- 著者
-
岡田 恵美
- 出版者
- 琉球大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2016-04-01
今年度の3月に実施したフィールドワークでは,研究対象であるインド北東部少数民族ナガの中でも,ナガランド州都コヒマ近郊のコノマ村を中心にアンガミ民族の民謡や習俗に着目した。アンガミ民族は,ナガの中でも6番目に人口が多く,およそ14万人(2011年インド国勢調査)である。そこでの調査内容の分析から,これまで主に注目してきた隣接するチャケサン民族(ナガの中では5番目に多い。およそ15万人)との共通点や相違性について抽出することができた。民謡においては,元々,両民族はテンディミア語から派生した言語を使っているため,歌詞には多少のバリエーションは見られるものの,類似したものも多いこと,またポリフォニーの民謡で使用される音列構成音はアンガミ民族の方が幅広い点が明らかとなった。伝統的な民謡の伝承状況に関しては,これまで調査してきたチャケサン民族の村々よりも危機的な状況に直面しており,民謡レパートリーの保存や次世代への継承の課題が浮かび上がった。上記の現地調査に加え,今年度は7月に,ナガの音楽文化や習俗とも共通項をもつ,台湾原住民ブヌンのシンポジウムも実施した。両者は国家の中ではいずれもマイノリティな山岳民族であり,20世紀にキリスト教化されたという点や,伝統的な音楽文化,織物文化,狩猟文化,首刈りの風習,村の共同体システムなどにおいて類似点も見られ,南アジアに限らない東アジアむ含めた比較的視点から研究する必要性も重要であることがわかった。またこれについては論文としてまとめた。