著者
蛯名 美智子 村田 恵子 鈴木 敦子 片田 範子 中野 綾美 筒井 真優美
出版者
神戸市看護大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

病院での検査・処置を受ける子どもが実際、どのように説明を受けているのかについて調査した。方法は参加観察及び、その後に子どもの親・医師・看護婦へのインタビューであった。研究対象は2〜13歳の18名の子どもとその親、それに関わる医師と看護婦であった。観察とインタビューから得られたデータは逐語的に整理され、研究者のグループによって分析された。その結果、以下のような4つの結果を得た。1.子どもが検査や処置について知らされた後から検査や処置中にわたって、自分で心理的に準備をしている。私たちはこの現象を子どもの心理的準備/決心、すなわち覚悟と名付けた。子どもが覚悟をして検査・処置に向かうためには、心地よい雰囲気、過去の検査イメージ、検査・処置の間に子どもに選択肢を与えた決定する機会、状況を人々と共に共有する間隔、検査・処置を受けることによって可能になる利益の保証、そして子ども自身による覚悟の宣言が必要であった。2.子どもの能力と医療者が認識する子どもの能力との間で、以下の3つの現象が観察された。それらは子どもの能力と子どもの能力に対する医療者の判断との間のずれ、検査・処置に対する子どもの反応と医療者の対応との間のずれ、そして子どもと医療者の双方の状況の理解に関するずれであった。3.子どもの検査・処置に参加する医師、看護婦、親の間で3つの役割がとられていた。1つは、検査・処置の子どもの反応をチェックすること、2番目の役割は検査・処置について子どもに説明すること、3番目の役割は子どもの覚悟を引き出し、それを維持させることであった。4.検査・処置の後の子どもの思いは、3つのタイプに分類された。3つのタイプとは、「私は頑張った」という思い、「私は頑張ろうとしたんだけど・・」という思い、「私はずっと頑張っているのに」という思い出あった。今後の研究課題は、コレラの結果からケアモデルを構築すること、精製されたケアモデルの効果を検証することである。
著者
佐藤 彰一
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

この研究は、西洋中世初期における最重要の歴史的存在であったフランク国家がいかにして形成されたかを、西ローマ帝国が体現した後期古代から、初期中世の時代相への移行についての新たな理解を基軸に据えて考察し直したものである。新しい論点として浮上したのは、西暦394年のアルボガストのクーデタの挫折により、フランク人首長層がローマ帝国内で30年間にわたって成し遂げた栄達の時代が終わり、以後約半世紀にわたって断片的な動静しか伝来しておらず、この50年間のフランク史の解明が、この主題にとって決定的に重要であるという点である。これまで注目を集めてこなかった、フン族とフランク人との関係史を深めるのも重要である。
著者
持田 徹 垣鍔 直 堀越 哲美 桑原 浩平 窪田 英樹 松原 斎樹 くわ原 浩平
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

世界の二大指標であるISO-7730のPMV指標と,ASHRAE(米国暖冷房空調学会)の基準であるSET^*指標の長所・短所を整理した。そして,平均皮膚温およびぬれ面積率と心理量の関係を,熱伝達論および人体の温熱生理特性から検討し,椅座の被験者実験の結果から,新しい温冷感の評価法を提案した(持田・桑原・窪田・長野)。また,屋外における夏服と冬服の着用実験から,著者らが提案した日射の影響を組み込んだSET^*が屋外においても適用可能であることを確認すると共に,屋外熱環境評価のための新しい温熱指標として予想温冷感ETSを開発した。札幌・名古屋での温冷感・快適感申告データから,SET^*の温冷感中立域・快適域を決定した(桑原・堀越・持田)。汗による水分吸収により着衣の電気抵抗が変化すると考え,着衣面の電気抵抗を測定することにより吸汗量を推定する方法を実験により検討した。また同方法を用い,軽装時において,冬期と夏期に40℃に曝露したときの胸部,上腕部,大腿部の局所の放熱過程を測定した結果,皮膚面の受熱量は着衣の表面温度が低下し始めてから,冬期の実測では約10分,夏期の実測では約6分遅れて低下することを確かめた。(垣鍔)。さらに,人体と環境との対流熱交換量を正確に算定するために,椅座・立位時の対流に関与しない面積(非対流伝熱面積)の実測を行った。姿勢による部位別の対流伝熱面積の違いを明確にし,対流伝熱面積を考慮した立位と椅座時の平均皮膚温算出用の重み係数を提案した。全体表面積に比し,対流伝熱面積が小さいほどHardy-DuBoisの平均皮膚温との差が大きいという姿勢に依存する特性を示した(松原)。
著者
村田 厚生 早見 武人 山本 豪志朗
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究では,ドラーバーの安心感を高めるための警報システムの人間工学的設計基盤技術,居眠りによる自動車事故防止のための基盤を確立し,ドライバーの反応の正確さ・迅速さを保証するための触覚警報提示方法を同定した。また,ベイズ推定,多項ロジスティック回帰モデルを用いた居眠り予測ロジックを提案し,運転シミュレータを用いた検証実験によって, 90-96%の高い予測精度を得た。
著者
西岡 敏 狩俣 繁久 又吉 里美 仲原 穣 仲間 恵子 中本 謙 下地 理則 下地 賀代子 野原 優一 小川 晋史 坂井 美日 青井 隼人 大森 一郎 當山 奈那 田代 竜也 當銘 千怜 平良 尚人 金城 絵里香
出版者
沖縄国際大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

