著者
横川 隆志 大野 敏 能村 友一朗 久野 美由紀
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

真核生物や古細菌では、タンパク質の生合成で主要な働きをするtRNAの遺伝子にイントロンが含まれている場合がある。このイントロンが除去され、成熟したtRNAが生成されるためには、RtcBという酵素がイントロンが除去された後のRNA断片を結合すると考えられるが、その際、イントロンを環状化していることが確かめられた。環状イントロンの働きは未知数であるが、環状イントロンはメタン生成古細菌 Methanosarcina acetivorans の細胞内で安定に存在することがわかった、またイントロンを持たないバクテリアにもRtcBは存在するので、このような環状RNAの機能についてさらに理解を深めたい。
著者
城山 隆
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

当初の研究課題に関する詳細な報告が発表されたため、計画の見直しを行った。弓状核のドパミン作動性ニューロン(DAニューロン)においてインターロイキン2レセプターのαサブユニット(IL-2Rα)の存在を確認していること(本研究実施者の平成11〜12年度科学研究費)、および産褥期に免疫系の大きな変化が起こることに着目して、産褥期精神病の生物学的背景として、エストロゲンとIL-2がDAニューロンにともに直接的に作用する形態学的根拠を探った。免疫組織化学的3重染色(抗IL-2Rα抗体、抗エストロゲンレセプターβ抗体:抗ER-β抗体、抗チロシンヒドロキシラーゼ抗体を使用)により、共焦点レーザースキャン顕微鏡を用いて、DAニューロンにおけるIL-2RαとER-βの共存を調べた。弓状核の一部、および腹側被蓋野と黒質緻密質の多数のDAニューロンに、IL-2RαとER-βの共存がみられ、これらの領域のDAニューロンがレセプターを介してエストロゲンとIL-2による直接的な二重調節を受けていることが示された。これまでの報告で、出産後のエストロゲン血中濃度と精神症状発現の関連が示唆されており、動物実験でもエストロゲンの線状体、側坐核、前頭前野でのドパミン放出の調節が示されている。一方、産後に慢性関節リウマチなどの自己免疫疾患が悪化することや、分娩前には免疫系活性化のマーカーである可溶性IL-2Rαの血中濃度が増加することが報告されており、産褥期には免疫系の大きな変化が生じる。また、エストロゲンが末梢血においてIL-2およびIL-2R産生を抑制することが報告されている。今回の研究結果とそれらの知見を総合的に考察すると、産褥期精神病の病因としてDAニューロン、IL-2、エストロゲンといった神経-免疫-内分泌相関の障害の重要性が示唆された。
著者
清水 祐公子 大久保 章
出版者
国立研究開発法人産業技術総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

デュアルコム分光装置を用い、気体分子の振動回転スペクトル観測により温度計測を行う手法を提案し、研究を進めた。これは、気体分子の回転振動バンドの多数の吸収線の強度分布が、温度の関数となっていることを利用して温度を求める方法であり、我々はこの温度計測法を「Rotational state Distribution Thermometry: RDT」と名付けた。デュアルコム分光によりアセチレン分子の精密なスペクトルを得るとともに、RDT法により不確かさ1 K以下という良好な温度測定結果を得た。その一方で、RDT法において、分子種ごとの高精度な温度測定をおこなうためには、温度決定の不確かさをさらに低減させることが必要であった。そのため本年度は、偏波保持光ファイバーを用いた光コムによるスペクトル変化の抑制と、ガス分子の温度の精密制御を行った。通常は光コムからの出力をファイバアンプで増幅し高非線形ファイバーでスペクトルを拡大して分光に用いるが、偏波保持化により、ファイバーアンプを介さず広帯域化でき、周囲の環境(温度、気圧、振動等)の変化による偏波状態の変動を抑制することができた。また、分子温度の精密な制御をおこなうため、温度安定化モジュールの制作を行い、高精度に温度安定化可能な恒温槽に挿入した。恒温槽は液体循環式であり、- 30 oC~110 oCの温度範囲を約1~5 mKで制御した。直径15 mm、全長10 cmの分子が封入された吸収セルを銅製の均熱ブロックの中に設置し、50 mK程度で温度安定化させた。しかしながら、温度安定化されたセル内の分子から取得した吸収スペクトルのベースラインはまだ不完全であった。この原因は循環式水温層の振動によるものであると考えている。現在、振動の影響を直接受けない光ファイバー型のモジュールを製作している。これにより、1桁以上不確かさを低減させる。
著者
大沼 進
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

