著者
白戸 憲也
出版者
国立感染症研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

多くのエンベロープウイルスはエンドサイト―シス経由で細胞侵入する。ヒトコロナウイルス(HCoV)229EもエンドゾームのカテプシンLを利用すると考えられてきた。本研究では、我々はHCoV229Eの臨床分離株はATCC株のような細胞順化株とは異なり、エンドゾームのカテプシンLよりも細胞表面のTMPRSS2の利用を好む事を発見した。エンドゾームはTLR認識など、自然免疫応答の主要な場所であり、本来のHCoV229Eはおそらく細胞表面からの細胞侵入によってエンドソームを飛び越えるように進化したと考えられる。ATCC株におけるこれらの性質は、長い間の細胞継代によって失われたと考えられる。
著者
塚原 隆裕 川口 靖夫 田邉 真明 高橋 通博 嶺岸 卓也 原 峻平 池上 明人 井上 俊
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

二方程式モデル(非等方性/等方性k-εモデル,k-ωモデル)およびレイノルズ応力方程式モデルをフレームワークとして,粘弾性流体の抵抗低減流れを再現し得る乱流モデルの構築を目的とした.直接数値解析および界面活性剤水溶液の実験も行い,そのデータベースを元にa-prioriテストを通じて,粘弾性寄与項やGiesekus構成方程式に現れる非線形項について新たなモデルを提案した.粘弾性流体における複雑流路(有限平板周りやバックステップ流路)の乱流を調査し,Kelvin-Helmholtz渦の抑制効果,剥離点距離の延長,および主流揺動を見出し,それらの解明と(乱流モデルによる)予測を行った.
著者
宮本 陽一 前田 雅子 大滝 宏一 西岡 宣明
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

今年度は、個々に資料収集および先行研究において提唱されてきた分析について再検討した。さらに、その知見をもとに九州方言(長崎方言、熊本方言)を中心に、特に選択的接続詞が認可されるコンテクストを念頭に本課題の刺激文を作成し、実験プログラム(Ibex Farm)を完成させた。個々の研究成果については以下の通りである。宮本は、九州方言における短い答えのデータをもとに日本語の短い答えにおける名詞句内分配解釈の認可条件について検討した。共通語では区別が難しい代名詞の「の」と属格の「の」の分布を九州方言のデータから区別し、日本語の短い答えにおいてFocP SPECへの移動ならびにAn(2016, 2018)の提唱する拡張削除(Extended deletion)が関与していることを明らかにした。西岡は特に日本語の主語位置の量化詞と否定の作用域について熊本方言の「が・の」主語をもとに考察し、さらに英語との比較を通して、カートグラフィの理論構築を行った。前田は助詞の残る削除現象、イントネーションと量化詞の作用域の関係、疑問文断片等について長崎方言等のデータを踏まえつつ、分析を行った。大滝は実験で使用する熊本方言と長崎方言における量化表現について検討し、どのような刺激文を実験で使用すべきか検討した。また、刺激文を提示する際に使用するプログラム(Ibex Farm)について、刺激文ならびに画像刺激の提示方法について検討した。加えて、富山方言における実験の可能性についても検討した。
著者
村杉 恵子
出版者
南山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

幼児はどのように動詞と時制等の一致の表現を獲得するのか。ドイツ語、オランダ語、フランス語などを母語とする幼児が主節不定詞現象を示すことはよく知られている。本プロジェクトでは、縦断的研究とコーパス分析に基づき、日本語を獲得する幼児においても、2歳前に、主節不定詞現象に見られる時制・補文標識に関する特徴を欠いた段階が存在することを提案する。さらに本研究では、主節不定詞現象は言語を超えて共通するが、主節内の動詞の形態は、世界を三分化することを提案する。不定詞、語幹の裸動詞、そして、代理の活用形がデフォルトとしてつけられる場合の三種類の幼児の動詞が、大人の形態的特徴を反映してあれわれることを示す。
著者
斎藤 清 森 努 岩味 健一郎
出版者
福島県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

