著者
臼井 将勝
出版者
国立研究開発法人水産研究・教育機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

魚類寄生甲殻類や食用昆虫など,学術的知識の応用から甲殻類アレルギー患者での交叉反応リスクが懸念されながらも実際に調査されていないものに目を向け,トロポミオシンという共通アレルゲンの存在に焦点を絞って各食品やその調理品に含まれる濃度や含量を明確にするために研究を行った。その結果、魚類口腔内に寄生するウオノエ類とこれらが混入した調理品や食用昆虫等において、エビトロポミオシン様タンパク質が原材料表示義務の生じる濃度を超えて存在することを明らかにした。さらに、キダイ寄生ウオノエ類を例にLC-MS/MS分析によってトロポミオシン様タンパク質が真にトロポミオシンであることを証明した。
著者
河野 公一 織田 行雄 渡辺 美鈴 土手 友太郎 臼田 寛
出版者
大阪医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

研究総括体内に吸収されたフッ物はそのほとんどが腎臓から排泄されるため、高濃度のフッ素暴露のみならず長期にわたる低濃度のフッ素暴露でも腎障害をきたすことが動物試験により確認された。健常者では尿中フッ素量は生体へのフッ素の負荷量をよく反映し、一般環境からの摂取やフッ化物作業者における暴露の指標として広く用いられている。地域住民を対象とした検診結果および動物試験に、より尿中へのフッ素の排泄は腎でのクリアランスに依存しており、もし腎機能の低下がある場合、例えば慢性腎炎や腎不全の患者のみならず健康な個体でも中高齢化とともにフッ素の排泄障害と体内への蓄積が示唆されることが確認された。腎フッ素クリアランス値はクレアチニンクリアランス値に比べて40歳台までは比較的穏やかな減少傾向にとどまるが50歳台以降では急激な低下を認めた。さらに動物を用いたフッ化ナトリウム負荷試験ではフッ素クリアランスが低下し血中フッ素濃度が高く維持されること成績を得た。体内に吸収されたフッ素はその大半が24時間以内に排泄されるが、この排泄率は腎機能の低下とともに減少し、もし腎フッ素クリアランス値が20%低下すればフッ素の24時間における排泄率も20%減少することが確認された。わが国でも増加しつつある腎透析患者では血中フッ素濃度が高く維持され、アルミニウムなどの他の元素とともに骨や脳の病変とのかかわりから問題とされてきた。最近では透析液の脱イオン化などによりこれらの疑問は解消されたとする報告がみられる。しかし本研究の成績より、現在一般に使用されている透析膜自体の性格などから血中フッ素は十分に除去しえず、これらの問題は解消されたとする根拠が得られなかった。近年、わが国の産業界では作業者の中高齢化が急速に進みつつある。このような状況においてフッ物などの有害物を長期にわたって取り扱う作業者が今後さらに増加することが予想される。したがってこれら作業者の健康管理の基準はそれぞれの作業環境において個々の作業者の加齢による腎機能の低下などの生理的状態を考慮した上で評価することが強く望まれる。
著者
佐藤 純 稲垣 秀晃 楠井 まゆ 戸田 真弓
出版者
愛知医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

臨床実験:天気の悪化で疼痛の増強を示す天気痛被験者に対して、40hPa分の低気圧暴露を行うと痛みの増強と交感神経興奮,さらに鼓膜温を上昇させた.2015年3月~2018年6月に当科外来を受診した天気痛患者53名について問診調査を行った.受診患者は女性が多く,痛みに加えて,不安・抑うつはそれほど高くないが,破局化思考が高い傾向にあった。動物実験:野性型マウスに-40 hPa分の低気圧暴露を行うと,上前庭神経核におけるc-fos陽性細胞数(すなわち神経細胞の興奮)が有意に増加することが明らかとなり,半規管あるいは球形嚢に気圧を感知する部位が存在することが示唆された.
著者
森 伸子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

腎臓病を自然発症した猫に対するAIMの臨床研究を実施した。初年度は、臨床試験の立ち上げとプレ臨床試験、2年目は、AIM濃度と最適な投与法の検証のための臨床試験、3年目は、腎臓病猫2群に対するAIMの用量の違いによる効果を検証を行った。これらの試験の結果から、AIMの効果と反応マーカーとして有望な項目が、より明確化され、数値の改善だけでなく、QOLの改善も見られ、食欲向上、活動性の復活などの報告も受けた。一方、AIMの投与によっても、変化が見られない猫や途中離脱を希望する場合もあり、さらなる投与法や、AIM形状の改善なども併せて検討していく必要性を感じた。
著者
関根 嘉香
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

