著者
大橋 鉱二 宗綱 栄二
出版者
藤田保健衛生大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

フルクトースは「果糖ブドウ糖液糖」として多くの飲料の甘味料として利用され、先進国では生活習慣病の原因として注目されている。多くの研究により「フルクトース対する脆弱性」が示されている。申請者らも、これまでにフルクトース過剰摂取により誘発される生活習慣病の作用機序を研究している (J Pineal Res 2012)。しかし分子メカニズムにおいては不明な点が多い。申請者らはエピジェネティックな制御に着目し研究を進めてきた。エピジェネティックな制御を司る機構として、DNAのメチル化、ヒストン修飾、miRNAがある。この中でも申請者はDNAのメチル化に焦点を当て研究して来た。DNAのメチル化とは塩基配列に変化を伴わず遺伝子の発現を調節する。申請者はフルクトースを過剰摂取した成獣ラットにてDNAの高メチル化と遺伝子発現の異常を確認している(Life Sci 2016)(BBRC 2015)。本研究の目的はフルクトースの過剰摂取が胎内環境を介して仔の糖代謝・インスリン感受性に与える影響を「エピジェネティック」な観点から解析することを目的とする。申請者はこれまでエピジェネティクスの中でもDNAメチル化に焦点を当て研究して来た。本研究ではDNAメチル化に加え、ヒストン修飾やmiRNAによる遺伝子発現のエピジェネティックな制御にも焦点を当て解析する。本年度は妊娠させたラットに出産までフルクトースを過剰摂取させた、仔ラットを用いて解析している。現在、このモデルを用いて以下2点について解析している。A.過剰フルクトース母獣から生まれた仔肝臓のDNAメチル化・ヒストン修飾変化の解析B.過剰フルクトース母獣から生まれた仔肝臓のmiRNA発現変化の解析特に、過剰フルクトース母獣の仔の肝臓組織におけるmiRNA発の異常が示唆される結果が得られつつある。
著者
村上 貴聡 立谷 泰久
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究はスポーツ審判員を対象とした心理的ストレスに注目し,審判員のストレッサー並びにストレス反応を明らかにする.そして,審判員のストレスの実態とその効果的対処を理論的,実践的に検討することを通して,審判員を対象としたストレスマネジメントプログラムの開発とその評価を行うことを目的に推進している.具体的には,審判員のストレスに関わる国内外の文献的研究を行い(研究1),面接調査を実施することにより審判員のストレッサー及びコーピングの実態を明らかにする(研究2).次に,審判員のストレッサー並びにコーピングを測定する評価尺度を開発し,その関連性を検討することにより審判員の心理的ストレスモデルを構築する(研究3).最後に,審判員に対するストレスマネジメントプログラムを考案し,その効果を検証する(研究4).2017年度は研究1及び2を実施した.調査対象者の収集においては,複数の競技団体と十分に連携して研究を実施することができた.実施にあたっては,国際審判員の資格を有するテニス審判員5名,ハンドボール審判員3名,サッカー審判員2名を対象として,「審判員のストレッサーとコーピング」について半構造化面接を行った.その結果,審判員のストレッサーとして,ジャッジへの不安,選手や観客からの抗議,時間的負担,金銭的負担,パフォーマンスの評価,対人関係などの内容が報告された.また,報告されたストレッサーに対して,どのようなストレスコーピングを活用しているかを分析した結果,認知的方略,メンタルスキル,ソーシャルサポート,回避などの内容が示された.さらに,サッカーの1級審判員52名を対象にして,メンタルヘルスの調査を行った結果,心理的ストレスや身体的ストレスは低いものの,社会的ストレスがやや高い傾向がみられた.2018年度はこの成果を踏まえ,審判員のストレッサー並びにコーピングを測定する評価尺度を開発する.
著者
桑原 聡
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