神経線維腫症2型(NF2)は常染色体優性の遺伝性疾患で、神経系に多数の神経鞘腫や髄膜腫が発生するために長期予後も不良である。これまでの調査でも若年発症者では20年で約2/3が死亡しており、国内807名の臨床調査個人票解析で6割は経過が悪化していた。神経鞘腫と髄膜腫は代表的良性腫瘍であるにも関わらず、なぜNF2は予後不良なのか。TCGAデータベースを用いた解析では、核内レセプター、ミトコンドリアと酸化的リン酸化、翻訳制御など、機能予測からDNA修復に関わる癌抑制遺伝子の重要性が指摘されたが、NF2に伴う神経鞘腫と孤発例の神経鞘腫の比較では、遺伝子発現には有意な差はみられなかった。NF2に多発する髄膜腫については、再発例で高頻度にIGF2BP1遺伝子のメチル化が見られたことから、ヒト悪性髄膜腫由来のHKBMM細胞におけるIGF2BP1遺伝子の役割についてCRISPR-Cas9法を用いた遺伝子破壊による低下、PiggyBacトランスポゾン系にtetracycline依存的誘導エレメントを組み込んだ誘導性発現により解析した。IGF2BP1遺伝子破壊により発現が低下した細胞では強い接着を持つ形質が顕著に失われ、細胞の遊走性が増大した。HKBMM細胞はCadherin11(CDH11)を大量に発現し、IGF2BP1遺伝子破壊を行ったHKBMM細胞では細胞間でのCDH11の発現が低下していた。これらの結果より、IGF2BP1遺伝子がRNAのレベルで細胞接着を制御して、生体内での播種を抑制していることが示唆され、易再発性にはカドヘリン依存的な細胞接着を介したIGF2BP1のRNA安定化機構が関わる可能性が示唆された。引き続き、MTAを締結して入手した神経鞘腫細胞株SC4とHE1193と用いて、髄膜腫と同様の手法によりターゲット遺伝子発現を調整して神経鞘腫の分子機序解明を進める。
著者
操 華子 村田 裕美 川上 和美
出版者
静岡県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究の目的は、感染予防実践者である看護職のコンピテンシーの実態を把握するための質問紙を開発し、作成した質問紙を用いて、日本と英語圏の感染予防実践者の看護職のコンピテンシーを把握すること、感染予防実践者である看護職のキャリアレベルごとに共通して求められるコンピテンシーを明らかにすることである。感染管理疫学専門家協会(APIC)から発表されたコンピテンシー・セルフアセスメント・ツールに回答してくれた67名の感染管理認定看護師のインタビューデータを各項目の回答理由毎に質的に分析した。その結果から、感染症プロセスの明確化、医療関連感染サーベイランスと疫学調査、感染性微生物の伝播予防・制御、マネージメントとコミュニケーション(リーダーシップ)、質・業務改善と患者安全、教育と研究、労働衛生の7つのカテゴリーを含む127項目からなる調査票を作成した。プレテストを実施し内容を精選し、基礎情報11項目を加えた138項目からなる感染予防実践者のコンピテンシーに関するオンライン調査を実施した。日本の感染予防実践者への調査協力は、日本感染管理ネットワーク(Infection Control Network in Japan)に依頼し、所属会員のメーリングリストから協力依頼を行った。また、日本看護協会の感染管理認定看護師ならびに感染症看護専門看護師の登録者のうち所属非表示者などを除外した2355名に協力依頼の葉書を送付した。5月17日現在で413名から回答を得た(回答率18%)。研究を除いた全カテゴリーで、感染予防実践者としての経験を積むことで各能力が向上していることが明らかになった。現在、APICの研究委員会の副委員長を通じて、感染予防実践をしている看護職への調査協力を依頼しており、協力への内諾は得ている。調査時期などの詳細をつめ、英語版の同じ調査票を用いてオンライン調査を実施する予定である
著者
岡田 英己子
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