ヒト皮膚から放散される微量生体ガス(皮膚ガス)は体臭の原因となり、他者の快・不快感に影響することがある。一方、自分の皮膚ガスによって周囲の人がアレルギー様症状を発症すると主訴する人たちが存在する。このような現象・症状はPATM(People Allergic To Me)と呼ばれ、科学的・医学的には未解明であった。本研究では、PATM主訴者に特徴的な皮膚ガスの種類・放散量を明らかにすることを目的に、パッシブ・フラックス・サンプラー法による皮膚ガス測定を行った。その結果、PATM主訴者の皮膚ガス組成には健常者と異なる特徴があり、臭気を伴いながら他者に刺激を与える成分が存在することがわかった。
著者
渡辺 憲司
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

まず最初に手がけたのは、地方遊里全体像の把握である。地方遊里は、公認の遊郭組織を持つものの他に、自治組織的名な集団によって監督下に置かれたものがあり、その分別はかなり難しい。「日本遊郭一覧」(昭和4年刊)を中心に、江戸時代の遊里番付などを参考に、警察・保健所資料を含め、地方遊里一覧を作成した。文芸との関連について、江戸時代前期は先行論文があるので、江戸時代後期の地方遊里と文芸について、滑稽本・浮世絵・洒落本・民謡等を中心にまとめた。又潮来を例にしながら地域文化と遊里の関連についてまとめ、伝承資料のお小夜説話にもふれた。地方遊里実地調査メモでは、日本各地で実地踏査した地域(鰺ヶ沢・新庄・鶴岡・酒田・新潟・長岡・分水・津川・柏崎・出雲崎・寺泊・来迎寺・直江津・高田・長野・坂城・岩村田・軽井沢・函館・島原・口之津・久留米・博多・萩・防府・徳山・宇部・柳井・上関・大垣)のメモをまとめた、又、中世の著名な遊女から、地方でのみ伝承されている遊女の墓を遊女の碑一覧として、60カ所を載せた。56カ所までの実地調査をおこなった。遊女墓群調査報告では、遊女の墓がまとまった形で残存している群馬県、倉賀野九品寺・木崎長命寺・石川県・串茶屋の報告をあげた。又遊女の墓のない沖縄に関しても、その特殊性についてリポートした。最後に、ほとんど紹介されていない資料を中心に、遊里文芸参考文献を掲載した。今後は、本研究で果たすことの出来なかった東南アジア地域の地方遊里の実態の調査へ拡大したい。
著者
一柳 廣孝 栗田 英彦 菊地 暁 吉永 進一 石原 深予
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

日本心霊学会は、1910年前後から20年前後まで活動した、当時最大規模の霊術団体のひとつである。その日本心霊学会の機関誌である「日本心霊」のほぼ揃いが、同学会の後進にあたる京都人文書院で奇跡的に発見された。近代日本の精神史を探るうえでの一級資料である「日本心霊」について、本プロジェクトは全資料の裏打ち処理、脱酸素処理を施してPDF化を進めるとともに、二度にわたるワークショップで近代科学史、仏教史、近代出版文化史、日本近代文学などの多様な観点から分析を進め、それぞれの研究成果については書籍、論文、学会発表の形で公表した。
著者
千田 有紀
出版者
武蔵大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究の最終的な目標は、以下の3点である。1.カルフォルニアにおける運動と日本における運動を比較し、日米社会の比較研究を行う。2.エコロジーとフェミニズムの関係を理論的・思想的に問い直す。3.アメリカのカリフォルニアでの反原子力運動を記録し、日本の運動と比較を分析を行う。また本研究は、母性に代表されるような家族に関する語彙の思想的意味を問いなおし、エコロジーとフェミニズムの関係を精査し、理論的に深化させることを目的としている。今年度はこの部分に集中的に取り掛かり、日本における「母性」、とくに「父性」との関係において、「母性」がどのように使われているのかについて検討した。とくに離婚後の家族における「母性」と「父性」の対立について、考察した。日本女性学会において「法律は、離婚後の親子関係に介入すべきなのか―面会交流は親の権利か、子どもの権利か、それとも義務か」というタイトルで、パネリストとして発表を行った。また『女性学』25号に「法律は、離婚後の親子関係に介入すべきなのか―面会交流は親の権利か、子どもの権利か、それとも義務か」という同名の論文が、掲載された。また家族にはらまれる暴力の問題がどのように日本社会で法的に制度化されているのかについて問い、「家族紛争と司法の役割──社会学の立場から」にまとめた。調査としては、今年度は日本において、福島からの女性避難者の聞き取り調査など、ライフヒストリーを聞き取ることを進めた。
著者
佐藤 純
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