ノヴァーリスからパウル・シェアバルトに至るドイツ近代文学における庭園モチーフにおいては自然と人工の対立が問題になることはよく知られている。一般にドイツ・ロマン派に始まる人工庭園の系譜(たとえばE.T.A.ホフマン)は、芸術の象徴としてS.ゲオルゲに極まると関連研究は指摘している。しかし、本研究は、ドイツ近代文学における人工庭園のモチーフには二種類あり、一つは芸術の象徴としての庭園であり、もう一つがユートピア(=楽園)としての人工庭園の系譜であることを解明した。後者がノヴァーリスからシェアバルトに至る系譜であり、その指標が「光」にあることを明らかにした。
著者
相田 慎 箕輪 はるか
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

原発事故時による放射能リスクへの国民の不安は和らいでいるものの、企業・行政・報道への不信感は根強く、不安が解消されたとは言い難い。人々は、折に触れてこの問題について語らっていたであろうが、これは「人によって見解が異なる切実な問題」であり、「語ることへの躊躇い」があったと予想される。本研究課題では、日常会話に表出する(放射能リスク等の)科学の話題を「日常の科学コミュニケーション」と捉え、その場面獲得手法を提案し、話題が科学へ遷移する前後を詳細に分析する。 そして、「日常の科学コミュニケーション」の過去から今後とを観察し、放射能リスクという「時と共に変わりゆく問題」が変化する局面を俯瞰する。
著者
堀井 健一
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

18世紀末から19世紀初頭にかけてのギリーズ『古代ギリシアの歴史』とミトフォードの著作『ギリシア史』におけるクレオンの記述の仕方を見れば,2人は明らかにアテネ民主制がデマゴーグに操られた衆愚政治であるかのように記述していることが分かる。また,アメリカ建国期の『フェデラリスト』の記述においてはクレオンなどの政治家の名前は登場しないものの,アテネ民主制が感情的な大衆による愚かな政治であることが度々指摘されている。従って,18-19世紀の英米の歴史家や政治家は概して,アテネ民主制を衆愚政治と見ていたに違いない。他方では,ギリーズやミトフォードが史料として参照したはずの古代ギリシアの歴史家トゥキュディデスによるクレオンに関する記述を検討すると,やはり彼が明らかにデマゴーグぶりを発揮しているとは読み取れない。他方では,古代ですでにクレオンは同時代人のアリストファネスの諸喜劇の中で嘲笑の的になったし,それらの作品をギリーズらの近代人は知り得ていた。それゆえ,ギリーズやミトフォードの著作にみられるクレオンのデマゴーグぶりには明らかにアリストファネスの諸喜劇の影響がうかがえる。だが,アリストファネスの諸喜劇は,ソクラテスの事例に鑑みれば,喜劇作品であるがゆえに問題がある。それゆえ,政治家クレオンについて,歴史家は,その真相を喜劇作家に求めるべきではなく,トゥキュディデスの史料に求めるべきであるので,ギリーズやミトフォードにおける政治家クレオンの像は再検討の必要があろう。かかる再検討の作業を行なうならばクレオンが彼らが描くほどデマゴーグではなかった可能性が見出せるかもしれない。
著者
草桶 秀夫
出版者
福井工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

日本の代表的なホタルであるゲンジボタルおよびヘイケボタルは、ND5遺伝子の塩基配列に基づく種内変異と分子系統解析によって、遺伝的変異が大きく、高い遺伝的生物多様性をもつことを明らかにした。特に、ゲンジボタルでは、ハプロタイプ間の分子系統関係からハプロタイプの生息地を推定する手法を確立した。この手法は、人為的に移植されたゲンジボタルの場合、どこから移植されたかを推定するのに有用である。
著者
渡邉 英徳
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