1990年代から「平塚らいてうは優生思想の持ち主」論が流布している。しかし、その説の典拠はあいまいで、史資料の誤った引用が目立つ。平塚はたしかに優生思想の持ち主であるが、断種法制定運動を率いたわけではな、いからだ。本研究では、いつ頃から、どのようにして、平塚が優生思想に親近感を持つのかの解明を、主目的とする。III部構成である。I部「平塚らいてうの優生思想形成過程-大澤謙二・永井潜の『反』フェミニズムとの対比を通して」では、日独の結婚制限・断種法情報比較から、若き平塚の優生思想形成過程を追う。平塚は日本女子大学校時代に東大医学部生理学教室初代教授の大澤謙二講義を聴く。大澤の後継者である永井も、同時期に大澤講義を通して結婚制限に研究関心を待つことが明らかにされる。II部「断糎法制定(国民優生法)に至る動き」では、永井に代表される東大医学部の一群が、ナチ断種法に傾倒していく経緯を年表で提示し、それが平塚のフェミニズムに依拠する優生思想とは異なることを示す。III部「戦後優生思想の読みかえと隠蔽・忘却」では、優生保護怯制定時の平塚(1949)と永井(1948/49)の原稿を比べ、永井は「反」フェミニズムの姿勢を貫き、かつ彼の優生学テキストは戦後も変化がない点を明らかにする。研究成果は三点である。1.1990年代に流布する「平塚は優生思想の持ち主」論を批判し、「母性主義フェミニズム」とは別の平塚フェミニズム論の新たな可能性を探った。2.東大教授永井が優生学研究と断種法制定運動に没頭する理由が明らかにされた。3.日独比較を機軸にする優生学の歴史研究方法論のモデル例が示された。
著者
岡崎 勝一郎
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

海苔の色落ちは天候やその他の要因で発生するが商品とはならずほとんどが廃棄されている。これを有効利用するため海苔の細胞壁に多量に含まれる粘性のある酸性多糖であるポルフィランを効率的かつ短時間で調製した。精製ポルフィランの免疫細胞に与える影響をマウスのマクロファージ培養細胞(J774. 1)とリポ多糖(LPS)に対する応答性が高いC3H/ HeN系マウスの脾臓細胞で検討した結果、細胞性免疫を増強するサイトカインであるインターロイキン(IL)-12とンターフェロン-γの産生誘導が乳酸菌やLPSと同様に認められ、マクロファージ上のToll様受容体4を介してLPSと同様にIL-12の産生を増強していることが示唆された。また、腫瘍壊死因子あるいは過酸化水素で刺激したヒト腸管上皮様細胞株Caco-2細胞で産生増強される炎症性サイトカインであるIL-8の産生をポルフィランと乳酸菌は抑制し、経上皮電気抵抗値で測定した腸管のバリア損傷に対する抑制効果もポルフィランに認められた。以上のことから、食物として摂取している海苔中のポルフィランには細胞性免疫の賦活化作用と腸管細胞での抗炎症作用といった乳酸菌と同様な健康機能効果があると考えられた。
著者
鈴木 智大 李 暉 丁 垚 韓 志晩
出版者
独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は東アジアの歴史的木造建築の構造システム論の創生に向け、技術的・空間的側面から各国の歴史的木造建築を総合的に分析、比較する研究構想の一部として実施した。具体的には中世日本と中国と韓国における木造建築について、その基礎的な情報および論考を集積・把握し、適宜現地調査をおこなった。そして、上記の基礎的な情報を踏まえ、中国の各時代・各地域の建築について網羅的な検討をおこなった。また中国建築における穿挿枋に着目し、日本建築との関連性を考察した。東アジア建築史著述の端緒となるだろう。
著者
氏家 誠 袴田 航
出版者
日本獣医生命科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