1.気象病の病態機構を探るため、日常体験する程度の寒冷(22℃から15℃)、低気圧(大気圧から27hPa減圧)がラットの自律神経パラメータに与える影響を調べた。低気圧により心拍数と血圧は一過性に上昇した。心拍間隔変動値(LF/HF値)も速やかに上昇した。曝露後はすみやかに曝露前値に戻った。低温により血圧・心拍数は徐々に上昇した。LF/HF値は曝露直後に速やかに上昇した。曝露後は曝露前値にゆっくりともどった。以上より、両曝露は血圧・心拍数,交感神経活動を異なった時間経過で上昇させることが分かった。2.坐骨神経損傷により,SD, Wistar, Lewisラットの安静時の平均血圧,心拍数は術後4〜11日に上昇した。一方,副交感神経活動の指標である心拍間隔変動値(HF値)は術後15日以降に上昇した。よって,神経損傷により,早期には交感神経優位,その後は副交感神経優位の自律神経バランスになることが分かった。術後4-19日目において低気圧の効果を繰り返し調べたところ,Lewisラットにおいて特に平均血圧と心拍数が増加が著しかった。慢性痛病態は自律神経系の低気圧反応を変化させるが,その効果には系統差がみられることが明らかになった。3.気圧検出器官が内耳に存在する可能性を実験的内耳破壊ラット用いて検証した。SDラット一側の坐骨神経絞扼手術または脊髄神経(L4)結紮術を施し慢性痛ラットを作成した。両側の中耳腔に鼓膜を介して砒素を注入し前庭破壊を施した。後肢足底に圧刺激を与え逃避行動を観察した。低気圧は、神経損傷群でみられた痛覚過敏行動を増強したが、この効果は前庭破壊によって消失した。一方、低温曝露でみられた痛覚過敏行動の増強は、前庭破壊の影響を受けなかった。以上から、気圧センサーが内耳器官に存在する可能性が示唆された。
著者
緒方 奈保子 車谷 典男 上田 哲生 西 智
出版者
奈良県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

高齢者の眼科健診「藤原京EYEスタディ」を行い2868人(男性1513 人、平均年齢76.3±4.9)が受診した。年齢とともに視力が低下していたが、平均矯正視力はlogMAR0.048で、視力低下(logMAR>0.2)は6.6%であった。白内障術後は19.5%。認知機能検査MMSE平均は27.3±2.3、認知機能低下あり(23点以下)は5.7%で、年齢、視力低下、学歴と関連を認めた。加齢黄斑変性(AMD)患者66例における血漿PEDFは10.2±3.14μg/mlとコントロール群8.23±1.88μg/mlより高く(p<0.01)、PEDFがAMDの発症に関与している可能性が示唆された。
著者
林 奉権 楠 洋一郎 京泉 誠之
出版者
(財)放射線影響研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