札幌市における廃棄物政策を題材として、手続き的公正が社会的受容に及ぼす影響と、環境配慮行動変容の長期的な追跡調査を行った。市民参加機会の手続き的公正が社会的受容に及ぼす効果に関しては、新ルール導入前も後もそれぞれ重要だが、一時点での効果は長続きしないことが明らかになった。計画づくりの段階だけでなく、施行段階、施行後と継続的な参加とコミュニケーション機会の必要性が示唆された。
著者
張 楓 北浦 貴士 柳沢 遊 平山 勉 松村 敏 高柳 友彦 満薗 勇
出版者
福山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

最終年度に実施した研究成果は、つぎの通りである。1.2018年10月20日・21日に一橋大学で開催された2018年度政治経済学・経済史学会秋季学術大会にて「戦後日本における地域産業化の歴史的ダイナミズム-備後福山地区を中心に-」と題するパネル・ディスカッションを行った。科研メンバーのうち、代表者を含む4名が報告を行った。報告内容はいずれも本科研費にもとづく成果の一部となっている。具体的に「備後地域機械工業集積の形成・発展」(張楓)、「日本鋼管における福山製鉄所と福山市」(北浦貴士)、「福山中心市街地商店街の形成と展開」(柳沢遊)、「地域企業としての日東製網」(研究協力者:植田展大)であった。2.3月26日に慶応義塾大学三田キャンパスにて科研メンバー全員参加による研究会を開催した。そこで出版社の編集担当をまじえながら、本科研費にもとづく研究成果の2019年度中刊行にむけての1次原稿に関する意見交換と2次原稿などに関する打ち合わせを行った。本科研の課題は、戦後における地方工業地帯・地方都市の歴史的展開について、広島県東部に位置する備後福山地区に着目して多岐にわたる製造業(機械工業、鉄鋼業、製網業、造船業)と商業・サービス業(小売業、観光業、デザイン産業)を事例に、地域と産業・企業との「相互作用関係」を重視する視点から実証的かつ総合的に検討することにある。3年間にわたって行われてきた研究成果は、当初目指していた研究目的と実施計画にそった形で期待以上のものであったと認識している。
著者
井上 富雄 脇坂 聡 松尾 龍二
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

三叉神経運動ニューロンは豊富なセロトニンおよびノルアドレナリン作働性ニューロンからの入力を受けており、これらの神経活性物質を介して活動性の調節を受けている可能性が高い。そこでまず三叉神経運動核を含む脳幹スライス標本を用いて、三叉神経運動ニューロンに対するセロトニンおよびノルアドレナリンの投与の影響を調べた。その結果以下のことが明らかになった。1.セロトニンおよびノルアドレナリンの投与により、(1)静止膜電位が上昇し、入力抵抗の増大が認められた。(2) time-dependent inward rectificationが増強された。(3)脱分極パルス通電によるスパイク発射頻度が上昇した。(4)セロトニンの投与により、スパイク後過分極電位の振幅は変化しなかったが、ピーク時点が遅延し、持続時間が延長した。(5)ノルアドレナリン投与により、スパイク後脱分極電位が増大し、後過分極電位の振幅は減少し、後過分極電位のピーク時点が遅延した。2.セロトニンとノルアドレナリンで効果の異なるスパイク後電位については、(1)後脱分極電位は、EGTAの細胞内注入、Ba2^+の投与により増強され、ω-agatoxin-IVA投与により、抑制された。(2)後過分極電位は、EGTAの細胞内注入、Ba2^+およびω-conotoxin-GVIA投与により抑制され、apaminにより抑制された。以上の結果から、セロトニンおよびノルアドレナリンは三叉神経運動ニューロンの興奮性を上昇させるが、スパイク後電位については逆の効果を示した。このスパイク後脱分極電位はω-agatoxin-IVA感受性高閾値Ca2^+チャネルを介して流入したCa2^+により形成され、スパイク後過分極電位はω-conotoxin-GVIA感受性の高閾値Ca2^+チャネルを介して流入したCa2^+がCa2^+依存性K+チャネルを活性化することで形成されていることが示唆された。
著者
早田 保義
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、まずイチゴ23品種の果実の香りの特徴を明らかにするために、パネリストによる直接鼻で嗅いだ時および咀嚼時のイチゴ果実全体の香りの印象とにおい特性の評価を行なった。次に、それら品種の中から特徴的な香気有する品種7品種を用いて、イチゴ品種に共通して存在し、イチゴの香りのベースとなる香気成分(共通香気成分)と、品種の香りを特徴付ける香気成分(特徴香気成分)を決定し、これら香気成分の標準品を用いて各イチゴ品種の香りを再現・検証するため、「PorapakQカラム抽出・濃縮法によるイチゴ果実揮発性成分の分析」、「Aroma Extract Dilution Analysis(AEDA)・Aroma Extract Dilution-Strip Analysis(AED-SA)による香気成分の評価」並びに「標準品を用いたイチゴ香気の再現と検証」を行った。結果は、全7品種から揮発性成分を160成分同定し、香気成分を98成分感知した。98成分中、品種共通香気成分であり、香りのベースとなる香気成分(重要香気成分)は、綿菓子様の甘い香りを有するFraneol、カンキツの香りを有するLinalool、草様やカメムシ様など青臭いにおいを有するcis-2-nonenal、trans,cis-2,6-nonadienal、モモやココナッツミルクなどのラクトン系香気を有するgamma-decalactine、gamma-dodecalactine、汗のにおいを有する2-methyl butanoic acid、金属・ガス臭のにおいを有する香気成分(未同定)、並びに汗のにおいを有する香気成分(未同定)、の9成分を確定した。また、重要な品種特徴香気成分は23成分を確定した。以上の実験結果を基に標準品を用いて香りを再現し、抽出液と比較・検証した結果、とよのか、久留米IH1号及びペチカは香りの印象や類似度が高く、再現が可能であることが判明した。
著者
黒田 基樹 清水 亮 杉山 一弥 石橋 一展 木下 聡 植田 慎平 花岡 康隆 谷口 雄太 中根 正人 石渡 洋平 駒見 敬祐
出版者
駿河台大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