小胞体αグルコシダーゼ阻害薬(AGI)は、宿主細胞のαグルコシダーゼの働きを抑制する事で糖蛋白質の合成を阻害する。このため、AGIは、コロナウイルス(CoV)を初めとするエンベロープウイルスに対して抗ウイルス活性を示す。我々は、これまでに、化合物ライブラリーからスクリーニングを行い、動物およびヒトCoVに対して強力な抗ウイルス活性を示す新規AGIを6種類同定した。AGIが示した抗CoV活性は、当初、構造蛋白質であるS糖蛋白質の合成阻害に起因すると考えられていた。ところが、AGIはCoVのS糖蛋白質だけではなく非糖蛋白質及びその転写活性をも選択的に阻害する事が示唆された。最終年度は、AGIが示したこの予想外の抗CoV機構の解明を試み以下の成果を得た。1)CoVは感染すると宿主細胞由来の脂質2重膜を変化させてDMVsと呼ばれる「CoV専用の複製工場」を形成する。このDMVs形成には、非構造蛋白質のNSP3、4及び6が関与する。NSP3及びNSP4は糖蛋白質であることから、AGIはこれら糖蛋白質に作用してDMVs形成を抑制すると仮定した。そこで、AGI存在及び非存在下、感染細胞のDMVs形成を観察したところ、AGI存在下ではDMVs形成が著しく抑制される事が分かった。2)次にAGI存在及び非存在下、NSP4糖蛋白質の合成量を比較したところ、AGI存在下ではNSP4合成が強く阻害される事が分かった。これらの結果から、AGIは非構造蛋白質のNSP4糖蛋白質の合成を阻害することでCoV専用の複製工場DMVs形成そのものの合成を抑制し、結果として、CoVの転写活性・翻訳活性を強力に阻害することで強い抗CoV活性を持つことが示唆された。今後は、AGIによる抗CoV機構のさらなる詳細な解析を行いたい。
著者
屋比久 浩市 益崎 裕章 高山 千利 島袋 充生 幸喜 毅
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

若齢期における人工甘味料摂取が、視床下部小胞体(ER)ストレスを介して、成獣期の肥満感受性(レプチン抵抗性)を高める可能性が示唆された。分子シャペロンを人工甘味料と共投与することで、視床下部 ER ストレスが低下し、さらに成獣期以降、高脂肪食に対する嗜好性をも軽減することが確認された。 マウスの embryo から摘出した全脳の primary culture においては、人工甘味料が ER ストレス関連遺伝子の発現をかなり亢進させた。これは人工甘味料が視床下部 ER ストレスにダイレクトに寄与することを示唆する所見である。
著者
永原 章仁 浅岡 大介 北條 麻理子 泉 健太郎
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

胃潰瘍や癌がないにも関わらず、胃痛、胃もたれを起こす例は機能性ディスペプシア(FD)と呼ばれ、症状発現機序は十分に解明されていない。本研究では胃内圧を測定し、空腹時の内圧が食後の満腹感に影響している可能性を示した。FDの診断では、軽微な内視鏡所見にとらわれず、症状にフォーカスして診療をすること、治療では、新たな酸分泌抑制薬が高い効果を認めること、多剤併用療法の効果は限定的であること、抗うつ薬・抗不安薬が一定の効果があること、また、長期の管理は今後解決すべき大きな問題である事を明らかにし、非効率的な薬剤治療を回避し、適切な薬物治療を行うためのエビデンスの構築に寄与することができたと考えられる。
著者
根津 由喜夫
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、中世、ビザンツ帝国に成立した軍事聖者崇敬が周辺のスラヴ・東欧世界に伝播し、その地に定着し、独自の発展をしてゆく過程を分析し、地域ごとに生まれた特性を比較、検証した。特に注目したのは、テサロニケの聖デメトリオス信仰がブルガリア、セルビアで受容されるプロセスである。こうした課題を究明するため、文献調査と並んで、両国の教会や修道院などに残さされた壁画などの現地調査も実施し、それらの地域でビザンツに由来する軍事聖者が現地の守護聖人として定着してゆく過程が確認された。
著者
小林 一貴 竹本 稔
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究の目的は我々が同定した筋芽細胞分泌たんぱくであるR3hdmlの骨格筋における糖取り込みにおける役割ならびにマイオカインとしての機能を明らかにすること目的としている。本年度は計R3hdmlをアデノウイルスベクターを用いて肝臓に過剰発現させた後、ストレプトゾトシン(STZ)を投与し糖尿病を惹起した際の糖代謝や生存曲線に与える影響を検討した。その結果、R3hdml過剰の有無により空腹時血糖値に差はなかったものの、R3hdml過剰マウスで有意な生存曲線の延長が観察された。以上より肝臓で過剰発現され分泌されたR3hdmlが全身の組織、細胞に影響を与える可能性が示唆され、さらに分泌されたR3hdmlと脂質代謝との関連を調べた。R3hdmlを過剰発現した肝臓では脂質代謝のマスターレギュレーター膜結合型転写因子SREBPの発現が低下することやR3hdmlを過剰発現したAd293細胞では飽和脂肪酸の一種、パルミチン添加に伴う細胞障害が軽減されることが明らかとなった。R3hdmlと全身の脂質代謝との関連が示唆され、今後さらに研究を進めてゆく予定である。
著者
森 哲 竹内 寛彦 森 直樹 Savitzky Alan H. Tang Yezhong Li Ding Tsai Tein-shun Nguyen Tao Thien Das Indraneil Silva Anslem de Mahaulpatha Dharshani 城野 哲平
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