慢性炎症はがん、心筋梗塞などの発生に大きく関わっていると考えられる。原爆被爆者では、被爆後50年以上経過した現在においても、がん・心疾患・糖尿病など「加齢病」のリスクがいまだに高い。我々は、被爆者では炎症状態の亢進が起きており、様々な疾患のリスクを高めているのではないかと考え、原爆被爆対象者について血液試料を用いて、炎症性サイトカインIL-6、TNF-α及びIFN-γ、炎症性指標であるC-反応性蛋白(CRP)、抗炎症性サイトカインIL-10の血漿中レベルを測定し、被曝線量との関係を検討した。また、血清中活性酸素測定のためのマルチプレート法による実用的システムを確立し、放射線被ばくの影響についても調べた。その結果、炎症性マーカー(IL-6,TNF-α,IFN-γ,IL-10,CRPが放射線被曝線量に依存して有意に増加していること、および、被曝線量の増加に伴い、活性酸素産生量が統計学的に有意に上昇することを見出した。この活性酸素産生量の増加は炎症性指標であるIL-6およびCRPの増加に比例していた。さらに、マウスを用いて放射線照射後のリンパ球の割合と炎症指標レベルの変化についても調べた。その結果、照射マウスの血中および胸腺、脾臓、リンパ節中のリンパ球数は減少していたが、照射マウスと未照射マウスの血漿中の炎症関連サイトカイン、胸腺、脾臓、リンパ節細胞中のサイトカイン量において有意な差は認められなかった。このことは、被爆者に認められている持続的炎症状態は被爆による免疫担当細胞の減少とともに、感染などの炎症の誘起が重要な役割を果たしているのかもしれない。
著者
甘利 航司
出版者
國學院大學
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究はGPS型電子監視を我が国で導入することについて検証したものである。もともと電子監視は80年代初頭にアメリカで登場した後、諸外国で実施されることとなった。その後、そのような原始的な電子監視の問題点を克服する、GPSを使用した電子監視が90年代中ごろにアメリカで登場した。そして、その電子監視は性犯罪者に対する24時間体制の監視を可能とした。GPS型電子監視は2000年代中ごろからアメリカの各州のみならず、諸外国で実施されることとなった。しかし、本研究は、実証的な分析により、性犯罪者の再犯防止効果はないことを示すものであり、性犯罪者対策として導入することに反対するものである。
著者
塚原 丘美
出版者
名古屋学芸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

若年女性の耐糖能異常者の実態を把握し、規則正しい糖質摂取によって、その耐糖能異常を是正することができるか検討した。女子大学生412名に75g糖負荷試験を施行したところ、若年者にもかかわらず30.3%に耐糖能異常が認められた。耐糖能異常を認めたうちの26名を被験者として、体格に応じた糖質を3食/日摂取する3ヵ月間のオープン介入試験を行った。介入試験の結果、消化管ホルモンであるGLP-1分泌30分値及び初期インスリン分泌能は有意に増加し、血糖30分及び60分値、HbA1cが有意に低下した。望ましい糖質摂取はインスリン分泌能を正常化させ、若年女性の耐糖能異常は改善できることが示唆された。
著者
小西 潤子 ロング ダニエル
出版者
沖縄県立芸術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究では、日本統治時代以降に日本語や日本の流行歌を参照して創作されたパラオの日本語(混じり)の歌(現地ジャンル名:デレベエシール。以下、パラオ日本語歌謡)を収集し、民族音楽学的・言語学的観点からその特徴を分析して、「パラオらしさ」を描き出した。また、パラオ日本語歌謡50曲を選びパラオ初の五線譜付歌詞集としてとりまとめるとともに、代表曲15曲のレコーディングとCD制作をし、現地に還元した。
著者
大森 直樹 大橋 保明
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

首都圏の学校における東京電力福島第一原子力発電所事故の影響と課題を明らかにすることが本研究の目的である。平成29年度は、①環境省の汚染状況重点地域の指定が群馬・栃木・茨城・千葉・埼玉に及んでいる事実をふまえ、②国民文化総合研究所(2016)が提起した「原発被災校A」(福島725校)の概念を手がかりとして、③群馬・茨城・千葉における学校数および学校別児童生徒数の一覧の作成をおこない(2017年度群馬569校・茨城837校・千葉1346校)、④2017年度の「原発被災校A」が群馬160校・茨城428校・千葉342校に及ぶことを明らかにした。⑤首都圏の「原発被災校A」における課題については、保護者を中心として原発事故の子どもへの影響と学校の課題に関して取り組みを重ねてきた「放射能からこどもを守ろう関東ネット」(2012年12月発足)や「関東子ども健康調査支援基金」(2013年9月発足)へのヒアリング調査をおこない、学校における空間線量の測定、学校における土壌汚染の測定、野外活動の制限、学校給食の安全、被ばくによる子どもの健康への影響を知るための健康診断などの諸課題について、現状を明らかにするための手がかりを得た。今後は、上記した①②③④をふまえて、⑥栃木・埼玉における学校数および学校別児童生徒数の一覧の作成をおこない、⑦栃木・埼玉における「原発被災校A」の実数についても明らかにする。また、⑤をふまえて、「原発被災校A」が所在する首都圏の自治体の事例研究をおこない、課題の解明をすすめていく。
著者
高橋 規郎 大石 和佳 丹羽 保晴 並河 徹 稲葉 俊哉
出版者
公益財団法人放射線影響研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