関東および隣接地域に関する応永元年(1394)から享徳3年(1454)の間における文書・銘文史料の集成をすすめ、4000点を蒐集した。また鎌倉府に関する基礎的研究、鎌倉公方・関東管領・各国守護など鎌倉府関係者の発給文書の体系分析をすすめた。前者については、「関東足利氏の歴史」シリーズとして、初代足利基氏から4代足利持氏の各代ごとに、『足利基氏とその時代』などの著作を成果として刊行した。
著者
有田 隆也 鈴木 麗璽
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は,協力が創発するメカニズムが生物進化・文化進化するダイナミクスを解明し,応用することを目的とした.まず,進化シミュレーションにより直接互恵と間接互恵が協働的に動作して裏切りの侵入を防ぐことが示された.次に,マルチプレイヤー型オンラインゲーム型実験環境により,ゲーム内挙動と心的特性の関係を明らかにした.また,大規模ソーシャルゲームの行動データを統計分析し,コストが大きいコミュニケーションが協力行動につながる可能性を示した.さらに,間接互恵に基づく協力行動を二重化ゲーミフィケーションによって促進するプラットフォーム概念を提唱,実装し,被験者実験によりその効果を確認した.
著者
井手 聡一郎
出版者
公益財団法人東京都医学総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、痛みによる情動変化に対する側坐核内領域特異的ドパミン神経情報伝達の生理的役割を明らかにすることを目的とした検討を行った。痛み刺激負荷後の側坐核内ドパミン遊離は、側坐核Shell吻側領域で引き起こされ、痛み刺激負荷により当該領域の神経細胞が活性化することが確認された。また、条件付け場所嫌悪性試験法を用いた解析により、ドパミントランスポーター欠損マウスにおいては、痛みによる負情動生起が阻害されていることを見出した。さらに、抑うつ状態を併発していると考えられる慢性疼痛モデル動物においては、報酬刺激によるドパミン遊離亢進が抑制されていることを明らかとした。
著者
棚瀬 康仁 吉元 千陽 重富 洋志 小林 浩
出版者
奈良県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

