める点でも共通点があった。歴史的には、ガーンディーが国際的差別解消としてのインド独立を実現したのに対し、アンベードカルは、ガーンディーの解決できなかった国内的差別解消としてのカースト制度の廃絶を目指し、自ら仏教に改宗することによって、ヒンドゥーイズムを超える、多様で平等な社会への道筋を示そうとした。