ヤマカガシは頸腺と呼ばれる特殊な防御器官を持ち、強い皮膚毒を持つヒキガエルを食べることによりその毒成分を取り込んでこの器官に溜める。また、特異的な防御ディスプレイを行って、その毒を効果的に捕食回避に利用する。本研究では、合計18種のユウダ亜科のヘビが同様の防御器官を持つことを確認し、それらの形態は多様化していることを明らかにした。また、分子系統解析の結果、頸腺システムは1回だけ進化してきたことを示した。さらに、ミミズ食に移行した一部のヘビでは、頸腺毒をヒキガエルではなくホタルから取り入れている可能性が示された。
著者
吉田 孝 中島 秀喜 瓜生 敏之
出版者
北見工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

我々はこれまでに合成および天然多糖類を硫酸化した硫酸化多糖は高い抗HIV作用を持つことを見出し研究を続けている。特に天然多糖カードランを硫酸化したカードラン硫酸は、低毒性であり高い抗HIV作用を示すことを明らかにした。作用機構は、硫酸基に由来する(-)電荷が、HIVのエンベロープタンパク質gp120の(+)電荷集中部位に静電的に相互作用してエイズウイルスがT細胞などへ感染することを阻害すると考えた。インフルエンザウイルスもエンベロープタンパク質を持つ。本研究では、カードラン硫酸の抗ウイルスメカニズムによりインフルエンザウイルスにも適用させた材料化を検討した。
著者
小松 志朗 浅井 雄介
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-07-18

本研究の目的は、グローバルな感染症対策における人の国際移動の管理の課題と、その解決策を明らかにすることである。前年度の研究において課題の方は概ね明らかにできたので、今年度は解決策の検討に重点を置いた。本研究では、航空機による移動に焦点を絞っていることから、人の国際移動の管理とは空港での国境管理を意味する。国境管理の具体的な中身は移動制限(渡航制限)をはじめとして様々なものがあり、それらを効果的に組み合わせて感染症の輸入リスクを低減させること、あるいは国内対策の準備のために「時間稼ぎ」をすることが管理の目的であり、しかもそれを資源と時間が限られた状況下で実現しなくてはならない。この点については、各国政府にとって国境をどの程度開放/閉鎖すべきなのかという問題は判断の難しい「究極の選択」であると考え、他分野の類似の問題との比較もしながら理論的、倫理的な考察を深めた。そのようにして解決策の骨格を描く一方で、最も有効な国境管理のあり方を具体的に示す理論上のモデル(グローバル管理モデル)の構築を目指し、特に重要な管理措置である移動制限の効果を測るために、投薬、ワクチン接種、感染者の隔離という3つの措置と比較するシミュレーションを行った。その結果、移動制限は10%の制限でも効果があり、理論上は他の3つよりも効果的な措置であることが明らかになった。ただし、その効果は制限の開始時期に大きく影響を受け、開始が遅ければ大流行を防げない可能性が高いことも分かった。移動制限の効果と限界を理論的に把握したことで、グローバル管理モデルの構築の土台を固めることができた。
著者
田村 啓敏
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