子宮内膜症性嚢胞と子宮内膜症関連卵巣癌において、CD44v9とDNA損傷マーカーである8-OHdGについて免疫染色を行った。卵巣癌を合併した子宮内膜症においてはCD44v9の発現は低下、8-OHdGは発現が上昇していた。また、8-OHdGとCD44v9の発現には負の相関を認めた。CD44v9と8-OHdGの発現の変化が、子宮内膜症の悪性転化と関連している可能性が示唆された。またCD44v9を発現している卵巣明細胞癌細胞株に、抗癌剤とシスチントランスポーター(xCT)阻害剤の併用実験を行ったところ、細胞増殖能は相対的に低下した。xCT阻害剤の併用は、抗癌剤感受性を高める可能性が示唆された。
著者
石束 嘉和 碓井 章 石束 嘉和
出版者
山梨医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

月経時に出現する睡眠障害の詳細を調べた。平成8年度は主に実態調査を中心とした研究を行い、月経に関連して多くの女性が睡眠の変動を自覚していることが明らかになった。またその際に、月経に関連して、主に過眠症状が出現することが明らかになり、月経随伴睡眠障害は月経随伴「過眠」障害と言い得ることがわかった。平成9年度と10年度は、主にこの月経随伴「過眠」障害の対処法の検討を行った。この睡眠障害を呈するものは主に妊娠と関係する年齢層の女性であることから、催奇形性を懸念することが多い。そこで薬物療法以外の対処法の可能性について検討した。平成9年度は高照度光照射療法の有効性についての検討を行った。方法としては、日常的に月経時に眠気が増強する以外は問題のない成人女性を対象とし、高照度光を、就床前の2時間、あるいは起床後の1時間半に照射した。非月経時、月経時(光なし)、月経時(就床前の光)、月経時(起床後の光)の4つの時期で、諸検査の結果を比較した。測定したいずれの指標でも劇的な変化は見られなかったが、OSA睡眠調査票で途中覚醒を反映する因子が、非月経時に比較して月経(光なし)で悪化し、光照射で改善した。また、24時間中の睡眠時間が、非月経時に比較して月経(光なし)で延長し、光照射で非月経時のレベルに戻った。しかもその変化は夜間睡眠でではなく、昼間睡眠でのものだった。このようなことから、高照度光照射療法は、月経随伴睡眠障害の過眠症状に多少なりとも効果があると結論した。平成10年度は、同じく過眠症状に対する日中の仮眠の効果について検討した。方法は、先の高照度光と同様の被検者に、日中30分の仮眠をとらせた。非月経時、月経時(仮眠なし)、月経時(仮眠あり)の3つの時期で諸検査の結果を比較した。その結果、仮眠をとったあとの自覚的眠気尺度が仮眠をとらないときに比較して低下することがわかり、月経時の眠気に対しては積極的に仮眠をとることが推奨される。
著者
朝治 啓三 渡辺 節夫 加藤 玄 青谷 秀紀 西岡 健司 中村 敦子 轟木 広太郎 大谷 祥一 上田 耕造 横井川 雄介 花房 秀一 亀原 勝宏 小野 賢一
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

従来の一国完結史観で捉えたイングランドやフランスの王国史を乗り越え、13世紀西欧世界の権力構造の中での、アンジュー帝国の果たした役割を検証した。イングランド在住諸侯は共同体を結成し、イングランド国王としてのプランタジネット家と共同で王国統治を担う体制を構築した。フランスでは現地領主や都市が相互に抗争して共同体を結成し得ず、カペー家の王は侯、伯と個別に封建契約を結んで自衛した。王家は北仏のごく一部しか直接統治しなかった。プランタジネット、カペー両家はフランス、ブリテン島の諸侯の帰属を取り付けるために競合した。中世の「帝国」を、諸侯や都市の核権力への帰属心をキーワードに説明し得ることを実証した。
著者
関山 牧子 村山 伸子 石田 裕美 野末 みほ
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