これまでのデジタルアース・アーカイブの研究成果を活かして,インド洋大津波のデータ,企業ビッグデータのデジタルアーカイブを作成し,公開した。加えて,ニューラルネットワークを用いた自動色付け技術を用いて,マスメディア(朝日新聞社,沖縄タイムス,岩手日報社)の所蔵する災害アーカイブなどの資料をカラー化し,取材・時代考証を踏まえた補正を加えたものを,ソーシャルメディア(Twitter,Facebook)で発信する実験を行なった。毎日,その日付に起きた出来事にまつわる画像をアーカイブから選定し,カラー化したものを発信した。各々の着彩写真は数千〜数百回リツイート・シェアされ,年度内のインプレッション数は合計6000万回となった。カラー化写真に対して,ユーザからは多数のリプライ・引用リツイートがあり,写真への感想,時代考証,撮影地の特定など,さまざまなコミュニケーションが創発した。その結果,写真の撮影地や被写体の詳細が判明するなど,資料内容の特定への寄与もみられた。さらに,カラー化した写真をもとにして,若者たちと災害の当事者が語り合い,交流を深めるワークショップを,広島原爆・東日本大震災をテーマとして開催した。このことにより,ローカルなコミュニティ形成に貢献した。カラー化写真およびワークショップは,朝日新聞朝刊一面(6/23)をはじめとするTV・新聞などのマスメディアで多数取り上げられ,年度内に34件の報道があった。こうした反響を受け,カラー化した写真を,日本新聞協会主催の展覧会「よみがえる沖縄1935」などで展示した。
著者
木塚 俊和 亀山 哲 小野 理 三上 英敏
出版者
地方独立行政法人北海道立総合研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

平成29年度は前年度に引き続き将来的な耕作放棄地の有効利活用策の提案を目的とし、以前農業利用されており、現状において、適正な利用が図られるべき土地であるにも関わらず長期間に渡り利用されていない土地(未利用農地と定義する)の分布と面積の実態把握を行った。具体的には、釧路湿原流域を対象に衛星画像解析を行い、農地区画(農地ポリゴン)内の土地被覆割合を4つのカテゴリー(未利用農地、森林、畑作地、牧草地)別に計算し、各カテゴリー別の占有率を地図化した。結果として得られた地理情報を基に、実際の湿原周辺部において、より具体的な未利用農地の土地利用転換案について検討を進めた。未利用農地における栄養塩浄化量の解明については、前年度に引き続き現地調査区における水位、水質等の観測を継続した。これまでの観測データに基づき調査区の栄養塩収支の解析を進めた。その結果、地表流入・流出が調査区の水収支の大部分を占めており、隣接河川の増水の影響を受けていることが考えられた。また、栄養塩の流入・流出量も河川増水時に大きく増加することが分かった。さらに、未利用期間が異なる他の圃場においても水質調査を行い、2か所の未利用農地を対象に地表水や地下水の栄養塩濃度を比較した。釧路湿原周辺の未利用農地の発生状況や栄養塩動態についてこれまで知見が限られていたため、本研究により、未利用農地の今後の有効利活用を検討するための貴重なデータを取得することができた。本研究成果の地域への活用を図るために、対象地域の村役場、酪農家、釧路湿原自然再生協議会の事務局等を訪問して、研究結果を報告するとともに、未利用農地の今後の有効利活用策について協議した。
著者
北中 幸子 磯島 豪
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

小児期にビタミンDが不足すると、乳児けいれん、O脚、低身長、運動発達障害などを呈するビタミンD欠乏症を発症する。環境因子の変化により近年患者数が増加しているが、環境因子だけで説明できない例も多く、遺伝性素因の検討を行った。その結果、ビタミンD受容体、ビタミンD結合蛋白、NAD合成酵素の多型に対照群と有意差がみられた。さらに特定のハプロタイプの関与が強く認められた。さらに、臨床的にビタミンD欠乏症の経過を呈する症例に遺伝性くる病が明らかとなり、遺伝子解析の有用性が明らかとなった。
著者
野尻 宗子
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