琉球宮古方言は消滅危機言語に数えられ、他の琉球方言と同様、一刻も早い言語の正確な記録が求められている。本研究では、かつて調査された名詞語彙の言語地図作成を行い、宮古方言の地域的な特徴が視覚的に明らかになるようにした。また、これまで研究が手薄であった動詞の活用変化に焦点を当てた臨地調査を広範囲にわたる地点で行い、宮古方言の基本文例を数多く収集した。新たに収集したデータを言語地図化する作業は現在進行中である。
著者
浦野 聡 師尾 晶子 太記 祐一 草生 久嗣 中谷 功治 小笠原 弘幸 深津 行徳 益田 朋幸 村田 光司 田中 咲子 松崎 哲也 奈良澤 由美 KORKUT Taner
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

古代から中世にかけての地中海世界における聖域空間と社会の関係の変動を具体的に調査するため、リキア地方(トルコ南西部)のトロス遺跡の司教座聖堂に焦点を定め、発掘調査を行った。この聖堂は、古代の都市の主聖域に建造されており、それ以前の神殿や聖域との関係で重要な知見を得られることが期待されたが、キリスト教の国教化から50年ほど経った五世紀の半ばには完成し、その後、11世紀に至るまで、隣接する旧都市の主神殿クロノス神殿までの空間に教会付属の工房区域が形成され、都市の手工業の中心となったことが明らかにされた。
著者
佐藤 伊佐務 李 徳新 山村 朝雄
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、風力発電の出力平滑化を用途としたウラン電池の実用化に向けた基礎研究として、ウランのV価とIII価のβージケトン錯体、テトラアミド錯体の合成と物性化学の検討、小型レドックスフロー電池方式の電解試験によるこれら錯体調製時のイオン交換膜の検討を目的とする。活物質候補として種々の安定なウランV価、III価錯体の調製法を確立し、配位子と物性の関係を検討した。
著者
山里 勝己 石原 昌英 豊見山 和行 宮里 厚子 山城 新 浜川 仁 ベイヴェール パトリック ジェンキンズ A・P スチュアート フランク
出版者
名桜大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、近代初頭の琉球・沖縄をめぐる欧米のトラベルライティングを広範に検証した。合衆国探検遠征隊の研究を通し、ペリー提督の対琉球・日本外交を、太平洋諸島における米国の国家戦略上に位置づける可能性が拓かれた。また、琉球と日本においてカトリック教の再布教を担ったフランス人宣教師たちの足跡に、史料紹介や翻訳等を通し光を当てた。さらに、クリフォードとマクスウェルの残した二つの新資料の紹介を行い、沖縄近代史の画期・一八一六年の英艦隊来琉の実像を浮き彫りにした。薩摩の支配による琉球海域秩序の変化の考察は、西洋との言語的接触が不可能となった状況についての今後の研究に、貴重な材料を提供している。
著者
赤司 泰義 有馬 隆文 趙 世晨 山口 謙太郎 志賀 勉 鶴崎 直樹
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

都市・建築の持続化の観点から環境負荷削減のための要素技術や社会制度の効果的な施策立案が求められている。本研究では、社会動態を包含した都市の全体系を"ハビタットシステム"と定義し、ハビタットシステムのモデル化を通じて都市のCO2排出量を長期に予測するシミュレータを開発した。そのシミュレータを活用して、CO2排出削減対策の導入と普及に応じたCO2排出量削減可能量をケーススタディにより明らかにした。
著者
田村 俊作 高山 智子 三輪 眞木子 池谷 のぞみ 越塚 美加 八巻 知香子 須賀 千絵
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