インドネシアでは、教育省から学校給食の予算が捻出されることとなり、2016年から公立小学校において学童に対する給食提供を開始することとなった(PROGASプロジェクト)。2016年度は東ヌサ・トゥンガラ州の3県、計4万人の学童が、給食プロジェクトの対象者として選択された。2016年4月末にキックオフ会議が行われ、対象校の教員や調理者へのトレーニングが実施された。その上で、各小学校は給食提供に係る様々な準備を行い、7月から給食提供が開始された。給食は、24日間を1クールとして4クール、計96日間提供された。本研究では、各県のプロジェクト対象校7校と非対象校3校(コントロール群)を選択し、A)食費、B)健康的な食物選択に関する知識、C)学校での学習態度、D)栄養素摂取状況、E)身体計測値、F)ヘモグロビン値の面について、介入前後の変化を調査するとともに、対照群との差異を検証した。また、現地調査の際に、小学校教諭、調理者、保護者に対し聞き取り調査を実施し、給食提供の問題点等を明らかにした。今年度は、初年度に収集したデータ解析を中心に行った。また、インドネシアの学校給食の歴史に関して国際的に発表されている報告書や学術論文が限られているため、現地のカウンターパートの研究者とともに、インドネシア国内で公表されている情報をもとに、レビュー論文を執筆した(現在査読中)。インドネシアでは1991年以降、何度か国レベルでの学校給食プログラムが実施されてきたが、その人口規模と地理的広がりから統一的な政策が難しく、国際的にみても低い普及率の向上が優先課題であることが明らかになった。
著者
徳山 龍明 高橋 令二
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

化学合成独立栄養性細菌である硝化細菌は、自然界における元素循環と緊密な関わり合いをもち、特に炭素、窒素の循環において重要な役割を担っている。したがって、この細菌の生理・生化学的特性の解明は重要な意義を有している。本研究では、高温環境下に生息する硝化細菌の分離を試み、分離菌株の諸性質を明らかにすることによって、生態学的基礎研究と、その応用化を目的とした。一般に硝化細菌の生育は、30℃以上では顕著な阻害をうけることが明らかにされている。本研究による高温耐性アンモニア酸化菌の取得により、応用的には温暖地域や夏季における生物的廃水処理への利用、養鶏、養豚場における脱臭装置への適用等の可能性が考えられた。その結果、養鶏場の脱臭装置からは、従来得られなかった35℃を至適温度とする高温耐性菌(Kl株)を得ることに成功した。養鶏場脱臭装置から、新規に高濃度硫酸アンモニウム要求性のアンモニア酸化細菌(Kl株)をゲランガム平板培地を用いて単離した。Kl株は桿菌、グラム陰性、菌体内には硝化細菌特有の細胞質内膜組織が認められた。DNAのG+C含量(mol%)は48.5であり、基準株であるN.europaea ATCC 25978Tに対する16SrRNAのsimilarityは93.77%であった。これらの諸性質から、菌株KlをNitrosomonas sp.Klと命名した。亜硝酸生成能(生育)に対する至適温度は35℃であり、40℃まで耐性を有していた。培地中の硫酸アンモニウムの至適濃度は極めて高く、303mMであり、基準株(38mM)とは大きく異なっていた。炭酸固定関連酵素の活性値は、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)とトリオースリン酸イソメラ一ゼ(TIM)において、ATCC25978T株と比較して高く、前者は19約倍、後者は28500倍の比活性値が認められた。さらに、硝化細菌由来のホスホグリセリン酸キナーゼの精製を行い、他の硝化細菌由来のPGKと酵素学的諸性質を比較した。また、新規に分離した海洋性アンモニア酸化菌Nitrosomonas sp.TNO632の菌学的、培養的(高温耐性)性質について明らかにした。
著者
大沼 由布 山中 由里子 黒川 正剛
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究では、博物誌・百科事典の本文を比較・分析することにより、動物・植物・鉱物等についての博物学的記述が、古代ギリシア・ローマから、イングランドを初め、フランスやドイツ等のヨーロッパ中世に、どのように受け継がれていったかを分析する。さらに、ヨーロッパ中世の博物学的知識が、どのように中世イスラーム世界からの影響を受けたか、また、どのように近世ヨーロッパへとつながっていったかをあわせて考察する。そして、それらを通し、時代や地域を限定した局地的な知のあり方ではなく、古代から中近世ヨーロッパという時代的な広がりや、ヨーロッパと中東という地域的広がりをカバーし、当時の知識のあり方を総合的に浮かび上がらせることを目的とする。本年度は、西洋の古代中世近世、イスラーム中世の百科事典や博物誌の分類と枠組みとを確認し、今後の具体例検討の共通基盤とした。西洋古代及び中世を大沼、西洋近世を黒川、イスラーム中世を山中が担当し、それぞれの担当する地域と時代における代表的な資料を数例取り上げて分析した。編纂意図としては、大きく分けて、自然界を知ることと、神への理解を深めることの二つが見られ、時代や地域によってそれらの比重の変化が見られた。また、典拠の扱いや記述の方法についても同様である。分類と枠組みに関しては、個々の作品による差が予想より大きかった一方、時代を超えた意外な共通点もあり、年度末に行った打ち合わせの結果、分類に関する新たな発見数点を、年度をまたいで、さらなる分析の対象とすることにした。
著者
谷田部 淳一
出版者
東京女子医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