我が国の高齢化率は年々上昇しており,平成30年高齢社会白書によると 65歳以上人口は、3,515万人となり、総人口に占める割合(高齢化率)も27.7%である.高齢化による合併症の増加に伴い多剤併用(polypharmacy)が生じやすくなっており,多剤併用による医療費の増大と同時に有害事象の増加が懸念されている.本研究では,60歳以上の高齢者を対象として睡眠薬・抗精神病薬での多剤併用と骨折リスク,睡眠時無呼吸症候群患者の睡眠薬使用実態についてレセプトデータ(National DataBase)を用いて調査する.
著者
たら澤 邦男 藤森 研司 森谷 就慶 尾形 倫明 千葉 宏毅 三澤 仁平
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

日本は超高齢・多死社会を迎え、国民が希望する場所で最期を迎えるための条件整備が急がれる。国民の55%は自宅で最期を迎えることを希望する一方、死亡場所の74%は病院であり、がんによる病院死は83%とさらに高い。がん患者について、病院死症例を多く含む病床機能と終末期医療の実態は明らかにされておらず、在宅看取りが多い地域にはどのような病院機能があるか解明されていない。そこで本研究は、在宅看取りの高低に対し同一地域の病院機能が与える影響を明らかにすることを目的とする。目的達成のためNDBレセプトデータ、官公庁公開データを併用した分析を行い、地域で実現可能な在宅看取りの普及啓発のあり方を検討する。
著者
山下 雅之 桑原 丈和 前田 益尚
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

まず平成17年度には、夏期休暇を利用してフランスとベルギーでマンガ文化の中心をなすと考えられる都市、アングレームとブリュッセルを訪れた。アングレームでは国立マンガセンターで展示資料の閲覧と蔵書資料の検索、調査を行った。またアングレームは町全体のあちこちの壁面に有名なマンガキャラクターが描かれているので写真撮影を行った。ブリュッセルでは、マンガセンターを訪れ、展示されているマンガ史に関する資料を閲覧し、図書館の蔵書を調査した。また市内各所にある書店、古書店を訪れ、マンガの資料収集に当たった。このほかパリなどを中心に書店、古書店を訪れ、マンガの資料を収集した。平成18年1月にはアングレームで行われた国際マンガフェスティバルを視察し、多くのマンガ出版社や作家、雑誌社などのブースを訪れマンガ資料を収集するとともに、関係者にインタビューを行って、マンガ界の現状についての意見交換を行った。平成18年の夏季休暇を利用し、おもにパリで資料の収集に当たった。マンガ専門の書店や古書店で、どのようなものに人気があるか、最近の流れとしてとりわけ人気の高い日本マンガの翻訳の状況などを、実際に書店の店頭で数多く触れることができた。また8月末には南フランスのソリエスヴィルで毎年行われているマンガフェスティバルに参加することができた。小規模ながらも、バカンスシーズンに行われる催しで、地元の人々を中心に熱心なマンガ好きの人たちが集まるイベントを肌で体験することができた。平成19年1月末には、アングレームのマンガフェスティバルに参加した。今年の傾向としては、日本マンガを始めますます輸入が増加する海外のマンガに関心が高まっており、今年のマンガ大賞にはアルゼンチンのマンガ家、そして単行本に与えられる賞には、日本の水木しげるが選ばれた。こうしたことから、これまでの伝統あるフランスのバンデシネに対する危機感も叫ばれるようになり、そうしたテーマのシンポジウムに参加して、現場の出版社や批評家などの生の声に接することができた。さらにアングレームの国立マンガ研究所の学芸員に会って話をすることにより、これから相互に交流を深めながら研究を進める足場を作ることができ、たいへん有意義であった。日本マンガ批評の現状については、本研究組織のメンバーが研究を行い、フランスのマンガについての研究と比較をするため、研究会を数度開催した。この結果、それぞれの発展プロセスの違いから、日本のマンガとフランスのマンガには、いろいろな興味深い差異があることが明らかにできた。なお17年度研究分担者として参加した前田は、平成18年4月から2年を要する病気療養のため休職したので、研究の継続を断念し成果報告も不可能となった。
著者
白石 美雪
出版者
武蔵野美術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