公共図書館の医療・健康情報サービスを適切にデザインするための知見を得ることを目的に,医療・健康情報サービスの現状調査を行ない,アクションリサーチによりサービス普及を試行した。がん相談支援センターとの連携によるサービスには可能性があり,大規模図書館を中心にサービスは普及しはじめているが,実施自治体は公共図書館設置自治体の2割に達しておらず,普及に向けて多くの課題があること,特に公共図書館員に関連知識・技能の修得機会を提供する必要のあることが明確になった。
著者
割澤 伸一 石原 直 米谷 玲皇
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

ポリスチレンとポリメチルメタクリレートのジブロック共重合体が持つ自己組織化現象によって構成される30~100nm程度のピラー,ポア,膜の各自己組織化ナノ構造を三次元ナノ構造として作製する技術を開発した。具体的には,(1)三次元ナノ構造表面に自己組織化構造を配置する方法,(2)ナノテンプレートを利用して三次元的に自己組織化構造の配列を制御する方法,(3)自己組織化構造をテンプレートにした多層膜を作製する技術,(4)三次元ナノフレームに自己組織化自由膜を作製する方法,(5)エネルギービーム照射による自己組織化構造のナノパターンニング技術,(6)集束イオンビーム照射による薄膜接合技術を提案し,実験により可能性を示した。
著者
米田 幸雄 荻田 喜代一
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

薬物療法低反応性の精神分裂病陰性型(2型)の発症に、脳内N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)型レセプターの異常な活性低下が関与する可能性を追究する目的で、脳内における遺伝子転写調節に着目した。転写制御因子は、細胞核内で遺伝子DNAからmRNAへの転写を制御する核内蛋白質である。実験動物にNMDAを全身的に適用すると、転写制御因子activator protein-1(AP1)のDNA結合能が、脳内各部位の中でも特に海馬において選択的に増強された。実体顕微鏡下における凍結脳切片からのパンチアウト法を用いて解析したところ、AP1結合増強は海馬の歯状回顆粒細胞層においては強く認められたが、CA1野およびCA3野錐体細胞ではこのような増強は見られないことが明らかとなった。歯状回におけるAP1結合上昇は、投与後2時間をピークとする一過性の現象であり、投与後4時間目にはほぼ消失したが、錐体細胞層ではいずれの経過時間でも、著明なAP1結合上昇は観察されなかった。NMDAアンタゴニストを前投与すると、NMDAによる歯状回AP1結合増強は完全に阻止された。免疫組織化学的検討により、NMDA投与は歯状回顆粒細胞層においてのみ、選択的にc-FosおよびC-Jun蛋白質を強く発現する事実が判明した。また、NMDAを全身適用すると、その後動物は「tail biting」のような異常行動を示した。以上の結果より、精神分裂病のような脳機能長期的変化の出現メカニズムには、特定機能蛋白質の生合成変動が、深く関連する可能性が示唆される。
著者
河島 伸子 佐々木 亨 小林 真理 山梨 俊夫
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究により、まず、ミュージアムが今後ますます地域社会づくり、地域経済の再生に向けて大きな役割を果たすことができることを確認した。このような役割への期待は、従来、収蔵品の収集、保存、修復、管理といった業務を中心においてきたミュージアム組織にとって新たな挑戦をもたらすともいえる。 地域経済の疲弊、人口減社会といった深刻な問題を抱える日本において、ミュージアムが美の殿堂たる地位に安住していてはならないことは明らかである。美の殿堂ではなく、コミュニティの寄り合い場、市民の文化活動のハブ、拠点となることに今後のミュージアム経営はかかっていると思われる。
著者
久保田 尚 松本 正生 藤井 聡 羽鳥 剛史 高橋 勝美
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、交通計画に関わるサイレント層に着目し、計画論の分野では、地区レベルの合意形成において社会実験がサイレント層に及ぼす影響を明らかにするとともに、ナラティブアプローチによりアンケートでは把握しきれない物語の抽出を測り、それに基づく政策提言を行った。さらに調査論の面から、複数の調査手法を組合わせることによる交通調査の回収率向上や調査コスト削減、データ信頼性向上が期待される結果を得た。
著者
五十嵐 章 長谷部 太
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