【目的】γ-アミノ酪酸(GABA)による水利尿の作用機序は不明であった。GABAB受容体はGi/oと共役する7回膜貫通型受容体であり、Gsと共役するバゾプレッシン(AVP)V2受容体(V2R)の機能に拮抗する可能性を検討した。また、GABA系を賦活するとの報告があるリジンの関与について調べた。【方法】ラット腎組織とアクアポリン2(AQP2)安定発現MDCK細胞を用いた。RT-PCR、Western blot、免疫染色法を実施した。cAMPはHTRF法にて定量した。血漿中リジン濃度、糞便中リジン濃度は質量分析法にて定量した。【結果】腎組織とMDCK細胞には、GABABR1・R2サブユニットmRNAが発現していた。集合管主細胞に、GABABR2とAQP2の共発現像が見られた。MDCK細胞をAVPやforskolinで刺激した際に上昇する細胞内cAMP濃度は、GABAやGABAB受容体の特異的アゴニストであるbaclofenによる前処置にて有意に抑制された。AVPはAQP2のリン酸化を時間依存的、用量依存的に惹起したが、baclofenはそのリン酸化を有意に抑制した。高血圧自然発症ラットにおいて、体内リジン濃度の低下が見られた。【結論】GABAB受容体刺激は、集合管におけるcAMPの産生を低下させ、引き続くAQP2の活性化を抑制した。GABAによる水利尿のメカニズムは、AQP2の機能調節を介するものと示唆される。またV2Rの機能異常から引き起こされる病態に対して、腎GABA系は望ましい効果を持つ可能性がある。GABAによる利尿作用の詳細が明らかとなれば、尿酸上昇などの副作用が少ない新しい降圧利尿薬の開発を促す可能性もある。またはGABA系を賦活するとの知見が得られているリジンの補充により水利尿やナトリウム利尿が惹起され、血圧安定化作用を示す可能性が考えられる。
著者
先崎 章 浦上 裕子 大賀 優 花村 誠一 青木 重陽 山里 道彦 稲村 稔
出版者
東京福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

低酸素脳症者は身体能力が損なわれていない者でも、記憶障害や発動性低下を中心とする多彩な神経心理学的症状を示し、回復が緩慢で外傷性脳損傷者とは異なる経過をとる。家族の介護負担感も大きい。発症から一年以上経過しても「できる能力」を引き出すことで日常生活活動を向上させうる。ICFの概念から社会参加の方法を考えることも有用である。環境や介入により社会活動水準が維持されている場合には、うつや混乱は少ない。社会参加を目標とするためには、年単位の長期的な視点に立って介入、リハビリテーションを行う必要がある。身体能力が損なわれている者も含め、社会参加に至らない低酸素脳症者への支援が注目されるべきである。
著者
新海 航一 海老原 隆 鈴木 雅也 加藤 千景
出版者
日本歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

Er,Cr:YSGGレーザーを用いた歯の切削は、微小水蒸気爆発により歯面が粉砕されて生じることを確認した。レーザー切削象牙質面には熱変性層が生成されるが、熱変性層はリン酸処理後に次亜塩素酸ナトリウム処理を行った場合に除去された。レーザー切削面にリン酸処理あるいはリン酸と次亜塩素酸ナトリウムの併用による前処理を行うと2ステップセルフエッチシステム(歯質接着システム)の単独処理より接着強さが向上した。
著者
山内 功一郎
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

この研究の成果は、アメリカの詩人マイケル・パーマーの主要作品を理解する際に、イタリアの哲学者ジョルジョ・アガンベンの言語論がもっとも有効に活用されうることを証明した点にある。アガンベンの主張によれば、言語の本質は「潜勢力」(実際に言語表現が獲得されない限りにおいてこそ最大限にまで高まる潜在的な言語の能力)の相においてのみ探知されうる。このような認識がパーマーの詩篇中においても重要な役割を果たしていることを確認した上で、この研究は詩人と哲学者の狙いがまず始原的な言語に対する私たちの感性を活性化することにあり、さらにそれによって私たちの存在の基底をめぐる探究を可能にする点にあることを立証した。