4年にわたる研究の第2年度として、2017年度は初年度に続いて、7名の音楽評論家(福地桜痴、成島柳北、伊沢修二、大田黒元雄、山根銀二、吉田秀和、遠山一行)の業績調査を行い、「職業としての音楽家」がどのようにして養成されたかに関わる典型例を確認する作業を行っている。大学における音楽学の教育制度が整う以前、海外の著作を翻訳したり、楽譜やレコードの収集を行った教養人、大学での文学・美学研究を通じて養成された、美術も音楽も文学同様に論述の対象とする評論家、そして音楽学の教育制度の成立以後、音楽研究者としての教養をもつ音楽学者では、評論の手法と表現方法が大きく異なっていることが確認されつつある。さらに1936(昭和11)年に文部省が設置した日本諸学振興委員会に関する先行研究を調査し、東洋音楽学会が成立したプロセスを確認した。その一方で、音楽評論そのものの成立についての調査もあらためて行った。明治中期から後期にかけて、とくに明治31年の読売新聞以前の新聞で音楽評論と認めることのできる記事がどの程度、掲載されているかを調べ、また、初期の音楽雑誌における批評的文章の掲載についても調査を行った。また、初年度に続いて、主要新聞における「楽壇」の用例調査を進めた。集団としての音楽論壇、とりわけ「職業としての音楽評論家」について明確化するため、2017年度の新たな課題として計画していた近代日本主要音楽評論家一覧(データベース)の作成にも着手したところである。
著者
小川 剛生
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

日本には250もの年号が存在し、とくに中世は頻繁に年号が改められた。改元は国家の大事であり、武家政権も重大な関心を示してしばしばこれに干渉した。しかし年号制定の手続きや、年号に関する当事者の意識については、これまで十分な整理が行われていなかった、そこで年号の選定に関する文献について、旧公家蔵書を中心として調査を実施し、新たな史料をいくつか見出した。さらに、こうした史料と分析を踏まえて、以下の研究を行った。(1)年号改元文献の書誌調査(2)中世の年号制定手続きと難陳から窺える歴史認識(3)室町幕府将軍の年号制定への介入(4)年号文字の反切と『韻鏡』の受容(5)迎陽記諸本の研究と、史料纂集『迎陽記一』の校刊
著者
佐野 通夫
出版者
こども教育宝仙大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究においては、主として朝鮮総督府の機関誌であった『京城日報』からの教育関連記事抽出を行ない、その分析を行なった。植民地教育政策研究にとって、教育政策の受け手であった民衆や、社会構成員各層の受け止め方を、権力者側の意思との対比の中で明らかにし、その齟齬を明らかにしていく作業は、朝鮮・台湾の民衆側の教育認識、またそれが日本の国内のアジア教育認識を明らかにする手がかりとなった。
著者
飯島 千秋
出版者
横浜商科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