研究成果は次の4点である。1)迅速な機能成分の単離法として、QuEChERS法を開発できた。2)サツマイモでは、鳴門金時芋が強い活性を示し、玉ねぎでは、香川産のものが高い活性を示し、活性物質はquercetin 4’-glucosideであると明らかにした。タイ産のサツマイモの活性は弱かった。3)抽出物の活性試験結果と各成分の濃度との相関をPeason’s correlation coefficientにより計算し、高い相関値から機能成分の選抜ができた。4)調理過程で抗アレルギー活性が変化しない、あるいは煮沸により活性が高まることがあることがわかり、調理が機能増進に役立つことが分かった。
著者
住谷 さつき 原田 雅史 上野 修一
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

機能性精神疾患における神経細胞の機能や代謝の異常を解明するために、3Teslaの高磁場MR装置を用いて気分、不安障害患者の帯状回、左右基底核におけるプロトンMRS (proton magnetic resonance spectroscopy:^1H-MRS)の撮像を行った。中でもこれまで検出困難であったグルタミン酸やGABAなどの脳内アミノ酸神経伝達物質の変化に注目した。強迫性障害患者は帯状回でN-acetyl aspertate: NAAの有意な低下がみられグルタミン酸も健常者と比較して有意に低値であった。GABAは低値となる傾向があるものの、有意な差は見られなかった。基底核における強迫性障害患者のNAAは健常者と比較して高い傾向があり、右が左に比べて有意に高かったが、脳内アミノ酸神経伝達物質は健常者との間に有意な差はなく左右差も見られなかった。パニック障害患者では右基底核におけるグルタミン酸+グルタミンが健常者よりも有意に高かった。大うつ病障害患者では帯状回でグルタミン酸が健常者よりも有意に低かった。今回の研究では高磁場装置による強迫性障害、パニック障害、大うつ病における脳内アミノ酸神経伝遠物質の定量が行われ、それぞれの疾患に特有な脳部位における脳内代謝物変化が生じているという知見を得た。今後は症例数を増やし臨床症状の特徴との関連、薬物の影響を検討し、治療前後での比較を行うことを計画している。
著者
松林 嘉孝 筑田 博隆 齋藤 琢 谷口 優樹
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では本邦で行われた頚椎後縦靭帯骨化症(頚椎OPLL)のGWASで同定された疾患修飾候補遺伝子のひとつであるRSPO2のOPLL発症およびOPLL伸展における機能解明を目指して開始した。まずヒトサンプルおよびマウスのティッシュパネルにおいてRSPO2が後縦靭帯に発現していることを確認した。また手術で得られた頚髄症患者および頚椎OPLL患者の黄色靭帯での発現比較において頚椎OPLL群で有意にRSPO2の発現が高かったことからRSPO2がWnt活性化因子であることをあわせて、我々はRSPO2のgain-of-functionがOPLLの発症に関与しているという傍証をえた。またヒトOPLLサンプルやヒト黄色靭帯骨化症サンプルにおいて骨化前線部の靭帯細胞でコントロールと比較してRSPO2の発現が有意に上昇していることも確認した。次にヒト脊椎靭帯細胞で実際にRSPO2が骨化を誘導することが可能か検証すべく実験を行った。まず手術で得た黄色靭帯からCD90陽性の間葉系幹細胞とCD90陰性の靭帯細胞をフローサイトメーターを用いて分離培養する系を確立した。続いて同系にて得られたCD90陽性の細胞群にRSPO2を添加することで実際に骨芽細胞分化が誘導されることを確認した。またOPLLはメカニカルストレスのかかる部位で進展悪化することが知られているが、実際に上記系で得られたCD90陰性の靭帯細胞にメカニカルストレスをかけることでRSPO2の発現が上昇することも確認でき、靭帯内では靭帯細胞でのRSPO2の発現・分泌上昇が靭帯内間葉系幹細胞の骨芽細胞分化を促進している可能性が考えられた。最後にRSPO2のCre誘導性トランスジェニックマウスを作出し、様々なCreマウスを交配することで実際に靭帯骨化症が誘導できるかを検討したが現時点では、靭帯骨化が確認されるには至っておらず現在も交配と解析を継続しているところである。現段階までの成果を現在英語論文にまとめ、投稿中である。