デング出血熱の発病機構に係るウイルス毒力説の直接的証拠を得る目的で、1993年タイ国東北部ナコンパノムにおいて臨床的に重篤度の異なる患者から分離された2型デングウイルス遺伝子の塩基配列と、それから推測されるアミノ酸配列を比較解析した。(1)ウイルス蛋白質のアミノ酸配列から、分離株は3つの亜型に分類され、亜型1は最も重症のDSS患者からの分離株、亜型2はDHF患者分離株2株とDF患者分離株2株、亜型3はDF患者分離株3株であった。(2)3'非コード領域(3'NCR)に推測される2次構造からも分離株は3つの亜型に分類され、亜型1はDSS患者分離株、亜型2はDHF患者分離株2株とDF患者分離株3株、亜型3は2株のDF患者分離株であった。これらの結果から、亜型1のアミノ酸配列と亜型1の3'NCRを有するウイスル株に感染した場合、臨床症状は重篤化する可能性があるのに対して、亜型3のアミノ酸配列と亜型3の3'NCRを有する株の感染は軽症で済む可能性が推測される。LLC-MK2細胞に形成されるプラークサイズは、ウイスル遺伝子の構造よりもむしろ、各株が分離された患者の血清反応と関係している。更に1993年、タイ国バンコックの流行から分離された4株の4型デングウイスル遺伝子を比較解析した。その結果、軽症のDF患者分離株に特異的なアミノ酸置換、及び比較的重症のDHF grade II分離株にそれぞれ特異的なアミノ酸置換が存在した。これらのアミノ酸置換は蛋白質の性状に重大な影響を与えると考えられるので、上記2型デングウイスルの結果と総合してデング出血熱の発病機構にウイスル遺伝子の塩基配列が関与していることを推測させる。これらのアミノ酸置換或いは3'NCR構造を有するウイルス株の生物学的性状の解析と、デング出血熱発病機構との係わりは今後の研究課題である。
著者
熊谷 元 林 義明 廣岡 博之
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

タイでは、キャッサバパルプと液状ビール酵母を組み合わせた発酵混合飼料と、核酸系およびアミノ酸系調味料副生液を用いた新規飼料のin vitro第一胃発酵は良好で、ウシに対する嗜好性は高く、核酸系発酵副生液(脱塩母液)の給与が繊維成分の消化率を向上させた。フィリピンとネパールで地場産の牧草と野草を網羅して化学成分とin vitro第一胃消化率を測定した結果、粗タンパク質含量や乾物消化の季節変化が少ない上に高値を示す草種があり、それらのウシ、スイギュウ、ヤギに対する有効性が示された。ネパールではヤクのエネルギー不足とリン、カルシウムおよび銅栄養状態の低下が冬季に認められ、補助飼料の給与が推奨された。
著者
亀山 充隆 張山 昌論
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