原爆被爆者等を対象とした疫学調査は循環器系疾患のリスクが放射線被曝線量に相関して上昇することを示している。本計画では、この事象を動物実験で検証し、循環器疾患リスクがどのようにして生じるかの作用機序を明らかにすることを目的とした。放射線を照射した脳卒中易発症性高血圧自然発症ラット(SHRSP)を用いた実験では、寿命の有意な短縮、および、脳出血等の重篤度に顕著なる亢進が認められた。一方、高血圧自然発症ラット(SHR)では、収縮期血圧値は線量に比例して高値を示した。また、種々の血液マーカーにも線量に比例した増減が観察された。我々の実験が作用機序の解明に重要な役割を果たすことが示された。
著者
谷川 真理 内山 巌雄 野瀬 三佳 東 賢一
出版者
公益財団法人ルイ・パストゥール医学研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究では化学物質過敏症(MCS:Multiple chemical sensitivity)患者と健常者の多項目免疫機能検査を測定し、比較検討した。MCS患者群と対照群から採血し、一般検査、リンパ球サブセット解析と12種のサイトカイン産生能を測定した。結果はMCSでIFN-γ産生能が有意の低下を認め、他項目では差がなかった。IFN-γは、自然免疫系と獲得免疫系の両方に関与するTh1系サイトカインで、MCSではTh1系の反応に、なんらかの不全がある可能性が示唆された。血中IgE, コーチゾールは異常なく、Th2系サイトカイン産生能にも差がないことから、MCSはアレルギーを介さない病態と考える。
著者
山下 剛 望月 新一
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

研究分担者の望月氏により、宇宙際Teichmuller理論を虚数乗法を持つ楕円曲線にも拡張できることが分かった。これにより、宇宙際Teichmuller理論とDirichlet L関数の零点の間に初めて数学的な関係が生まれた。これは今後、宇宙際幾何学のさらなる発展としてのゼータ関数の零点への研究の大きな最初の一歩とみなせる。
著者
小瀧 裕一 小檜山 篤志 安元 剛 寺田 竜太
出版者
北里大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

記憶喪失性貝毒生産藻3種に関して、分布、毒生産特性、毒の動態を検討した。Pseudo-nitzschia multiseriesを分離したが早めに死滅し、追及は困難であった。Nitzschia navis-varingicaは南方産でわが国まで黒潮で運ばれて分布を拡大したとの仮説を構築した。同種の増殖・毒生産特性、rDNA ITS領域の塩基配列比較結果は上記仮説を支持した。同種は、ドウモイ酸とイソドウモイ酸A、Bを生産し、その組み合わせから4タイプに分けられるが、それを制御する因子は遺伝子および環境細菌の存在であった。毒生産に及ぼす細菌の影響はP. multiseriesが最も顕著であった。
著者
勝山 貴之
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

イングランドの地図製作とシェイクスピア演劇の関係性を解明しようとするこの研究は,中央集権国家としてのイングランドを成立させようとする君主の権カイデオロギーを分析しながら,文化の産物としての地図がシェイクスピア演劇にどのような形で表象されているかを解明するものである。一般に地図とは,地理上の発見や知識に基づいた「科学的」かつ「客観的」な情報の集大成と考えられてきた。しかしこうした地図作成学の伝統的な考え方に対して,1980年代後半,修正論者たちはディコンストラクションの手法を援用することによって,その基本概念の再考を求めるようになった。すなわち最も「科学的」な地図といわれたものですら,測量術による客観性を基に作られたというよりも,むしろ社会の伝統や文化的規範によって描き出され,生み出されるものであるということが明らかにされ始めたのである。いかに精妙な地図といえども,人間が描くものである以上,そこには作者の主観的な世界観が,また時代や社会を支配するイデオロギーが介在することを否定することはできない。イングランドにおいて女王の命令によって進められた地図製作は,国内において地方の掌握と中央集権国家の樹立を目指したものであり,対外的にはアイルランドやスコットランドの併合による帝国として来るべきブリテンの成立をその目標に掲げていた。このような中央集権国家成立のイデオロギーは,当時の演劇にも色濃く反映されており,作品中に描かれる宮廷と地方の対立や,アイルランド人やスコットランド人を、そして新大陸の原住民を、自らの社会階層の中に組み込もうとする体制側の葛藤からもうかがわれる。この研究は、シェイクスピアの『ヘンリー六世・第二部』、『マクベス』、『コリオレーナス』、『テンペスト』など作品が、どのような形でこうしたイデオロギーの対立を表象・試演し、当時の観客に提示しようとしたのかを探求したものである。