江戸幕府の御金蔵には、非常用金庫としての奥御金蔵のほか江戸城蓮池御金蔵、大坂城御金蔵があり、二条城・駿府城・甲府城・佐渡などにも金蔵が置かれた。奥御金蔵は、はじめは江戸城天守閣下の穴蔵であったといわれる。正式な建造年は不明であるが、享保7年の奥御金蔵修復記録の存在から、それ以前の建造であることは間違いない。奥御金蔵は、留守居預りとされたが、扉や錠前の封印は勝手掛り老中や勘定奉行、金奉行の三者が行った。奥御金蔵には金銀の分銅や金銀貨幣が貯えられたが、もっとも多い時で金・銀分銅がそれぞれ20個と206個、金銀貨幣が171万7000両余であった。しかし、それらは幕末期には使い果たされた。なお、奥御金蔵における金銀貨幣・分銅の出納状況を検討した結果、奥御金蔵の役割・機能は、(1)臨時支出費の供給および余剰金の貯蓄、(2)金銀比価の調節、(3)貨幣改鋳原料の供給、の3つであることが判明した。なお、奥御金蔵以外の各御金蔵には、「除金」と称する若干の貯蓄金銀が保管されていた。一方、蓮池御金蔵は、収納した金銀を保管する元方御金蔵と支払のための金銀を保管する払方御金蔵とに分かれていた。担当する役所も二つに分かれ、金奉行も二手に分かれていた。また、役所経費も別々に支給された。両者は文政3年に統合されたが、その理由は、いったん支出された金銭の返還をめぐる取扱いの混乱を回避することにあった。蓮池御金蔵における金銀出納においては、「庭帳」とよばれる前日の事前打ち合わせ、「御金手形」の授受、記帳、金銀管理など、非常に煩雑な手続きがあった。さらに、寛政3年、文化5年には蓮池御金蔵内での金銀の仕訳方法や帳簿記載方法に変更が加えられ、天保10年には、帳簿(「勘定帳」と「有高帳」)の記載数値の不一致にかかわる原因究明を柱とする「御金蔵役所向御改革」が実施された。
著者
鈴木 達也 柴原 浩章
出版者
自治医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

抗透明帯抗体が不妊症の原因となるとの報告がある。本研究では抗透明帯抗体を保有する不妊女性の不妊機序を明らかにすることを目的とした。その結果、体外受精予定患者70名中4名(6%)を抗透明帯抗体陽性と判定した。さらに抗透明帯抗体陽性血清を用いてウエスタンブロッティングを行い、3種類の透明帯糖タンパクのうち、1種類(ZPB)にのみ反応を示した。抗透明帯抗体陽性4例の受精率は78±12%、陰性66例の受精率は87±21%であり、有意差を認めなかった。
著者
西条 旨子 中川 秀昭 西条 寿夫
出版者
金沢医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

次世代の神経・精神発達に対するダイオキシン胎内暴露の影響を検討するために、妊娠9日より19日までの11日間、雌ウイスターラットに0.1μg/kg/dayの2,3,7,8-四塩化ダイオキシン又は同等量のコーンオイルを経口ゾンデで胃内へ直接投与した。ダイオキシン暴露群4匹と対照群5匹については、妊娠19日目に帝王切開により胎児を取り出し、その体重や脳、腎臓、肝臓、胎盤などの臓器重量を測定して、胎児期の発育を比較検討したところ、暴露群の体重、脳全体、肝臓、腎臓の平均重量はコントロールに比べ有意に少なく、特に腎臓は体重あたりの割合も有意に少なかった。この時、脳については、暴露群の視床下部は全脳あたりの割合が対照群に比べ有意に大きかった。その他の妊娠ラットは自然分娩にて出産させ、出生した仔ラットに以下2種類の行動学的実験を行い、次の結果を得た。1)生後4日から14日間、四肢の協調運動発達検査として、毎目1回、傾斜板テスト(傾斜角25度の板に仔ラットの頭を下向きに置き、体軸を180度旋回して上方に上るまでに要する時間を測定)を行った。その結果、暴露群の成長による旋回時間の短縮が生後7日目より雌雄共に遅延した。2)生後31日からの14日間、シャトルアボイダンスシステムを用いた条件回避学習課題(ブザーにより電気ショックを予知して隣の部屋へ移動することによりショックを回避する)を行い学習機能への影響を検討した。その結果、雄の暴露群の回避率や回避潜時の成長による改善が遅れた。また、非施行時の活動性も雄の暴露群で低下していた。3)行動実験終了後脳を摘出し、部位別の全脳重量に対する割合を測定したところ、雄のダイオキシン暴露群の視床下部の割合が対照群に比べ大きかった。以上より、ダイオキシン胎内暴露は次世代の運動発達や学習能力、特に雄に強い影響を与える可能性が示唆された。