知能自動車の知能処理は将来のシステムLSIの応用として期待されている.知能自動車への応用が実現可能となれば,ありとあらゆるリアルワールド応用が可能になる。このようなシステムの実現には,システムLSIのハイレベル階層の開発技術要素を研究する上での好例となる.本研究ではこのような観点から,主に以下の要素技術に関する研究を行った。1.高安全知能自動車用VLSIプロセッサチップファミリの形成高安全知能自動車のための世界最高性能VLSIプロセッサチップファミリの開発を行った。これらは,ステレオビジョンVLSIプロセッサ,オプティカルフロー処理VLSIプロセッサ,軌道計画VLSIプロセッサ,確率推論に基づく軌道予測などであった。これらのVLSIコンピユーティングの計算量減少を目的とした,VLSI向きアルゴリズムレベルも考察した。また,システムLSIの実用化を推進する1つの方策として,現在のFPGAの性能をはるかに超えるフィールドプログラマブルVLSIの開発も行った。2.システムインテグレーションと知能アルゴリズムリアルワールドの環境情報をセンシングし,将来起こるであろう環境の変化を予測することが必要である。計測値にも予測値にも誤差が含まれることを十分考慮したシステムインテグレーションが重要であり,一定サンプル周期毎に同一処理を繰返すリアルワールド信号処理をモデルを構築し,サンプル周期の満たすべき要件を考察した。3.VLSIプロセッサの構成理論メモリと演算部との間の配線による性能ボトルネックを解決するため,記憶と演算を一体化させたロジックインメモリアーキテクチャに基づくVLSIプロセッサの構成法を提案し,その有用性を実証した。リニアアレーやバス構造などの簡単な相互結合回路網を有するロジックインメモリアーキテクチャモデルにおいて,ハードウェア量制約下での処理時間電力最小化問題の解法を考察した。これらも含めた一般化されたVLSIプロセッサのハイレベルシンセシス問題への拡張も行い,高安全知能自動車用VLSIプロセッサの具体例を通して,以下のような最適化問題に対し実用的な段階により近づけることができた。・「チップ面積制約下での,演算遅れ時間最小化」・「演算遅れ時間制約下での,チップ面積最小化」・「チップ面積と処理時間制約下で消費エネルギーの最小化」
著者
宮内 泰介 古川 彰 布谷 知夫 菅 豊 牧野 厚史 関 礼子
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、ヨシをはじめとするさまざまな半栽培植物(または半家畜の動物)に焦点を当て、かかわる人間の側のしくみ・制度を論じることにより、自然のあり方とそれに対応する人間社会のあり方を統一的に把握するモデルを提示することを目標としている。本研究の最終年度に当たる平成19年度は、(1)宮城県の北上川河口地域でヨシ(葦)(Phragmites australis)原の利用のしくみと変遷についての現地調査を継続し、まとめにかかる一方、(2)研究会を開いて多様な専門分野の研究者が集まり、本研究の総括的な議論を行った。その結果、(1)の北上川河口地域での調査では、ヨシ原が歴史的に大きく変遷しており、それと地域組織や人々の生活構造の変遷が大きくかかわっていることが明らかになった。自然環境-自然利用-社会組織の3者が、相互に関連しながら、変遷している様子が見られ、さらに、そこでは、強固なしくみと柔軟なしくみとが折り重なるように存在していることが分かった。また、(2)の総括では、(i)「半栽培」概念の幅広さが明らかになり、(a)domestication(馴化、栽培種化)、(b)生育環境(ハビタット)の改変、(c)人間の側の認知の改変、の3つの次元で考えることが妥当であり、さらには、さまざまなレベルの「半」(半所有、半管理.)と結びついていることが明らかにされた。(ii)また「半栽培」と「社会的しくみ」の間に連関があることは確かだが、その連関の詳細はモデル化しにくいこと、したがって、各地域の地域環境史を明らかにすることから個別の連関を明らかにしていくことが重要であることがわかった。 (iii)さらに、こうした半栽培の議論は今後の順応的管理の際に重要なポイントになってこと、これと関連して、欧米で議論され始めているadaptive governance概念が本研究にも適応できる概念ではないかということが分かった。本研究は、そうした総括を踏まえ、成果を商業出版する方向で進めている。
著者
倉根 一郎 高崎 智彦 松谷 隆治 鈴木 隆二
出版者
国立感染症研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

デングウイルス感染症は世界で最も重要な蚊媒介性ウイルス感染症である。デングウイルス感染におけるデング出血熱の発症機序の解明のため、マーモセットを用いてデングウイルス感染モデルの確立を行った。マーモセットは感染後高いウイルス血症を示し、また抗体反応、臨床的所見、血液学および生化学的検査所見もヒデング熱患者と同様の変化が見られた。また、マーモセットにおけるT細胞免疫応答の詳細な解析のため、サイトカインや細胞マーカー解析のツールを確立した。
著者
倉根 一郎 高崎 智彦 正木 秀幸
出版者
国立感染症研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

デング出血熱の病態形成におけるフラビウイルス交叉性免疫応答の役割を解明することを最終的な目的とし、デングウイルスと日本脳炎ウイルス交叉性T細胞の解析をヒトおよびマウスのリンパ球を用いて詳細におこなった。日本脳炎ウイルスとデングウイルス間には免疫ヒトリンパ球を用いてのバルクカルチャーにおいては交叉反応性が認められた。しかし、CD4陽性T細胞クローンレベルでは日本脳炎とデングウイルス間に交叉反応性が認められなかった。一方、日本脳炎ウイルス反応性T細胞クローンの一部は西ナイルウイルスとの間に交叉反応を認めた。これは、日本脳炎ウイルスと西ナイルウイルス間でのアミノ酸の相同性の高さによると考えられる。従って、ヒトT細胞においてフラビウイルス交叉反応性は存在するが、日本脳炎とデングウイルス交叉性のものは低頻度であると考えられる。これらCD4陽性ヒトT細胞クローンのT細胞レセプターはユニークなモチーフは認められなかった。一方、マウスにおいてもデングウイルスと日本脳炎ウイルス間のT細胞交叉反応性を検討する目的で、まず、日本脳炎ウイルス反応性キラーT細胞の誘導と認識するエピトープの解析を行った。マウスを日本脳炎ウイルスで免疫することにより、日本脳炎ウイルスに対するキラーT細胞が誘導される。これらのキラーT細胞が認識するエピトープはエンベロープ蛋白質のアミノ酸60-68番上にあり、H-2K^d拘束性であった。現在、このエピトープを確認するT細胞のフラビウイルス交叉性、およびマウスキラーT細胞が認識する他のエピトープの同定が進行中である。